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グラビティ・六を完全解剖するパーソナルインタビュー実施。新曲「ピンク・ドーナツ」に至った経緯と激変したスタイル────「もう嘘をつきたくない」

グラビティが7月9日にニューシングル「ピンク・ドーナツ」をリリースした。
ビビッドなのにどこかグロテスクであり、これまでのグラビティとは到底同一バンドとは思えぬものだ。
そもそも3月にリリースされた『SERAPH1M』以前からヴィジュアル・サウンド共に大きな変貌を遂げつつあった。
それは一体何故か?
フロントマン=六に思いの丈を曝け出してもらった。
明らかになったのは自身の奥底に眠っていた欲求と、決別ともとれる覚悟だった。



◆     ◆     ◆ 

もう嘘をつきたくない



────グラビティのNEW 1st SINGLE「ピンク・ドーナツ」が7月9日にリリースされました。率直にカッコいい曲ですね。

六:そうですか?ありがとうございます。

────ただ、今回六さんに話を訊きたいと思った理由が別にあって。昨年末から片鱗はあったものの、今年に入ってからグラビティというバンドのベクトルが大幅に変わったじゃないですか?

六:ですね。

────ここまでこの展開について敢えて発言をしてこなかったのはどうしてですか?

六:それは、出していく曲で伝わっていくと思ったからですね。俺、変なこと言っていらん人まで傷つけそうだし(笑)。

────今日はその素直さに乗じてグラビティ・六の現在を解剖させてください。

六:でもあえてこの場で発言すると、もうこのバンドを作った時とじゃ人生観とか好きなものも曲に対する考え方も中身がすっかり変わっちゃいましたね。それを形にしだしたのが「the LI3ght_ON/OFF」という1月にリリースしたベストアルバム『tUrn OFF』に収録されてた唯一の新曲からです。

────今回リリースされる新曲「ピンク・ドーナツ」も17枚目のシングルではあるものの“NEW 1st SINGLE”とされています。グラビティに一体何が起きたのかってことと、どこへ向かっているのかってところが気になるんですよ。これまでのキラキラした路線に蓋をしている印象もあって。

六:ぶっちゃけ、やれなくなってきたに近いです。曲によってはこれまでのグラビティの曲を歌うのが幼稚に思えてしまって今の俺に似合わなくなっちゃった。歌も俺らしくないかもなって思うんです。あとこれは最近気づけたのですが、歌ってる事ももっと歌にすべき事が今ではあるなと思います。そして、今僕が言ってることがピンと来ない人にもこれは次に出す曲でわかってもらえると思います。

────それはいつ頃から?

六:「電撃衝撃ライトニング」(2022年)を出した頃にはうっすら思ってたかな。それをメンバーに打ち明けるとかはしてなかったんですけど。

────でも、キラキラ路線でありながらライヴはエッジがあるし演奏もしっかりしているとこに逆説的なカッコよさを確立していた時期だと思いますよ。バンドキッズが一番最初に好きになるバンドかはわからないけど、ちゃんと観て聴けば確実に惚れさせる魅力があるし。

六:たまに言ってもらえるやつですねソレ。でもあんまりいないですよ(笑)。だって“推し”ですよ、我ながらムズイことしてましたね、これは。

────とは言え、それで人気もあるし結果もついてきていた。

六:Zeppでワンマンしたこととかですよね?だから、あんなに人気あっちゃいけなかったんでしょうね(笑)。やりたいことに素直になれてないバンドはZeppに立てちゃダメでしょって今は思います(笑)。

────ずいぶん素直な意見だ(笑)。

六:だから、もう嘘をつきたくないんですよね。言い方合ってるのかわからないけど。俺らはこう見られているからこうした方がいいよね、みんな好きだよねって活動をしてきちゃったんですよ。俺らがどうしたいかの方が大事なのに。だからせめての抵抗で明るい曲調の中に上手く趣味を混ぜてきたつもりだけど、カラーに縛られて曲を作るようになっていって、気づけばもう騙し騙しやってきた僕の心は終わってたので。歌詞も曲の雰囲気を考えたら普段考えてることなんか書けるわけなくて。でもそれに慣れてしまって、ファンもその状態の僕を好きになってる訳だから、より取り繕って負の連鎖みたい(笑)。あの路線でやるならもう金だけ稼いで、別人としてやり直して次行こうかなみたいな。

────人生観が変わったってさっき言ってましたけど、それはどうして?

六:逆に8年間変わらない方が不思議じゃないですかね?それは。全然これって1個の経験には絞れない。海外行って日本と違うものを感じたり、時代というか社会情勢も目まぐるしいし、色んな人と遊んでここに書けないことも沢山したし…(笑)。同じバンドを続けてきたけど周りの人含め環境も沢山変わってきたし、SNSでさえ僕らがバンド始めた時、今ではこんなに当たり前なTiKToKもなかったんですよ(笑)。

────これまで積み上げてきたものがあるなかで切り替えるのは難しくなかった?

六:切り替えるって感覚じゃなくて今はこっちが素なんですよ。ただ作ってきすぎちゃったから、ときどき今もその癖が完全には抜けてないんですけど、いうなればリハビリ中です。でもやりたかった表現したいものに向かえてるのは感じてる。

────ちなみにこれまでのキラキラ路線は当時はやりたいことではあった?

六:途中までは!ただ、途中からはなんだか心からいいと思えなくても“売れたい”を土台にしてたので、『ちゃんと正統派で売れるのが一番理想だけど、俺にはこのキラキラ路線が合ってる、だからこれをやるべきだ』と自分に洗脳をかけて猪突猛進してたのが、だんだんひくにひけなくなってって…。…これ大丈夫ですかね? 前のバンドではなく今のバンドの話なのに(笑)。

────なるほど。今のグラビティは音楽性もファッション性もそれこそアートワークもソリッドになって、言ってしまえば現代的じゃないですか?ちゃんとカルチャーの最前線にいこうって意志もあるし。意識が変わっていったキッカケはどこだったんでしょうね。

六:意識なんて変わってないです。本当はそういうのが好きだったけどやる必要がなかっただけです。グッズとかもそうですね。売れなきゃ作る意味ないのもわかるんですけど、そこに合わせて作ってそれが売れちゃって、そしたらそれが正解になっちゃうし、ファンもその道標に向かうしもう最悪です。気がつけば、僕が憧れ始めたときになりたかったバンド像とどんどん乖離してった。

────時系列を整理するとちょっと前に話をした時に、今後のグラビティは方向性が変わっていくって伺って。ここまで書いちゃいますけど、過去の曲は一切やらなくなるって話だったじゃないですか?

六:今年の3月くらいでしたっけ?

────そう。『SERAPH1M』が出る直前ですね。その言葉通りに3月25日にリリースされた『SERAPH1M』はこれまでのイメージを刷新する快作でしたが、実はその後過去の曲もプレイされていて。その辺はリリース前と後で心境の変化があったんですか?

六:単純にファンへの感謝ですね。すごい当たり前のことなんですけど、やっぱりファンにはめちゃくちゃ感謝していて、その想いも解るから無下に突っぱねたくないって気持ちがあります。僕は過去曲やりたくない派ではあったんですけど、ライヴの量もあるので幅を広げないとセトリもつまんなくなるし、しゃあなく、まだその中でも許せる曲をやるかとコンセプチュアルなツアーにかこつけてやってみたらファンはめっちゃいい顔してたんで、それは良かったですね。でも呑まれるとまた同じ事繰り返しそうだなとかは思いますけど。

────それって思いのほか『SERAPH1M』でやりたいことが届いて受け入れられたからでもあるんじゃないですか?

六:どうかな。でも思ったよりは『SERAPH1M』の方向性も愛してもらえてるのかなって思います。

────音楽性とヴィジュアルだけなら“変化”って言えるんですけど、バンドアティチュードを鑑みると“新しく生まれ変わった”感じがしますよね。

六:そうですね。完全にその感覚です。

────六さん自身もヴィジュアル系が好きな少年だったわけですけど、いざ自分の好きなバンドが急に生まれ変わったら嫌じゃないですか?

六:変わり方によるんじゃないですかね?ダサくなったら無理だけどイケてんなーって方向にいってくれたら俺どんどん変わって欲しいですけどね。

────あと、これも訊いておきたいんですけど、顎の大手術をしたことを公表したじゃないですか?あれはどうして?

六:言わないつもりで休み取ってたけど、思ったより腫れてて隠しきれずにライヴが始まって。僕がコンプレックスな部分に整形とかしてんのもあって、今回も整形かよとか思われるのが癪だなとか思って公表しましたね。

────具体的にはどんな手術だったんですか?

六:めちゃXにつらつらと書いたんですけどサージェリーファーストって言って、手術を先にして後から歯科矯正をする方法です。高校生ぐらいの頃から顎がズレていることがコンプレックスだったし、それは歌唱にも影響していると思っていたんで、お金もすごくかかる手術でしたけど決断しました。術後は痛みで辛過ぎてスマホも触れないんですよ。ご飯も食べれないです。でもこれがあったから「ピンク・ドーナツ」ができた。僕の好きなマック・ミラーの『Circles』と『Swimming』へのオマージュじゃないですけど、クラシカルな要素やジャケットの噴水に人が集まってるイメージもその時に浮かびました。

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