【mitsu】★スペシャルインタビュー★「これまでの人生で一番自分のことが好き」と言いきった彼の思い描く景色とは。7月18日に開催される10周年記念公演について訊く

2025年7月18日、Spotify O-WESTにて、mitsuがソロアーティストとしての10周年を記念するライヴを開催する。“絶望”から始まったという10年前のあの日────そのちょうど10年後に掲げるテーマは“希望”だ。この節目のステージに向かう想いを紐解けば、彼が歩んできた軌跡が一つの運命だったと感じずにはいられない。すべての点と点が線になる今、その核心に迫る言葉を、このインタビューで届けたい。
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今、人生で一番自分のことが好きなんですよ。
────“10年”という節目をどのように感じられていますか?
mitsu:“今の自分”で10周年を迎えられることにめちゃくちゃ喜びを感じています。今、これまでの人生で一番自分のことが好きなんですよ。めちゃくちゃ素のまま活動できていて、歌っていて嘘がない。自然なまま生きられていて、それを受け入れてくれてる人たちがいて、たどり着いた10周年。これって、すごいことなんじゃないかなって思うんです。
────そのモチベーションになれたのには、何かきっかけがあったんでしょうか?
mitsu:ありましたね。音楽だけじゃなく、生きることもやめようみたいな瞬間があったんです。それを諦めないようにさせてくれたのは、ファンの子の存在で。それで、好きな人としか関わらないと決めたんです。メンバーもスタッフもファンの子も。ファンの子さえも好きな人しか呼ばないって決めてるんですよ。一回、イベントのときに帰したこともあるぐらい。「多分、君はここにいても幸せになれないし、俺も幸せになれないし、ほかの人たちにも幸せになれない。みんな幸せになれないから、一緒にいないほうがいいよ」って。前までは「1人でも多く来てよ」って必死だったんですけど、自分で選ぶようにしたんです。本当に好きな奴らと好きなことをするっていうのを徹底してみようって。自分にとってネガティヴだなって思う人や場所を全部なくしていったんです。そこに踏み切れたからかなと思います。
────マイナス要素を排除していった。
mitsu:はい。あとは、自分がやりたいって気落ち。俺、歌バカなんで(笑)。もともとはバンドをやりたくて音楽を始めたんで、ソロなんてやりたくないって言ってたんです。でも今は、バンドをやりたかったわけじゃないって気づいて。“好きな奴らと好きなことをしたい”んだって。そう思うとプレッシャーがないんですよ。だって好きな奴らしかいないんで。
────ソロ活動を始められたとき、10年後の未来って予想していましたか?
mitsu:まったく! 10年後どころか、4年目には“もうやんねぇだろ”って思ってたくらいです(笑)。10年なんてビックリ! 「10周年ヤバいね!」って言われるんですけど、他人事というか。でも実は、5年分くらいの目標はノートに書いていて。1年目でTSUTAYA O-WEST(現・Spotify O-WEST)がソールドアウトしたんで、この流れで3周年はLIQUIDROOM、4周年はSpotify O-EAST、5周年は渋谷公会堂(現・LINE CUBE SHIBUYA)って思ってました。ν[NEU]の最初のラストライヴが渋谷公会堂だったので、ν[NEU]の自分を超えたくて、渋谷公会堂を夢にしてたんです。結局時間がかかって、1年遅れて4周年のときにLIQUIDROOMでやったんですけど、そのときに折れちゃって。数字だけじゃなくて大人とかいろんなことがあって諦めたんですけど、それからコロナ禍が来てさらにポッキリ折れて。去年のLIQUIDROOM公演は、諦めた自分のリベンジのためにやったんですけど、これが超良かったんです。ソールドには程遠かったんですけど、あったかくてハッピーなものだったんですね。それで、“あ、もう1回、夢見たいかも”と思って。ソールドしないとキャパを上げたくないとは思ってますけど、今回の10周年ライヴしても、“ソールドしたら超嬉しい”っていうニュアンスなんですよ。“ソールドさせる”じゃない。結局、ソールドさせてくれるのはファンの子なんで、強制するのは呪いですよね。ソールドしたいって言ってる俺がいて、見たいって言う人たちが集まったときにソールドしてたら、これがベストだなと。
────昨年は、ν[NEU]とmitsuソロで対バンされたりもしてたわけですが、そんな未来は想像できました?
mitsu:いやいやいや。そもそも「ν[NEU]は絶対復活しない」って、一番言ってたのは俺なんで(笑)。過去に戻りたくないというか、ソロを始めたときに“ν[NEU]を使わない”ってことをすごく意識してましたし。その俺がν[NEU]をまたやりたいと言い出すなんて、思いもしなかったですね。
────ソロのmitsuさんとν[NEU]のmitsuさんは、チャンネルが違うんですか?
mitsu:最初は、別チャンネルでいなきゃいけないって思ってたんです。でも、ν[NEU]を再開したとき、ファンに「おかえり」って言われたのがすごいショックで。俺はずっといたんだよ、お前が離れてっただけだろって思ったんです。けど、その気持ちもわかるなって。だって、ν[NEU]のmitsuじゃなかったんで。ただ、“みんなが待ってるmitsu”の頃からは月日が経ってるから今の自分は違うものになってるし、どうするべきかすごく悩みました。そのタイミングで、ソロで「水深」っていうMVを出したんです。「水深」は、精神性の乖離というか、別の自分みたいなものが重くなっていることを書けたんですね。それをν[NEU]の活動中に出すことができた。“俺が今まで抱えたネガティヴとかしんどいものを表現していくことで、俺はアーティストになれるんだ”って思って。それまでは自分のことを“ヴォーカリスト”って思ってたんですけど、そのときから“アーティスト”になれた。チャンネルがバチッとあって、“今のmitsuが歌うν[NEU]”になったんですよ。そこからは超生きやすくなりました。だからν[NEU]が終わった今も、ソロでν[NEU]の曲を歌ってます。ν[NEU]のメンバーが音楽じゃない道でν[NEU]を守ってくれてるんで、じゃあ俺は音楽の道で「ν[NEU]ていうバンドがあったよ」ってことを言いたい。なんか、合体して太くなったみたいな感じですね。
────最新曲「水深」のお話が出たので、曲についてもお聞きします。mitsuさんが歌詞を書かれる際に意識されていることはなんでしょうか?
mitsu:作詞をするときのことを“潜る”って言っているんですよ。作詞だけじゃなく、ものを作るときには、自分のなかに深く潜っていく感覚なんです。だから苦しいんです。正直言うと好きじゃないです(笑)。どれだけ深く潜れたかっていうのが、そのまま作品に反映されるんですよ。コンディションが良くないときに潜ろうとしても、やっぱり浅瀬なんですよね。10年やってきて歌わなくなった曲もあるんですけど、“なんか浅かったな”“本当の真理まで潜ってなかったな”みたいな曲で。どれだけ自分に素直になれるか、自分の心臓の近くに転がってる石を取ってこれるかってことなんですよね。そのためには、メンタルも肉体も鍛錬だなと思って、それに耐えられるようにトレーニングしてます。
────自然と“潜ろう”というモードになれるんですか? それとも、潜るために努力するのでしょうか?
mitsu:どっちもありますね。“ここまでに出したい”みたいな期間の縛りが理由にはなるんですよ。ただ、スタッフによく言ってるのは、「間に合わせる気はない」って。申し訳ないなとは思うんですけど、間に合わせるために作ったものは短命だと思ってるんで。俺が死んでも作品は残るから、この1ヵ月や2ヵ月を間に合わせるか間に合わせないかなんて小さい話はしてないって。納得いかない作品は残したくない。
────これまでリリースされてきたなかで、印象深い楽曲を教えてください。
mitsu:最初の「For Myself」(1st Single「For Myself / It’s So Easy」収録)。これは遺書だと思って書いたので。あとは最新曲の「水深」。この2つに共通してるのは、俺自身の精神性をそのまま言葉にしたというところです。普段なら隠すような部分、“潜った心臓の近くに落ちてたもの”なので。ネガティヴなワードだったりすると、それを出すことによってリスナーも不安にさせちゃうかなとか思ってたんですけど、出してみたら、その不安こそが誰かの不安を取り除けるんだってことに気づきましたね。