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【ヤミテラ】ライヴレポート<ヤミテラ 2024 TOUR ヤミテラッシュHYPER TOUR FINAL>2024年4月2日(火)Zepp Shinjuku◆ヤミテラにZeppは早かったのか?史上ベストの名演で返り討ちにした忘れ得ぬ夜

2024年4月2日、ヤミテラがZepp SHINJUKUでワンマンライヴを行った。

このライヴは今年1月から開催された全国ツアー<ヤミテラ2024 TOURヤミテラッシュHYPER>のファイナル公演であるだけでなく、自身最大キャパシティへの挑戦も兼ねており、バンドにとって嫌でも特別な夜になることは約束されていた。彼らは2022年8月に恵比寿リキッドルームワンマンを行った際、“300人来なければ解散”と進退を賭けた過去がある。目標動員を大きく上回り無事活動継続へと至ったが、自らに命題を課して進むスタイルはいまだ健在で、実のところ今回のZepp SHINJUKUでもバンド内では同様のテーマが掲げられていた。

悪戯にファンの不安を煽りたくないとの意図から敢えて明言こそしなかったが、バンド存続を賭ける公演は、メンバーにとって期待だけでない感情が渦巻いていたことは想像に難くない。楽曲の耳なじみや、ライヴの説得力には定評があるものの世渡り上手ではない不器用なバンド。これまで関係者からの助言も数多くあった、とフロントマンRiNaは吐露していた。どことなく浮ついて見えなくもないキャラクター、一方で確かな実力で、場を選ばずにフロアを扇動できるロックバンドとしてのキャリア。このギャップこそがヤミテラの魅力ではあるものの、大きな規模を目指すにあたってこのままだと壁にブチ当たる。それなら自ら壁にぶつかりにいけばいいじゃないか。愚直な彼らが選んだ壁はZepp SHINJUKUだった。ヤミテラにZeppは早い?不相応?さて、どうだっただろう。記念受験では終わらなかった…はっきり言って、圧巻だった忘れ得ぬ夜の模様を本レポ―トでお届けする。

ほぼ定刻通りに暗転するとオープニングムービーに誘われメンバーが1人づつ登場。落ち着いた様子でロングスカートを靡かせるじゅんじゅん(Dr)、ハートのポーズを作るチャーミングな湊叶(Ba)、クールに両手を広げる蘭樹(Gt)、クラップを促すものの同様にクールなShuKa(Gt)。そして最後に登場したRiNa(Vo)は迫り出した花道まで迫り出して気合いの咆哮をカマす。
“おっぱじめようぜ!”オープニングナンバーは「夕闇」。レトロ感とハードネス・メロディを有するバンドの看板とも言える曲からのスタートに、覚悟を感じると共に、集結したオーディエンスも大きく応える。この会場ならではのLEDヴィジョンでの演出を背にプレイするメンバーに緊張の色は見えず、このステージを楽しんでいることが伝わる。

2018年リリース『夕闇』の曲順を踏襲するように続いたのは会場左右のLEDまでド派手に蠢いた「カリスマ」。激しい曲でもフックになる、メロが立つ構成はこの日も光っていて、RiNaの伸びやかなヴォ―カリゼイションと相まって初見であろう層にもしっかりと届き、場を温めていく。そして開催前日に突如配信リリースされた「YOURS」でもRiNaの歌声は強靭で、重厚なバッキングをものともせずステージから放出される。

リズム隊がタクトを振るうロケンローな哀愁が魅力の「ケミカルダンス」からムードを変えたのは、ダークミクスチャー的な「HARRY」。無機的な愛の虚無を、ラップを織り交ぜながら展開される曲は新境地とも言える。RiNaの思考が反映された世界観は、弱い者に寄り添って共感を得る…というよりは、突き放したうえで背中を押すもので、バンドのアティチュードとしても明確である。硬質かつ荒れ狂う湊叶のベースラインと、回転する動作で華を振りまきながらも、主張を控えた蘭樹のステージングが曲のニュアンスをなぞらえていく。

≪センス!センス!センスを磨け!≫と三三七拍子で煽る「ナンセンス」では観客が一斉に扇子を振りかかげて彩る。この「ナンセンス」も弱い自分に向き合う内容だが、詩世界は己を鼓舞するもので、自身を鼓舞するメッセージを観客にも届けるパワフルな楽曲だ。ヴィジョンに映し出されるMVのメンバーの若さも新鮮だが、曲の終盤に向けて加速するじゅんじゅんのドラムも直情的でエモーショナルだった。
“ますますヴィジュアル系の荒っぽいところみせてもらっていいですか?”の「シネキエロカス」における<シネシネコール>でフロアのボルテージを上げたところで早くも披露されたのは「仇花」。

湊叶のベースソロにじゅんじゅんのドラムが合流し、ShuKaと蘭樹のツインリードへ繋ぐ展開はコンパクトでありながら華々しく、ヤミテラの持つ実力の高さを見せつけた。さらに、畳みかける展開が王道ヴィジュアルロックの系譜を感じさせる「雪ニ散ル桜」ではこの季節ならではの響きで切なさを増幅させた。ここまでの展開でもヤミテラのキャリアと試合巧者っぷりが随所に光り、Zeppを乗りこなしていると言って差支えないものだった。だが、中盤以降はさらに加速を見せた。

 RiNaが6年以上ヤミテラをやってきての理想との乖離や葛藤についても語ったうえで、続いたのは「光へ」。

《やらずに後悔する方が何倍も辛い事わかってる》

《描いてた理想とはほど遠いけれど あなたがいるから今日もステージに立てるよ》

《ずっと…バンドが続くように》

独白にも似た示唆的な歌詞の数々はまさに今のヤミテラそのものであり、この公演の意味だ。今は曖昧な輪郭でも、この先前へ進めばハッキリと捉えられるかも知れない、その可能性に蓋をしない想いを「光へ」というタイトルに集約した1曲だ。ヤミテラの楽曲には日常に蔓延る不平や不満に対する問題提起が多く取り入れられているが、そこにRiNaのタフなスピリットが投影されることでそれらはメッセージへと変わる。

この「光へ」、歌詞の表層をなぞれば確かに不変のヤミテラらしいものだが、楽曲から匂い立つのは、千切れそうな葛藤と諦めることすら視界に入った泥臭さである。誰しもが独りになった時に、立ち上がれなくなったり、前へ進めなくなることがある。そんな時にどうするのか。微かな想いを言葉に変え、歌に昇華したこの曲、本質としては決して力強くないが、人間らしい弱さと向き合う感情と珠玉のメロディーが洪水のように襲ってくる、ヤミテラの未来を照らすであろう名曲だ。コロナ禍を乗り越えたものの、バンドとしての苦悩からは解き放たれなかった2023年生まれた「光へ」の後にリリースされた現時点で最新曲の「BLACK OUT」。

“大切なのは何かしでかしてやろうというその初期衝動!忘れんなよ…(中略)やるのかやらねえのかテメエで決めろ!”____(RiNa)

RiNaはパーティーギャンブルロックの先駆者を自称しており、ギャンブル愛を公言してるが、“ブラックアウト”はギャンブルにおいて好意的な確定演出のことのようだ。「光へ」を経て、逆襲の意志をヤミテラ流に表現したナンバーは“らしさ”溢れる力強さで観客の心を揺さぶったのではないだろうか。「光へ」、「BLACK OUT」のフェーズはこのライヴの大きなハイライトとなった。再び湊叶のベースソロを導入にダンスフロアを巻き起こす「くだらね世界」ではクールなShuKaと蘭樹の振る舞いがむしろ熱狂を呼ぶヤミテラの真骨頂も発揮された。ハードナンバー「BA.KU.TI.」、RiNaのMC(本文末尾参照)を受けて想いが溢れた「for you」、花道で弦楽器隊がイチャつく珍しいシーンから、この夜のライヴの充実度が存分に垣間見えた「イキタガリ」、「悪の教典」を経て、披露されたのはバンドが大切にしている名曲「理由」。

美しいメロディが胸に迫る1曲、いつも通り涼しげなShuKaのギターソロがやけに熱っぽく余韻を残し本編終了となった。

再びメンバーを呼ぶ声に応じるようにステージ上のスクリーンには“これから”の情報が提示され観客を喜ばせた。なんでもこの公演もバンド史上初となるDVD化(!)が予定されているとのこと。そちらも是非チェックしてもらいたい。
アンコールは全5曲。ハピネスを香らせた「不完全リミッター」、歌と曲の強さがメジャー感を醸しつつ、些細なアイコンタクトなどから長年共に歩んできた5人の絆を感じさせると共に、Zeppに集まったオーディエンスとも1つになる光景が目頭を熱くさせた「カケラ」。お馴染み「反逆の豚」、「反逆行進曲」で大狂乱を巻き起こした最後は“この曲には何回も助けられてきました”で銀テープまで発射された看板曲「前線敬礼歌」。完全燃焼で150分に渡る激闘を完遂して見せた。

 ヤミテラにとって史上最大キャパシティのライヴは、この日を迎えるまではときに無謀とも思えたが、むしろこのサイズのライヴハウスが似つかわしいことを終始体現したし、良いライヴ続けることがバンド存続への最たる近道であることも証明して見せた。成せばなる、成さねばならぬ何事も。
キャリアを賭ける覚悟も有していたはずが、この先の輝かしい可能性の片鱗を魅せてくれた彼らに敬意を表したい。ここからのヤミテラの道筋はキャリアの熟成はもちろんのこと、それに留まらぬ姿で我々を魅了してくれることだろう。

最後に、本編でRiNaが初めて告白した内容をお届けして本レポートを結びとする。

「俺自身、バンドを本気で辞めようと思ったことがたった1回だけあります。メンバーにも言ってないんだけど、それは約5年前の冬。俺はその年の冬に自分の父親を癌で亡くしてるんだ。で、うちはさ、母ちゃんと弟がいて、俺は長男だから“やっぱり夢をこれ以上は追えねえな”と、弱っていく父親を見て、バンドはここまでだって本気で強く思ってたんだ。その次の年2020年5月にO-WESTでワンマン公演が決まってて、そこで俺はもうバンドやめようと思ってた。メンバーにも言ってないけど。…でもさ、親父が亡くなる2週間前くらいかな…リビングでさ、ふと、いきなり俺に言うんだよ。“お前…バンド辞めんなよ”って。“バンド好きなんだろ?“って。いや、俺のことなんか心配すんなよってちょっと流しちゃったんだよ。内心はこんな時でも気遣わして悪りぃななんて思ってたんだけど、でもそこから2週間後、家で親父が倒れて、緊急治療室に運ばれるんだよ。で、そこで朝方、弟と2人でその部屋に居たと時に、もう絶対俺の方を見て、目を開いて、色々管とか繋がってるのに”お前まじでバンドやめんじゃねーぞ“って。これを理由にやめんじゃねぇぞ。お前これが好きなんだろうって。やり抜けよって。俺にそうやって真っ直ぐに目を見て言ったんだ。その次の日、親父は亡くなったんだけど、もうその次の日俺は(高田馬場)AREAでライヴやってたよ。そこで俺の中で決心が決まって…そしたらこんな素敵なステージに立てたよ。ここで俺は何が言いたいかって、”親父、ありがとう。Zepp立てたよ!“なんて言うつもりなくて…言葉って本当に強い力を持ってる。伝えられるときに、そして、伝えられる相手がいるっていうのは本当に幸せなこと。俺は親父からそういう言葉をもらった。でも、もう投げ返すことは出来ねぇ。どうかアナタも大切な人…親でも、友達でも、同僚でも、バンギャル仲間でも、もし大切な人がいたら、しっかりとアナタの方法で伝えられるそんな素敵な大人になって下さい。俺には少なくとも今、気持ちを伝えたい…音楽に乗っけて届けたいと思う人が目の前にこんだけいます…こんな幸せなことないよ!!!」____「for you」前のMC

(RiNa)


文:山内 秀一
撮影:Lestat C&M Project

SET LIST

1. 夕闇
2. カリスマ
3. YOURS
4. ケミカルダンス
5. HARRY
6. ナンセンス
7. シネキエロカス
8. 仇花
9. 雪ニ散ル桜
10.光へ
11.BLACK OUT
12.くだらね世界
13.BA.KU.TI
14.for you
15.イキタガリ
16.悪の祭典
17.理由

~ENCORE~

18.不完全リミッター
19.カケラ
20.反逆の豚
21.反逆行進曲
22.前線敬礼歌

LIVE

■ヤミテラ 2024 SUMMER TOUR
<HYPERヤミテラッシュ ラッキートリガー発動中!!>開催決定!

08/06(火) 渋谷CLUB QUATTRO
08/12(月・祝) 心斎橋CLAPPER
08/13(火)神戸 太陽と虎
08/31(土)Thunder Snake Atsugi
09/13(金)HOLIDAY NEXT NAGOYA
09/14(土) HOLIDAY NEXT NAGOYA

TOUR FINAL
09/21(土)渋谷WWW X

詳細は後日発表

VISUNAVI Japan主催イベント「KHIMAIRA」
日程:4月12日(金)・13日(土)・14日(日)
会場:池袋EDGE

【DAY3】

OPEN16:00 / START16:30
<出演>
ヤミテラ
XANVALA
CHAQLA.
HOWL
裏切り者には制裁を

★チケット
イープラス一般発売中!
(3公演共通URL)
https://eplus.jp/sf/detail/K000000272

[TICKET]
<全公演共通>
前売り:¥4,800(税込)/当日券:¥5,500(税込)・オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要 
*未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
*チケットはスマチケのみ


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【ヤミテラ  OFFICIAL】
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