【KHIMAIRA vol.3】ライヴレポート◆2024年7月26日(金)池袋EDGE◆風格を見せたDaizyStripper、HOLLOWGRAMと、HOWL,ヤミテラ,CHAQLA.が起こした、夢や理想を追い続ける者たちの化学反応。
VISUNAVI Japanが主催するライヴイベント『KHIMAIRA』の第3弾が、7月26日に池袋EDGEにて開催された。
Visual Rockに数多存在する“個性”の融合を、ギリシア神話に登場する合成獣“キマイラ”に例えたことをタイトルの由来とするこのイベントの本質にあるものは、ヴィジュアル系シーンに対する熱意である。その熱意の源こそ、類まれなるこのシーンにおいてしのぎを削っているバンドたちに他ならない。
今回出演したのは、HOWL,ヤミテラ,CHAQLA.に加え、GUESTのHOLLOWGRAM、そしてSPECIAL GUESTのDaizyStripper。新進気鋭のバンドたちと、10年以上のキャリアを持つゲストバンドが同じステージに立ち、それぞれのスタイルや経歴によるアイデンティティをぶつけあうことでいったい何を共有し、何を与えあったのか? 『KHIMAIRA』vol.3だからこそ生まれたドラマを、ここにお伝えしたい。
■HOWL
トップバッターを務めたのは、『KHIMAIRA』皆勤賞のHOWL。
10月2日のライヴをもって“活動終了”という衝撃的な発表があった翌日ということもあり、心なしか固唾を飲む空気が流れるも、それを払拭したのは紛れもなくHOWLの音楽だった。幻想的なデジタルサウンドとキャッチーなメロディーラインを繊細になぞる真宵(Vo)の歌声が織りなすそれは、彼らが6年間で築き上げてきた誇りであり、心を強く持ち続けるための糧となる。しかも、現実に目を向けながらも“(いつまでも)鳴らしていたい”という信念が込められた「ロゼッタ=ストーン」からの幕開けだったことも大きい。以降、ゴシックテイストを纏った「ヴィランの仔猫」や、「トッパーHOWL、ここから『KHIMAIRA』はじめてぇんだよ!」と意気込みを見せた「シャーデンフロイデ」をはじめとした多彩なエンターテイメントを兼ねて、「これぞHOWL」と言わんばかりのラインナップを惜しみなく発揮した。
ラストは、バンドの可能性を広げる転機となった「アンダーテイカー」を「今一番似合うHOWLだと思ってます」と紹介し、曲間にこのイベントを“居場所”だと印象付けながら届けていった。メンバーには感極まる様子も見られたが、バンドが一丸となって演奏する姿から感じた熱いものは、風前の灯火なんかじゃない。どんな困難にも屈することのなかった、確かな炎だった。
「10月2日のラストライヴまで駆け抜けていきます。それまで一つも手を緩めることなく、自分たちの信じた音楽を届けていくので、最後までよろしくお願いします!」(真宵)
彼らなら、最後まで自分たちの鼓動を正しく使い切ることができるはずだ。
■ヤミテラ
「ハンパねぇライヴするぞ!」とRiNA(Vo)が咆哮し、初っ端から気合いを露わにしたヤミテラ。『KHIMAIRA』にはVol.2に引き続いての出演となったが、ライヴ中RiNAは「俺はこのイベントに強い意志を感じる。
このヴィジュアル系シーンを盛り上げたい、もといこのライヴハウスシーンを盛り上げたい。俺たちもそうだ!」と強い同志を抱いていることを堂々と主張していた。
ヤミテラは、常に“ライヴハウス”という場でオーディエンスと共に音楽をリアルに共有する意義を叩きこむようなライヴをする。この日は、彼らのオリジナリティの根源にある和テイストの旋律を交えた「夕闇」にはじまり、楽器隊のソロ回しセクションも聴きどころの「仇花」。
さらに、曲中で“まだまだまだまだ”と扇動する「FLOW BACK」と畳みかけて、観客の士気を惜しみなく高め続けていく。しかも、演奏や楽曲において高い音楽力を魅力としながらも、RiNAのトーク力でもアッパーなテンションに持ち込んでしまうのだからズルい。
ラストの「前線敬礼歌」までノンストップに駆け抜け、今日もまたこの時間、この場所に起こる臨場感のすべてを刻み込んでいった。
「ヴィジュアル系と心中したいと思ってる」と話した愛あるポリシーをエネルギーにして、学校じゃ教えてくれないライヴハウスにしかない感銘を与えるべく、そのきっかけを生み出していく力を持ったバンドの未来にますます期待を覚えたのだった。
■HOLLOWGRAM
GUESTのHOLLOWGRAMが登場したのは、イベント中盤でのこと。その存在感は“貫禄”であることに間違いないのだが、そういった一言ではとても言い表せないほどの奥深さがある。それは今年10周年を迎えたバンドの経歴がものをいうところであると同時に、言うなれば人間が纏うオーラによるもの。
「Vinyl」のはじまりから表情豊かなryo(Vo)の歌と、キャリアのある楽器陣が繰り広げる演奏によって緻密に構築されたサウンドは、それを痛感させるには十分だった。
「『KHIMAIRA』へようこそ。HOLLOWGRAMといいます、楽しんでください」と、ryoがシンプルに挨拶。続いて、「一緒に虹の橋を渡りましょう」と届けた「Don’t cry for the knell」のロマンチックさと言ったらない。イントロのアンサンブルに、ファルセットが効いた歌声に手をスイングさせながら酔いしれたサビまで、すべてがただただ美しかった。
一変、ソリッドに鬼気迫る「Pleasance Liddell」では重厚さのあまりフロアが敬服するような空気を帯びながらも、最後は思わず身震いしてしまうほどの壮大さをもった「With you」を披露。どこかミステリアスでアーティスティックな世界観の中で、多くの言葉を必要とせずにひたすら“音楽”に特化した圧倒的な表現力を目の当たりにした、とても刺激的なひとときだった。
■CHAQLA.
まるで、世紀末。そこから“解放”を目論みながら見せる、快進撃。CHAQLA.のライヴには、そういった威力がある。『KHIMAIRA』Vol.2に続いての出演だけでなく、至るところから彼らに注目が集まる理由も、トータルアート的に見せるライヴを観れば納得だ。
「この世の終わり」のニュートラルな幕開けが実にスピリチュアルだったかと思えば、「一緒に原始時代に戻りませんか?」と本能的な部分を取り戻すかの如く暴れ狂ったパンキッシュな「BACK TO THE FUTURE」。のっけから斜め上をいくアプローチに輪をかけて、「ごめんメンバー、セットリストを変えるよ」と「ミスキャスト」を繰り出すと、辺り一面に広がる手首をすり合わせながら歌う様子は好意的な意味でとにかく異様であり、「太陽の悪魔」でも超越したセンスを持った言葉と音で魅了していく。
しかし、ANNIE A(Vo)が「愛をもって、ここに来てくれたみんなに音楽を届けるよ」と話した通り、CHAQLA.のテーマは“愛”であることも忘れてはいけない。そして不器用ながらも純粋に、ある特定の対象へ向けた愛情表現に思わず息を飲んだクライマックス。
「今日はすごく楽しみにしてた。だけど、HOWLの解散発表が正直言って悔しかったです。仲間が1つ減るのがマジ悔しいっす。真宵くん観てるか!? 叫ぶよ!」と、まるでやり場のない想いをぶつけるような、エモーショナルという言葉ではぬるい程の爆発力を持った「PLAY BACK!!」を届けた。
「HOWL、最後までかけぬけろよ、いいか!?ムカツクんだよ!やめんなよ、クソが!――V系なめんなよ!若手なめんなよ!」(ANNIE A)
仲間に、そして自分たちの生きざまに、これほど熱く向き合える力にただただ圧倒されるばかりだった。
■DaizyStripper
『KHIMAIRA』というイベントは、バンド歴に差があるバンド――あえてわかりやすく言わせていただくならば、若手とベテランが共演するという点にも明確な意図がある。ここにおいての“ゲスト”という存在はいわゆる特別出演というだけではなく、主催者から委ねられたメッセージを説得力のあるライヴを通して伝えるという大切なポジションも担っている。この日においては先述したHOLLOWGRAMのステージにもそれは言えるが、大トリを務めるDaizyStripperにも託された思いがあった。
「Derringer」を筆頭に、まずは迫力ある攻めのグルーヴで会場をすぐさま席巻。「Screaming Husky」といったヘヴィーチューンや、「殺鬼晴レ」をバンドサウンドのみで披露するといった部分も含め、冒頭で起こしたライヴ感の中にしっかりと“バンド”という結束力を強調していたのも彼ららしい。
DaizyStripperにはいくつかのシンボルがあり、その一つとしてメンバーとの絆は必須として、そこから生み出される“愛”や“夢”もまた、欠かすことができないものである。
“愛”に関して言えば、「どうも、デイジーお弁当リッパーです」と夕霧(Vo)が笑いを交えながら「先輩から受けた恩は後輩へ」という、彼らが憧れたアーティストからの教えをバトンするようにお弁当を差し入れたというエピソードもその一つであり、この日披露した楽曲で言うなれば「aquarium」がそれだろう。夕霧がギターを持たずに特別な形で届けたこの曲の壮大な想いはもちろん、“歌”に重きを置いた表現は見事だった。
そして“夢”こそ、この日DaizyStripperが伝えるべき大切なメッセージであった。
「17年間、このメンバーでノンストップでやってきました。まだまだこんなところで止まるつもりはないです。俺たちは、夢をもった音楽を届けていきます」(夕霧)
まず、リリース当時アニメのタイアップという夢を叶えつつ、多くの人に“夢を諦めないこと”を赤裸々な言葉でしたためた「切望のフリージア」。そして、7月26日は10周年のときにメジャーデビューをした日であることから、メジャーデビューシングル「AGAIN」といった、彼らの中でも“夢”を象徴する2曲を披露した。
そこへ続けた、いつでも未来を見据えた誓いの1曲であり続ける「decade」が、DaizyStripperをはじめとする夢を追う者へのアンセムとなってラストに響き渡ったのである。
「これからも、目を開いて夢をみていこう」――“諦めなければ夢は叶う”とはよく言うが、決して夢物語にしないという強い想いを持って懸命に歩み続けてきたDaizyStripperが言うからこそ、信じられるというもの。
今後この『KHIMAIRA』は、第4弾が早くも8月18日に、さらに“超えられない壁”をテーマに行われる第5弾が9月28日にいずれも池袋EDGEにて行われる。理想と現実、その両方から目を背けずに進み続けるバンドたちによる共演は、これからも我々に衝撃を与えてくれることだろう。
文:平井綾子
写真:A.Kawasaki
SET LIST
■HOWL
1.ロゼッタ=ストーン
2.スぺオキミュージック
3.ヴィランの仔猫
4.シャーデンフロイデ
5.人間退職
6.デルフィニウム
7.アンダーテイカー
■ヤミテラ
1.夕闇
2.仇花
3.FLOW BACK
4.BLACK OUT
5.くだらね世界
6.前線敬礼歌
■HOLLOWGRAM
1.Vinyl
2.Blind Watchmaker
3.Mona Lisa
4.Don't cry for the knell
5.Pleasance Liddell
6.With you
■CHAQLA.
1.この世の終わり
2.BACK TO THE FUTURE
3.Libration-369
4.ミスキャスト
5.太陽の悪魔
6.PLAY BACK!!
■DaizyStripper
1.Derringer
2.MISSING
3.Screaming Husky
4.殺鬼晴レ
5.aquarium
6.切望のフリージア
7.AGAIN
8.decade
KHIMAIRA vol.4
日程:8月18日(日)
時間:OPEN16:30 / START17:00
会場:池袋EDGE
<出演>
201号室
RAN
KIRA
裏切り者には制裁を
トリカブト
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【チケット料金】
前売り:\4,800(税込)/当日券:\5,500(税込)
※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
※チケットはスマチケのみ
<イープラス>
一般発売中
https://eplus.jp/sf/detail/4131230001-P0030001
KHIMAIRA vol.5
日程:9月28日(土)
時間:OPEN16:00 / START16:30
会場:池袋EDGE
<出演>
deadman【SPECIAL GUEST】
CHAQLA.
MAMA.
umbrella
and more
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【チケット料金】
前売り:\4,800(税込)/当日券:\5,500(税込)
※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
※チケットはスマチケのみ
<イープラス>
先行プレオーダー
https://eplus.jp/sf/detail/4146740001-P0030001
<受付期間>:7月26日(金)22:00~8月12日(月)23:59