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【201号室】ライブレポート◆<201号室 2周年記念 3rd ONEMAN LIVE『天上の果実』>2025年5月16日(金)渋谷REX◆目が眩むような"愛”のレゾンデートルを見つけるまで、彼等は人の生きる意味を求め続ける。

 201号室のバンド結成2周年記念 3rd ONEMAN LIVEならびに現体制ラスト公演である『天上の果実』が5月16日に渋谷REXにて開催された。

 幻想的なピアノアレンジで飾られた「天上の果実」とともに幕が上がっていく。人工的な白光に照らされ、数多の祈りを胸に全身全霊で謳うKEN(Gt&Vo)からは、瞬きすら許されないと感じるほど目を離すことが出来なかった。
 

 そのまま、KENは己の存在意義を示すように静かに始まりを告げた。

 まず、友好的でどこか無機質な質疑の映像から徐々に歪んだ狂気を孕み出す「アクター」を披露。攻撃的なエッジのあるメロディが人間の被るペルソナを無理矢理引き剥がされる感触に蝕まれる恐怖と、もっと自分の醜く穢れた本性を暴いて欲しいというアンビバレンスな感情を一気に掻き立てた。
 そのまま、「頭ぐちゃぐちゃにして俺の地獄で踊っていてくれ!」と力強く高揚し、旋風を巻き起こす地獄の舞踏会「デスコ」から、シンナ(Ba.)とRyuta(Dr.)のリズム隊の息が重なった轟音とともに怒濤のクラップとヘッドバンキングが吹き乱れる「刃渡り30mm」と容赦無く脳髄と情緒に揺さぶりをかけていく。

 静寂の中で心火を燃やすように披露した「小鳥ノヤウニ幸セデス」では、この日のために誂えた「天上の果実」の衣装を纏ったHiroto(Gt.)が粛々と生と“愛”の飢餓を叙情的に爪弾き、圧倒的な異彩を放つ。

 「インカントマーダー」では激情に満ち溢れた“愛”をダイナミックに発露。その豪快な“愛”に触れ、観客が全力で応えるために「デスコII」で更に熱気が一体化する景色はまさに壮観かつ絶景だ。

 さらにここからは、雰囲気が一変し、ロマネスクな情感が滴る「クロノフォビア」「Lovelet」とネクタイを投げ捨て、空想的だがどこか現実的で生々しい“危険な男”に変貌したKENが手を伸ばす人々を蠱惑的に手招く。「愛の行方」では様々な思惑が入り混じる黄色いカーネーションを連想させる照明に染まったステージで、Ryutaの磨き抜かれたビートとメロディによってより屈折したセンティメントを表現した。


 後半戦、「男ー!バンギャに日和ってんじゃねえぞ!!」「いくぞバンギャ!もっと!!」とKENが果敢に観客を鼓舞していく「BlackMagic」。楽器隊が円を描くように身を寄せ合い、KENの熾烈な音を懸命に支える姿に四人の築き上げてきた信頼が垣間見える。

 変質した呪詛を吐き散らしては怒号のようなコールアンドレスポンスで狂い咲く「最悪」を経て、二年間をともに駆け抜けてきた「破滅のポエム」でペシミスティックな感情が爆発。多くの後悔の中で積み重ねてきたヘヴィなサウンドが観客を最高潮へと扇動し、逆境を力に変える強靭さが宿ったことにより二年前とは異なる奥深さが表れていた。

 本公演のタイトルに掲げている表題曲「天上の果実」では、人が持つ弱さや脆さ、神という存在に対する嘆きと同時に“俺達はここにいる”“このままずっとこの瞬間だけが続けばいいのに”という切なる願いがより強くアグレッシブな生への執念へと形を変え、惜しみなく歓声と高揚感を煽っていく。
 生きる意味を頭で考えるよりも今ここで心のままに感じろと生命を懸けて“音楽”でメッセージを届ける姿が印象に残る。彼等がこのライブで伝えたかった“愛”の存在意味がいつまでも心に鳴り響き、深い余韻に浸ったまま本編を締め括った。
 

 アンコールで、背景のバックモニターに過去の集合写真がスライドショーで映し出される「灰色の夢」を披露。彼等がどんな想いで舞台に立ってきたのか。少なくとも誰よりも音楽に真心を尽くしてきたかが痛いくらいに伝わる。今、ステージに立っている彼等の追いかけた夢は決して灰色なだけではなかったと信じたい。

 MCでは「意地張って音楽やってるから嘘つかずに精一杯ライブに残したつもりです。」と述べるKEN。   
 KENは今明るい未来の話を語るのは脚色でしかないこと、この舞台でRyutaが201号室のメンバーではなくなることを少しづつ語っていく。
 「どんなことがあっても、これから先もRyutaのことを本当の兄弟のように想ってる。」
 かつて、自分を追い詰めたことがあるというRyutaに向かってKENは誠心誠意を込めて叫ぶ。

「死なないで!ブロイラー!」
 
 そして、ラストを飾る「ブロイラー」は希死念慮を抱える人々へ贈る真っ直ぐな希望の歌だ。“ただ「死なないで」と叫ぶだけのバカっぽい歌”と自嘲しながらも、自分も“死にたい”と願ったことがある人間だからこそ、決して一人じゃないと目の前にいる“死にたい”人達の魂を掬い上げていく。お互いにどんなに傷だらけでもいいから“死にたい”夜を一緒に越えていこうとするただひたむきな“生きていく”存在理由を刻みつけた。

 Ryutaはこの舞台を境に共に戦っていく"仲間”ではなく、心から理解し合えた”家族"もとい"友達"としてこれからを生きていくのだろう。肩を強く組み合う四人の姿からはそんな希望のある未来が窺えた。
 
 人は生きる限り、絶望し、“愛”に飢え、死に救いを求める瞬間があるかもしれない。
 人の本質や過去は決して変えることは出来ない。
 それでも、人の心を動かせるのは人の心が生み出す”愛”の強さだけだ。201号室の音楽には翻弄される男女愛の果てに、殺伐とした世界で必死に生きる総ての人々に対する確かな“愛”の強さが存在する。

 この先も、彼等は地獄に満ちた楽園で“愛”の存在理由を見つけるために歩み続けていく。
 やがて、音楽の垣根を越え、時代を作り、多くの人々から愛し愛され、生きる力を与える存在として世界から祝福されるその瞬間までずっと見届けたい。

TEXT:成田佳清

SET LIST

1.SE 天上の果実
2.アクター
3.もしも君が僕と出会い話合うなら
4.デスコ
5.刃渡り30mm
6.小鳥ノヤウニ幸セデス
7.インカントマーダー
8.デスコⅡ
9.クロノフォビア
10.Lovelet
11.愛の行方
12.Black Magic
13.最悪
14.破滅のポエム
15.天使の果実
EN
16.灰色の夢
17.ブロイラー


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201号室 Official Site
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