【MAMA.】9月30日初ホールワンマンに向けて“第二期MAMA.”を解剖する対談企画の第二弾は命依(Vo)&真(Ba) vs mitsu「MAMA.から血脈みたいなものを感じたんですよ。」

俺はソロだけどファンのことはメンバーだと思ってる
────命依さんがmitsuさんのライヴを観て自分のファンじゃない人にもどう届けていけるか学んだって仰っていたんですけど、実は両者とも興味がない人を無理に振り向かせようとするタイプではないですよね?
mitsu:MAMA.のライヴを見て面白かったのが“あ、俺と違うわ。”じゃなくて。あぁ昔の俺と同じ経験してこうなってるのかなってところだったんですよ。多分どこかでたくさんの人に受け入れてもらいたいとか、愛されたい、みんなに伝わって欲しいって時期が一回あったはずなんです。一回それがあったうえで“あれ?なんでそんなに愛されたかったんだろう。ありのままこの自分を愛してくれる存在が増えれば別にいいじゃん”ってシフトしたんじゃないかな。俺もファンに怒っている時があったんですけど、みんな満足してほしい、だから自分もみんなに愛してほしいみたいな感情だった気もするんです。俺もMAMA.もそういう想いを破り捨てて、脱ぎ捨てて次のステージに向かう経験をしているように思うな。
命依:最初はみんなに愛されたかったんです。生きるのが下手くそだけどなんか分かってほしくて。
mitsu:わかるよ。
命依:けど、誰にも振り向いてもらえなかった。それでちょっと可愛いこと言ってみたり(笑)。くだらないこともしたことがあったけどそれもなんか違う。もどかしくなってきてまたキレて…みたいな。愛されたいがゆえに空回りしてきたのが僕の人生なんですよね。でも人ってそれぞれ脳みそも何もかも違うし、全員に愛されようと思ってもキリがない。だったらありのままの隠してない自分を愛してくれる人を増やした方がいい。全員に愛されるようになったらそれは本当の自分じゃないです。
────MAMA.も独自の色が強いし、mitsuさんなんてましてソロなわけで、心底愛してる方が集うのは必然にも思います。
命依:対バンも他のバンドより盛り上げようとか奇抜なことしなきゃとか思わなくなりましたもん。与えられた時間のワンマンをすればいいんだって。誰かに合わせにいく必要がなくなったって言ったらいいんですかね。
mitsu:それね、俺も最近悩み相談されたバンドマンにその話したんだよね。対バンってつまるところミニワンマンなんだよって。
────ここで伺いたいんですが、活動を続けていくと道中で思考が変わったりしていくものだと思うんですけど、皆さんにとって転換期ってありました?
真:今です。転換期でいうなら最中にいますよ。昨年の秋にドラムがいなくなってからもそうですし、その前からいなくなりそうだなって雰囲気もあったんです、今にして思うと。MAMA.としてこの体制を続けていくのはダメだなって感じた瞬間ぐらいからずっとその期間。4人になってからもずっと個人が試されてるような感覚はありますね。バンドとどう向き合っていくかとか、これからどうしたいのかずっと葛藤してました。ここに来てみんながまとまってきて、ようやくバンドが一つになったって感覚はある。そのタイミングでいろんな先輩方からライヴにお誘いしていただけるようになったり、こうやって対談も実現してきました。だからこそマジでもう一段階上がってかないといけないって意識は強いです。
────真さんはリーダーではないものの、バンド全体を俯瞰する立場じゃないですか?それこそプレーヤーとして以外の部分でもかなり苦心してきたと思うんですけど。
真:MAMA.ってバンドの軸には命依っていう絶対的な存在がいるんですよ。その命依がやりたいことをどう実現していけるか考えているなかで、応えられないんじゃないかって悩みこんでた時期はあります。

▲真
────たとえばmitsuさんはこれまでの経験の中で自信を失ってるなっていう時ってどうやって乗り越えてきました?
mitsu:なんだろうなぁ。俺は多分バンド内で浮いてたポジションで、どっちかっつーとバンドの協調性を壊すタイプだったんですよね。その結果、今ソロなんですけど(笑)。だからどう乗り越えるかってことは言葉にしにくいんだけど、ただ、真くんはどうやって命依くんを生かせるかとか、ついていけるかって考えたわけでしょ?
真:まずそう考えちゃいますね。
mitsu:その時点でバンドってもう成立できてるんじゃないの?俺はヴォーカリストだから余計にそう思うんだけど、ヴォーカルは背中で引っ張らないといけないんですよ。バンドはお客さんに顔を向けてプレイするけど、ヴォーカルってパートだけはお客さんに顔を向けながらメンバーに背中を見られてるんです。だから真くんがついていきたい、応えたいっていう背中を命依くんが見せてる時点でバンドとして間違ってないんだよね。命依くんもヴォーカルの役目を果たしてるってことだし、バンドって全員が絶好調なことなんてないんだからさ、そういうときは周りのメンバーに助けてもらえばいい。それだけだと思うよ。メンバーが命依くんのことを第一に考えてる時点でバンドの方程式としては完璧だと思ってる。
────そこはソロでの大変さも知ってるからこその重みがありますね。
mitsu:そうそう!ソロなんて俺が頑張れなくなったら、活動がなくなるだけだから。補い合えるのがバンドの力。
────なるほど。転換期というテーマでしたが、命依さんはどうですか?
命依:今年に入ってからじゃないですかね。年明けに出した「毒入りミルクはママ.の味」を作ってリリースしたことで道が拓けたかなって思います。もうこのメンバーで一緒にいる時間も長いし、集まってわざわざアツい話することもないけど、年末はみんながなんでMAMA.をやっているかを考えている期間だったんでしょうね。その答え合わせはいまだにしてないんだけど…まぁバンドが続いているのが答えじゃないですか?辞めたい人は多分そういう時期に“実は辞めたかったです”とかすぐ言い出すから。真もそうだけど、悩んでるっていう時点でバンドをやりたいんですよ。具体的にいつっては言わないけど、それからメンバーの足並みが揃ったなっていう瞬間があった。そこで曲の方向性も見直してからはもう大丈夫っす。今、僕はだいぶ元気ですよ。
────年数の長さとは比例しないところもあるんですね。mitsuさんもターニングポイントは多い印象があります。
mitsu:ソロになって10年なんでそりゃあたくさんありますけど、自分の大きかったのは4周年と9周年のリキッドルームかな。4周年のリキッドルームは夢を諦めた日なんですよね。
────ソロ1年目のO-WESTソールドアウトから積み重なっての挑戦でしたよね。
mitsu:最初のO-WESTソールドっていうのもν[NEU]の解散後かつ誕生日だからご祝儀的な部分もあったと思うんです。その後の動員はどんどん下がっていって、でも下がっていく中でも俺にも夢があったんですよ。それは5年でν[NEU]が解散した渋谷公会堂をソロでやること。でも4年目のリキッドルームの結果を見た時に“俺、多分渋公できない”って思ったんです。そこからは大きいキャパシティはできないし、やりたくないなって。それは集客面もだし、大きい会場を抑えるにはいろいろな人との関わりを持つことも必要で、それに疲れちゃったんです。歌うこともそうだし音楽をやること、ソロをやることが楽しくなくなっちゃったんですよ。
────折れてしまうこともあったと。
mitsu:うん。自信も失ってましたね。そのタイミングでコロナ禍になったんだけど、なかば言い訳にするように逃げてました。その間にタトゥーを入れたり人生観が少しづつ変わっていって、もう一回生まれ変わろうと思って臨んだのが去年の9周年のリキッドルーム。自分からすると逃げた場所だったんですよね。逃げた俺への決着をつけようと思ってもう一回リキッドルームを選んだんです。リベンジマッチをしない限り俺は先に進めないなと思って、その結果そこからまた夢が広がったというか。閉じていた蓋が開いたというか。だから自分の分岐点は本当にここ1年なんです。
────この両者の対談だから言うんですけど、私もVISUNAVIの主催ライヴを2年前にリキッドルームでやってるんですけど、0から100までタッチできたわけじゃなくて、良いイベントではあったもののすごく悔しい思いをしたことがあるんですよ。だから mitsuさんとMAMA.に出てもらう9月23日の「KHIMAIRA-the beautiful scum-」は100%全て自分ごとなんで、私にとっても夢が生まれるリベンジの日にしたいんです。超余談ですけど。
mitsu:えー、それ俺初めて聞いた。同じ場所で一緒の経験してるんだ。ちょっと俺もやれることちゃんとやって臨みたい気持ちがさらに強くなりましたね。グッとくるな。俺マジで頑張りますね。俺も1回目で怖い場所になっちゃったんですけど、去年立ってすごく好きな場所になったんで、変えていきましょう。
────頑張ります。それ言うとMAMA.にとっても雪辱の会場ですよね。
mitsu:え、そうなの?
命依:壊さなきゃいけない場所ですね。去年の2月にワンマンで立ってるんですけど、再始動してからの手応えが良かったから無理して挑戦した部分もあったんです。なんとか300人以上は来てくれたんですけど、一発もパンチを当てられなかった気がしますね。俺たち的にもこれじゃ次のステップに進めないよね?ってなった会場なんで9月のKHIMAIRAで久々にリキッドルームの様子を伺ってやろうかなって思ってます。
────なんかこの話を束ねるわけじゃないんですけど、今たまたまリキッドルームっていうトピックが出たけど通過儀礼なのかも知れないですよね。大会場をただ埋めるための挑戦をしてしまうのって。
命依:かもしれない。
mitsu:うん、4年目のリキッドルームと昨年の違いはそこだと俺も思ってるんですよね。
────と、言いながら実は今回MAMA.は9月30日のPLEASURE PLEASURE、mitsuさんも7月18日のO-WESTをソールドアウトさせたいって明言してるんですよね。埋めるために大きい会場にトライするという通過儀礼を経た境地の両者が今あえてこのスタンスが共通してるのがとっても興味深くて。
mitsu:なるほどね。確かに。
命依:ワンマンに限ったことじゃないけど、その会場に入りきれなくなるぐらいの人に観てほしいって気持ちは変わらず持ってるんですよ。あと、今回のワンマンはちゃんとMAMA.にとって今後を占うような特別なワンマンなんだって認識をファン人にも伝えたくてソールドアウトしたいって言ってます。埋まらなかったら次のステップにいけないって考えてたらそれこそ成長してないことになるけど、別にそうでもない。ただ、とはいえ普通のワンマンにする気はまったくないよっていう意思表示です。内容を濃くしてMAMA.の新たな節目に相応しいライヴにします。
────mitsuさんもチケットの残り枚数をカウントして盛り上げていこうとしてますよね。でも、この手法を次やるかって言ったらそうじゃないんだろうなというのも解ります。
mitsu:そうですね。リアリティが浮き彫りになるように枚数もカウントしてます。これ、10年ソロをやれたのって確実に俺自身じゃなくて応援してきてくれたファンのみんなのお陰なんですよ。今は救ってくれた人たちを救いたいし、自分も救われたように誰かを救える歌を歌ってるつもりなんです。そうなった時に救われた時の言葉とか想いってなんだろうって思ったら、それは優しさとかファンタジーじゃなくてリアルだったと気づいたんですよ。俺はそのリアルにすごく魅力を感じてるから今回こういうアプローチをしてます。ファンのみんなと一緒に挑戦していくイメージ。みんなに辿り着かせてもらった10周年だからこそ、俺はソロだけどファンのことはメンバーだと思ってるし、一緒に辿り着きたいですね。
────当たり前ですけど、特別なワンマンなんだよってことですよね。
mitsu:もうありのままの等身大で最新版の自分でいきます。その姿だからこそ救えるものがきっとあるはずですしね。でも、10周年直前で思うんですけど、これってそこに向かっていく過程もすごく大事なんです。そういう意味ではもう素晴らしい道のりになってるなとも思います。思い出した時に誰かの勇気になれる日になるといいですね。年齢を重ねてくると人生を後ろから数えることも増えてきて、あとどれくらいライヴができるんだろうとかも想像するんですよ。マジで(笑)。だったらどんどんピークを超えていきたいじゃないですか?1年目のO-WESTはソールドさせたけど、今でも全然イケてるし、何なら今の方がピークだし、今が青春なんだって伝えたいですね。
────青春って思え返すとおぼろげだからこそ切ないし瑞々しいもんですよね。mitsuが今を青春って呼べるのはいろいろ経験したからこそなんでしょうね。
mitsu:10代の頃の青春って終わりを知らないんですよね。本当はすぐに終わってしまうものなのに。でも、徐々に40歳が見えてきた今、この先いつか終わりが来るって予兆も理解しながら楽しめてるんです。ちゃんと熟してる。俺はもうν[NEU]じゃないけど、新たな青春とか希望はまだあるんだよって伝えてあげるのがこの日のテーマですね。