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2020年10月19日 (月)

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【ライヴレポート】<SUGIZO『LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅰ~RE-ECHO TO COSMIC DANCE~』>◆聴覚・視覚のあらゆるシミュレーションを重ねて構築した世界観と、その日その場所で生まれたリアルな音・生のパフォーマンスとの高次な融合。

NEWS - 19:19:18

10月14日(水)、SUGIZOが自身初となる配信ライヴ『SUGIZO LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅰ~RE-ECHO TO COSMIC DANCE~』を開催した。

この試みは、ソロキャリア初のライヴアルバム『LIVE IN TOKYO』のリリースを祝して企画されたもので、LivePartner-ONLINE-を通じてstudio W (WOMB LIVE)から生配信。

かねてからSUGIZOが追求してきた音楽・映像・照明が三位一体となったステージ表現は、〝対面ではなく画面越し″というコロナ禍の障壁をむしろプラスに転じ、新たなライヴの在り方として進化を遂げた。

 

 

全スタッフ及びリハーサル中はメンバーも含めマスク着用の上、検温、消毒、換気を徹底。現場では油断のないコロナ対策が施されていた。

本公演はCOSMIC DANCE QUARTETと名付けられた編成で行われ、センターに立つSUGIZOの左右にMaZDA(マニピュレーター、シンセサイザー)、よしうらけんじ(パーカッション)、対面にはZAKROCK(VJ)、ゲストのHATAKEN(モジュラーシンセサイザー)が構え、全員が向き合う円形のフォーメーション。本レポートは、会場の様子を交えつつ、配信内容について詳しくお伝えしていく。

 

定刻より10分ほど遅れた19:40頃、スタンバイしたSUGIZOは静けさの中、合掌し目を閉じて配信がスタート。

1曲目「DO-FUNK DANCE」のイントロが鳴り始め、巨大ミラーボールの下、両腕を大きく広げたSUGIZO。

たちまちカラフルなレーザーが立体交錯し、光と音のサイケデリアに没入することとなる。SUGIZOはギターを掻き鳴らしながら前方へ歩み出たりターンしたりと華麗にパフォーマンス。

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力強く躍動的な幕開けだった。本公演のPAはライン出力方式を選択。配信視聴時に最適の音響バランスとなるよう、SUGIZOが全幅の信頼を寄せ〝サウンドアルケミスト″と讃えるDub Master Xがオンライン用ミックスを担当。

ヘッドフォン等で聴くとより分かりやすいが、音の位相をありありと体感できる立体的かつ臨場感に満ちた音づくりに度肝を抜かれた。

「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?」ではムードを一変、不穏な重低音が響き渡る。

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激しく吠えるような高速ギタープレイを繰り出し、緊迫感を最高潮まで高めた末、すっと訪れる静寂。

逆光に照らされて高く手を挙げるSUGIZOのシルエットは、息を呑むほど神秘的である。

こうした静と動のメリハリは、巧みな映像加工によって画面上で増幅。撮影はクレーンカメラ、至近距離までSUGIZOに迫るステディカム、複数台のハンディカメラ及び定点カメラを駆使した多様なアングルで行われ、小気味よいスイッチングによってライヴのダイナミズムを視覚化。

通常は細部まで確認できない手元のアップや表情などをふんだんに映し出したのは、配信の利点を活かしたリアルの伝え方だった。

加えてこの公演では、通常通り巨大LEDスクリーンに映像を映し出すだけでなく、配信画面上にも映像をオーバーラップさせ、奥行きのある幻想的なヴィジュアル効果を実現。

現実にそこにあるものをただ映すのではなく、心象風景やサウンドスケープといった抽象的な内的世界を表すのに適した手法であり、基本的にインストゥルメンタルで言葉による情報の無いSUGIZOワールドの深みを雄弁に伝えてもいた。

全編を通じ、生身の人間らしい息遣いや熱量に満ちた生々しさと、緻密に練り上げられた構築美、すなわちSUGIZOの持つ両面の魅力を具象化する〝映像作品″となっていた。

 

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碧緑の宇宙ガラスがスクリーンに映し出されると、HATAKENが加わって「NEO COSMOSCAPE」がスタート。

無観客ながら手を振り上げてMaZDAが煽り、SUGIZOは宇宙の彼方へと呼び掛けるかのような、念のこもったギターリックを奏でた。

弾むように前方へ歩み出たよしうらがジャンベを打ち鳴らすと、入れ替わりにSUGIZOはパーカッションセットへ。

力強くスティックを振り下ろすSUGIZOとよしうらの映像がリズミカルに切り替わり、ボルテージが上昇していく。

センターに戻って艶やかなギターソロを弾き終えたSUGIZOは、剣のような形状のリボンコントローラーを手に、モジュラーシンセサイザーを演奏、プレイヤーとしての多面性でも魅了した。

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続く「Raummusik」はシュトックハウゼンにインスパイアされたミニマルな電子音楽。アタック感を消し去ったような、撫でるように柔らかいフェザータッチでコードを奏でたかと思えば、リボンコントローラーに指を這わせ仰け反る姿は大胆で妖艶。

浮遊するクラゲ、青空や海の空撮などネイチャー感溢れる映像の世界に溶け込みながら、起伏に富んだ音色を繰り出し、心地よいトリップへと誘った。

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鈍色の海が大写しになって始まった「ARC MOON」では、水中を泳ぐイルカの群れやその影、螺旋を描く白い文様が重なり合って得も言われぬ美しさが出現。

LEDスクリーンと配信画面上の2つの月の間にひっそりと佇むSUGIZOの姿は、絵画的な強いインパクトを残した。

サッと手を振り払ったのを合図に始まった「FATIMA」では、SUGIZOは寄せては返す波のようになだらかに高まっていく情感をヴァイオリンで表現。

宇宙と海をコラージュした背景に、艶めかしいベリーダンサーが人魚のように身を揺らすイメージを投影。

通常のライヴでも美しい視覚効果に見入って夢見心地になることの多い曲だが、配信ではその作用が増幅、虚実入り混じる幽玄なヴィジュアルアートにただただ圧倒された。

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非現実の世界に陶酔させたかと思えば、「Lux Aeterna」からはメッセージ性の強い楽曲で覚醒を促す。

無慈悲に攻め立てる銃声のようにループする、鋭利なエレクトロニック・ビート。

スクリーンには腐食した女神像、銃を構える戦士、爆撃の白煙といった戦禍のイメージが照射されていく。

ステージは闇のごとき漆黒に沈み、斬り込むようなストロボライトが緊迫感を高めた。

「SAVE SYRIA」と記されたギターを手に、あらゆる暴力に無言でNOを突き付けるSUGIZO。

人間らしさの証のように繊細に揺らめく音色を爪弾くたび、画像が切り替わっていく。

それは、ヨルダンで出会ったシリア難民の子どもたちが微笑むモノクロ写真。

真っ直ぐな眼差しが、心に激しく揺さぶりを掛けてくる。

続く「FOLLY」からはより具体的に、戦争や独裁政治への抗議が見て取れた。

しかし、怒りの炎に身を焦がすような映像・照明の表現は、ストリングスパートを境に一変する。

チェ・ゲバラ、キング牧師、ガンジー、マザーテレサといった自由と平等、そして平和を希求し果敢に行動した人物のポートレイトが次々に映し出されると、SUGIZOは手を合わせ深く祈りを捧げた。

地獄の業火のように赤く燃え盛っていた炎はやがて青白く変貌。

怒りと悲しみを復讐心に変えることなく、尊厳を取り戻すため、連帯への道を探ろうと決意するまでの軌跡を見るかのようで、息を呑んだ。

このように、受け手の想像を掻き立てるインスタレーションのようなSUGIZOの表現は、配信というスタイルを味方につけ、更なる飛躍を遂げていた。

 

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本編を締め括ったのは「禊」。序盤でライヴタイトルが大写しになる演出は鮮烈で鳥肌が立った。

サウンド面では、直前の「FOLLY」同様、ロックギタリストSUGIZOの神髄を堪能できるヘヴィーチューンであり、変則的なリズムがスリリングでもある1曲。

同時に、多国籍の楽器が入り混じりながら、万国共通の祭囃子とでも呼びたくなる摩訶不思議な高揚感には心がほぐされていく。

ジャンベを乱打するよしうらとSUGIZOは互いに向き合い、連獅子のように髪を振り乱しながらプレイバトル。

SUGIZOは荒々しい叫びを会場に響かせると、リボンコントローラーに指を這わせ、昂った感情を吹き込むように音程を乱高下させた。

約1時間に及ぶノンストップのパフォーマンスを経て、深いお辞儀をして初めてのMC。

息が上がった状態のまま「SUGIZO初の配信ライヴ、皆ありがとうございました。楽しんでもらえましたか?」と画面越しに問い掛け、メンバー紹介。「また後程会いましょう」の言葉を残し、一旦ステージを去った。

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HATAKENのモジュラーシンセサイザー演奏がSEとして流れる贅沢な環境下、SUGIZOはiPadを手に再登場。

感謝と共に、まずは、トラブルにより配信画面が表示されないケースが続出しているとの報告を受け陳謝。

配信時点では原因不明だったものの、「急遽、アーカイヴをすることにしました」との緊急対応を自ら表明した(※後に、チャット機能のアクセスが集中したことにより、表示機能への負荷が予想以上に掛かったためと判明。SUGIZOの公式サイトとTwitterアカウントには、謝罪と対応の詳細が掲示されている)。

 

Twitterのハッシュタグで続々と寄せられるコメントを辿りながら、「ネットを介して日本中の、各国の皆と繋がっているという実感がめちゃくちゃある。せっかくなので皆と繋がりたいと思ってる」と述べ、いくつかを紹介。

「SUGIZOの音楽のあり方は元々、音と映像と光と、あとは肉体表現と、すべてが絡み合って生まれる化学反応。こういった今の時代だからこその新しい表現のアプローチは、やってみたらとてもしっくり来たので、これから続けられたらな、とも思っています」と手応えも得た様子。

コロナ禍でファンとの断絶を余儀なくされ、早半年。「俺はすごく〝皆ロス″でした」と寂しさも吐露。

〝ライヴロス″でもあったと言い、「この状況になってみて初めて、皆との繋がりが、そしてライヴというものが、いかに自分の人生に対してかけがえのなかったものか、ということをとても痛感している……」と率直に語った。

コロナ以前の時代に戻るのは難しいとの認識を示しつつ、「こうやって音楽や表現を通して皆と繋がるってことは、かけがえのないこと。

『早く始めなきゃ』と思っていましたし、これからSUGIZOはどんどん動きます」と宣言。

12月にはLUNA SEAのライヴ開催が決定していることにも言及し、「誰かがやっぱり動いていかないとね」との使命感も。

「この凍り付いてしまった時間、このシーンを少しずつ解かしていかなきゃいけない。そのために一刻も早い皆との再会を待ち望みつつ、こうやって今回配信ライヴを実施しました」と、今回の初挑戦に至る心の動きを明かした。原因不明のトラブルを繰り返し謝罪し、完璧主義者らしく演奏への反省点と悔しさもしきりに述べながら、「このオンラインという逆境を最大限に利用して、できる表現を追求してみた。そして、これからもそうしていきたい」と前を向いた。

 

現在、年内リリースを目指す新しいアルバムのレコーディングが佳境を迎えていると伝え、ソロもLUNA SEAも、「(2021年は)今年の雪辱戦という意味でガンガン動きますので、期待してください。新しい時代の扉を一緒に開けましょう」と呼び掛けた。

「世界中の皆が、分断や争いや憎しみからいつか解放されて、本当に自分たちのホームに……それは土地でもいいし心の奥でもいい、本当の自分の居場所にいつか帰れますように。そしていつか、なかなか難しいかもしれないけど真の意味での平和を、俺たちの文明が手にできますように。祈りを込めて」と最後に届けたのは、「The Voyage Home」。

黄金色に輝く美しい海を背後に、まるで子守唄を歌って聞かせるかのような、慈しみ深いヴァイオリンの音色を響かせるSUGIZO。

懐かしい過去、あるいは今後訪れる幸せな未来とのコンタクトを試みる通信音のような、HATAKENのモジュラーシンセサイザー音。

MaZDAが穏やかな波の音を送り出し、よしうらの刻むシンバルのさざ波のような音も加わって、心身を温かい空気が包み込んでいった。

ゆったりとしたテンポに乗せ、再掲されたシリア難民の子どもたちの写真。

遠くを見つめるSUGIZOの祈るような横顔は、深い余韻を残した。

「皆本当にどうもありがとう。早く、一刻も早く実際に生で会えますように。一緒にこの時代を乗り切って、新しい扉を開けて、一緒にハッピーになりましょう。SUGIZOでした」との挨拶に続き、再びメンバー紹介。

スタッフと参加してくれた視聴者の方々への感謝で締め括ると、メンバー勢揃いで肩を組みカーテンコール。

夕陽に照らされる海の映像をバックにエンドロールが流れ、初配信ライヴは幕を閉じた。

 

 

まず音の面から振り返ると、事前にプログラミングされたエレクトロニックトラックを同期し、そこに生楽器を絡めるスタイルで以前から行われてきたSUGIZOのライヴは、配信というスタイルに適していることを実感。

加えて、映像・照明を音楽と同等に重視して築き上げてきたヴィジュアル面のクオリティーは、下がるどころか画面越しならではのポジティヴな変異を遂げていた。

美的な観点のみならず、精神性や社会活動におけるメッセージをも包括するSUGIZOの音楽を余すことなく届けるには、むしろ有利なフォーマットと言えるかもしれない。

また、多数存在する海外のファンや、国内でも遠方であったり障害や様々な事情によって参加が難しかったりする人々にとって、配信ライヴが貴重な機会となるのは言うまでもない。

コロナの収束した暁には対面でのライヴを熱望するのは当然だが、この配信フォーマットを有力な〝プランB″として並走させ、SUGIZOは表現の幅を拡張していくだろう。

聴覚・視覚のあらゆるシミュレーションを重ねて構築した世界観と、その日その場所で生まれたリアルな音・生のパフォーマンスとの高次な融合。

このライヴの形を、SUGIZOは「皆との架け橋になれば、とすごく思っています」と語ったが、その通りになるに違いない。

〝EPISODE Ⅰ″と銘打たれているこのストリーミングライヴ、その未来に大きな可能性を感じる一夜だった。

 

 

TEXT◎大前多恵

 Photo◎Keiko Tanabe