【ABC vs Janne ~Respect Cover2man LIVE~】ライヴレポート:2024年9月6日(金)赤羽ReNY alpha◆憧れのバンドに対する愛が爆発!9月13日(金)20時〜16日(月)の23時59分まで、期間限定の全編ノーカット無料配信もお見逃しなく!
9月6日、赤羽ReNY alphaにて行われた『ABC vs Janne ~Respect Cover2man LIVE~』。これは文字通り、Janne Da ArcとAcid Black Cherryをリスペクトするアーティストによって行われたカバーライブだ。なお、本公演の模様は9月13日(金)20時から16日(月)の23時59分までの期間限定でYouTube(「DaizyStripper夕霧チャンネル」)にて、MCを含めた完全ノーカット版で全編配信が決定している。
【DaizyStripper夕霧チャンネル】
https://www.youtube.com/@DaizyStripperYugiri
Janne Da ArcとAcid Black Cherryという存在が音楽シーンに与えた影響は、とても大きい。その証拠に、〈両バンドのカバーバンドが2マンライブをやる〉という趣旨の本公演が発表されたときの反応たるや凄まじいもので、予想をはるかに超えるチケットの申し込みがあったことを受けて「多くの人に楽しんでもらいたい」ということから会場を変更したほどだった。これは今もなお、Janne Da ArcとAcid Black Cherryが愛されていることを実感させるものであり、同時に生演奏で楽曲を聴くことができる機会の渇望によるものであったとも想像する。
“またいつか誰かが聴いて歌ってくれれば曲は死なない。”
これは、Janne Da Arcが解散を発表した際にyasuが残したコメント内の一節だ。“またいつか”は彼らを愛した人々の中に常にありながらも、今回狼煙をあげたJanne Da ArcとAcid Black CherryのDNAを継ぐアーティストたちによって〈ライブ〉という場で“曲”を共有することが叶った一夜。それは、演者とファンとが憧れのバンドたちへの愛を炸裂させた、熱く、そしてどこか温もりに満ちた時間だった。
先攻は、「SPELL MAGIC」からスタートしたAcid Black Cherry Respect Cover Band。間に夕霧(Vo / DaizyStripper)は「今日は最後まで心を込めて、リスペクトを込めて演奏させていただきます」と話していた通り、リスペクトゆえのお馴染みな場面がたくさん散りばめられていた。「Black Cherry」のライブアレンジを効かせた曲の入りや歌詞の歌い替えに始まり、随所に挟むさりげない仕草がその一つでもある。
Acid Black Cherryはボーカリストのソロプロジェクトという特性上、サポート陣は常に超人たちを従えていたという印象がある。そこでカバーバンドにおいても演奏陣の巧みなプレイが見どころでもあり、その一つが「少女の祈りIII」でみせた複雑なベースフレーズを燿(Ba / 摩天楼オペラ)が、アウトロのギターをまゆ(Gt / DaizyStripper)がなぞる様子がそれを一層際立たせていた。また、サポートとして参加していたキャリアのあるメンバーに憧れたアーティストも多く、遠海准司(Dr / 己龍)はまさしくドラマー・淳士に憧れてステージネームを“ジュンジ”にしたと語り、この日は髪色をオレンジにして登場。しかも、本人公認の証として実際に淳士がAcid Black Cherryのステージで使用していたウィンドチャイムを借りてくるといった気合いの入りぶりを見せていた。
MCでは、まゆが「俺もそのライブにいた」と実際にあったMCから“マルコ・ポーロ”ネタを引用して盛り上げ、HIDE-ZOU(Gt / D)は11月に控える自身のバースデーライブのサポートメンバーやゲストに今回のライブにも通ずる豪華布陣が参加することを発表した。
そして、観客の中にも多く着用している姿が見られた“ツノカチューシャ”をアイコンとする「チェリーチェリー」でラストスパートへと突入。直前のMCで、HIDE-ZOUがデータ(同期)の部分を担ってくれたという紹介があったが、同期で流れるコーラスも夕霧の声で構成されているこだわりぶりや「フー!」と皆で飛び跳ねるシーンに心が躍り、さらに「ジュンジ(准司)、歌って!」とメンバーに歌振りする場面も。大いに楽しんだライブの終盤、夕霧は冒頭に記したyasuの言葉にかけて「俺はみんなの記憶からAcid Black CherryやJanne Da Arcが消えないように、これからもどこかで歌い続けていきたいと思ってる。また、生きて必ず会いましょう。生きてればいいことあるって、俺たちが何度も思わせてやるからな!」と伝えていた。その意思表示は、「20+∞Century Boys」の未来を見通す晴れやかな締めくくりとリンクして、強く観客に刻まれていったのである。
Janne Da Arc Respect Cover Bandのターンとなり、幕が開いた瞬間に巻き起こった歓声。恐らくその要因の一つは、かつてJanne Da Arcが大阪城ホールにて華々しい凱旋公演を行ったときを彷彿とさせたミケ(Vo / 我が為)の装いだろう。余談だが、ミケは以前Janne Da Arcのカバーを行った際に「EDEN~君がいない~」を装い含めて完コピしており、「今回はいかに!?」という密かな期待にしっかりと応えてくれる結果となった。
今回カバーした楽曲は、「いろんな時代にJanne Da Arcを好きになったみんなが楽しめるように」と全世代をさらえるようにセレクトしたという。それは見事に、ドラムから始まるライブアレンジを智也(Dr / Royz)がしっかり叩き上げてスタートした、象徴的なワードが登場する「-救世主 メシア‐」から、続いてインディーズ時代の「ICE」が飛び出すという幅広いチョイスに表れ、楽曲がシグナルとなってヘッドバンキングが広がるJanne Da Arcのライブの光景をフラッシュバックさせた。
高らかに上げた手元でマイクを回転させる曲締めも印象的ながら、「みんなとJanneが好きっていう気持ちは変わらないので……ABCでびしょびしょに濡れちゃったと思うんですけど、まだまだ濡らしちゃってくれますか!?」とミケのトークが巧みに繋いだ「Dry?」や、シンガロングが響いた「I’m so Happy」とまさしく全世代にヒットするのはもちろん、セクシーからハートフルまで幅広い世界観をしっかりと網羅していく。そして、「今日はありがとうございました。みんなのおかげでこのステージに立てたと思ってます。次の曲で“2ブロック目”最後の曲になります」と、これまた大阪城ホール公演をオマージュしたMCからの「Rainy ~愛の調べ~」の披露という、見事な徹底ぶりだ。
演奏面にもしっかりとリスペクトが込められており、I’LL(Gt / FEST VAINQUEUR)は「ライブが上手くいくようにお守りを仕込んできた」と最初に購入したCD「Lunatic Gate」と敬愛するyouのライブを観に行った際のパスをギターの裏に貼ってきたと話していたが、ギターフレーズや音作りまでも完璧に仕上げてきたギタープレイは圧巻。さらに、キーボーディストを擁するバンドの強みをしっかりと形作っていたSYUTO(Key / 3470.mon)は「できるだけkiyoさんに近づけるように」と、演奏面はおろか当日に髪(襟足)を切って臨むという力の入れようだった。そして、ヒィロ(Ba / ν[NEU])は日頃から使用しているka-yuから譲り受けたベースを紹介したが、純粋にメンバー本人の実機の音をJanne Da Arcの曲を通して聴けるという奇跡に嬉しさがこみ上げた。ただしこれは、憧れの存在を目標に必死に生きてきたヒィロという人間の功績があってのことであるということも記しておきたい。
「“赤”羽に相応しい曲、持ってきました!」と「RED ZONE」から終盤に差し掛かると、名物シーンも飛び出した「ヴァンパイア」、ラストはMVをオマージュするようにミケが電話の受話器を持って歌い出した「シルビア」には思わず笑みがこぼれたが、愛に満ちた幸福感が心地よいエンディングとなった。
こうして出演者全員が登場し、Janne Da Arcのライブにおいて高確率でライブのラストを締めくくっていた「Stare」を通して大団円のフィナーレを飾った。皆で腕をスイングする一体感を帯び、途中で演奏を中断して「いってきます!」という言葉で未来に向かう志を幾度と確かめあってきた目の前に蘇った和気藹々としたシーンは、“同志”と共に1つの事柄を作り上げる楽しさや尊さ、そこに生じる可能性といった、両バンドが教えてくれたことが後継されていることを物語っているようでもあった。
最後にはオーガナイザーとなった夕霧とヒィロがステージへ残り、まずは夕霧から「言い出しっぺは僕だったんですけど、いろんなことをお手伝いしてくれたヒィロくんがいたおかげで実現できました。この場を借りて、ありがとうございました」と伝えた。それを受けてヒィロは、現在ka-yuの音楽活動を支える立場であることから「Janne Da Arcのカバーをやりたい」という気持ちの反面「やっていいのかな?」という複雑な気持ちが入り混じっていたことを吐露しつつも、「ka-yuさんは、ちゃんと見送ってくれた」というエピソードに加え、自身の経験を踏まえた素直な気持ちも伝えていた。
「僕自身、ν[NEU]というバンドが一度解散して、今また活動をしていて来年で終わるんですけど。10年前に解散を決めたときに、〈二度とやらない〉って決めたんですよ――解散させてしまったから、ファンの子の前に出るのは申し訳ない、一生罪を背負って行くって決めたんですけど、人生何があるかわからないんで。僕らは規模が小さいバンドだけど、それでも一緒に夢を追いかけた仲間だったからもう一回話し合って、もう一回夢を追いかけようって活動をはじめたのもあるんです。Janne Da Arcさんの復活を望むのは申し訳ない気持ちもあるんですけど、何があるかわからないので……健康で生きていたいね!」(ヒィロ)
ヒィロはν[NEU]のファイナル公演後は引退を宣言しており、今回のカバーライブがν[NEU]以外の最後のステージとなった。彼だけではなく、今回ステージに立っていたアーティストたちのそれぞれの活動にも、是非目を向けていただきたい。そして、このライブを終えて強く噛みしめたことがある。それは、大切な時を共に過ごした音楽やバンドとの思い出はどんなに時が経とうとも決して色褪せることはない……いや、永遠になくすまいという誓いのような感情であった。
文◎平井綾子
SET LIST
[Acid Black Cherry Respect Cover Band]
Vo.夕霧(DaizyStripper)/HIDE-ZOU(D)/まゆ(DaizyStripper)/燿(摩天楼オペラ)/遠海准司(己龍)
‐セットリスト‐
1. SPELL MAGIC
2. Black Cherry
3. ピストル
4. 少女の祈りIII
5. Re:birth
6. イエス
7. チェリーチェリー
8. DRAGON CARNIVAL
9. 20+∞Century Boys
END SE
[Janne Da Arc Respect Cover Band]
Vo.ミケ(我が為)/Gt.I'LL(FEST VAINQUEUR)/Ba.ヒィロ(ν[NEU])/Dr.智也(Royz)/Key.SYUTO(3470.mon)
‐セットリスト‐
1. -救世主 メシア-
2. ICE
3. Dry?
4. Hysteric Moon
5. I'm so Happy
6. Rainy ~愛の調べ~
7. RED ZONE
8. ヴァンパイア
9. シルビア
[アンコールセッション]
1. Stare(Janne Da Arc)