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武瑠×命依(MAMA.)×Bikky(CHAQLA.)鼎談敢行、6月28日の3マンに向けて練られる前代未聞のプランと3者が交わる明確な動機。「このカルチャーはもう1回いける」

武瑠とMAMA.とCHAQLA.が3マンライヴを行うことが発表されたときどう感じただろうか。驚きや喜び以上に付き纏ったのは“何故?“という疑問符だったようにも思う。日本武道館ワンマンも経験している武瑠と若手バンドと呼ばれるMAMA.、CHAQLA.には音楽キャリア以上に計り知れない距離がある。
それでも武瑠は“同期のような感覚”と語る。
何故この3者が交わったのかを武瑠、命依、Bikkyに語ってもらった。
そしてその理由は、意外なほどに意外じゃなかった。

◆     ◆     ◆

このジャンルに可能性はある



────6月28日に渋谷チェルシーホテルで“武瑠×MAMA.×CHAQLA. 3MAN LIVE 「FXXK YOUR FEELINGS」”が開催されることになった経緯を武瑠さんとMAMA. 命依さん、CHAQLA. Bikkyさんのお三方に伺っていきたいんですけど、今回はその公演に向けてリリースされるトリプルコラボ楽曲の制作現場でのインタビューです。なんでも普通のコラボの概念ではないそうですね。

武瑠:今、トラックと声を別にしてリミックスって形にするのか、それとも違う形にするのかってところを考えてる最中です。同じ曲なのに3バージョンあるんですよ。武瑠ver. / MAMA.ver. /CHAQLA.ver.っていう感じで。それぞれのMVがあって、その世界線をVJでスイッチングしていくイメージでコラボ曲を作っている段階です。自在に世界が入り乱れることに挑戦してます。

────ちょっと他で聞いたことがないアプローチで混乱してます。

武瑠:誰もやったことのないものに挑戦したいんですよ。そっちのほうが面白いんで。

命依:そうですね。でも、だいぶ見えてきたかなっていうところです。

武瑠:思いついたのは自分なんですけど、こんなに言葉で説明しづらいのも今までなかったなってくらい複雑です(笑)。3曲のVJをミックスしているんだけど、全員同じテンポと同じコードで構成しているからどこでハメ変えても成立するグランドラインみたいなイメージ。俺も自分で何言ってるかわからない(笑)。言葉より絵とかのほうが説明しやすそう。

命依:俺もメンバーに上手に説明できなくて“とりあえず任せて!”って言ってます(笑)。

武瑠:そうだよね(笑)。公演前には3曲を混ぜたフュージョンミックスを配信リリースして、その後に独立した3曲も出していくつもりです。

────あ、逆なんですね。先にごちゃ混ぜにしたやつが出るんですね。

武瑠:そうやって逆算したくなるように掻き立てられるもののほうが新しいかなって思ってます。

────そもそもこの意外……どころか想像できなさ過ぎる3マンの発起人はどなたなんでしょうか?

武瑠:一応、俺なんですけど、なんか地続きになってると思うんです。そもそも去年の9月に“KHIMAIRA”を観に行ったときのMAMA.とCHAQLA.から、当時俺がV系にいたときにやりたかったものを感じたんですよ。時間差でこんなバンドが現れたのかって感じで衝撃だった。俺の世代って縦ノリとかラップって全然支持されなかったし、the GazettE以降ラップとかも定着しなかったんだけど、この2バンドはガンガンラップも取り入れてるし、自分たちのスタイルを確立しててそこにすごく刺激をもらいましたね。SuGの最後のほうってシーンとしては、メンヘラとか和風な感じが盛り上がっていて、ミクスチャーってちょっとV系に居場所がなくなってたんですよね。それはViViDとかとも当時話ししていたんですけど。

▲武瑠

────武瑠さん自身がヴィジュアル系に回帰したいって思ったいくつかの動機の中にMAMA.とCHAQLA.がいたっていうのは本邦初公開の話ですよ。

Bikky:ね~信じられなくないですか? 武瑠さんと一緒にやれるのはめっちゃ嬉しいけど、ウチのマネージャーは“武瑠さんになんのメリットもないのにいいんですかね……”ってすごい不安そうでしたよ(笑)。

武瑠:そんなことないよ!

────読者向けに説明すると、“KHIMAIRA”は筆者の主催ライヴなんですけど、18年超のキャリアを誇る武瑠さんが最若手層の彼らにピンと来たことは嬉しさ以上にまだ驚きが勝つんですよ。

武瑠:MAMA.は命依ちゃんがダークさにプラスしてUSラッパーとかの雰囲気も入ってるし、CHAQLA.もそう。ようやくセンスのあるミクスチャーをできるバンドが生まれてきたんだなって思わされてむしろ同期みたいな感覚で一緒にやれるんじゃないかって思ったんです。Bikkyは“KHIMAIRA”の前に出会ってたんですけどね。

Bikky:HIROTO(Alice Nine.)さんと飲んでるときに武瑠さんがいらしてそこで出会ってますね。俺のお父さんは写真家なんですけど、昔に武瑠さんを撮ったことがあるって話から一気に仲良くさせてもらいました。それでそのままスタジオに入ったんですよね。

────ん? どういうことです?

Bikky:しばらく飲んでたら“バイブスが合うな!”って感じになって、飲むのを中断してそこからいきなりスタジオに入ったんですよ。

────めちゃくちゃミュージシャンですね!(笑)

Bikky:それで去年11月の武瑠さんのワンマンの後にも、好き勝手に楽器を持ってステージに飛び入りしていいセッションバーみたいなところに一緒に行って、そこに命依ちゃんを誘ったんです。

命依:いや、その前にHIROTOさんと飲んでるときも俺いたよ(笑)。

Bikky:あれ? そうだっけ? お酒のせいで記憶が曖昧です(笑)。

武瑠:あ、そっか! 俺もそこで出会ってるんだ! 命依ちゃんに偶然道で会ったときがあって、それが出会いだと思ってた。

命依:それは出会った後ですね。道でバッタリ武瑠さんと会って、それでそのまま飲みに行ったんです。

▲命依(MAMA.)

────ノリの波長もスイングしていると。とは言え、武瑠さんはシーンにおいて時代を築いた存在であることは間違いないわけで。そんな人から3マンに誘われるっていうのはどんな感覚なんですか?

Bikky:これ、もともとはノリで一緒に曲作ろうってところから始まってるんですよ。それで、じゃあ一度ライヴ観てくださいってことで“KHIMAIRA”にお誘いしたんです。そこからどんどん進んでいった感じ。

命依:ライヴ観てもらってそのうえで“なんか一緒にやろうよ”って声かけていただいたんで、やっぱりすごい嬉しかったです。なんかね、一緒にやろうよって言ってくる人って結局あんまり実現しないけど……。

武瑠・Bikky:たしかに。

命依:でも、こういうスピード感で声かけてくださったのも嬉しいし、ヴィジュアル系で一緒に曲を作ることってあんまりないなと思ったんで、そこに惹かれましたね。武瑠さんの行動力ハンパないなってのも感じました。

Bikky:いないよね、こんな人。

武瑠:“KHIMAIRA”もバンドもそう思わせてくれたんで、自然とって感じです。あと俺もこの数年ありとあらゆるフューチャリングをやってきてるから、普通のコラボレーションじゃテンションが上がらないんですよ。HIP HOPとかだとフューチャリングって当たり前のことだけど、バンドだとなかなかそうもいかないじゃないですか。それを実現させるためにはトラックを同じにするしかないわけで。

────そこまでしようと思わせるものが彼らにあったと。

武瑠:そうですね。“KHIMAIRA”って言葉の語源と似るんですけど、それぞれを合成して全く異なる形になれると思いました。今回のコラボ曲のアイデアも思いついちゃったものの“普通の人には通じないだろうな……”って思ってたけど、MAMA.とCHAQLA.には伝わるんじゃないかなって。

────命依さんとBikkyさんは現状どのくらい噛み砕けてます?

命依:新しすぎて完成するまで想像できないところもあります。

Bikky:そうだね。でも、フューチャリングはずっとやってみたかったんです。すごいのができそうだなと思います。すごいボヤッとした発言ではあるんですけど(笑)。

────しかし何故この3組なのかというクエスチョンもまだあると思うのですが、武瑠さんのどんな部分と共鳴できたのかも訊きたいです。特に命依さんは“先輩FXXK”な人でもあるじゃないですか?

Bikky:あはははは!

武瑠:そうなの?

命依:いやいや! 昔からKERAで武瑠さんを見てて、オシャレだし人と違うことをやっているなと思ってたんですよ……えーっと質問なんでしたっけ?

────(笑)。今回、とりわけ武瑠さんとは意気投合しているじゃないですか。

命依:安心感ですかね。失敗しない安心感ってことじゃなくて、武瑠さんと一緒だったらただただ面白いものが作れるだろうなって安心感。俺はヴォーカリスト同士のフューチャリングだと思ってたんですけど、そうじゃなくてバンドごと交わるって言ってくれて斬新で初めての発想だなと思いました。最初は言ってることマジで意味わからなかったですけど(笑)。

武瑠:だよね(笑)。

命依:でも、それって新しい証拠でもあるし。うん、武瑠さんのセンスがすごいなと思うし共感できてるのがデカいですね。

Bikky:俺も直感的な人間なんですけど、プライベートが面白い人ってバンドもイケてると思う。武瑠さんはプライベートでもセンスを感じますし、さっきのセッションバーとか急にスタジオ入っちゃうこととかお酒の飲み方がめちゃくちゃ面白かったんですよね。HIROTOさんなんかノリで楽器買いに行こうとしてましたからね(笑)。

武瑠:ヤバすぎる(笑)。街移動して別のスタジオ行ったほうが早いのにね。

Bikky:CHAQLA.っていうバンド自体がそういう遊び心を大切にしたいバンドだし、飲んで喋ってても音楽やアート、未来についてアツい話ができる人のことが好きで信頼してるんです。だから武瑠さんと一緒に作品を作ってきたいって思いましたね。

武瑠:あ、その流れで言うと俺も信用ポイントがあって。よく楽屋挨拶とか来てくださる方たちが“武瑠くんのセンスいいですよね。どういうところで服買ってるんですか?とか言ってくれるんだけど、結局調べなかったり実際は行動しない人が多いんですよ。でも、俺がオススメしたファッション変態パーティみたいなのにBikkyはすぐ行ってたんです。そこのアンテナとか行動力はアーティストとして信用できますね。だから本当にキャリアとか関係ないと思う。

────東京キネマ倶楽部で開催しているイベントですよね。

武瑠:あ、そうそう。そうです。

Bikky:「デパートメントH」ですね。

武瑠:あ、ちゃんと行くんだ!って思った記憶がありますね。

────精神性の部分でマッチしてるんですね。

命依:精神性はライヴにも出ると思いますよ。

武瑠:観ると判るよね。あ、これしか掘ってないんだなぁとかその人のバックボーンの深さが。俺らの世代だったらMUCC、メリー、蜉蝣とかしか聴いてないんだろうなってバンドがたくさんいたし。

────じゃあMUCC、メリー、蜉蝣は何を聴いてあのスタイルになったのかまでちゃんと掘ろうぜってことですよね。

武瑠:まさにそう。でも、その辺りの売れてるバンドだけを聴いてたほうが流行る時代がきちゃってたんですよ。少し前まで。そっちのほうが近道だけど、結局それって模倣の域を出ないからホンモノには追いつけないじゃないですか。そんなこと誰でもわかるはずなのに、あまりに先輩方が偉大すぎたが故に、新しいものを生み出そうってならない当時のヴィジュアル系シーンにコンプレックスというか、挫折を感じちゃってたんですよね。それはSuGだけじゃなくて同期のViViDもそうだったと思う。新しいことをやるには他のジャンルに飛び出ていくしかないようなムードがあった。俺の直系の先輩だとMIYAVIさんや[ kei ]くんの展開にもそう感じました。

────でも、なかなか他のジャンルに出ていくのも難しい時代だった。

武瑠:うん、言葉を選ばずに言うと差別されてたなって思います。SuGとViViDはその差別の最前線にいた気がする。音楽性はこっちに来ていいけど、でもあなたたちヴィジュアル系ですよね?って。

────それもコンプレックスになっていたわけですね。

武瑠:今にして思うと自分でもちょっと変になっちゃってたとは思うけど、本当にそれぐらい難しい時代でしたね。

────しかし、武瑠さんはSNSの発信等でもヴィジュアル系に回帰している感が今すごく強いですよね?

武瑠:俺のなかではここ3年ぐらい海外公演が増えたことが大きいんです。ヴィジュアル系とK-POP、最近で言うとXGとかが全部混ざって“アジア人がメイクしている音楽”って捉えられ方をされている実感があったんですよ。なんかそっちのほうが自由だなって思っちゃって。日本だとめっちゃ近いことやっていても細分化されて壁ができるけど、その壁いらないなって思うんです。実際、XGとかHANAのやってることってカルチャー的にはヴィジュアル系に近いし。

────MVやアートワークの世界観も本来ヴィジュアル系がこれをやるべきなのでは?と思わされる圧倒的な作り込み方とディテールがありますよね。

武瑠:そうなんですよね。なんで俺らはこれをやれなかったんだよ!って気持ちもあります。その悔しさと、海外から見たときにメイクをしたアジア人っていう大雑把なカテゴライズが新鮮で、それなら今こそヴィジュアル系をやってみたいって思えましたね。そこにMAMA.とCHAQLA.みたいな若いバンドがいるのもこのジャンルに可能性はあるなって感じるし。

命依:ヴィジュアル系って“世界観”ですよね。逆に言うと“世界観”がヴィジュアル系。あと歴史が長くなってきた分、これってヴィジュアル系っぽくない?みたいな比喩もできるようになってきて、言ってしまえば幅が広がってるはずなんですよね。ただ、今のシーンでそれをみんなまだ上手く表現しきれてないのかなとも思います。ずっと2000年代のバンドに憧れてるだけの人が多いと思う。令和というか真新しいことをやれていない。だから、XGとかBLACKPINKとかああいう方がヴィジュアル系を感じてしまうんですよね。武瑠さんもCHAQLA.も俺たちもやっている音楽は違うけど、作品を作ってる心が同じなんだと思う。だからヒビキ(Bikky)と武瑠さんのセンスがハマったり、俺と武瑠さんの好きなものが近かったりするのに、ちゃんと作品はみんな系統が違ってる。

▲CHAQLA.

────模倣じゃないからってことですね。

命依:うん、そう思いますよ。

Bikky:メイクとかファッションとかアートワークとかどれだけ好き放題やってもそれこそが価値になるのがヴィジュアル系だと思うんですよ。うちのメンバーは自分も含めてワールドツアーをしたいし、ロックフェスとかにもガンガン出ていきたいと思ってるんですけど、それでもヴィジュアル系を名乗り続けるのはそういう理由。あと、このジャンルに愛があるんですよね、結局。ジャンルってロックとかレゲエとか音楽性で分けるもののなかで、見た目を武器にしているジャンルなんて他にないじゃないですか? それが面白いと感じてるから続けてるんだと思います。だから今回みたいなコラボも実はヴィジュアル系だからこそなんじゃないかな。でも、こういう面白い試みや面白いバンドはもっともっと増えてほしいです。

命依:それはそうだね。でも、自分たちのやりたいことを貫こうって思ったら周りは関係ないなとも思います。

Bikky:ジャンルに愛があるからこそジャンル関係なく闘える時代が来てる気がする。

命依:だから対バンしても昔は“このバンドとは合わない”とか考えてたけど、どんどんどうでもよくなってきた。相手によってこっちが変わることなんてないし。

武瑠:それも含め今回の3マンは楽しみですね。ソロって圧倒的に不利なんですけど、ソロになったからフューチャリングもできるようになったし、音楽性もより自由になれた部分がありますしね。ジャンルも国も飛び越えて自分が経験したことをヴィジュアル系って地元に持ち帰ってきたときにどうなるんだろうって感覚でいます。

────今回の話からは逸れるんですけど、4月にソロミュージシャンによる3マン“咆哮SOLOIST”もあったじゃないですか? ソロで括るっていう観点からあのイベントを思い返して意図した形にはなりました?

武瑠:あー、めっちゃ手応えありました。あれもヴィジュアル系特有の音のジャンルじゃない結束感を感じられましたね。Verde/ Shouさんにmitsuくんと俺っていう同じ時代に活動していたバンドのヴォーカルのソロっていうドラマも見えたし、意図が伝わってるなって思いました。そこはファンにも感謝ですね。だってよくよく考えると今回の3組よりも音楽性がかけ離れてると思うんですよ。“咆哮SOLOIST”は人間ドラマのイベントだなって自分でも感じました。

────そう考えると今回の“武瑠×MAMA.×CHAQLA. 3MAN LIVE 「FXXK YOUR FEELINGS」”は音楽のドラマなんでしょうね。

武瑠:うん。あとは交わるカルチャーでしょうね。

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