【「20s~Twenties~」イベントレポート(後編)】彼らの前に先導者がいなければ、追随する者もいない。唯一無二だからこそ今も独創的な輝きを放っている。ADAPTER。、えんそく、Daccoのライブの模様をレポート

ADAPTER。/えんそく/Jin-Machine/Dacco/TЯicKY/NoGoD。彼らに共通しているのが、今年デビュー20周年を迎えたこと。20年間、共に寄り添い、苦楽を共にしてきた仲間たちが一同に集結。「20s~Twenties~」と題した周年イベトを9月15日にSUPERNOVA KAWASAKIで行った。ここでは、ADAPTER。/えんそく/ Daccoのライブの模様をお伝えしたい。
ADAPTER。
ステージの上から派手に流れ出す音の刺激にずっと溺れていたかった。
メトロノームのメンバー福助。によるソロプロジェクトがADAPTER。。テクノ/エレクトロなSEに乗せて、顔を扇子で隠した福助。がステージに登場。「今日は、みんなで20周年をお祝いしていこうぜ」の声を合図に、福助。は、みずからの声にオートチューンをかけながら『Please Please You』を歌いだす。ADAPTER。はこの場を、冒頭から華やかなテクノ/エレクトロなビートの花咲くダンス空間に染めあげた。華やかな音色と胸踊るダンスビートや攻撃的なシンセの音、そしてねっとり絡み付く福助。の歌声に刺激を受けた場内中の人たちが、ときに手の花を咲かせ、「Please Please」と口ずさみながら祭りあがる。そこには早くも絢爛豪華な世界が広がっていた。

ギターを手にした福助。が次に繰り出したのが、激しく、華やかで、雅でダンサブルな『枯れ尾花』。一つ一つの音が刺激的でフリークなビートになって観客たちの心や身体を揺らす。雅で絢爛華美な演奏の上で、福助。が煽るように歌っていた。巧みに転調をしながら、ADAPTER。は観客たちを踊らせ、ときに頭を揺さぶるなど、終始華やかな。でも、どこか螺子の壊れた演奏の渦へと巻き込み、一人ひとりの頭の中から現実という景色を次々と消し去っていく。だから、ステージの上から派手に流れだす音の刺激にずっと溺れていたかった。
「バンドは助けあったりできるでしょ。一人だと助けあったりできないんですよ。だけどこの20年挫けそうになったとき、誰が助けになってくれた?!それは、観に来てくれたみんなです」の言葉が嬉しい。
そのうえで、「福助。」のかけ声に合わせて、観客たちが頭の上でハートマークを作りだした。『せぇの。』では、福助。のかけ声を合図に、場内中の人たちが「LOVE」と叫びながら頭上でハートマークを作っていた。サビでも、「せーの」の声にあわせて手の花を咲かせる様も誕生。気持ちを嬉しくくすぐるエレクトロでダンサブルなテクノサウンドに乗せて、心華やかに一緒に祭り上がっていたい。

福助。の合図で、ピコピコとしたシークエンスな音が一気にバーストした。『僕と君の幸せ』でADAPTER。は、カラフルなのに破壊的なテクノサウンドを叩きつけ、場内の人たちを、気持ちが動くままに祭り上がる輩たちに染めあげた。甘さを隠し持った福助。の歌声と激しくもけばけばしいテクノサウンドがクロスオーバーしながら、この場にダンサブルでカオスな空間を作りあげる。そして…。
福助。は、手にしたギターを置いて、最後に『はじめの一歩』を演奏。そのとたん、Daccoのメンバーがステージに駆けだし、歌や演奏にあわせて踊りだした。2人が無邪気にはしゃぐ姿にあわせて、観客たちも同じ動きをしてはしゃぎだす。ステージの上を駆けめぐる2人に混じろうと、福助。も前に出て、今度は3人ではしゃぎだした。気心の知れた仲間らとともに、さらにフロア中の人たちも交えて、みんなで無邪気な童心に帰って踊り騒ぐ。キラキラとしたその姿が、本当に最高だ。後半、3人がステージの上で組体操をしていた。その姿も、強烈なインパクトを持って瞼に焼きついた。
えんそく
こいつら、どこまで化けていくのだろう。いつの時代でも、これからが楽しみだと言わせる底知れぬパワーに心がずっと奮い立っていた。
ぶうの「上まで飛んでいけるかー」の煽り声を合図に,えんそくは『イン・ザ・マリオワールド』を叩きつけた。観客たちがマリオのようにしゃがみこみ、演奏のタイミングに合わせて、大きく飛び跳ねる。ジャンプをするその姿が、ときに前から後ろへと流れるWAVEになって見えていたところにも、えんそくファンたちの強い団結力を感じる。熱を上げて爆走する楽曲に合わせて拳をずっと振り上げれば、メンバーらの「もっと」のかけ声に合わせて、観客たちがしゃがんでは大きく飛び跳ね続ける。えんそくも、この場に最初から熱狂したカオスな様を作りだしてゆく。
「俺たち, まだまだ若いもんをぶっ倒していけると思ってんだよ。汚いドブネズミのような俺たちでもな。自分たちを信じて、あるがままに生きてきた20年、俺ら美しいんじゃないですか?!」とぶうが熱く語る。そのうえで生まれた「どぶねずみ」コール。そして‥。
ぶうの声を合図に、メンバーらと観客たちが大声で「どぶねずみ」と叫びだす。続く『輪廻∞輪廻』では、フロア中の人たちが両手を高く上げてくるくると回れば、ぶうの歌声とメンバーらのかけ声を合図に、同じくフロア中の人たちが我を忘れて拳を高く突き上げる。「輪廻 輪廻 輪廻」のかけ声に合わせて場内中から次々に突き上がる拳、拳、拳。バンドと観客たちが本当に心を一つにしたとき、身体中に魂を揺さぶる熱いエナジーがほとばしる。激しく突き上がる無数の拳が、この場で力強く咲き誇る花のようにも見えていた。
「これからまだまだもっとでっけぇ花火を一緒に打ち上げたいですね」。ドンドンタンッと打ち鳴らされるドラムのリズム。観客たちが、ドンドンのリズムにあわせて両手を高く掲げ、タンッのリズムを合図に尻を叩く動作を繰り返す。『花火』では、ぶうの打ち上がる花火を真似た奇天烈な動きと叫ぶ声に合わせて、フロア中の人たちも、みずからが花火になって打ち上っていた。3桁を越す人たちがえんそくの演奏を合図に打ち上げるたびに、その場に人力で作り上げた熱狂の花火が生まれる。両手を上げた観客たちが、ぶうの「ドーン」の声を合図に手の花を大きく咲かせる。楽曲に合わせた奇天烈な動きの一つ一つが、とても印象的だ。最後にみんなで「ドーン」と打ち上がった様も圧巻だった。

フリーキーでパーティーな『狂い時計のネジ巻きマキナ』では、手にした楽器を置き、ステージ前へ横一列に並び、メンバー全員がダンサーになって一斉に踊りだす。もちろんこの曲でも、メンバーらの奇天烈な動きをファンのみんなも真似て踊っていた。その様は、観客たちも参加して一緒に作りあげるロックなミュージカルのよう。本当に奇抜な踊りやノリ方だ。その姿を、自信を胸に堂々とひけらかすメンバーと観客たちは本当に最強だ。バンドとはこうだ、こういうノリ方だなど、糞な(下らない)常識を全部破壊し尽くし、自分たちだけで独自の楽しみ方を作りあげて仲間たちと分かち合う。まさに、えんそくだからこそのライブの景色がそこには生まれていた。ヤバいよ、この楽しさは本当に唯一無二だよ。
「おい、じじいたちの逆襲を見せてやろうぜ。俺たちじしいとばばあがよ、(今のシーンを)ひっくり返してやろうぜ」と煽る毒舌も、ぶうらしい。

ぶうの熱を帯びた歌声と情熱的なピアノ演奏に乗せて始まったのが、『怪獣クモラの巣の町で』。炸裂する豪快な音に乗せ、テンションの高い激情した姿で、ぶうが眩しい青春の匂いも覚える物語をドラマチックに歌う楽曲だ。ぶうの激エモな歌声とメンバーらの熱情した演奏に乗せ、会場中のみんなで胸を熱くするヒーロー物語を描きだす。ぶうがしゃがんで立ち上がりながら歌うたびに、フロアでも同じ動きが生まれる。ここいるみんながえんそくのメンバーになって、一緒に気持ちを高ぶらせてドラマを作りあげる。だから、ここにいると気持ちが燃えたぎる。心を熱く揺さぶる物語を一緒に作り、笑顔で泣き笑っていたくなる。
「これからも、30年40年と一緒に遊ぼうかー。これからも最高の思い出をみなさんと一緒に」の声を合図に、えんそくは最後に情熱を満載した『メメメント・メメモリィ』を演奏。観客たちが両手を上げてくるくると回る、本気でライブを楽しむその姿が眩しくて最高だ。いつだって、どの曲でも、全員が踊りやかけあいに参加しながら、1曲1曲を熱い血潮みなぎる青春のドラマに仕上げてゆく。やばいよ、えんそくのライブ。一度参加したら、絶対に抜け出せなくなる。以前から観客たちと一緒にぶっ飛んだライブの景色を作ってきたが、まさか20年経った今が最強で、まだまだ進化の途中だなんて…。こいつら、どこまで化けていくのだろう。いつの時代でも、これからが楽しみだと言わせる底知れぬパワーに心がずっと奮い立っていた。
Dacco
「僕たち追っかける人もいなければ、後ろからついて来る人もいない…孤高の存在として20年!笑」。まさに、その言葉がふさわしい活動をDaccoは20年続けてきた。
Psycho le CemuのLidaとYURAサマによるユニットのDaccoがトリを飾って登場。2人は、盟友たちが場内に作り上げた熱気に華やかさを描き加えるように、Dacco流のユーロビートナンバーの『Enjoy!!』を歌唱。2人は、身体中からエナジーをほとばしらせ、元気みなぎる声で「Enjoy」と歌いながら軽やかに踊りだす。フロアでも、2人の動きに合わせてエアロビクスに興じる‥いや、踊りはしゃぐ景色が生まれていた。2人のEnjoy Powerが炸裂するたびに、その熱の中へ観客たちも次々に飛び込み、一緒に振り(エクササイズ)を真似ながら笑顔で楽しんでいた。
「癖の強い人こそ残り続ける。だからこそ20年続けていける」のLidaの言葉に「口の臭い人こそ残り続ける。だからこそ20年続けていける?」とボケるYURAサマ。MCでは、相変わらず2人のコミカルなトークが冴え渡る。場内からもずっと笑い声が上がっていた。
癖の強い2人が次に届けたのが、アキレス腱を延ばす運動から始まったユーロ系エアロビクスナンバーの『Fall in LOVE in the spring』。とてもハートフルでエモーショナルな楽曲という理由もあり、観客たちも身体を小刻みに上下しながら、2人と一緒に歌声を交わし合っていた。誰でもすぐに真似られる軽い燃焼系のダンスをしながら、「夜を」「夜を」「こえて」「こえて」など、2人と観客たちが歌をかけあい、一緒に盛り上がる。初見の人でも、声のかけあいを含め、すぐに真似て参加できるのが嬉しい。気付いたら、大勢の人たちが身体を屈伸しながらダンスを楽しんでいた。誰もがすぐに輪の中へ飛びこんで一緒に楽しめる。それが…Daccoです。

真似やすい踊りで観客たちを惹き付けたところで、Daccoはテンポの速い、激しくてダンサブルな『チャレンジャー』を歌い、魂のエンジンをフル回転してゆく。「この動きに挑戦してみなよ」と優しい笑顔で挑発するところも、Daccoらしい。これまで以上に躍動した大胆な動きを見せ、観客たちの踊りのレベルも上げてゆく。サビでは2人が歌う「チャレンジャー」の声に合わせて、フロア中の人たちが拳を振り上げて飛び跳ねる景色も生まれていた。入り口は緩く。でも、気付いたらエキサイティングなノリへと巻き込み、一緒に飛び跳ねてはしゃぐ景色をDaccoはこの場に作りあげていった。
続く『さぁ行け!サイケデリック』では、エキセントリックなミドルテンポのダンス曲に乗せて、2人がラップのように歌い語りだす。サビでは、両手でL字のポーズを作り、その手を揺らせば、場内にも同じ景色が広がっていた。ときに変則的で想像の斜め上をいく楽曲も組み込み、Daccoはいろんな景色をこの場に描きだす。身体の柔軟に繋がるさまざまなダンスを取り入れ、その場にいる人たちを踊りの輪の中へ自然に誘い込む。気づいたら、夢中になって有酸素運動に耽っていた。Daccoが仕掛けた冴えた手腕に、すっかり虜になっていた。
「僕たち追っかける人もいなければ、後ろからついて来る人もいない…孤高の存在として20年!笑」まさに、その言葉がふさわしい活動をDaccoは20年続けてきた。「まだまだ情熱を燃やして活動していく」と語ったYURAサマの言葉も嬉しい。
最後にDaccoは、YURAサマいわく「持ち曲の中でも一番燃えたぎる」『エキセントリック』を熱唱。力強く、激しく躍動したエレクトロでダンサブルな楽曲に乗せ、2人も荒々しい声を張り上げ、これまで以上に筋肉をいじめる躍動した踊りを組み込み、縦に飛び跳ねたり、しゃがんでジャンプをするなど、みんなでエキセントリックだけどエナジーに満ちあふれた一体化したノリを作りあげていった。終盤には、2人と観客たちが声を張り上げる場面も登場。初見や常連に関係なく、その場にいたら一緒に身体を動かして踊らずにいれない。そんなナチュラルでエアロビクスなライブを見せてくれたのが…Daccoです。

熱狂した観客たちのアンコールのクラップを受け、Daccoの2人を中心に、この日の出演者たち全員がステージに集結。豪華なメンバーで届けたのが、YURAサマいわく「Daccoの中でも絶妙に盛り上がらない曲」の『だっ骨盤体操』。団長の「骨盤していくぞー」の声を合図に流れ出したのが、トロピカルなサンバチューン。2人の歌に合わせて、出演者たちが掲げた両手をくるくる回してはしゃぎだす。途中に、骨盤を小刻みに揺らす地味な動きのダンスタイムも登場。そこを、クラオカユウスケ(えんそく)が派手でコミカルな動きで盛り上げる。歌詞に合わせてエクササイズをするメンバーと観客たち。確かに派手な楽曲ではないが、トロピカルな南国ムード満載の楽曲に乗せてみんなで一緒に踊るとウキウキしてくるのは間違いない。後半では、TЯicKYが前に出て激しく骨盤を揺らして踊っていた姿も印象的だった。『だっ骨盤体操』、この日からDaccoの中のキラーチューンに一段進化した……はずだ。最後のエンドSE(Daccoでは定番の「コーヒールンバ
」)までしっかり盛り上げるところがとても愛らしく、ピースフルなエンディングとなった。
骨々と…コツコツと歩みを重ね続け、今年、活動20周年を迎えたアーティストたちが集結したこの日のイベント。これからも止まることなく、骨々と…コツコツと歩み続ける彼らに、熱い視線を送り続けてほしい。
PHOTO: 髙橋かおり
TEXT:長澤智典
20s配信アーカイブはこちら(¥4,000)
https://premier.twitcasting.tv/yurasamatakeshi/shopcart/395127
SET LIST
ADAPTER。
『Please Please You』
『枯れ尾花』
『せぇの。』
『僕と君の幸せ』
『はじめの一歩』
えんそく
『イン・ザ・マリオワールド』
『輪廻∞輪廻』
『花火』
『狂い時計のネジ巻きマキナ』
『怪獣クモラの巣の町で』
『メメメント・メメモリィ』
Dacco
『Enjoy!!』
『Fall in LOVE in the spring』
『チャレンジャー』
『さぁ行け!サイケデリック』
『エキセントリック』
-ENCORE-
『だっ骨盤体操』
エンド SE『コーヒールンバ』
関連リンク
ADAPTER。
https://adapter-web.net/
https://x.com/ada_official
えんそく
http://ensoku.in/
https://x.com/ensokuchan
Dacco
https://x.com/Dacco_20th