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【mitsu】ライヴレポート<mitsu「A New Hope」>2025年7月18日(金)Spotify O-WEST◆ソロシンガーとして迎えた〈10周年〉という節目のステージに立つmitsuは、歌と共に生きている今を謳歌するように絶唱し、笑っていた。

“絶望から始まった”と、mitsu自身がそう振り返るソロ活動の起源。10年前、歌う理由だったともいえるバンドの解散を経験し、極度の孤独を覚え、それでも自分らしく生きていくために歌い続ける道を選んだ。
まさに10周年のステージ上でも話していた通り、「歌いたかったというより、歌うしかなかった。歌わないという生き方を知らなかったから、歌うしかなかった」というところからのスタート。以降、mitsuにたくさんの幸福を与えたのは間違いなく“歌”であったはずだが、反対に彼を苦しめたのもまた“歌”であった。
そんな表裏一体の武器を持ち、理想と現実の狭間で戦い続けてきたmitsuが、ちょうど10年前に始動した日と同じ7月18日にSpotify O-WESTで開催した記念すべき10周年のワンマンライブ。
それはこれまでの経験が1つ欠けても成り立つことがなかった、mitsuが生きてきた結晶そのものだった。

定刻となって場内は静かに暗転するも、会場BGM『Train To Tokyo』(THEE ARMADA)が流れ続けていた。そんな中バンドメンバーとmitsuがステージへと現れ、しかもmitsuに至ってはセンターでおもむろに屈伸をしてみせた。
10周年記念のライブともなれば豪華な演出や特効があっても良さそうなものだが、オープニングはおろか、この先もそういったものはなかった。まるで「そんなものはいらない」と言わんばかりに飾らずにありのままで臨む姿が、たまらなくかっこいい。
さらにmitsuの装いは、黒を基調としたシックな中にも尖りがあり、大切な節目に用意した彼なりの正装のようにも思えてくる。
こうした考えを巡らせているうちに、フェードインしていくようにバンドサウンドが鳴り始め、『水深』が幕開けを飾った。
夢時(Gt)、RENA(Ba)、KAZAMI(Key)、大熊けいと邦夫(Dr)といった、今や“mitsuバンド”としてお馴染みの布陣が奏でる音の渦を受け、全身で歌い上げるmitsuの歌声に宿る気迫に圧倒されたのも束の間、『蜃気楼』が連日の酷暑にピッタリな灼熱の空気に包み込むと、『MIDNIGHT LOVER』でも大人びた雰囲気で躍動感を増していき、ライブのベクトルは“楽しむ”といった方へと全振りしていった。

「ソロ10周年、『A New Hope』O-WEST公演にお越しいただきありがとうございます」と話し始めたmitsuは、フロアを見渡しながら「2時間ずっと見てられる。いい景色です」と告げた。
それもそのはず、ソロ10年目にして最高動員を記録したというのだから、彼の目に映る景色は壮観だったに違いない。

「ここにいる皆さんと一緒にこの空間を共に過ごせるのは、なんといっても10年間諦めずに続けてこれた、そして続けさせてくれたメンバーやスタッフ、ここにいる皆さんのおかげです。今日言いたいことは、“ありがとう”しかないなと。
この10年で出会った仲間と、mitsuの曲を、歌を、音楽を堪能していただいて、忘れられない1日にしたいなと思います。本日はよろしくお願いします!」

この日を迎えるにあたって、伝えるべきことを考えたというmitsuが最終的に辿りついたのが“ありがとう”だったという。
感謝というのは、心が動かされたもの(こと)に対して言葉を発するもので、もちろんmitsuはそれを歌にして懸命に表していく。
エネルギーが漲っていくような明るいオーラを纏った『エトリア』では、mitsuの歩みを最初から見守ってきた夢時がmitsuの胸元をトンとつくと、mitsuは自信に満ちた表情でフロアを見ながら高らかに挙を突き上げた。
そして、“夏っぽい曲”と紹介された『蛍』や、クラップや手をスイングさせた『シュガー』、スカな雰囲気で陽気なノリを生んだ『じゃないか』と、バリエーション豊富な楽曲を通してオーディエンスとコミュニケーションを取るように振舞いながら歌う様に、エンターテイナーぶりも重なる。

ここでマイクスタンドをセットしたmitsuが、「しっとりした曲をお届けしたいと思います」と披露したのは『鼓動』。
一音一音、一言一言を噛みしめるように大切に届けた一時にエモーショナルが存分に迸り、歌いながらフロアとメンバーを見回したmitsuは感無量といった様子。
そして、ピアノの伴奏を始めたKAZAMIの傍に腰かけながら、mitsuがじっくりと歌い始めた『Naked』では激情溢れるバンドインに惹き付けられると、さらに抜群の歌唱力を発揮した『キンモクセイは君と』と続け、真剣に、そして楽しむことを欠かすことなく活き活きと歌い続けていく。

「4周年にリキッドルームでのワンマンをやって、そこからは〈コロナが来た〉って言い訳をしながらも、どちらかというと夢を諦めるような、自分から逃げるような日々だったんです。そこから新曲も作れなくて、でも〈もう一度夢を諦めずに向き合ってみよう〉と思って臨んだリキッドルームでした。────〈ああ、俺、ちゃんと自分との約束を果たしたんだな〉って、逃げずに向き合ったんだなって思ってから、急にこのソロ活動がとても楽しく、幸せなものに変わりました」

こんな風に振り返った9周年のときに5年ぶりに披露した新曲が、この日1曲目に披露した『水深』だった。歌うことに生きた約20年のうち半分をソロシンガーとして過ごしてきた中で、今のmitsuのマインドへと到達する上でのターニングポイントでもあった9周年ライブから1年、この10周年にもまた、新曲を用意してきたという。
『水深』に続いて大熊けいと邦夫が作曲を手掛けた新曲は、バンドサウンドがフィーチャーされ、アカペラ部分も交えるといった現体制の凄みが色濃く感じられる。
タイトルはまだ秘密ということだが、『水深』とは真逆の、優しく眩い光に満ち溢れていくような軽快かつ美しいアンサンブルで、それは“再生と救済”をテーマにしているというポジティブな歌詞に通ずるものがあった。

やはり、ライブにおいて新曲を初披露する瞬間は特別で、そこをピークとした独特な緊張感がある。しかしそれを果たしてしまえば、あとは自由度高くボルテージを高めていくのみ。
『Live Your Life』がその口火を切るように心地よく体を揺らし、mitsuの言う“味方しかいないフロア”に向けられたマイクにはたくさんの歌声が集まった。
間髪入れずにシャッフルなビートが炸裂した『It's So Easy』では演奏陣のソロ回しも決まり、mitsuも柵に足をかけるなどして前衛的な姿勢を見せつける。
そして、ラストスパートへ向けてさらに勢いづかせるきっかけとなったのは、ν[NEU]の楽曲たちだ。フロアが○と×をサインしながら飛び跳ねた『YES≒NO』や、一層グルーブを高めてステージもアグレッシヴさを極めていた『cube』では、《手を繋いで あの時のように 終わらない旅をしよう〉と跪いて歌うmitsuの姿に、過去を踏襲した上でのヴォーカリストとしての覚悟も見え、同時に詞の内容もまた時を越えて成熟したことを痛感させた。
こうして、mitsuがステージで寝転ぶなど自由奔放ぶりを発揮した『Crazy Crazy』、よりソリッドさを増した『Into DEEP』と続けて極限まで感情を解き放ちながら白熱していく様子は、まさに「みんなと一緒にいろんな自分を見つけたい」という意気込みをしっかりと表していた。
極めつけにmitsuは「これがライブだぞ!」と叫び、「たぶん俺もう大丈夫! もう、やめるって言わない」と頼もしい一面も飛び出していたが、それを歌に乗せて届けたのが『ラストヒーロー』だった。
うずくまりながら歌っていたときに握りしめていた拳を、〈傷付きながらでも進むのさ〉と歌いながら〈A New Hope〉と書かれたバックドロップめがけて突き出し、前進していく意思を見事に歌い上げた。

「本当に何回言っても足りないだろうな、ありがとうございました。ここにいる、あえて俺だけじゃないと言うわ。この5人は馬鹿な野郎で、音楽に救われてきたし、音楽がなければ上手く生きられないような集まりです。でも、それが見つかってるだけ幸せですね」と語り、ラストを締めくくった『For Myself』。
10年前に“遺書だと思って書いた曲”と前置いた通り、mitsuのソロ活動における原点ともいえる“mitsuのための曲”は、歌い続けてきたこれまでの時間の中で目の前にいる人々と共に歌い、喜びを分かち合う曲になった。
「“あのとき”の自分と、これからのみんなに贈ります」と届けられた歌は、曲中に「1人じゃないよ、俺がいるよ」と言えるほどの強さとエネルギーに満ち溢れ、「人生は楽しい」と必死に訴えていたのである。

mitsuほど、希望や奇跡という言葉が似合う人間はいないだろう。
これまで起こるべくして起こったすべての奇跡を自分の力へと変換してきたが、まさに10周年を迎える当日にSpotify O-WESTのブッキングが叶ったという背景があった今回のライブもそうだ。
Spotify O-WESTのステージをただ“10周年の記念”だけで終わらせずに、これまでの自分を認め、これからへの自信を掴んでまた新たな希望を繋いだこと。
そしてそれはmitsuが歌い続ける限り、時に形を変えながらも続いていく。
「一緒に生きてこうな!」と未来を約束する10周年記念公演のフィナーレは、そう強く確信させるものだった。



Photo:尾藤能暢(Yoshinobu Bito)
Report:平井綾子(Ayako Hirai)

SET LIST

1. 水深
2. 蜃気楼
3. MIDNIGHT LOVER
4. エトリア
5. 蛍
6. シュガー
7. じゃないか
8. 鼓動
9. Naked
10. キンモクセイは君と
11. 新曲
12. Live Your Life
13. It's So Easy
14. YES≒NO
15. cube
16. Crazy Crazy
17. Into DEEP
18. ラストヒーロー
19. For Myself

関連リンク

mitsu official site:https://mitsu-official.com/
mitsu staff official X:https://x.com/mitsu_official

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