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【MAMA.】ライヴレポート<ONEMAN「神殺し」>2024年2月10日(土)恵比寿LIQUIDROOM◆27歳から始まるロックンロール。会心のライヴで提示した未来。


MAMA.が2月10日(土)に恵比寿リキッドルームで単独公演「神殺し」を開催した。
次世代流再奇襲の一翼を担った<VISUAL NEW SPIRIT.>新宿BLAZE主催からわずか10日ほどでの自身最大規模でのワンマン。
ヴォーカル命依とMUCC YUKKEの対談、RAZOR 猟牙らによる応援ポスト…と、ある種無謀なチャレンジを腹を括って敢行したからこその風が吹いた。
シーンに伝染した“MAMA.頑張れ!”の空気。だが、面白いことにMAMA.はいわゆる応援されるタイプのバンドではない。圧倒的なストイックさと、音楽的孤高さを武器に孤独であることを背負っているバンドである。
理解者を探しつつ、半ば諦めにも似た悟りはむしろ急激に共感を呼んだ。
彼らはそれでも迎合しない。
MAMA.の5人が2024年の冬に刻んだ、生き様をお伝えする。

昨年9月のO-WESTワンマンよりも遥かに大きい、1000近いキャパシティを誇るリキッドルーム。フロアが満員にはならなかったが、「お、多いな」と思うぐらいにはMAMA.への興味を示す聴衆は集まったし、これもまた恵比寿リキッドルームという勇敢なチャレンジを選択した故だろう。
このヴィジュアルロックシーンに【希望】はあるか?

近寄りがたい独特の緊張感を持ったMAMA.はある層にとっては「懐かしい」、ある層にとっては「新しい」ものであったりもする。

   ◆     ◆     ◆ 

定刻を過ぎ暗転すると即座に、ライトが縦と横に交差するようにステージを照らした。十字架を連想させるシルエットであるが、紫がかったその色味はどこか冒涜心を煽るようにも見受けられる。「永遠の命が与えられます」という放送音声をサンプリングしたSEは耳障りの悪いノイズが加えられており、冒頭から不穏さを充満させた。この空気の中、観客の手拍子が揺らぐ様はまさにMAMA.のライヴのソレだ。

最後に登場した命依(Vo)が音声を遮るように“永遠の地獄…”と呟くと、蓮(Dr)の打ち鳴らす大陸的なリズムが“神”を殺す儀式の始まりを告げる。
お立ち台に登った命依の姿が妖しさを増したのは「OMEN」。特定の宗教観をモチーフにしながら、何かに縋ることによる逃避を否定するダークバラードを叩きつけ、熱心なファンだけでなく、この日が初見であろう好奇の層にもMAMA.の神髄を浸透させていく。

続いたのは「心中唄」。小文字mama.時代からの意外な選曲だが、原曲のお洒落なレトロ感は削ぎ落され、精神的な重たさが強調される大幅なリアレンジが施されていることに驚いた。
昭和歌謡的なメロディラインはそのままに、楽曲の持つ女性的世界観を擬態させた命依の表現はまさに彼の真骨頂で、多くのレジェンドバンドマンから彼が支持される理由が凝縮されている場面ではなかったか。自身の苦悩を赤裸々に吐き出すことで共感性を生むのが命依のストロングポイントではあるが、赤く照らされたシルエットのなか、一音一音と戯れるように廃れていくシルエットは表現者としての彼のレベルの高さを早くも伺わせた。独特の響きをする高音域の効果もあるだろう。


続けてまたもやバラード。鍵盤の音色が印象的な「天命の雨」。史上最大規模のワンマンでも徹底した姿勢を貫いてみせた。真(Ba)の硬質なラインと、蓮の無機的なドラミングは以前にも増して曲を色づけていく。

天命の雨 MV FULL


天命の雨 MV FULL

起き抜けのようにリラックスした姿で伸びをし、「おはようございます。暴れよう。」と放たれたのは「アシッド・ルーム」。高圧的に睨みを利かせたかと思えば、突如BUDに入ったように歌唱を止めたりと多重人格のような命依は、物足りなさげな眼差しを客席に浴びせた。これに火がついたオーディエンスは、この日初めてのアグレッシヴなナンバーに縦ノリで応え、最後は合唱まで巻き起こった。焦らされまくったフロアに投下されたのはイントロから爆発する「Psycho」。“神を信じなさい”のリリックに「Psycho」という強烈に皮肉のきいたタイトルだが、直情的かつ攻撃力のあるこの曲、正直、ハンパない。
ファストさを増したプレイが巻き起こす扇動力は留まることを知らず、このリキッドルームでも変わらず風力を上げていく。よくよく見ると命依の目は完全にキマっている。


▲命依(Vo)

強調されたスクラッチ音がMAMA.が掲げる<VISUAL HYBRID MUSIC.>の象徴とも言える代表曲「BLACK DOG.」では独特のリズムパターンに入ると5つのサウンドが一気に分離して様々な表情を見せる。この日のライヴに通じて言えることだが、MAMA.のメンバーは、性格の異なる5人がそれぞれに楽曲に没頭することで差異を生むことによって、1つの楽曲の中でも細やかな輪郭を描いていた。


命依が果てるように倒れ込むと、讃美歌のようなSEと共にステージ背景には冒頭の十字架を模した照明が。魂を浄化するような美しい旋律が鳴りやむのを待たずに雪崩れ込んだ「MARIA」もまた、緻密に闇の照射率を変えていく。


MARIA MV FULL


リリースされて間もないが、すでに曲が育っている印象が強い。ギターが心地よいサウンドプロダクト然り、大味なライヴをしないバンドだからこそ、かごめ(Gt)と真(Ba)によるコーラスワークも熱を生む。
場面展開と曲構成、タイトルがリンクした世界観はリキッドルームを侵食していった。


▲かごめ(Gt)

「タイトルに大した意味はない」と発言していたものの、「神殺し」という主題が想起させるモチーフやリリックの一節から解釈を多様化していく展開は、一人の人間の人生を垣間見ているような感覚にも襲われる。その対象として命依だけでなく、全メンバーが投影される像となっていることにMAMA.の進化を覚える。無論、塊としてのバンド力がない、などと言ったことではない。コンセプトライヴでもなければ、設定を重視するバンドでもないが、表現が実に緻密なのだ。


▲JiMYY(Gt)

わずか16秒のショートSE「Mariana」で再び場面を転換して披露されたのはもちろん「Nightmare」。
名盤『ANIMISM』通りの曲順だ。美しい鎮魂歌のような説得力を纏っていたバラードもこれまで見せてこなかった顔つきで大きなハイライトとなった。
以前は誰かを救いたいと願う曲という印象だったが、この日はかつてないスケール、言ってしまえば明確な“光”が見えた。大きな会場ということが影響したかは定かではないが、目の前の愛すべき聴衆、それだけではなくさらには自らをも救いたいという強靭な意志が見てとれた。深海にまで射す光…MAMA.のライヴに新しいシーンが加わった瞬間だ。

ここからはいつものMAMA.を如何なく見せつける。
「ここから性格の悪さ出していくから」
真と蓮のキメが効果的な緩急を誘う「不幸物」はサグでアングラ極まりない。
飄々とした佇まい同様に小気味良いスタイルがダークな世界観において圧倒的なオリジナリティを誇るJiMYY(Gt)、観客と対峙するように危険なオーラを醸し出すかごめと対照的な2人のギタリストだが、この水と油も好相性で「HAPPY SAPPY FRIENDs」ではメンバー同士で向かい合ってコミュニケートする姿も見えた。


▲真(Ba)

お馴染みのマイクで“お姉ちゃんが結婚しました”とJiMYYが曲に似つかわしくない報告で沸かせた「命日」。ウォールオブデスとモッシュピットの狂熱が頼もしかった「GREEN HEAD MEN」。


▲蓮(Dr)

命依が“永遠の地獄…”と呟いて振り出しに戻したのは「業」。
地を這うようなダークネスとのた打ち回る悲痛な絶叫は空気を一変させた。
生と死を対峙させながらその天秤の狭間に神を配する、究極のダウナーソングだ。
MAMA.の全てとも言えるこの楽曲、鍵盤の音色からファストなパート、和のメロディと混在しているが終盤、讃美歌のようなパートで客席から一斉に沸き起こる拍手と、差し込む白い閃光は“悪い夢でも見ているんじゃないか?”と錯覚したくなるほどの光景だ。四方八方を塞がれた喪失の魂の墓場。

こんな曲も必要な世界なのだ。


本編ラストは意表を突く「ヒステリア」で完全燃焼。
糸が切れたマリオネットのように暴れ倒すのはステージだけでなくフロアも同様だった。


アンコールは3曲。
マリリン・マンソンをサンプリングしたと思われるNEW SE「This is the New Shit.」を皮切りに轟音が襲った大暴れ曲「MURDER RED CHAINSAW」。

キャッチーさも孕んだ新曲「RAIN.」ではJiMYYの速弾き、タッピングが映えた。「RAIN.」はこれまでのMAMA.なら避けていたかも知れないストレートなロックであるが、悲壮感はなく、ファンへ向けていると思われるメッセージについてもまた改めて命依の発言を聞いてみたいところだ。


「良いことなんて毎日ないんだよ。毎日笑顔でいるなんて気持ち悪いよ。俺は音楽に助けられて、音楽がなかったら14歳くらいで多分…DEADしてた(笑)でも、その時救われたバンドの人とかが、今MAMA.かっこいいとか言ってくれて。俺はひねくれてるから、褒められてきてないから…態度に出すのが苦手だけど…すごい嬉しいです。ありがとうとか言えないし、態度に出せないけど、受け取って下さい。」

「ヴィジュアル系今、若い人少ないんだよね。俺たちまだまだかも知れないけど、俺たちに憧れてバンド始める人が出てくるようにいつかなれたらいいなと思ってます。俺27歳なんだけど、27歳から始まるロックンロールやっていきます。よろしくお願いします。」


真摯な言葉を伝えた最後は「Wednesday.」。
MAMA.が大切にし続けている優しさに満ちたバラードだ。笑顔を見せながら歌う命依の姿はいつもより大人びて見えた。
彼らにとって挑戦となる公演を締めくくれた安堵ではなく、想いを伝えきることができた充足感ではなかったか。
歌詞の一部が“明日は 何を話そう”と変わっていたこともそう感じさせた要素であるが、何故MAMA.は自身をどこまでも暗闇に突き落すのか…その答えがそこにはあった。それは人が生きていく動機でもあり、生きていかなくてはいけない理由でもある。
神殺しをし、彼らが浮き彫りにさせたかった剥がれた世界。
無謀とも言えるリキッドルームへの挑戦を敢行したことが支持を得たのは一因ではあるが、彼らが音楽に真剣に向き合っているバンドだからこそ生まれた確かな熱であることを再確認することとなった。
これだけはハッキリ言っておこう。MAMA.は先輩に“可愛がられている”バンドではない。認められているバンドだ。
発表された数々の主催公演、7月からスタートし9月11日渋谷WWWまで続く自身初のワンマンツアー「日本洗脳」も是非チェックしてほしい。

果たして、このヴィジュアルロックシーンに【希望】はあるか?確かめるためにも。


文:山内 秀一

SET LIST

2024.02.10 恵比寿LIQUIDROOM
MAMA.単独公演「神殺し」
<SET LIST>

1.OMEN
2.心中唄
3.天命の雨
4.アシッド・ルーム
5.Psycho
6.BLACK DOG.
SE
7.MARIA
SE.Mariana
8.Nightmare.
9.不幸物
10.HAPPY SAPPY FRIENDs
11.命日
12.GREEN HEAD MEN
13.業
14.ヒステリア

SE.This is the New Shit.
EN1.MURDER RED CHAINSAW
EN2.RAIN.
EN3.Wednesday.

LIVE

■MAMA. presents 「MOTHER FUXXER」
・#2 4/10(水) 渋谷スターラウンジ
MAMA. /201号室 /孔雀座/ヒッチコック

・#3 4/15(月) 高田馬場club PHASE
MAMA. vs NAZARE

・#4 4/23(火) 池袋EDGE
MAMA. /201号室/LAY ABOUT WORLD

・#5 5/2(木) 目黒鹿鳴館
MAMA. 単独公演
■MAMA. 初のONE MAN TOUR
全宇宙八都市単独公演TOUR
『日本洗脳』
7.10(水) 札幌crazy monkey
7.11(木) 札幌crazy monkey
7.19(金) 仙台space Zero
7.20(土) 新潟CLUB RIVERST
7.29(月) 川崎セルビアンナイト(O.A TABOO)
8.09(金) 福岡INSA (O.A 「#没」)
8.11(日) 大阪BRONZE
8.12(月・祝) 今池GROW
8.31(土) 渋谷STAR LOUNGE
FINAL 9.11(水) 渋谷WWW

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