【シェリー】ライヴレポート<単独公演『煤黙ノ集ゐ』>2025年6月5日(木)新宿club SCIENCE

昨年12月15日に始動したシェリーが始動半年を記念した単独公演『煤黙ノ集ゐ』を6月5日(木)に新宿club SCIENCEにて催した。

このタイトルには本人たちの活動に対する熱い気持ちが込められている。
始動までの準備期間中、信じていた仲間に裏切られた過去との決別に大きく由来する。
煤に塗れてどれだけ汚れても自分自身のこの足で立ってみせる。そして多くは語らず、黙り耐え抜き、そこに集まった有志のみがその真実を知る。
昨年12月15日の始動時に眞緒(Gt)が加入し、正式始動するまでの間に起こった過去の出来事を全てリセットし、これからは本当の意味で自分たちの為に、そして心から応援してもらえるファンの方々の為に活動していくことを誓う、そんな決意や想いが込められた単独公演だ。
開場と同時に儚い音色のアコーディオンとそのメロディに包まれた新宿club SCIENCEは一気にシェリーの世界観に包まれた。
開演前場内アナウンスも古いラジオから流れてきたような哀愁感。
一歩会場へ入ったらシェリーの世界。
どこまでも抜かりがない。
そうしているうちに開演時間となり、ミュゼットに乗せて本公演のあらすじが語られ始めた。
ここから一つの物語が始まるのである。
語りが終わると本公演用に制作されたSEに乗せて一人一人メンバーが登場。

砂嵐の後、一瞬の沈黙と共に勢いよく鳴らされたハイハットから『売女の日記』がスタートする。
イントロで発された月見夜零(Vo)の"ようこそ!煤黙ノ集ゐへ!"の一言で会場が一体となり本単独公演の口火を切った。
始動からの半年間で紡いだ全20曲のシェリーというバンドが作る一つのストーリーがここからついに始まる。
勢いを乗せたまま哀愁歌謡感が漂うシャッフルビートで続くのは『貴方ト私ト赤イ日付』。
時に激しく時にメロウに語りかけるような楽曲。

このまま間髪入れず4カウントと共にジャキジャキのギターリフで『シアン』がスタート。
初の主催公演が開催された4/30にMVが発表されたのが記憶に新しい。
煤煙の裏表題曲とでも評そうか、MVからも非常に強いメッセージ性を感じた楽曲である。
そして続くのは初MV作品となったシェリーを代表する楽曲『淪落』だ。
MVでも零以外のメンバーがまだ固定されておらず眞緒も当時はサポートメンバー扱いであった。この後の始動でメンバーとなるのである。
『やってきました!新宿サイエンス!』高らかに零が声をあげたその後に続くのは
"始動してからこの半年間も色々とありました"というこの単独公演への海よりも深い想いの丈であった。
迷いや不安だらけの中で自分たちの出来ることは一体何なのか、模索の日々ではあるが、辿りついた答え、シェリーが突き詰めていくべきは信念を持った音楽を届けることである。
そういったこれまでの想いをぶつけ、オーディエンスへレスポンスを求め、歓声を受け取ったところで次の楽曲が始まる。
始まったのは、眞緒が高校生の頃に作曲し、かつて組んでいたバンドでも演奏されてきたという『Insult boogie』。
ジャジーなギターリフとゴリゴリのうねるようなウォーキングベース。
シェリーの楽曲にはベーシストの魅せ所も多い。

アウトロから間髪入れずジャジーなドラムのタム回しが繰り出され、『蜘蛛と蝶』が始まる。
本楽曲は5ヶ月連続配信リリースのラストで配信されたシェリーの中では比較的新しめの楽曲。
このセクションでは哀愁歌謡ロックをコンセプトとして打ち出す彼らの世界観を一気に魅せていくセットリスト。
ホーンセクションが光るゴージャスな雰囲気から一点、新たに大人の空気を作り、始まったのは『梅島ブルース』。
ロカビリー、ブルースからも影響を受けた眞緒の泣きのギターに零のハスキーな声が重なる。
第2セクションを締め括るのは初披露の完全新曲『刹那あいろにぃ』。
これぞシェリーというような繰り返しフレーズと畳みかける歌謡メロ。
このワンマンで初めてお披露目した楽曲ですという言葉に喜びの拍手が起こる。まだまだ始まったばかりのバンドは特に次々に新しいニュースを出していきたいもの。
シェリーも5ヶ月連続配信リリースに名古屋公演、単独公演などアクティブな情報発信を行う。
溢れ出る想いが冷めやらぬまま、零の一言でバンドが音をかき鳴らす。
-まだまだ楽しんで来れますか?
狂った愛をテーマに無限のストーキングを繰り返していく女を歌った『トキメキノイロォゼ』から第3セクションは始まった。
思う存分狂いステージで暴れ回るメンバーたちにオーディエンスも負けじと狂う。

続いては5ヶ月配信リリースの第一弾として発表された『サヨナラ片想い』
シェリーのイメージを全世界に発信する第一歩となった楽曲。ジャジーなフレーズの中に歌謡メロがしっかりと散りばめられた正にヴィジュアル系哀愁歌謡といえるナンバー。
照明がピンスポットを当てた時、零がアカペラで歌い出す。
ここからまた一気にシェリーの世界観を押し出していく。『歪愛』が始まった。
シェリーが正式始動する前から本楽曲は歌われていて、彼らにとっても思い入れのある楽曲である。
次に流れてくるのは『恋文哀歌』だ。
いわば哀愁セクションのハイライトとも言えるこのブロックで一番の見せどころではないだろうか。スローテンポながら重く熱のあるサウンドに載せて零が歌い上げる。アルバム『煤煙』でも一際存在感を放つ楽曲だ。
このブロックを締めくくるのは5ヶ月配信リリースの中でもファンに好評を得た『終炎』だ。
哀愁の中でも悲しさよりも切なさを前に出したミドルロックなバラードナンバーである。
この楽曲で第3ブロックは締めくくられた。
まだまだいけますか!という声と共に激しい光がオーディエンスを照らす。
ついにラストブロックが始まろうとしている。
骨太ベースのリフと刻まれるバスドラが心臓に食い込んでくる。
後半戦1曲目は『ジュリア』からスタート。
激しさの中にしっかりと聴かせる哀愁のサビがシェリーの持ち味。『ジュリア』はまさに言葉どおり哀愁歌謡ロックにふさわしい。
立て続けにドラムロール。零が拡声器を掴むと煽りのボルテージが一気に上がる。
『ボクノ惨劇詩』がスタートする合図と共に上手下手にモッシュが始まった。攻撃的なサウンドで会場内が真っ赤な照明でいっぱいになる。

待った無しで後半戦に火をつけるのは、怪人二十面奏のオフィシャルカバー楽曲『然らば、人生』である。
眞緒がボーカルのマコト氏に直談判し、公認を得たというシェリーにとっては特別な想いのある楽曲である。
基本的に本家の尺やアレンジを守っているが、本家の持つスリリングさを残しつつ、零が出す繊細さと眞緒の極太なギターが加わることでシェリーらしい新たなエッセンスの楽曲に仕上がっている。
本編のラストは『偏執狂精神疾患み⚫︎きチャン』。
始動前から歌われていた本楽曲をラストに決めた意図もメンバー自身がバンドとして次のフィールドへ受け渡すバトンだと読み取れる。

ありがとうございましたという声とともに、これまでの観客たちの感情は溢れ出し、拍手と声援に会場が包まれ、メンバーはステージを後にした。
程なくしてアンコールの声が場内に響く。
その声に呼ばれて、零、眞緒が登場。
ひと息ついたのちに、零からはシェリー立ち上げ当初から始動後までの紆余曲折が語られた。眞緒からも自身のキャリアを通して、ここまでの歩みを振り返り、来場したファンやメンバーへ感謝を綴った。
そして本公演『煤黙ノ集ゐ』の表題とも言える楽曲、また6/7に発売する1st ALBUM『煤煙』のタイトルともなっている『煤煙』からアンコールは始まる。
SNSで公開されていたアルバムダイジェスト動画ではサビ部分のみが公開されていたが、ライブでの演奏は今回が初めてとなる。
独特なギターリフとウォーキングベース、シャッフルドラムと、シェリー2025年上半期の新章らしいサウンドメイクながら、アンダーグラウンド感すらも味方につけたどこか懐かしい、らしいナンバーとなっている。
2曲目は『憂鬱さんはきっと今日の午後に消える。』でアンコールを盛り立てる。
ヘドバン、折りたたみが繰り返されるこれぞ往年のヴィジュアル系といえる楽曲である。
そしてラストは4月15日に配信リリースを行った『五内為ニ裂ク』。
歌謡メロディに載せたメッセージある歌詞でありながら、零の力強い煽りと楽器隊のパワーある演奏でしっかりと観る者を暴れさせ、単独公演グランドフィナーレを迎えた。
始動から半年という節目を迎え、着実にそのイメージを周りに植え付けていくシェリー。
動きを止めることなく、独自の路線をいくこの2人から今後も目を離すことはできないだろう。

SET LIST
SE
1. 売女の日記
2.貴方ト私ト赤イ日付
3.シアン
4.淪落
MC
5. Insult boogie
6. 蜘蛛と蝶
7. 梅島ブルース
8.刹那あいろにゐ
MC
9.トキメキノイロォゼ
10.サヨナラ片想い
11.歪愛
12.恋文哀歌
13. 終炎
MC
14.ジュリア
15ボクノ惨劇詩
16.然らば、人生
17. 偏執狂精神疾患み⚫︎きチャン
EN
18.煤煙
19.憂鬱さんはきっと今日の午後に消える。
20. 五内為二裂ク
関連リンク
◼︎シェリー オフィシャルウェブサイト◼︎
http://sherrypc.com/
◼︎シェリー オフィシャルX◼︎
https://twitter.com/sherry_puramo