【バトルキマイラvol.2 ~MAMA.を喰わせろ!~】ライヴレポート◆2025年4月25日(金)大塚Hearts+◆<MAMA.>を中心に<ティンカーベル初野>、<DAMNED>、<我楽多>が集った”混ぜるな危険”の夜。

VISUNAVI Japan主催ライヴ<バトルキマイラ>の第2弾が4月25日に大塚Hearts+で開催された。
<KHIMAIRA>レギュラーバンドをメインアクトに据えるこの新シリーズイベント、第1弾は「被告人」として登場したまみれたに続いて今回はキマイラの看板バンドMAMA.が満を辞して「標“敵”」として出演。
惜しくも解散が決まったものの高いポテンシャルを誇る我楽多、海外公演成功も記憶に新しくMAMA.も一目置くDAMNED、そしてヴィジュアル系対バンへの意欲を燃やしていた異端中の異端=ティンカーベル初野の4者によって繰り広げられた「バトル」と言う名の実験の模様をお届けする。
トップバッターは我楽多。
ラウドさが爽快な「ジャンけんPON☆」からスタート。我楽多らしいトリッキーなユーモラスがそのタイトルからも顕著だが、このゴキゲンな空気は彼らの十八番。

その勢いのままメロウに疾走する「脱法ロリ」、“俺たちと家族になろう!”と告げた「yamaguchi」ではグロッキーなほど転調を多用し変態性を主張すると、ヴィジュアル系ミクスチャーのど真ん中を突く「ハッピー・エンド」へと続く。コミカルさを伴うのが他と画一されない武器であるが、実はギミックではなくキャッチーなポイントを踏み違えないところに本質があることがわかる。近年、目を張るバンド力の向上によってそのバランスを保ち進化を見せたからこそ、解散の決断は惜しまれるのが正直なところだ。




実のところ本イベント<バトルキマイラ>発足の理由は、大きなポテンシャルを有する我楽多のフックアップだったことは今になって言及することではないのかもしれないが、その愛すべき人間性と前向きな姿勢は次なる場所でもきっと輝くだろう。いや、そうでなくては困る。
眠らせておくにはもったいない名曲「Nobody’s name」は皮肉なほどに彼らの将来を期待させるものだったことも印象深い。

ラストは代表曲「アヒル」で絞り出すように叫び抜き、盟友のDAMNEDにそのバトンを繋いだ。
続いて登場したのはDAMNED。
サーチライトが赤く交差し、危険な空気が充満するとゆっくりとメンバーが登場。
その獰猛な極悪サウンドは会場の空気を一気に塗り替える。逆光の中、まさに“バトル”に相応しい一音(Vo)のシャウトを号令に「VELTRO」からキックすると、波打つヘッドバンギングの海が早々に会場の風速を上げていく。

サビで一気に広がりを見せる「毒愛」で会場の空気をさらに掌握すると手加減なしに「SET ME FIRE」へ。
バンドカラー的にもメタリックな要素がフォーカスされがちだが、クラシカルなヴィジュアル系ロックの要素を含んだプロダクトやメロディにこそ彼らのアイデンティティを感じさせた。サウンドこそヘヴィだが、それ以上に整然としている印象が強く、どこかチャーミングなステージワークも今後発展していく布石のようにも思える。




間髪置かずに投下された「酔狂と交わる強迫的価値観」は正直圧巻で、組曲のようにめくるめくプログレッシヴな展開の中で闇に対峙しながらも甘美さを感じさせ、堂々たるDAMNEDの世界を提示してみせた。長尺のギターソロと絡みつくシャウトの壮絶なマッチアップはこの日のハイライトとも言える。

パワフルなドラミングと対照的にゆっくり進行する世界が心地好くもあるバラード「Anemone」も鮮烈だったが、披露されたばかりの新曲とラストに披露された「Grimnir」が有するストレートなロックのダイナミズムと抜群のキャッチーさにはこれからバンドが向かうベクトルを雄弁に指し示す説得力があった。

限られた時間の中で持てる力とさらに引き出しの多さを見せ、DAMNEDは充実のステージを完遂した。
3番手はティンカーベル初野。
この日は色々な十字架のヴォーカリストtinkとしてではなく、ソロ名義でキマイラシリーズ初参戦。ヴィジュアル系バンド対バンにソロで殴り込みをかけるあたりに彼のアティチュードが垣間見える。

フロアから湧き上がる“有名人~!!”の呼び声に招かれ、白いフェイスマスクにサングラスの出で立ちで挙動不審な様子で登場する初野。明らかに場違いである。
“みんなどんな気持ちかな~?”、“悲しんでますか~?”とシニカルな煽りで会場に問いかけたのは「祖父母の家行くとすたみな太郎くらいメシ出てくる」。

初野節ともいえる歌詞もさることながら、突き抜けるポップセンスと耳に残るリリックの巧みさも忘れ難い。
“体調どうですか~?”に対して“普通~!”と返す観客との共犯性はどこか宗教的でもあり、無理やり結びつけるわけではないが精神的にヴィジュアル系の反骨さを感じる一幕だ。それはバンドカルチャーにはあまり馴染みのない“MIX”と共に繰り出される唐突なXジャンプ然り。そして中盤「喧嘩 feat. らすてぃー」では、まさかのらすてぃー(茶封筒)登場のサプライズに大歓声が巻き起こった。

まさにやりたい放題。初野に負けず曲者のオーラを放つらすてぃーは茶封筒のVo&Gtだが、そんな2人のローヴォイスでなぞらえる80’sシティポップ調のナンバーは夜がふけていく大塚のライヴハウスに実にマッチしていた。振りつけが浸透していった奇曲「サンバイザーソルジャー」ではサンバイザーの防御力の高さをEDM特有の切なさでラッピングする。
続く「裸なのです」でもその切なさをさらに増幅させると、ラストは“一番有名です!”と笑顔で言い放ち「システムがわからないジジィとババァ」で煌めきと共にフロアを軽快に揺らしてみせた。

“アリアナ亭グランデでした!”と最後まで初野節を貫く様は対バン相手に左右されないトガリまくったアーティスト像で、盟友のMAMA.の前にステージを綺麗に散らかしきって去っていった。

“キマイラのエースとか言われてるけど、別に俺はそう思ってない”
“ヴィジュアル系は何でもアリだとか、自由だとか言って超縛られてるじゃん”
命依(Vo)がこの日吐いた言葉を咀嚼すると“形じゃなくて本質を見ろ”ということになる。本質とはもちろん目の前で繰り広げられるライヴそのもののことだ。
仮にも“バトル”とついたイベントのトリとして出てくることの意味を体現する大トリはもちろんMAMA.だ。
ワンマンツアーを終えて1ヵ月近く経つものの、実はそれ以降もワンマンの機会が多く、研ぎ澄まされたロングセットはこの日も圧巻だった。

「MARIA」、「アシッド・ルーム」とお馴染みの流れとなったハードチューンはまさに授業してやるよとばかりの説得力と練度だったうえに、この会場ならではの派手なライティングが好意的なミスマッチで新たな魅力を生んだ「NOPE.」とまさに独壇場の様相に。

腹を刺すようにマイクを打ち付ける命依の傍らで、アドリブ的にソロを挟むJiMYY(Gt)の自由度の高さも見逃せない。ここに来て華のあるかごめ(Gt)と情熱的なJiMYYの両ギタリストは一層対照的になっているが、互いに干渉しないことで個性を立たせるスタイルはこのバンドの武器として磨かれている。無論、プレイに表現力を持つ真(Ba)と或(Support Dr)のリズム隊が熟成していることも一因であることは言うまでもない。
“こんなダメな俺を叱ってくれ!”と雪崩れ込んだ「WITCH??」は、新たな扉を開いた感のあるミドルな新曲だがここでも爆発的な盛り上がりを見せた。



ヴォーカリストしてもフロントマンとしてもキレを誇る命依の好調さもさることながら、リズム隊が操る気だるいビートも抜群だ。
シンガロングを誘発する「HAPPY SAPPY FRIENDs」、“殺してくれるらしいじゃん!そんなんじゃ死なねえよ!俺ために死んで!!”と雪崩れ込んだ「命日」、そして強烈なヘイトスピリットをリリックの隅まで詰め込んだブランニューアンセム「毒入りミルクはママ.の味」で大バースト。
そのダークなヴィジュアルが想起させるヘヴィネスだけでなく、ミドルチューンにも重きを置くMAMA.だがこの日は終始好戦的なメニューで応じてみせた。
たかが対バンなんてことを微塵も思わせない死力のステージは彼らが何たるかを示すには十分なものではなかっただろうか。追われる者だからこそ、自ずと己との闘いを強いられる。もちろん我楽多、DAMNED、ティンカーベル初野の好アクトがあってのことだが。
3時間以上に渡ったイベントのラストに披露されたのは、年に数えるほども演奏されるかどうかの超レアナンバー「あふたぁぴる」だった。

命依がギターを持ちメロコア的に疾走する青春パンクは甘酸っぱくも、胸を刺すように切なく、言葉にし難いエモーショナルを生んだ。
秘儀とも言える名曲を惜しげもなく披露し、感動を充満させたMAMA.は何事もなかったかのようにクールにイベントを締めくくった。まさにエースの貫禄ここにあり、である。

新たな拠点として大塚Hearts+で始動した「バトルキマイラ」。
ありそうでなかった対バンは、各人の魅力とこれからに向けた指針を浮き彫りにするものとなった。そしてそれはぞれぞれの未来が明るいことを示唆する。解散が決まっている我楽多も含めて。
結果的に150人を超える来場数は会場キャパシティと肉薄した。
実験的要素のあるイベントだからこそスリリングに展開することを察したオーディエンスにも拍手を送りたい。
年内に開催が予定されている第3回を心待ちにしてほしい。
Text:山内 秀一
Photo:A.Kawasaki
SET LIST
●我楽多
・ジャンけんPON☆
・脱法ロリ
・yamaguchi
・「ハッピー・エンド」
・Nobody’s name
・ユニバース・メリーゴーランド
・アヒル
…………………………………………
●DAMNED
・VELTRO
・毒愛
・SET ME FIRE
・酔狂と交わる強迫的価値観
・Anemone
・新曲
・Grimnir
…………………………………………
●ティンカーベル初野
・祖父母の家行くとすたみな太郎くらいメシ出てくる
・荷物多いから何忘れ物したか楽しみ
・あらゆる関節にサポーターをつけるジジィとババァ
・喧嘩 feat. らすてぃー
・サンバイザーソルジャー
・裸なのです
・システムがわからないジジィとババァ
…………………………………………
●MAMA.
・MARIA
・アシッド・ルーム
・NOPE.
・WITCH??
・HAPPY SAPPY FRIENDs
・命日
・毒入りミルクはママ.の味
・あふたぁぴる
KHIMAIRA:EDGE 3DAYS

●-DAY 1-
KHIMAIRA-vol.7-
6月13日(金)池袋EDGE
OPEN 17:15 / START 17:45
メリー(SPECIAL GUEST)
Azavana
CHAQLA.
KAKUMAY
トリカブト(O.A)
…………………………………………
●-DAY 2-
KHIMAIRA-vol.8-
6月14日(土)池袋EDGE
OPEN 16:00 / START 16:30
色々な十字架(トリ確定)
鐘ト銃声
umbrella
201号室
Z CLEAR
NETH PRIERE CAIN
…………………………………………
●-DAY 3-
KHIMAIRA-vol.9-
6月15日(日)池袋EDGE
OPEN 16:00 / START 16:30
CHAQLA.
MAMA.
NICOLAS
まみれた
ヤミテラ
鮮血A子ちゃん(O.A)
…………………………………………
前売り¥5,000
未成年¥500
いずれもドリンク代別
一般発売5月3日(土)10:00~
https://eplus.jp/khimaira/
関連リンク
◆MAMA. OFFICIAL X
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◆ティンカーベル初野 OFFICIAL X
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◆我楽多 OFFICIAL X
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