【摩天楼オペラ】◆NEW SINGLE「AGONY」リリースインタビュー◆日比谷公園大音楽堂ワンマンで18周年を迎えた彼らが8ヵ月ぶりに届ける新曲について、フルメンバーに話を訊く

苑(Vo)、燿(Ba)、彩雨(Key)に加えて、響(Dr)、優介(Gt)が正式メンバーとなり、現体制ですでに2枚のアルバムを作り上げた摩天楼オペラ。バンドとして大充実の18周年を迎えた彼らが今、さらに貪欲に進化を遂げようとしている。日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)ワンマンで周年ライヴを終えた彼らが、その進化の第一歩を刻み込んだシングル「AGONY」を8月15日に、ネクストシングルを11月に連続リリースし、12月には東名阪クアトロツアーを実施する。ヴィジュアルシーンの若い層に“摩天楼オペラ”の名前が広まっている今、改めてバンドについて、そして新曲について5人に話を訊いた。
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新たな摩天楼オペラを生み出したいという意識のもとで作りました(苑)
────記事が掲載される頃には終わっているのですが、8月10日、東京・日比谷公園大音楽堂で開催の“18th Anniversary Live”はどんなライヴをしたいと考えていますか?
苑:18周年のライヴなので、新曲だけではなく昔の曲を入れた、今まで作ってきた摩天楼オペラの曲を網羅するようなセットリストを組みたいと考えています。摩天楼オペラが今まで一番大きな会場でワンマンを行ったのがこの野音(2014年に“AVALON TOUR”ファイナル公演として開催)なんですね。この日はその場所にまた立てるということで、摩天楼オペラに関わってきた皆さんに感謝の気持ちを伝えられる日になればいいなと思っています。
優介:前回の野音がこのバンドとして最大の領域ではあるのですが、今回はその思い出を現体制で塗り替える、更新する、越えてやる、という気持ちになっているところです。
彩雨:野音は東京のド真ん中にあり、周りに大きな建物もありますし、空も見えます。普段のライヴハウスではない会場だからこそ出せる摩天楼オペラらしさ。それが伝わるといいなと思ってます。
燿:18周年のライヴということで、長く応援してきてくれている人、最近知って初めて行きますという人、いろんな方が観に来てくれると思うので、今後に期待してもらえるようなライヴにしたいと思います。
響:摩天楼オペラが今までやった場所で一番大きなところが野音。僕はそのときはいなかったんですね。僕がサポートから加入してから7年ぐらい経って、現体制でこの野音まで戻ってきたので感慨深さもありますけど、さらにその次を見せられるものにしたいなと思ってます。
────その野音公演を経て、新ヴィジュアルも公開。こちらのアートワークのコンセプトは?
苑:8月15日に「AGONY」という新曲を発売するのですが、この曲がダークな世界観で。今までの摩天楼オペラよりもさらにダークなところにいっているので、今回は衣装を真っ黒、写真も真っ暗というものになりました。
────「AGONY」がダークな世界観に偏っていったきっかけは?
苑:曲を作っているうちに、その曲が持っている暗い部分が、僕のなかの生きていく上での辛さにリンクしていったからですかね。それで、歌詞は生きていく上での葛藤がテーマになり、もうこの世界は終わってしまえばいいのに、空が墜ちてきてしまえばいいのにというものになっていきました。
────作曲するときに意識したことはありましたか?
苑:新たな摩天楼オペラを生み出したいという意識のもとで作りました。だから、ちょっと挑戦した感じになっています。今まで摩天楼オペラをやってきて“メロディックスピードメタル”という軸はもう確立できたと思うんです。そこからさらに一歩進めて、最新のメタルへ持っていこうという挑戦を今回はしましたね。バンドを長く続けていくと、曲が引き算になっていってどんどんコンパクトにまとまっていくものなんですけど、今回はそこを一周して、どんどん足し算にしていった感じです。

────歌はどうでしたか?
苑:めちゃくちゃ難しかったです。低いところから高いところまで、瞬間的に上がるところが多いし。激しいところからバラードのようなセクションにいくところも、一瞬でいかなきゃいけないので難しい曲でしたね。
────ギタリストとしてはどうでしたか?
優介:中間部分に入れた超ヘヴィな間奏があるんですけど、ここは本来デスヴォイスが入って来てもいいくらい、非常に暴虐的なセクションです。こういうアイディアを摩天楼オペラで初めてカッコよく形に出来たと思っているので、思い入れがあります。僕はアレンジに入る時、こういうデスメタルやデスコアの類が好きな人間じゃないと思いつかない要素を結構入れたくなるんですが、今回のも掛け算として面白い結果になったんじゃないかなと思ってます。

────彩雨さんはいかがですか?
彩雨:ダークな曲ではあるんですけど、そのなかにキラリと光るものがある感じが摩天楼オペラらしいなと思っていまして。字面だけ読むと、今までと全然違う暗い楽曲なのかなと思われそうですけども、割と王道なのかなと僕は完成してから思ってます。
────摩天楼オペラが作ると、暗いだけではなくキラリと光るものが生まれるのはなぜだと思いますか?
彩雨:多分、きっとみんな根が明るいからだと思います。毎日死にたい死にたい、みたいな感じの人はいないと思いますから。
────なるほど。燿さんは「AGONY」の印象は?
燿:アルバム『六花』や『真実を知っていく物語』と繋がりはないのですけど、方向性的にはそこに寄ってるところがあるなという印象で、映画みたいな曲になったなと思います。ビート的には盛り上がりそうなセクションがあったりするんですけど、多分ライヴでは盛り上がる曲ではなく、1曲通して世界観をしっかり見せる曲かなと。おそらく聴かせる系になると思うので、こういう曲は多分ウチらしか演れないのかなと思いました。
────響さんは?
響:めちゃくちゃ好きな曲になりましたね。ここ数年はかなりメロスピ推しでやってきましたが、『Chronos』のときは全然違う方向性のメタルっぽいことをやっていたんですね。あれは意図的にメタルコアっぽい要素やラウドっぽさを出して作ったアルバムだったんですが、今思うとちょっと無理して寄せていってた部分もあったのかなと思ってます。でも今回はあのときよりも自然と今のモダンメタルを摩天楼オペラが取り入れたような感覚があって、すごく馴染んでるなって思いました。ここ最近の2~3作品では、ドラムはストレートなわかりやすいフレーズをやってたんですけど、今回はこだわりのフレーズをたくさん作って入れました。さっき優介さんが言ってた途中のめちゃくちゃ重いパートとかは、今までの摩天楼オペラではなかったものなんで、ああいうのが入ってきても違和感なく聴けて、そこから最後のサビではメロスピっぽくなっていつもの摩天楼オペラらしさもしっかり出てる、そういうところが気に入ってます。

クリスマスといってもルンルン系ではなく、違うニュアンスのクリスマス(彩雨)
────では、続いてカップリング曲の「Another Christmas」についても聴かせてください。こちらの曲もクリスマスなのに暗くて、悲しい。
苑:そうなんです。曲が、ちょっと不安なドロドロした感じがしたんです。昔はよく歌詞の主人公を、例えば25歳の男性とかに設定して書いていたときがあったんですけど、今回は久しぶりに同世代の女性像が浮かんでしまって。これは僕が勝手に想像して書きました。
────主人公はどんな物語を背負った女性だったのですか?
苑:クリスマス当日、ショーウィンドウに一人きりの自分が映ったとき、寂しさを感じている女性です。
────クリスマスだから、余計に切なく悲しい気持ちになりますね。
苑:そうなんです。頭では諦めなきゃいけない、諦めたほうがいいっていうのはわかってるんだけど……っていう。曲がドロドロとした感じだったので、そういう歌詞になりました。
────優介さん、この曲はどうでしたか?
優介:サビメロの展開的には、摩天楼オペラあるあると言えるぐらいの安心感がある曲でしたね。ただ、コード進行やメロディの雰囲気としては王道を行く一方で、実はその周辺のセクションで、ギタリストとして色々と新しいことをやっている楽曲なんです。まず一番最初の出だしからギター主体のやや不穏な始まり方で、このパターンは近年なかった感じがしますね。ふわっと空中に放り出された状態から始まって、空間を一人で彷徨っているような感覚から、いきなり摩天楼オペラらしい強いサビがくるのが新鮮です。そのあとの伴奏は、この曲もややメタルコア寄りなアプローチをしていて。サビのパワーをうまく引き継げたと感じてます。ギターソロについては今回だいぶシブいのが弾けた自信があるんですが、まさか、歌詞がクリスマス絡みでくるとは思ってもいなかったので。クリスマスだって聴いてたらこの音階にはしなかったかもっていうぐらい、マーティ・フリードマン風味の和風ソロになってますね(笑)。でも、(歌詞が入る前の)音が導いたままのアウトプットをしたということで、クリスマス的な遊びはあえて足さず、これはこれで面白い取り合わせかなと思ってそのまま残しています。
彩雨:僕も歌詞が出来る前に全部録り終えてて、あとから何か入れようと思えば入れられたんですけど、説明しすぎてちょっと野暮だなっていうところも感じたので、入れなかったんです。それはそれで良かったなと思ってます。歌詞はクリスマスといってもルンルン系のクリスマスじゃなくて違うニュアンスだったから、入れないほうがいいなと。

────なるほど。
彩雨:楽曲面での話をすると、摩天楼オペラはキーボードとギターがいるバンドなので、過去の曲ではピアノがリフレインしたフレーズをギターが引き継いでいく曲もあったりして。今回はギターから始まったフレーズがそのままキーボードに受け継がれて繋がっていくので、そういうところは摩天楼オペラ独自のアプローチだなと思っていて、それがうまく実現できたなと思ってます。
────ツインギターではなく、これをギターとキーボードでやっているところはライヴでもテンションが上がるポイントです。耀さんはこの曲、どうでしたか?
燿:こっちは彩雨曲なんですけど、アヤックス(=彩雨)は昔から全パートのデモを自分で作ってくるんですね。ほとんどはなんとなくルートだけ入れたようなものが多いんですけど、たまに「あれ? このベースはなんだ?」とフレーズが入ってるときがあって。今回は後者のパターンでした。だから、このへんの音が欲しいんだろうなという音は残しつつ、それ以外のところは自由にアレンジして入れていった感じです。

────響さんはいかがですか?
響:ドラムは「クリスマスです」と言われても、別にフレーズが変わるわけではないので、そこは全然関係なかったです。途中の刻んでいるところは、最初のデモはあそこまで刻んでなかったんですよ。レコーディングの流れとしてドラムが最初なので、そこでああいうメタルコアっぽい連打にしたら、ギターも加わっていってすごくヘヴィなパートが生まれて、モダンなメタル感というところでは「AGONY」との統一感も出せたと思ってます。あと、これは毎回思うことなんですけど、彩雨さんのデモは、打ち込んであるメロディに彩雨さんらしさを感じるんですね。それを実際にレコーディングして、歌が入ると摩天楼オペラらしさに変わるんですよ。デモからの進化みたいなものを今回は特に感じてめちゃくちゃいい曲になったと思います。
────キャッチーな歌もので聴きやすいですね。
響:そうですね。サビも4つ打ちですし。聴きやすい、誰もが入りやすい曲だなと思います。
────今作に続いて、11月にリリースするシングルはどのようなものになりそうですか?
苑:大雑把にですけど、まったく違う方向のものというより、今作と同じ方向で次のシングルも作りたいと思っています。
────暗い系で、新たな摩天楼オペラを?
苑:の、予定です。
────暗い系を作りながらも、摩天楼オペラのメンバー5人は本当は陽キャなんだと?
全員:いやいやいやいや(笑)。
苑:根本、毎日死にたいってなるような後ろ向きな人はいないよっていうだけで、そんなパーティピーポーな陽キャはいないです(微笑)。
メタルシーンとヴィジュアルシーン、両方に席を持った数少ないメロディックなバンドとして、重要な役割を担っている実感がある(苑)
────失礼しました(笑)。そうして、このニューシングル連続リリースを経て、年末には東名阪でCLUB QUATTROを回るツアーも決定。こちらはどんなものになりそうですか?
苑:11月にリリースするニューシングルを主軸としたセットリストを組むツアーになると思います。それに「AGONY」と「Another Christmas」も演奏するようなツアーになります。
優介:僕は、初クアトロなんですよ。それがまず楽しみです。あと、シングルを引っ提げたツアーというのは結構久しぶりな気がします。アルバムツアーではないので、セットリストで固定される楽曲数が必然的に少なくなるわけですよ。バリエーション豊かな3日間になるんじゃないかと思っています。
彩雨:東名阪のなかには12月25日、クリスマスの日が入ってますので。ショーウィンドウを見て寂しい思いをする方はぜひ僕らのライヴを予定に入れていただきたいです。ちょっと予定があるよという方もキャンセルしていただいて。デートスポットにクアトロもいいんじゃないでしょうか。渋谷ですし。お待ちしております。
────12月25日、彩雨さんの帽子はサンタ仕様に?
彩雨:いや。それはちょっと摩天楼オペラ的にNGかも(微笑)。
────では燿さんはクアトロツアー、どんなものにしたいですか?
燿:シングルツアーっていうこともあるのでもちろんそのコンセプトはありつつ、これが2025年の最後のツアーで、クリスマス当日はバンドとして今年最後のライヴになるんですね。なので、いい形で2025年を締めくくりつつ、来年に繋がっていくツアーになればいいなと思ってます。
────5月のワンマンライヴで燿さんは「渋谷クラブクアトロは、目の前の柱と戦わなきゃいけない場所」と仰っていましたが。
燿:何回も出てる会場なんですけど、記憶があまり(苦笑)。でも、あそこはアヤックスも(柱が)干渉してない?
彩雨:視界を遮るってこと?
燿:うん。
彩雨:まあでも、その柱があるおかげであのビルは成り立ってるんだから。
燿:なに言ってるんだか(笑)。
────では響さん。
響:クアトロツアーって、以前の摩天楼ではあったのかもれないですけど、僕はやったことがないんですよ。
燿:ないよ。
苑:ないね。
響:クアトロツアーは初めてですか?
苑:うん。単発ではそれぞれあるけど。
響:摩天楼オペラとして初めてのクアトロツアーでした。僕は、大阪、名古屋はあるんですけど、渋谷クアトロは出たことがないんですよ。長くやってると初めてのハコに出る機会もどんどん少なくなってくるので、CLUB QUATTROをツアーで回れること自体が楽しみですね。
────2026年5月4日、東京・豊洲PITで開催する周年ワンマンライヴで、摩天楼オペラは結成19周年を迎えます。ここへ向けてどうしていこうと考えていますか?
苑:シンプルに上がっていきたいですね。今回のニューシングルも、自分たちを前に進めるために挑戦した曲なので、こういう新曲を作っていきたいです。おそらくいつかはアルバムになると思うんですけど、そのアルバムでまたさらに上に上がっていくようなイメージで活動しています。
────シーンのなかで、摩天楼オペラの立ち位置というのは、今どんなふうに感じてらっしゃいますか?
苑:摩天楼オペラは、メタルシーンとヴィジュアルシーン、その両方に席があると思っています。そういうバンドってほかにあまりいないと思いますし、そのなかでもメロディが核にあるバンドとなると本当に限られてくると思うんですよ。だから、結構重要な役割を担っているなというという実感はあります。18年活動を続けてきて、“摩天楼オペラという音楽”を確立してきたつもりでいますし、自分たちの音楽を突き詰めていくって力と運がないとダメだと思うんですね。メンバー、スタッフさん、お客さんに恵まれてるとか、いろんなことがないとここまで続けてはこられなかったと思います。最新曲が最強だろうと自信を持って言えるすごさを、少しでも多くの人に知ってほしいです。
────しかもライヴを観ると、その超越した歌唱力、演奏力の高さ、破壊力に衝撃を受けますからね。
苑:音源の再現度はかなり高いバンドだと思います。それにプラスしてライヴでは勢いや躍動感が追加されるので、かなり迫力があるものを届けられると思います。初めて観るという方も、ぜひ遊びに来てください。
取材・文 東條祥恵
写真 Litchi
RELEASE

NEW SINGLE「AGONY」
2025.8.15(金)
摩天楼オペラOfficial Site & ライブ会場にて販売開始
各種サブスクリプションサービスにて音楽配信もスタート
1.AGONY 2.Another Christmas 3.AGONY(Instrumental)
価格:1,500円(税込)
LIVE

「XANVALA PRESENTS "VASALA FEST.2025"」
2025.9.1(月) Spotify O-EAST
「lynch. presents "BLACK BEAUTY BEASTS"」
2025.9.21(日) なんばHatch
「MATENROU OPERA BOYS ONLY GIG - LIVE摩天狼2025 - 」
2025.10.4(土) 高円寺HIGH
「MATENROU OPERA GIRLS ONLY GIG - LIVE魔天女2025 -」
2025.10.5(日) 高円寺HIGH
「14th Anniversary Live - relive -」
2025.10.25(土) 初台The DOORS
「Coupling Collection Special Live - relive -」
2025.10.26(日) 初台The DOORS
「QUATTRO TOUR」
2025.12.19(金)梅田CLUB QUATTRO
2025.12.20(土)名古屋 CLUB QUATTRO
2025.12.25(木)渋谷 CLUB QUATTRO
「19th Anniversary Live」
2026.5.4(月・祝)豊洲PIT
OPEN 16:00 / START 17:00
TICKET 7,500円(税込)※ドリンク代別
※未就学児入場不可
▼チケット(eplus)
https://eplus.jp/sf/detail/0284390001
関連リンク
摩天楼オペラ Official Site https://www.matenrou-opera.net
摩天楼オペラ Official X https://x.com/opera_staff