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【MAMA.】初ホールワンマンで魅せたベストアクトが刻んだブランニューダークネスワンダーランド。自身の在るべき姿とさらなる深淵への入り口、混血樂音ここにあり。___「世の中を疑って生きてください」

MAMA.にとって史上初となるホールワンマンが9月30日に渋谷PLEASURE PLEASUREで開催された。
<MAMA.単独公演&命依生誕「私の命はあの暗い森に隠れている」>とのタイトルから匂い立つ“お祝い感”は一切介在せず、ストイックに世界観を体現する全17曲が届けられることとなった。

彼らにとっての会心作、2ndフルアルバム『CRY MORRY』リリース前夜にして、最新楽曲群を初披露する場でもあったわけだが、その緊張感と集中力はステージ・客席の双方に伝染し、MAMA.というバンドの特性が存分発揮されたといえる。

これまで以上の安定感とスケール感はまさに史上ベストアクトというに相応しい。
ドス黒い未来を切り拓いた、MAMA.新章突入の夜の模様をお届けする。



◆     ◆     ◆ 

収容人数320人の渋谷PLEASURE PLEASUREは道玄坂の中腹のビルの上階に位置する2階構造のホールだが、もともと映画館だった会場は傾斜のついたフロアと座り心地の良い座席が居心地のよさと同時に激しいライヴに似つかわしくないエレガントさも感じさせる。

MAMA.はこれまで恵比寿リキッドルームワンマンや新宿BLAZEでの主催も経験しているが、基本的にライヴハウスを主戦場にしているからこそ、高い天井と奥行のあるホールは初挑戦にしてどんな化学反応が起きるのか興味深い。

残念ながら完売には至らなかったものの、2階エリアにまで観客が収容され開演前から期待と緊張感が渦巻く。

定刻をやや過ぎ、お馴染みの穏やかなSEが流れると一気に総立ちになり悲鳴のような歓声が巻き起こった。
薄暗い白色の照明がオレンジに染まるとゆっくりと歩を進めメンバーが登場する。

最後に登場した命依(Vo)が「始めるぞ!渋谷!」と威勢よく檄を飛ばすと「MARIA」からスタート。
のっけから縦ノリで会場を揺らすと、今年リリースの「WITCH??」、組曲のような展開がドラマチックな「NOPE.」が連なる。

ステージにはベッドやカーペットが配されていて、アグレッシブな獰猛さと深い世界観が織りなす双璧は好意的なアンバランスさを感じさせた。それはまさにホール映えというに相応しいが、続いた「アシッド・ルーム」のタイトさ然り、ホールだからといって行儀よくする必要がないことも思い知る。
事実、ここまでの4曲で客席からはライヴハウスばりに声があがり、風速を増している。

小文字mama.期の「ASYLUM」はここに来てレギュラーメニューに加わることが多い印象だが、“人間を辞めよう”と繰り返されるリリックと同期のインパクトはどこか「WITCH??」の掴みどころのなさも連想させる。

▲命依(Vo)

「WITCH??」がよりハイブリッドな楽曲とするなら、一層ダウナーに堕ちていくのが「ASYLUM」といったところか。
MAMA.は一見するとハードネスなバンドだが、楽曲にもよるが、実態は大味な激しさと一線を画すところにアイデンティティを有する。
観客が突き下ろす親指の群れに向かって「何?何?」と問うたかと思えば、グロウルで応戦したりと、命依のヴォーカリゼイションの豊富さも詩世界を黒く彩る。

とりわけこの日の命依は絶好調で、「罪×罰」では赤子のように鳴き、解釈の間口を広げる。メロウなサビでこそフックになるフレージングで援護射撃する真(Ba)も見事だが、ムードに則したアドリブで距離設定を計るJiMYY(Gt)と楽曲憑依型のかごめ(Gt)と楽器陣もそれぞれの個性が以前より際立っている印象だ。
MAMA.というバンドは良くも悪くもステージで互いが干渉しない傾向があったが、この日はそれぞれの表現するもので視点を作り、奇跡的な化学反応ではなく、堅実に解釈の多面性を生み出していた。これこそが特有のバンドマジックなのかも知れない。

▲かごめ(Gt)

▲JiMYY(Gt)

▲真(Ba)

これを進化と表現するべきかの判断は難しいが、そんな性格を持つ独特のサウンドメイクを請け負うように命依の歌唱は実に心地よく感情豊かに漂う。声色に留まらず心象の押し引きも含めて、暗く鮮明でこれぞMAMA.といったマットな質感だ。

「罪×罰」のアウトロにカットインした「HAPPY SAPPY FRIENDs」でお馴染みとなったオーディエンスの強力なシンガロングが異様なトリップ感を生むと、「暗い森へようこそ!悔い残すことなくやってください!」と続いた「僕は宇宙のゴミ」では破壊力抜群にカオスな熱狂を生み出した。

大文字表記になった2023年3月以降、バンドにはいくつかの転機があったが、彼らがリスペクトしているMUCCと3回に渡って対バンを果たした2024年は相当に大きなものだったと推測できる。それは血肉になった部分も、埋められない差も含めて。
しかし、昨秋にはメンバーの脱退もありバンドは迷走状態に突入。彼らも最近になって公言しているが、実のところバンドの解散も視野にも入っていた。その危機を乗り越えた理由はひとつではないが、危機を乗り越えたという事実自体がバンドを強固にした。端的に言うとメンバーの見据える像が一致するようになったのだ。

そして2025年に入ると、彼らは増していった注目度と反比例するように難解で複雑な楽曲を生み出しはじめる。
「毒入りミルクはママ.の味」、「WITCH⁇」、「僕は宇宙のゴミ」の3曲はその際たるものだが、いずれもテイストは違うのにベクトルにはどこか共通項がある。
オリジナリティをまっとうすることで、より独自性を磨く方向にシフトしたともとれる。その真意は彼らのみぞ知るところであるが「僕は宇宙のゴミ」が生む強力なカタルシスは今のMAMA.らしさを存分に浴びせきるものだった。

だからこそ「次の曲から俺たちは始まった」と告げられた「BLACK DOG.」のドープさは彼らの根源に触れるような感覚に陥るのだ。

まさにこれまでの歴史を往来するメニューは早くも終盤戦。
ニューアルバム『CRY MORRY』が日本語の“暗い森”を示唆することは明白だが、この日はここからが本番だった。

初披露となったのは『CRY MORRY』収録の「オオミズアオ」。
鍵盤の音色とスポットライトを浴びた命依が優しくも厚みのある歌唱で昇華させるバラードナンバー。
“君を独りになんかしないよ”と歌われるが、1stフルアルバム『ANIMISM』のクロージングナンバー「Wednesday.」の“1人にさせないよ”を想起させるところもある。


命依の描く世界観的にも「Wednesday.」と「オオミズアオ」は近しいように思われるが、どこか外的に希望を探す「Wednesday.」と自己の内面から決意を引きずり出す「オオミズアオ」がどういった作用をしていくのか今後の動向を見守りたい。


命依の歌唱は体温を感じさせるほどに、外界を遮断する。
内省的になるほど温もりを与え、外に放つほどに残酷さを増す。これこそが彼が生きてきた道のりなのだろうか。

「愛とはなんなのか!一生考えて生きていこう!失敗しないから!」と珍しく声を荒げた「PINK MOON.」もまた感情過多に自己の内に向かって想いを爆発させた。
ステージからメッセージを届けるのが世の常ではあるが、こうやって心を露わにするのが命依のスタイルであるし、その世界に体重を重ねていくのがMAMA.のライヴだ。

終盤戦はアッパーな楽曲の応酬となった。
武瑠、CHAQLA.とのコラボレーションも話題になった「FXXK YOUR FEELINGS」、直情的な大暴れチューン「MURDER RED CHAINSAW」、バンド再起の楔となった「毒入りミルクはママ.の味」で大スパーク。


ここでようやく命依がマイクを取る。
いつもどおり時折言葉に詰まりながら、過呼吸のようになり脱線しながらも彼が伝えたのは飾り気のない素直な言葉だった。

「曲を作るって…血とか心臓とか混ぜていきたいじゃん。」

「昔から言ってるけど、居場所ってのは俺が作るんじゃなくて、あなた方自身が作ってくださいね。それがここでいいですよ。僕は構わないので…逃げ場でもいいし。ツライことを歌詞にするバンドだし、心の弱さとか…僕もそういう時期あったし。死んでもいいくらい覚悟を決めてやっているバンドです。」

「まぁ、世の中を疑って生きてください。何か見つかります。」

命依自身もかつては自分を理解してもらえないことに対するジレンマがあったと語っているが、ここに来てより素朴な自分を曝け出すことで対話するように想いを伝えるようになった。
それは独りよがりのワガママではなく、彼が書き記してきた歌詞の数々が誰かを救う使命を纏ってきたことによるものなのかも知れない。

ラストは『CRY MORRY』の序曲にして象徴的な「CRY MORRY」。
この世に生を受けたことを呪いの契約との天秤にかけて存在理由を問う深淵なナンバーだ。様々な要素を複合的に組み込んだドラスティックな展開と、孤独な唄にぴったり寄り添うような情熱的な演奏が黒い世界観に新たなグルーヴをもたらす。

命依は「これまで曖昧にしてきていたものの答えをこの日に提示することになると思う」と事前に語っていたが、まさに「CRY MORRY」は悪夢のような現実の入り口であり、ここからMAMA.が描く世界へ到達したことを知らしめる濃厚な説得力あるものだった。
現存する精神世界の中で狂ったように絶叫する姿も、うつろに一点を見つめる様もすべてきっと夢ではない。

圧巻の集中力でプレイを放射したメンバーが静かにステージから去ると拍手が巻き起こった。

ほどなくして登場したアンコールでは『CRY MORRY』から2曲をいずれも初披露。

まずは不穏なサウンドと温かみのあるメロディが傷口にそっと触れるようにじわりと痛覚を感じさせる「真っ白な銃弾で僕を撃ち抜いて」。
閃光のように眩い照明を背に佇むメンバーの演奏は何を説明するわけでもなく、客席を釘付けにするものであったし、この楽曲がこれまでのMAMA.の歴史においても屈指の名バラードとして君臨していく未来が強く感じられる時間となった。


そしてラストはアルバムの実質的なクロージングナンバー「冷たい湖に沈む海月」。
刻まれるサウンドと荘厳さが畳みかけるように精神を圧迫する。飲み込まれたように緊張感が張りつめる客席。これまでMAMA.がここ一番で投下していた核たる楽曲をさらに鋭利に研磨した印象だが、無慈悲な物語性と共にまさに暗い森の奥地にオーディエンスごと引きずりこんでいくようにホール全体を闇で飲み込んでいく。


この場所には何があるのか。明滅するライトと絶唱、迫りくる轟音がステージと客席を隔て、“妊婦の水死体が上がったよ 真夜中で誰の死体かわからないのよ”という衝撃的な結末を迎えると、暗がりの中メンバーは静かにステージを後にした。

オーディエンスからはこの日一番の喝采がおき、灯りがつくと、夢から醒めたように再び時間が動き出した。

初ホールワンマンに相応しい進化したバンドのスケール感と、よりディープな方向への舵切りを提示したMAMA.。
史上ベストアクトと断言できる説得力の根源は外的なエナジーの衝突ではなく、内向きに抉り出す感情の吐露だった。
もちろんなにかひとつの要素がこの公演のすべてを示すものではないが、以前よりも命依というヴォーカリストの発する世界が鮮やかになり、それを咀嚼するメンバーのスタイルも特化されていたことが最も印象的だった。
“不思議の国のアリス”を想起させる世界観ではあるが、彼らが創り出した暗い森にはいくつもの入口が混在しているようにも思える。

水死体で上がった妊婦は誰なのか?湖の底からそれを照らす者は一体?
想像するだけで背筋が凍りつく異様なリアリティがあるが、この森が現実なのか悪夢なのか、はたまたどちらでもないのか。

この日はSE「水死体で見つかる」を含め『CRY MORRY』収録全12曲のうち、9曲が披露された。
残す全貌は11月から年を跨いで3月のO-WESTまで続く全国ツアー、そしてその前に10月29日に渋谷近未来会館で開催されるワンマンでも明らかになるだろう。

果たしてこの森に出口はあるのか?
彼らの新たな旅が始まった。


Text:山内 秀一
Photo:masa

SET LIST

1.MARIA
2.WITCH??
3.NOPE.
4.アシッド・ルーム
5.ASYLUM
6.罪×罰
7.HAPPY SAPPY FRIENDs
8.僕は宇宙のゴミ
9.BLACK DOG.
10.オオミズアオ
11.PINK MOON.
12.FXXK YOUR FEELINGS
13.MURDER RED CHAINSAW
14.毒入りミルクはママ.の味
15.CRY MORRY

EN1.真っ白な銃弾で僕を撃ち抜いて
EN2.冷たい湖に沈む海月
SE.水死体で見つかる

MAMA. 全曲単独公演 -CRY MORRYへようこそ-

渋谷近未来会館 2025.10.29(wed)

OPEN18:00 START18:30
ADV/DAY ¥500-
前売り特典:混血樂音オリジナルステッカー

一般発売中!
https://eplus.jp/sf/detail/4401680001-P0030001P021001

MAMA. ONE MAN TOUR 「CRY MORRY」

・2025年11月24日(月祝) 東京
目黒鹿鳴館
OPEN 17:00/ START 17:30

・2025年11月28日(金) 神奈川
Yokohama 7thAVENUE 
OPEN 17:30 / START 18:00

・2025年12月12日(金) 新潟
CLUB RIVERST
OPEN 17:30 / START 18:00

・2025年12月21日(日)千葉
LOOK 
OPEN 17:00 / START 17:30

・2025年12月26日(金) 東京 
HOLIDAY SHINJUKU 
OPEN 17:30 / START 18:00

・2026年1月10日(土) 愛知 
名古屋ell.SIZE 
OPEN 17:00 / START 17:30

・2026年1月11日(日) 大阪 
南堀江Knave 
OPEN 17:00 / START 17:30

・2026年1月16日(金) 東京 
町田The Play House 
OPEN 17:30 / START 18:00

・2026年1月18日(日) 宮城 
仙台LIVE HOUSE enn 3rd 
OPEN 17:00 / START 17:30

・2026年1月25日(日) 北海道 
札幌Crazy Monkey 
OPEN 17:00 / START 17:30

・2026年2月1日(日) 埼玉 
浦和Narcis 
OPEN 17:00 / START 17:30

・2026年2月8日(日)
福岡 LIVE HOUSE Queblick 
OPEN 17:00 / START 17:30

・2026年2月9日(月) 広島
Live Space Reed 
OPEN 17:30/ START 18:00

TOUR FINAL
2026年3月30日(月) 東京
Spotify O-WEST
OPEN 17:15 / START 18:00

【チケット料金】
※11月24日(月祝)目黒鹿鳴館公演〜12月26日(金)HOLIDAY SHINJUKU公演
前売 5,000円 (税込)スタンディング 
入場時ドリンク代別途必要

イープラスプレオーダー
受付期間:10/2(木)12:00〜10/13(月祝)23:59
eplus.jp/mama/ (全公演共通)
一般発売:10月25日(土) 10:00〜

※2026年1月10日(土)名古屋ell.SIZE公演〜2月9日(月)広島Live Space Reed公演
前売 5,000円 (税込)
スタンディング
入場時ドリンク代別途必要

●イープラス1次プレオーダー
受付期間:10/25(土)12:00〜11/3(月祝)23:59

●イープラス2次プレオーダー
受付期間:11/15(土)12:00〜11/24(月祝)23:59
eplus.jp/mama/ (全公演共通)

一般発売:12月6日(土) 10:00〜

◼️FINAL Spotify O-WEST【HP先行】
オフィシャルHP先行
受付期間:12/6(土)12:00〜12/21(日)23:59
入金期間:12/25(木)13:00〜12/28(日)21:00

URL:eplus.jp/mama/

イープラス1次プレオーダー
受付期間:12/26(金)12:00〜2026年1/12(月祝)23:59
入金期間:2026年1/16(金)13:00〜1/19(月)21:00

URL:eplus.jp/mama/

イープラス2次プレオーダー
受付期間:2026年1/16(金)12:00〜2026年1/25(日)23:59
入金期間:2026年1/29(木)13:00〜2026年2/1(日)21:00

URL:eplus.jp/mama/

【一般発売】2/7(土)〜

【備 考】未就学児入場不可・営利目的の転売禁止

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■インストア/アウトストアイベント情報
2025年
11月1日(土) TOWER RECORDS 錦糸町PARCO店
12月28日(日) 池袋Red-Zone ANERIS
2026年
1月9日(金) five Stars名古屋
1月9日(金) ホリネクカフェ名古屋
1月11日(日) Like an Edison大阪店
1月24日(土) TOWER RECORDS札幌PARCO店

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