
ZIZ
混沌とした宴の場に巣くう妖しくて危険な香りが、ZIZの演奏から次々と沸き立つようだ。
Köziがヴォーカル/ギターを担うZIZが、イベントのトップを飾って登場。荘厳な音色が轟き渡る場内。メンバーの登場に合わせて次々と上がる歓声。ライブは、荘厳かつシンフォニックな音色から始まり、一気に攻撃的な音へと変化していく、インダストリアル/ボディミュージックなサウンドも印象深い『可不可』からスタートした。荒れ狂うラウド/デジタル音の上で、Köziがときにメロディアスに、ときにラップ調の声をぶつけ、観客たちの理性を破壊していく。サビで響かせる、胸に高揚を覚える美メロな歌も魅力だ。徹底して攻撃の姿勢を緩めない演奏の上で、乱れ舞うように歌うKöziの姿も鮮烈だった。
その勢いをさらに加速し、派手派手しく過激に彩るように、ZIZは『インベーダー』を届けてきた。高揚を覚える激しい楽曲の上で、観客たちを挑発するように歌うKöziの姿が瞼に強烈に焼きついた。みずからがこの会場の空気を支配したうえで、演奏も、フロアの熱気もKözi自身が牽引し続けてゆく。

この日のZIZは、スケ番の仮装姿で登場。攻撃的な音楽性と、スケ番の持つ"いきがった姿"が重なりあっているようにも思えたが、トークし始めたとたん、かなり砕けてゆくところに、嬉しいギャップを感じていた。




ノイズと喪失感を孕んだ演奏が重なりあう。ダーク/ゴシック/ソリットな演奏が切れ味鋭く身体を刺す。その上にKöziが、血の通った情念的な歌を重ねてゆく。『亞妄羅綱流』、異境の世界へ誘うようなねっとり絡みつく歌に、心がずっと捕らわれていた。ギターを弾きながら、Köziは感情が揺れ動くままに雄々しき歌声を響かせていた。ソリッドな演奏が次第に雄大さを増していく。艶かしい歌声の罠に、気持ちがすっかり縛られていた。
まるで80年代のポジティブパンクを思わせる演奏が流れだす。ZIZは『月男』を通して、この場を世紀末という言葉が似合う心が頽廃した時代へと巻き戻し、観客たちを怪しげな異端の園へと誘いだした。世の末を絢爛華美に彩った80年代。あの当時の、混沌とした宴の場に巣くう妖しくて危険な香りが、ZIZの演奏から次々と沸き立つようだ。曲が進むごとにエモーショナルさを増すKöziの歌声が、胸を熱く騒がせた。
表情を塗り替えるように、きらびやかで開放的な演奏があふれだした。ZIZは『TAET』を歌い奏でながら、闇が支配するこの場に、希望という光を降り注いでいた。Köziの歌声が背中を押してゆく。そんな高揚を感じながら、大勢の人たちが気持ちよく身体を揺らしていた。
その演奏は、大きなうねりの中へ観客たちを包み込むようにも響いていた。ZIZは『鳴呼空』を通して、この場にいる人たちを大きな方舟へと招き入れ、異境の世界へ連れ出してゆく。プログレッシブでゴシックな演奏の波の上を突き進む大きな方舟に身を委ね、揺られているような気分だ。とても雄大な演奏に心地よく包まるように、心をずっと浸していた。
荒々しいドラムビートを合図に、Köziが観客たちを煽りだす。ここからさらに攻撃の手を強めるように、ソリッドなギターの音が身体中をグサグサと突き刺しだす。その上で、Köziがおおらかな声で『バラクーダ』を歌いだした。ゴスでダークな、まるで世紀末のサバトの様相を呈した楽曲の上で、儀式を司るような演奏と歌が響き渡る。荒れ狂う演奏に乗せ、Köziが雄々しき様で、観客たちを煽るように歌っていた。その刺々しい声がグサグサと心に刺さるたび、気持ちが高揚していく。イカれたように、フロア中がカオスな色に染まってゆく様が最高だ。
最後にZIZは、この場を華やかでゴシックなパーティー会場へ染めあげるように『ハピネスク ラブ』を届けてくれた。軽やかにステップを踏みながら歌うKöziの姿も印象的だ。ZIZが連れ出したのは,触れてはいけない妖しげな秘密の園で繰り広げられる宴。とても華やかなのに、どこか毒々しくて毛羽立だった香りの漂うパーティーの場だ。ZIZが目の前に描き出したのは、甘美な香りを漂わせ、心をメロウにとろけさせる妖しい社交場だった。フロア中の人たちも身体を揺らしながら、うっとりと陶酔するように宴を楽しんでいた。
Moi dix Mois
Moi dix Mois、漆黒と戦いの世界へと観客たちをぐいぐいと引き込み、一人一人の感情を黒く染めあげていった。
Manaのソロ・プロジェクトとして活動しているMoi dix Mois。これから始まる華やかなパーティーの場に相応しい、荘厳で麗美でシンフォニックな音色が流れだす。鳴り響く鐘の音。Manaの登場時にひときわ上がる歓声。そして‥。
「このまま光の中で」の言葉を合図に、まるで儀式を司るような美しくも荘厳な音色が流れだす。やがてドラムのビートが荒々しく駆けだすのに合わせて、Moi dix Moisは『Dialogue Symphonie』を繰り出した。観客たちへ挑みかかるような姿でSethがせまる。雄々しき歌声が、熱情したい人たちの心をつかみ、ぐっと握りしめてゆく。
麗美ながらも先鋭かつ攻撃的な音を突きつけるメンバーたち。美しさを抱いて疾走する演奏と、荘厳な音色が折り重なり、この会場を熱情した場に染め上げる。美しくも荒々しく、しかも高貴なMoi dix Moisの演奏に、誰もが身体を揺らしながら酔いしれていた。

「ようこそ、暗黒の世界へ。ただただ暗黒に染まっていきましょう」「美しく舞い狂っていこう、狂い咲け!」の言葉を合図に、Moi dix Moisは『Forbidden』を演奏。冒頭から彼らは荒々しくて激しい、美しくも攻撃的な演奏を繰り出し、観客たちの理性を破壊してゆく。刺々しいリフを次々と刻む演奏に乗せ、Sethが感情を荒らげた声で襲いかかる。
フロアでも、大勢の人たちが身体を小刻みに揺らし、手を高く掲げ、ときに声を張り上げて、高ぶる想いをメンバーらへぶつけ返していた。つねにシンフォニックとゴシック&ラウドな表情をクロスオーバーしてゆく様が、とても刺激的だ。

「離さねぇかんな、なめたらあかんぜよ!」とRyuxが煽る。『Night Breed』では、さらにデスでダークでエクストリームな音を、爆走する楽曲に乗せて彼らは叩きつけてきた。強烈なリフを刻むメンバーたち。Sethに寄り添うように、女形ドレス姿のManaがフロントでギターを弾く姿も麗わしい。攻撃性を満載した荘厳シンフォニックな姿に興奮を隠せない。Sethの煽りの応酬へ食らいつこうと、観客たちも魂が奮い立つまま暴れ続けていた。

壮麗なクワイアが流れだす。祈りを捧げるような神聖な様を見せたうえで、Sethの唱えた「Vestige」の声を合図に、Moi dix Moisは麗しくて芳しい音色と、Sethの甘い歌声も印象的なミドルメロウの『Vestige』を届けてくれた。甘美さと刹那な香りが寄り添いながら、美しくも幻想的な世界をこの場に描きだす。なんて、うっとりと酔いしれてしまう歌声と演奏だろう。幻想麗美なこのひとときに、今はとろけるように浸っていたい。
ふたたび暗黒の世界へ観客たちを連れ出すように、Manaのノイジックなギターの音を扉を開ける合図に、Moi dix Moisは『A ghost whispers』を演奏。ランタンを手に魔窟の地からやってきたSethが、フロアを照らしながら、狂気の世界へと観客たちを招き入れる。カオスでダーク、しかもノイジックな演奏に乗せて、Sethが語り部となって一人一人の心へ物語を届けるように歌っていた。ときに感情的な様相で、ときには声を荒らげるSeth。この場にいる人たちは、目の前で繰りひろげられる悲哀に満ちた怪物の物語に、ずっと心を魅了されていた。


「その牙で俺たちに喰らいついてこい!!」「もっともっと野獣になっていこうか、おい、イケるよな!」とSethが煽る。その声を合図に奏でた『Beast side』に乗せて観客たちが拳を高く掲げ、身体を激しく揺さぶり、暴れだした。Sethが「Beast side」と煽るたびに、観客たちも熱情した声を返してゆく。耳に心地よいサビ歌も魂を揺さぶる。この曲では、「Beast side」と煽るメンバーらと観客たちによる荒々しいバトルが生まれていた。雄々しき声の奥から香り立つ、胸を揺さぶる美メロな歌も印象的だった。
最後に奏でたのが、『Ange-D side holy wings-』だ。まるで荘厳な儀式を始めるような幕開けだ。そこへ攻撃的な演奏が加わるのを合図に、彼らは漆黒の翼を広げて観客たちへ襲いかかる。その様に興奮を覚えた観客たちも心に漆黒の翼を広げ、感情の牙を剥き出しにして彼らに熱い戦いを挑んできた。互いに感情と感情をぶつけあう様に、気持ちがずっと荒ぶっていた。最初から最後までMoi dix Moisは自分たちの世界へと観客たちをぐいぐいと引き込み、一人一人の感情を黒く染めあげていった。
SHAZNA
優しい笑みを浮かべながらも挑発してゆく、その攻め方こそがSHAZNAだ。
今宵の宴の最後を飾ったのが、SHAZNA。ライブは、この場を彩り豊かに、しかし力強く荒々しい音の絵筆で染め上げるように、『Magenta Story』から幕開けた。スリリングな演奏の上で、IZAMが凛々しい声で攻めてきた。NIYのベースが唸りを上げて騒ぎだす。A・O・Iのギターも野太くも印象的なフレーズを次々と繰り出してゆく。攻撃的な姿勢の中に甘い香りも忍ばせて歌うIZAMの姿も印象的だ。今宵のSHAZNA、もしや攻撃的な姿勢で仕掛けていく?! NIYの唸るベースの音が、今宵はとても心地よい。
SHAZNA流の攻めた姿勢を示すように、A・O・Iのギターが火を噴いた。彼らは『一角獣-モノケロス-』を奏で、騒ぎたい観客たちの感情を熱く刺激していく。
とても荒々しい演奏だ。攻めた姿を見せながらもサビで美しい歌声を響かせるたびに、フロアでも、その刺激を受けてたくさんの手の花が咲き揺れていた。美しく甘い歌声や旋律の中に潜む攻撃的な思いを身体に感じるたび、胸の高ぶりを覚えずにいられない。

この日は、NIYが(おどけた馬にしか見えない)ケンタウロス、A・O・Iがアニメキャラクター葬儀屋、IZAMがNieR:Automata の2Bの仮装姿で登場していた。NIYにもフロアから「かわいい!」の声が上がっていたことも、一応報告しておきたい。



次のブロックは、最新モードのSHAZNAを見せようと、復活後に作った曲たちを並べてきた。先に披露した『ICE CREAM GOOD BYE』は、クールでスリリングな演奏も印象的な攻めた楽曲。IZAMも凛々しくせまりながら、その中に妖艶さを忍ばせていた。身体を揺らす体感的な楽曲という理由もあり、フロアのあちこちで数多くの手の花が揺れていた。先に登場した2バンドにも似合うクールなSHAZNAの姿も凛々しくて格好いい。この曲で見せたIZAMのエモーショナルな歌声も、心を嬉しく高ぶらせた。
続く『Checkmate』では、印象深くもトリッキーなA・O・Iのギターの旋律からスタート。この曲でも彼らは心地よく駆ける演奏を繰り出し、IZAMも拳を振り上げては、一人一人のハートをチェックメイトするように妖しく艶やかにせまっていた。ビートの利いた演奏に乗せて、観客たちの身体を揺さぶるように攻めてゆく。その様に触れ、気持ちが嬉しく高鳴っていた。
でも、SHAZNAには甘くて愛おしい恋心を綴った歌は欠かせない。今宵選んだのは、切れ味鋭いビートと心地よい疾走感が印象的な『Sweet Heart Memory』だ。フロアでも、ここぞとばかりに、高く掲げた両手を揺らしながら花咲かせていた。美しく麗しい、甘い衝撃を与えるSHAZNAにメロメロになっていた人たちも、きっと多かったに違いない。曲が進むにつれどんどんエモーショナルさを増してゆく歌声と演奏も、気持ちを嬉しく騒がせた。


ライブも後半戦へ。IZAMが「Melty Love」と歌いだしたとたんに上がる歓声。『Melty Love』の演奏が始まるのに合わせて、フロア中で身体を優しく揺らしだす人たちが大勢誕生。しかも、たくさんの人たちが、その歌声にずっと酔いしれていた。サビでは、IZAMの歌に合わせてフロア中に大小さまざまな手の花が咲き誇る。後半では、会場中の人たちが「Melty Love×3」と大合唱する場面も生まれていた。3バンドのファンたちが心を一つに「Melty Love×3」と歌い上げる景色の、なんて美しかったことか。この瞬間、みんなが『Melty Love』を通して優しさに包まれていた。恋焦がれた愛しい想いをみんなで共有しながら、甘い甘い歌にとろけていた。


「まいれますかー」「まいるー」のやりとりを合図に、SHAZNAはパワフルな歌声と演奏で『Pearl』をぶつけてきた。今宵の彼らは攻めた楽曲を次々と並べ、観客たちの高ぶる感情を刺激し続けていた。SHAZNAが描きだす妖精の世界にも、気持ちを高ぶらせる楽曲は多くある。優しい笑みを浮かべながらも挑発してゆく、その攻め方こそがSHAZNAだ。
最後にSHAZNAは、この場に眩しい夏景色を呼び戻そうと『夏彩マジック』を届けてくれた。ギラギラした太陽の日射しのように、とても刺激的な歌声と演奏だ。彼らがかけた熱狂の魔法に身を委ねた満員の観客たちが、高く掲げた両手を大きく揺らしていた。SHAZNAがかけた「I LOVE YOUの魔法」は、かかった人たちを無邪気に、そして無敵にしてゆく。だから大勢の人たちが、この場に戻ってきた熱い夏の刺激に浮かれながら、魅惑的な2人…3人の姿に嬉しく溺れていた。
SESSION
「歌姫降臨」だからこそ見られた豪華なセッションの景色!!!
最後に、IZAMがこの日出演したミュージシャンたちをステージに呼び入れた。今宵は、Halloweenというテーマがとても似合うバンドばかりだ。
アンコールでは、ManaやSethも仮装姿。最後にみんなでセッションをしたのが、SHAZNAが「歌姫降臨」のために書き下ろした新曲の『Beautiful Halloween Night』。とてもHalloweenの時期に似合う楽曲だ。
3人のヴォーカリストが次々とマイクをリレーすれば、サビではみんなで合唱。ちょっとぐだぐだなところも、セッションらしさ。むしろ、このメンツが一堂に会して、同じステージで演奏していること自体か貴重であり、最高のサプライズだ。
砕けた様も含め、とても貴重なセッションを彼らは見せてくれた。




PHOTO: Lestat C&M Project
TEXT:長澤智典
SET LIST
⚫︎ZIZ
『可不可』
『インベーダー』
『亞妄羅綱流』
『月男』
『TAET』
『鳴呼空』
『バラクーダ』
『ハピネスク ラブ』
⚫︎Moi dix Mois
『Dialogue Symphonie』
『Forbidden』
『Night Breed』
『Vestige』
『A ghost whispers』
『Beast side』
『Ange-D side holy wings-』
⚫︎SHAZNA
『Magenta Story』
『一角獣-モノケロス-』
『ICE CREAM GOOD BYE』
『Checkmate』
『Sweet Heart Memory』
『Melty Love』
『Pearl』
『夏彩マジック』
⚫︎SESSION
『Beautiful Halloween Night』
関連リンク
ZIZ
https://www.zizofficial.com/
https://x.com/ZIZofficial
Moi dix Mois
https://x.com/MdM_information
SHAZNA
https://x.com/SHAZNA_1993