【Royz・昴 & 甘い暴力・咲】次代を担う両雄が待望の14000字初対談!「一緒に時代を作りに行く仲間だと思ってる」────(昴)、「本気でライヴをするんじゃなくて、本気で生きるしかない」────(咲)

お客さんが入らないうちは寝ずにバイトせえよ
────ここからはVISUNAVI Japan的にも伺いたい話題なんですけど、ちょっと今の若手シーンが盛り上がりを見せつつ悩みもあるんですよ。
昴:そうなんや。
咲:むしろその悩みをききたい。
────シーンの継続的な活性化をみんなが願っているって前提なんですけど、やっぱり大先輩が健在かつ、最若手シーンからどんどん脅威になる存在が出てくるのが正しいと思うんですよ。ただ、ちょっと数字がついてくるとさっきのスポンジ理論がおざなりにされているなと感じることもあって。もちろん良いバンドもたくさんいるんですけど、どこか意固地と言いますか、いい音楽だから必ず結果が出るほど甘くないのになぁというところはあります。
昴:あー、なるほどね。正直、時代のせいもあるからかわいそうやなって思ったりもする。今の子たちはサウンドもやたらいいし、歌上手い子も増えてるしアレンジもいい。それだけの音楽やってれば、なんで結果がついてこないんやろって思う気持ちもめっちゃわかんねんけど……俺から言わせてもらうと10年早い。
────石の上にも三年…どころではなく。
昴:俺もさ、可愛がってる後輩からそういう相談めっちゃ受けんねんけど、ちょっと大きな会場が埋まらないから見切りつけようかなみたいなこと言われると……“は?”って気持ちにしかならない。
咲:目先のちょっとした規模とかどうでもいいですもんね。
昴:たとえば“MCで説得力のある言葉が出てこないんですけど…”って相談されても、そんなん出るわけないやんって。
咲:それこそ生き方そのものやから。
昴:そんなんが活動始めて何年かで出せるなら誰も苦労しないよ。何べんも言うけど、バンドは人間力やから、ちょっと決意した程度で明日から変わるわけがない。俺もそれを乗り越えてきたけど、そんな甘くないし。若い子たちのことは応援してるから盛り上がってほしいし、目の前のことで頑固になる気持ちもわかるけど、その先の世界に早く来いよって言いたいですね。
────厳しくも愛のある激励ですね。
昴:俺らもそういうの死ぬほど経験してここに辿り着いたから。演奏とか技術も大事やけど、それ以上にまずは人間として成長しなきゃいけない。みんな先を急ぎすぎ。人生の後戻りなんていくらでもできるタイミングなのに、何を意固地になってんねんと思う。いろいろなアドバイスを受け止めて、いろいろやって失敗を重ねて道を切り拓いていくぐらいの覚悟がないと生き残っていけへんよ。近道なんてないから。トガる方向を間違えたら、できるはずの後戻りもできなくなるからね。

咲:昔は対バンの楽屋でも“今日50人入ったわ”とかデカい声で話して浮かれているバンドとかおったんですよ。ほんまくだらなくないですか?日本の音楽シーンだけでもちょっと見渡せば横浜アリーナやってる人もたくさんいるし、ホールツアーで全国廻ってるバンドもたくさんいる。たかだか50人入れてたからなんやって思ってました。
昴:わかるわー、わかる。
咲:そんなとこで満足しててもしゃあないやん。もっともっと高みを目指してたらそういう言葉とか驕りが出るはずないんですよ。うちらも1000人以上入るようになってきたけど、上には上がいる。慢心なんてするはずもないし、むしろもっと頑張らなあかんって本気で思ってますもん。お客さんが増えていくことは嬉しいですけど、ここであぐらかいてどないすんねんっていう気持ち。
────もちろん自分を貫くことの大切さは大前提なんですけど、それだけで上がっていけないし、なにより広がっていかないんですよね。ハングリーさってどうやったら習慣づくんですかね。
咲:規模が大きくなくてもメシ食えちゃう現状も良くないと思いますよ。
昴:そうやなぁ。
咲:お金稼ぎのためにお客さんとの距離バグらせるような売り方してると、貪欲さとか枯渇感がなくなっちゃうんですよ。これ俺の自論なんですけど、お客さんが入らないうちは寝ずにバイトせえよって思います。毎日バイトして、寝ずにスタジオ入ってライヴもする。フラフラになりながらも必死で曲を書いて、お客さんが増えないと生きていけない状態にしないと掴めないものってあるから。
昴:売れなくても生きていける余裕を小さい規模で持ってたら、お客さんを増やしていくにはどうしたらいいのかっていうトライアンドエラーを真剣にできないよね。うん、それやな。
咲:物理的に生きられへんってなったら、文字通り命懸けで音楽に向き合うしかないし。
────美談にするわけじゃないけど、かつては文さんもバイト帰りの電車で気絶したけど、そのままスタジオに向かってたみたなエピソードもありますもんね。
咲:覚悟は目の色に出るから。もちろん若手で良い目つきしてる子もおるけど。
昴:俺らだってマジで塩舐めてたからね。初めての東京遠征なんてメシ食うお金なくて、メンバーが家族にお土産で買った“東京ばな奈”に手伸ばしたもん。
咲:あははははは!
昴:ある程度合理的に生きることを否定するのも違うけど、ハングリーさは大事よね。それがあると周りからの意見や言葉をいったん吸収しておいた方がいいなって自然と思えるはず。
────Royzも甘い暴力もいまだにハングリーだし、そこの意識づけって結局は自分たちでしていかなきゃいけないんでしょうね。
昴:あとシンプルに今の自分たちはまだ何も成せてないと思ってるから。だって、武道館を発表しただけでしょ?武道館で何をして、その先どう進むかが大事だから、むしろ今もっとハングリーになってると思う。ただ、何を言ってもお客さんを入れたもん勝ちですよ。そこは残酷やけど。お客さん入れてないのに発言だけいっちょ前なんが一番ダサいしイタい。
咲:さっきの話じゃないけど、先を進んでる先輩の姿を見てきているから、余計に慢心できない気持ちがありますね。
────ちょっと規模の大きい話になるんですけど、後続に背中を見せていかなきゃみたいな使命感って今はあるんですか?
昴:んー……夢を見せた責任は少し感じてるかな。年数的にもRoyzを見てバンドを始めた子たちもおるから。何回も辞めようと思ったときに、そういう若いバンドの存在が踏みとどまらさせてくれたところもあるし。でも、それと同じくらい俺がなにを偉そうに背中見せようとしてんねんって気持ちもある。バンドとして完成してないし、まだまだ勉強中の身やから、背中を見せるっていうほどの大そうな気持ちはないかな。
咲:俺も一緒で、なんの成果も上げれてないっていう焦りにも似た感情がずっとつきまとってる状態やから、背中を見せてる場合じゃないですよ。アンダーグラウンドのシーンの人に会ったときに“いや~、甘い暴力は勢いすごいね~”とか言われることがあるんですけど、ほんまにああいう風になりたくない。そういう大人も先輩もむちゃくちゃ嫌い。ほんまにかっこ悪いなって思ってて。だから、自分たちもこの先で勢いある若手が出てきたときに、演奏力、歌唱力、パフォーマンスが合わさって燻されたライヴでちゃんと圧倒したいんですよ。“うわ、勝たれへんわ!”って思わせるのが先輩の役目だから。そういう心づもりでやってますね。

────背中を見せるつもりなんてさらさらないけど、勝手に見て学べと。
昴:そう。見せてる暇ないから勝手に見ててって感覚に近い。
咲:キャリアを重ねるほど、ナメられてる場合じゃないって気持ちがふつふつと湧いてきてるし、ほんまにその通り。気合い入れてステージに上がってライヴするのは当たり前で、その前後のステージに立ってないときにも、その気持ちを持ててるかで差がつくんだと思いますよ。
────実際、人生においてステージに立ってない時間の方が長いわけですしね。
咲:これはちょっと話が変わるんですけど、俺のなかでずっと昔から“出口動員”っていう言葉があるんですよ。対バンしたときに、自分らをお目当てで観に来てくれた人数はわかるけど、全バンド終わったときに、本心では“今日はここのバンドが一番良かった!”って思わせたバンドは誰かってことを意識してますね。
──── 一番心を掴んだのは誰か…もっと言えば心を奪ったのは誰なのか?ってことですよね。
咲:そうです。
────ここ数年で若手バンドが実際に取り入れたんですけど、なかなかスリリングでしたよ。その企画を考えたメンバーはもう脱退してるんですけど、咲さんの“出口動員”っていう考え方に感銘を受けて提案したと語ってました。
咲:実際に結果の数字もSNSで発表してましたよね。
昴:そうなんや。おもろい。
咲:結局“出口動員”を意識すると、スポンジ理論になるんですよ。プライドをちゃんと捨てて、やるべきことをやり切る。ちゃんと歌いたい曲もあるけど、場合によっては、こうやって楽しむんやでってステージングに特化した方がいいときもあるし、もちろん逆もある。中途半端なことが一番意味ないんですよ。そういうバランス感覚を研ぎ澄ませるために柔軟な姿勢でいることは必要やなって思ってます。
────それって発するメッセージと姿勢にも出ると思ってて。おふたりは自分を主張する言葉も発するけど、ちゃんとお客さんが受け取ったときに何かを持ち帰れる言葉をすごく大事にするじゃないですか。
昴:そうやね。
────だから、言葉に深みもあるんですけど、一方で憧れても真似できる存在ではないと思うんです。ただ、普通に生きていると、昴さんや咲さんのように常に頑張れない方もいるじゃないですか?
昴:俺も最近頑張れないときめっちゃあるで。やる気はあるんやけど、身体がついてこないみたいな。
────そういうときにおふたりは、どうやって自分を整えているのかも教えてほしいんです。
昴:自分はびっくりするぐらいオン・オフのスイッチがあるんで、頑張れないときはスイッチがオフの日って決めてるかな。もともとは咲くんみたいに毎日を一生懸命に生きて、体重を全部乗っける生活をしてたんやけど、それで心が壊れかけた時期があって。それがきっかけなんやけど、Royzの昴っていう人間は最近になってようやく逃げることも覚えてきましたよ。
────性格的に逃げることに恐怖心を抱くことはないですか?
昴:逃げた分、いろんな人にも迷惑かけるしね。恐怖っていうか、ちょっと申し訳ないなって思ったりはしてるんやけど、俺が壊れずに長く歌い続けることが、みんなにとって一番の幸せだなって自信があるからちゃんと逃げられる。今はちゃんとバランスを取ってるかな。
────咲さんはいかがですか?
咲:この質問、実はすんごいタイムリーなんですよ。今年の夏のライヴで4~5回かな?ライヴの本番中にぶっ倒れることがあって。SNSをやってないから、なんで倒れたかをお客さんに発表する機会もなかったんです。
────追い込みすぎてしまった?
咲:そうですね。だから、ただ意味もなく休むってのは違うけど、頑張れないときは頑張らなくていいんじゃないかな。頑張るために休むって考え方は必要やなって思います。頑張れるときは頑張れちゃうけど、それを超えて……たとえば、もう死にたいみたいな気持ちに心が支配されちゃったら、なんも考えんと一旦寝ろ!って言いたいです。
────ありがとうございます。おふたりの考え方も共有できた気がするんですけど、今回、これまで一番長く喋りました?
咲:うん。一緒に飲んだこともまだないしね。
昴:大阪にライヴに行って、スケジュールが被ってたとしても、ヴォーカリスト同士だと喉のケアがあるから飲みにいけないんですよね。こんなに話したの初めて。
────お互いの印象は変わりました?
咲:いや、まったく。2マンツアー頑張らないとヤバいなってぐらいです。
昴:俺も変わんないかな。ちょっと女みたいなこと言っちゃうけど、好きになった人、間違ってなかったなみたいな感じ。リスぺクトできる人であり、バンドだなと思います。



