【夜光蟲】ライヴレポート<2nd ONEMAN LIVE 「路地裏より愛を込めて 下」>2025.05.24(sat)池袋EDGE

狂った調律のオルガンが不気味な『NOCTURNUS』、八雲とTaizoの掛け合いやHIP-HOP的な縦ノリで手バンをするサビがインパクトを残す楽曲は、オーディエンスも含めてライヴ感が一気に増した印象を抱いた。
“聞こえないの?ドブネズミの声”“もう彼の声は聞こえなくなっちゃった”―――彼の深く暗い闇が、夜に怯える少女をじわじわと追い詰め呑み込んでいく。
間髪入れず『sweetie』、「いくよ、3.2.1!」の声を合図にフロア全体が一斉にタオルを回し、それに合わせてTaizoが軽快なステップを踏む。
ピンクの照明も相まって一瞬アッパーな盛り上げ曲だと感じてしまいそうになるが(もちろん、楽曲の役割としてはそれも正解)、どことなく切ないサビのメロディーに乗せて歌われているのは“どうか不幸なままでいて”“他人の不幸はそう蜜の味”―――『sweetie』、皮肉を込めたタイトルに唸らされた。
曲が終わり沸き起こったメンバーコールをまだまだとばかりに煽ると、MCはチケット代の話題に。
夜光蟲のワンマン公演の前売りチケットは2500円(D代別)、このご時世ではまず考えられない価格に設定されている。そのうえ、学生チケット1000円(D代別)という“さすがに採算度外視すぎるのでは?”と心配になってしまうものまで用意されているのだ。その理由について、八雲が説明をしてくれた。
「僕がライヴハウスに足を運んでいた頃は、ライヴに行くことのハードルがもっと低かった。今は、“今日ちょっと時間があるから行こうかな!”と思える場所がなかなか無いじゃないですか。ライヴだけではなく、映画館もチケット代が上がりましたよね。本来、映画もライヴも特別な体験です。でも、映画は既に片手サイズの端末に収まって、好きな時に再生も一時停止もできるものに変わってしまった。音楽も、『CDが売れない』と言い出してから何年経ちました?だから、夜光蟲は“ライヴハウスでしか体験できないものを、1人でも多くの方に足を運びやすい環境で提供したい”という想いでこのチケット代を設定しました。」
あらゆるものの物価が高騰する厳しい世情でも、ライヴハウスでしか得られない感動を、衝撃を、できる限り多くの人に体感してもらいたい。熱い想いの込もった言葉に、大きな拍手が送られた。


そして「本公演の路地裏同盟メンバーを紹介します。」と、夜光蟲仕様のバスドラムヘッドをお手製で作成し、トリプルスネアのセッティングを組み、万全の体制でサポートに臨んでくれたドラマー・Johannesを紹介。
八雲が「夜光蟲にこんなにピッタリな人、居ます?」と口にするほど、共にシーンを駆け抜けてきた盟友は音もヴィジュアルも夜光蟲の世界観にマッチしていた。
楽屋で衣装のジャケットを脱いでハーネスのみで過ごしていた八雲と下半身のデザインがきわどい衣装のJohannesが(露出度的に)結構良いコンビだったと話して爆笑を誘うと、今度はTaizoがギターをかき鳴らしながら「こんにちは。」と穏やかに話し始める。
「今の話を聞いて“俺もちょっと露出したほうがいいのかな?”と思ったけど、メンバーが2人とも露出しているのはちょっとくどいかな(笑)。」と笑い、八雲がステージでジャケットを脱ぐことはあるのかなど衣装の方向性の話題で会場を沸かせていたが、夜光蟲の表現の大切な要素のひとつであるヴィジュアルイメージの進化にも注目していきたいと思う。
「今日初めて夜光蟲を観に来て、まだどういう感じか様子見している方もいるかもしれないですが、ヴィジュアル系のライヴとして声も出してほしいし、ジャンプやモッシュやヘドバンも、それぞれ好きなように。しっかりと責任をもって楽しんでもらいたいと思います。・・・そう言って、今から全くヴィジュアル系ではないことをやります。ペンライト(狂愛灯)を持っている方は、一緒に光らせてください。ここからまだまだ楽しんでいきましょう。」
タイトルコールされたのは『愛に狂って』。八雲とTaizoの振り付けに倣い、フロア一面に青い光がキラキラと揺れる。80年代歌謡を彷彿とさせるメロディーと哀愁漂うシンセサウンドに合わせ、無表情で狂愛灯を振る2人の姿はどことなくシュール(当時の歌番組の映像を確認すると、実際にほぼ無表情で無機質に振り付けを踊るアイドルも存在するのがまた面白い)。
“愛に狂って狂って「仕方がないの」と笑っていた”―――一方的な愛情は、やがて憎しみへと変わる。翳りのある瞳で青い光を見つめその歪んだ愛憎を歌い上げる八雲と、緻密なギターソロをきっちり聴かせて魅せるTaizo。
アウトロでは再びみんなで振り付けを踊り、郷愁感のあるメロディーが繊細で美しい『psyche』へ。