【Royz・昴 & 甘い暴力・咲】次代を担う両雄が待望の14000字初対談!「一緒に時代を作りに行く仲間だと思ってる」────(昴)、「本気でライヴをするんじゃなくて、本気で生きるしかない」────(咲)

本気でライヴをするんじゃなくて、本気で生きるしかない
────認めているからライバル心の芽生えと同時に、わかりあえることもあると思うんです。ところで、おふたりにとって“信用できる”、“認められる”って思うポイントってどんなところにあります?
昴:俺は純粋たる誠実さ。バンドごとにいろんなスタイルがあるし、それを否定するわけじゃないんだけど、自分が大事にしているものに対する誠実さで信用できるかどうかは決まるかな。あのさ、前にSNSで俺のことを「彼はたとえ負けても前に倒れる。絶対に後ろには倒れない。」って書いてくれてたでしょ?
────書かせてもらいましたね。9月の渋谷公会堂ワンマンが終わった後ですね。
昴:このままで終わってたまるかって気持ちをずっと持ってるからそうなるし、俺はそういうマインドを咲くんにも感じるんだよね。甘い暴力だってお客さんにガツガツ甘えられるぐらいの動員なのに、しれっとした味気ないライヴしているのを観たことがない。なんなら何かにイラついてる気すらする。
咲:うん。
昴:あれだけお客さんを集めてても、現状に甘んじてないし、このままやったらあかんねやって気持ちでライヴをやってると思うんだよね。
────両者似てますよね、マインドが。それこそ大事にしているものも。
昴:でもさ、咲くんはステージから降りてオフになるともう別人なのよ。誠実って言葉を考えたときに一番最初に出てくるのはこの人かもしれない。普段のLINEとか電話でのやりとりも含めて。あと、スポンジを持ってるんですよね。

────スポンジ?
昴:一回吸収した後に、自分の中で咀嚼してから吐き出せる柔軟さのこと。吸収したものを自分のものにするか、自分のものにしないかっていうのは一旦置いといたとしても、一回吸い取るスポンジを持ててるかどうかってすっごい大事なんですよ。それも誠実さの一種なんだけど、バンドにとって必要な武器だと思う。
────事象に対して素直に向き合えるかってことですよね。リファレンスとはまた違って。
昴:そういうこと。
咲:なるほどね。
昴:若手の子にも話すんですけど、迷ったときは誠実さと素直さが一番の武器になるんですよ。キャリアを重ねると頭でっかちになりがちだけど、それだと手詰まりになるから。キャリアがあるのにスポンジを持ってる人が一番脅威なんだよね。
咲:結局、何をするかを突き詰めると生き方が全てなんですよ。
昴:そうそう。どれだけイキろうが、大口たたこうか別に全然いいんやけど、普段からどうやって生きているかが大事やし、ちゃんと誠実にやってる人がステージでイカついステージやったときのギャップって魅力的だもんね。
────自信があれば普段からイキり散らす必要もないし。
昴:そうやと思う。
咲:信用できる基準みたいなところでいうと、昴くんがほとんど話してくれたんですけど、スポンジの話然り、現状の自分を受け入れることができてる人かどうかっていうのは気にしてますね。先日の「びじゅある祭」でも結構面食らわされたことがあって、2日目のトリ前が甘い暴力で大トリがRoyzで、昴くんとちょっとだけ話する時間があったんですよ。ハッキリ言っていいんかな…。俺から見てその日に出演していたどの若手よりも目がギラついてたのが昴くんなんですよ。こんな大先輩なのに。
昴:いや、そんな先輩って感覚ないけどなぁ。
咲:本人が抱えてる責任感と自分を受け入れている覚悟がこの目をさせるんだなと思いましたね。正直、今のRoyzってめちゃめちゃ大変だと思うんですよ。なんならツラいと思う。だって背負ってるものが全然違うじゃないですか。でも、昴くん自身が自分の飼い慣らし方を熟知していて、ちゃんとコントロールしてるんですよ。ちゃんと自分を受け入れて最前線で闘ってるなって思った。多分そこに変なプライドもないし。昴くんにもギャップを感じる部分は多いな。
────個人的にこの2年間で両バンドのインタビューをする機会が著しく多かったんですけど、圧倒的に真面目なヴォーカリストなんですよね。ふたりとも。
昴:はいはいはいはい!やっぱりね~。
咲:あははは!
────いや、ほんとうに思ってますよ!
咲:昴くんは特に男前の宿命やと思うんですよ。
昴:お互いイケメンやん。
咲:顔がいい人って簡単に言ったら、“どうせアイドルバンドなんでしょ?”みたいな偏見が嫌でもつきまとうと思うんです。
────まったくの的外れですけどね。節穴か!と言いたいところですが。
咲:でも、今のシーンは顔で売ろうとしているくだらないヤツが本当に多すぎるから仕方ないんですよ。俺も先輩とかから“チャラいバンドなんでしょ?”とか言われますし。
昴:それはなんもわかってないな。
咲:俺らも音楽に対しての誠実さを大事にしてるし、昴くんからもそれを感じるんですよ、うがった目で見られることに対する反逆心を。だからこそ2マンツアーはすごく怖い。脅威の存在ですね。
昴:それはうちも一緒の気持ちやわ。甘い暴力は怖さしかないよ。
────関西出身で、シーンでの立ち位置的にもネクストを担うふたりだと思うんですけど、お互い意識はするんですか?
昴:意識するよ。意識するし、お互い先に武道館に辿り着いた先輩がおるわけやん?そういうところも似てるんだよね。
────まさに己龍と-真天地開闢集団-ジグザグという、両者にとって先に上のステージに到達した先輩がいるのも共通項です。また比較的近しい世代でもキズとDEZERTが日本武道館に辿り着きましたよね。
昴:俺が見てきたヴィジュアル系の歴史って4つくらいのバンドが集まってひとつの時代を作るイメージなんですよ。俺のなかでは4つの席にキズとDEZERTはもう座ってるから、あと2つに誰が座るのかっていう椅子取りゲームみたいな闘いをやってる。
────その指標として日本武道館がある。
昴:そうやと思うし、他のバンドには申し訳ないけど、そこに入り込めるのはRoyzと甘い暴力しかおらんと思ってる。こういう発言聞いてちゃんとムカつくバンドは自ずと上がってくるとは思うけど。だから、武道館ワンマンを発表できて少しだけ安心してる部分もある。
────甘い暴力が先に行くんじゃないかって警戒心もありました?
昴:正直あったよ(笑)。キズとかDEZERTもそうだけど、武道館に進むのって周りの人が応援したくなるような風が必要やと思ってて。そういうものを甘い暴力からも感じてましたね。でも、自分らが発表できたから言えるけど、甘い暴力からも早く武道館決定っていうニュースが届いてほしいなって思う。一緒に時代を作りに行く仲間だと思ってるから。
咲:素直に嬉しいですね。
昴:甘えた感じで“一緒に行こうよ”とかそういうのじゃなくて、ちゃんとリスペクトしてるからこそ、お互い早く行こうぜみたいな気持ちをずっと持ってましたね。やっと言えるけど。
────互いに意識する理由としては様々な共通項があるからってこともあるけど、ということは抱える悩みや葛藤も似ているからわかりあえるんでしょうね。2マンツアーを経てそれはもっと濃くなるのかと思うんですけど。
昴:偉そうに捉えられたらアレやねんけど、動員増えるとマジで悩み事も増えるんですよ。最近好きになってくれた人、出戻りで来てくれるようになった人、ずっと応援し続けてくれている人、それぞれで求められてるものが違うから表現することのレンジを広げないといけないから。
────それこそセットリストひとつとっても熟考しますよね。
昴:でも、これってある程度の高みまで来ないと、感じることすら許されなかった悩みやなって思ってる。この悩みをびじゅある祭のときに咲くんにちょっと相談したんですよ。
咲:それも畏れ多い話なんですけどね。
────咲さんなら解ってくれると思ったからですよね。
昴:うん。咲くんも“わかる”って言ってくれて。甘い暴力のライヴからも背負ってるものとか抱えてるものが伝わったんですよ。これはヴォーカリスト同士だから感じ取れる部分なんやけどね。なんならちょっと心配になる部分もあったかな。
────おふたりともストイックだけど、裏を返すと自身に負荷をかけ続けてしまう傾向ですもんね。
昴:そこも含めて同志って感じだよね。
────なんて話もありますけど、咲さんはRoyzの武道館が発表されて、ぶっちゃけどう思ったんですか?
咲:豊洲PITで発表するんやろうなとは正直予想してたんです。ただ、これほんまただのおもろ話なんやけど、俺、杙凪くんに先に訊いてるんですよ。Mana様がやってるMoi-même-Moitiéっていうブランドのファッションショーで共演したときに“武道館やるんやろ?”って。
昴:武道館やることは、豊洲PITで発表するまで親族にも言わないぐらいのトップシークレットだったんで答えられない期間が結構長かったんですよ。
咲:だから杙凪くんも“いや~どうなんですかね~…”みたいな反応で(笑)。
昴:いや、もうそれ答えやん(笑)。
────豊洲PITのMCで杙凪さんは“武道館やるの?って訊いきてきた関係者は1人だけだった”っておっしゃっていましたが…。
昴:そのたった1人が咲くん。俺らね。そういう嘘つくのほんま下手なんですよ。
咲:でもギャ男的な感覚でもみんな武道館発表を予想してたと思うし、発表してほしいっていう希望的観測もあった。
────悔しさよりは嬉しさの方が強かった?
咲:悔しさはずっとありますよ。でも、これだけ長く活動されているなかで、もう一回エンジンかけて帯締め直してまくり返すっていうのはかなりの覚悟が必要やと思ってるから、それをやってのけたRoyzの面々に対して心から尊敬できるなって気持ちです。悔しさはDEZERTやキズ、ジグザグにも感じてるけど、もっと言うと自分自身に感じてるんですよ。まだ俺は日本武道館に立って然るべき人間になれてないなって思うし。

昴:いや、俺はそうは思わないで。
咲:もっと良いライヴ、良い曲を書かなきゃって思います。
────全国から武道館に人を集めると、集めた手前、全員を幸せにしなきゃいけないっていう責任が発生するんでしょうね。そこで生じる変化も少なからずあるし。咲さん自身はどんなところを中心にして今ブラッシュアップをしているんですか?
咲:音像とか尺間とか細かいところをもっと洗練させていきたいですね。ただ、難しいんですけど、洗練されない良さもあるんですよ。不完全なものだから、ファンの方の心を掴めるものもありますし。
昴:うんうん。
────矛盾もあるんですね。
咲:その矛盾を成立させるために、じゃあどうすりゃいいのか?って考えると、本気でライヴをするんじゃなくて、本気で生きるしかないんですよ。ライヴの時だけ“シャーッ!”とか気合い入れたって何のパワーもそいつからは感じられないし。
昴:ほんとそう。普段から何をしてるかやから。
咲:じゃあ日々を本気で生きるって何?ってなったときに、どれだけ濃密な1日を過ごしてるか、やと思いますね。1日単位で計算してがむしゃらに生きる。生きるっていうのはよく言う“生きろ!”とかそういう安直な意味じゃないですよ。
────ステージで本気を出すのは当然として、ステージを降りたあともその本気を継続できてるの?ってことですよね。
咲:何もせずに生きてたら、死んでるのと変わらないですから。常に完璧でいるなんてきっと無理なんでしょうけど、だからこそそれを求め続けて日々を濃密に生きて音楽に還元していく。あり得ない完全を求めることで、不完全な自分でい続けられるのかもしれないですしね。
────それも矛盾だから、無限のジレンマが生まれそうですよね。
咲:だから続けてるんでしょうね。それは昴くんのライヴからも感じるし、キズやDEZERTを観てても感じる。
昴:きっとそれがある程度進んだ先の景色なんやろうな。
咲:バンドって当たり前に変わっていくんですよ。絶対変わっていくんですけど、変わっていくなかで絶対に変えたくないものがあるじゃないですか。
────軸になるものですよね。
咲:変わっていくからこそ、その絶対に変えたくないものがバンドには大事だと思ってます。昴くんのなかにも変えたくないものがあるんじゃない?
昴:それでいうと、Royzを始めたときの俺が今のRoyzを見たときにどう思うのかってところかな。悩んだときはいつもそれを判断基準の一つにしてる。それは変わらない。やっぱり、昴にも杙凪にも公大にも智也にもあるべき姿っていうのがあるから。俺は頭でっかちになることもあるし、そういうときは初心に帰るじゃないけど、そういう視点で考えることは変えてない。Royzにやってほしい曲とか、昴に言ってほしい言葉っていうのはあるから、それは大事にしてる。
────もう1人の昴がRoyzを見てるんですね。
昴:バンドって人間力だから、それを見失わないようにね。価値観も考え方も違う人間同士のいびつな集合体の歯車が、ガチッってハマったときにバンドパワーって生まれるから。考え方が変わることは自然なんよね。俺、MCでもよく言ってるんですけど、“言ってることめっちゃコロコロ変わるけど、それはお前らが思ってるスピード感より早く成長してるからやで”ってことで。
────軸がブレてないからこそ変わっていくこともある。
昴:うん。変わっていくことは大前提やと思う。だからこそ、自分が一番のRoyzのファンであるべき。



