【ライヴレポート】Royz presents Royz×甘い暴力 2MAN TOUR 「ちちんぷいぷい。」2025.11.30 Veats Shibuya◆今、最も旬な2バンドが確かめ合った互いの真髄───。

Royz presents Royz×甘い暴力 2MAN TOUR 「ちちんぷいぷい。」のファイナル公演が2025年11月30日(日)にVeats Shibuyaで開催された。
本公演は9日間の間に滋賀・兵庫・大阪・東京を廻るという濃密なものだった。このスケジュール感からも、両バンドが多忙なライヴスケジュールの合間を縫ったうえで、強い意志のもと実現させたものであることが伺い知れる。
ともに関西発のバンドとしてシーンのネクストブレイカー的ポジションとして君臨する存在だけに、オーディエンスだけでなく彼ら自身にとっても待望であっただろうツアーの結末を本レポートでお届けする。
◆ ◆ ◆
甘い暴力
先攻は甘い暴力。
幕が開くなり、「みなさん!えー、よろしくお願いしますね、今日は。元気~?イエーイ!」と関西弁丸出しのMCを始める。まさに奇襲攻撃のような一手に超満員の観衆からは拍手喝采が巻き起こった。
振付講座を挟んだ「嘘キス」から転がり出したステージは「よしなに暴れて折り畳め!」と雪崩れ込んだ「ハジメマシテ。」、“ちゅーしてお願い!!”に対して“いいよー!”のコールアンドレスポンスが強烈な「ちゅーしたい」とアッパーに畳みかける。
咲がうさぎの被り物を纏った「性欲うさぎ」然り、甘い暴力のファンシーなサイドから攻めたて、その個性を存分に見せつけるが、心地よいビートと、とにかく楽しませることに特化したステージは否応なしに会場全体を巻き込んでひとつに束ねていく。

甘い暴力はシーンの次代を担うバンドとして、大規模会場でのワンマンをことごとく成功させているが、それはRoyzも同様。だからこそこの2マンツアーに対する期待値は並外れたものだったのだが、亜流を拒絶するように独創的に謳歌するステージは早くもこの夜の重要さを余すことなく伝えてくれた。
独創的といえば、彼らのライヴでお馴染みの“茶番”も健在。
新人ホストに扮した咲、カリスマホスト・文路役の文による茶番は、ミニスカ丸の内風OLに早着替えをした義が演じる“太客”がアヤジから新人の咲に乗り換えるというコミカルな内容のものだった。セリフのひとつひとつが抱腹絶倒の爆笑を呼んだのも無理はない。何故なら、そのセリフはRoyzの名曲「丸の内ミゼラブル」の歌詞をそのまま引用したものだったからだ。
どんな場面でも会場全体を味方につけ、楽しませることに特化した甘い暴力らしい空気を作ると、続けて披露されたのはまさかの「丸の内ミゼラブル」。
このカヴァー選曲にはRoyzのオーディエンスも緑に光るお馴染みのRoyzスティックを左右に振って応えてみせた。哀愁を帯びた咲の歌声も印象深く、実に憎い演出だ。
中盤、サビでXジャンプが巻き起こる「ファッションメンヘラ」に続いたのは新曲「ハッピィアフターピル」。ドラスティックな手触りの楽曲が喪失感と退廃性を感じさせ、複雑な転調のなかで、一音一音が感情過多に響く。
キラーチューン「嚙み痕」ではブレス混じりの繊細なアカペラとアンサンブルの隙間に生まれる切迫感でシリアスに惹きつけ、「甘い暴力の真骨頂見せてやるよ!」と咲が吼えた「乱痴気卍娘」では一転してカラフルな照明に映えるようにモッシュとヘッドバンギングの波を巻き起こした。「足りねえ足りねえ!あげろあげろ!てめえらでスイッチ入れろ!」と煽り倒した「暴動」でさらに加熱の一途をたどったことは言うまでもない。


甘い暴力は本ツアー開始直前に来年2月のワンマンをもって、これまでバンドの屋台骨を支えてきたドラマー・啓が脱退することを発表した。
その衝撃は大きいものだったが、バンドは前に進む意志を表明し、啓もまた甘い暴力への深い愛情を表明した。
嫌いになれたならどれだけ楽だっただろう。けれど、互いに愛しているからこそ最後の瞬間まで全てを捧げることになるだろうし、バンドはこの先も続いていく。これまでが間違ってなかったことを、4人の鳴らした音楽が素晴らしいものであることを証明し続けるために。

「一音で空気なんて変えてやんだよ!」
「Royz、日本武道館に立てねえ?甘い暴力は日本武道館に立てねえ?どいつが言ったんだよ!?連れてこい!俺たちの音楽でボコボコにしてやるよ!!!」
そう伝えたあとに、こうも言った。
「今日という日を忘れんじゃねえぞ。心に刻めよ!あと何度、Royzとこんなライヴができるんだろうな?あと何度、こうやってお前と目を合わせて本気の対話ができるんだろうな?…あと何度……コイツとのライヴができるんだろうな!おい!!!」
道を別つことが決まっている愛すべき仲間に対して、咲は一瞥もくれず、それでも“コイツ”と呼び、指を差し、想いのこもった背中で語った。いや、叫んだ。
甘い暴力の楽曲は、彼らが掲げている「拗らせ女子達に捧げる、スウィート・ヴァイオレンス・ロック」のとおり病んでいるものやダークなものも多いが、そのなかに一筋の光が残っていることも印象的だ。決してバッドエンドで終わらない。
そのバッドエンドで終わらないことを甘い暴力の魅力だと、一番後ろからバンドを支え続けている啓は常々語ってきた。
様々な感情が入り乱れるなか演奏された「どうせ死ぬ」。
啓の打ち鳴らす一音一音はバンドをリードし、やけに感情を揺さぶるものだった。
どうせ死ぬのだから投げやりにもなれるし、未来が愛おしくなるものだ。誰にだって平等な時計の針は天秤に架けることができない。
だからこそ、己を信じて進むことは正しく生きることでもある。
バンドの今をこれでもかと内包したエモーショナルな演奏の余韻が残るなか、「湿っぽく終わらせてたまるかよ!昴が勝負かけてきたんだよ!」と対決姿勢で挑んだ「勝て」まで、あらゆる側面でバンドの在るべき姿を提示してみせた甘い暴力。
最後に文、義、啓が向かいあい、自分たちのやるべきステージを叩きつけた。
それは彼ら4人がこれから進む未来を信じさせるには十分な時間だった。

Royz
後攻のRoyzは先日、国内最大規模となるライヴハウス豊洲PITでのワンマン「#Royzって誰なん?」を満員のなか大成功させ、同公演の冒頭で2026年9月16日に自身初となる日本武道館ワンマンを開催することを発表した。
始動初期から順調に動員を拡大していったバンドにとって、17年目で辿り着く日本武道館は想定よりも時間を要したもとも思えるし、一方で辛酸を舐めても諦めなかった雑草のような逞しさを持った今だからこそ相応しくも感じる。
幕が開きシンフォニックなSEに導かれて登場するメンバーも落ち着いた様子で、観衆をしっかりと見渡し始まった1曲目は「DERRINGER -41口径が叶える復讐-」。
これには予想しない選曲にフロアからは驚嘆の声があがった。わずか4本のショートツアーのなかでも各所でセットリストを大幅にチェンジして臨むこととなったが、この日も終始意外性の高い内容で、近年完成形に向かい始めていたRoyzの鉄壁の方程式を自ら破壊するような試みを随所に感じさせる。
抑えた歌唱とのギャップが抑揚をつけるナンバーは、序曲にして早くも昴、杙凪、公大、智也それぞれの在るべき姿を全うする説得力を感じさせるものだ。
「さぁいこう!渋谷!」と手短に告げたのは攻撃性の高い「witch in the HELL」。2012年リリースの「Starry HEAVEN」のカップリング曲をドロップし、コール&レスポンスで熱量を高めると、続いたのはさらに意外な1曲だった。
3曲目にして早くもプレイされたのはなんと「GIANT KILLER」。
ハードで骨太なサウンドと流麗なメロディ、反骨精神全開の歌詞。Royzの3拍子が揃ったナンバーは2024年3月のリリース以降、バンドを象徴する楽曲としてライヴの最重要曲面で演奏されることが常となっている。事実、日本武道館ワンマンのタイトルは『「GIANT KILLER」-下剋上、その先へ-』だ。そんな1曲を序盤から繰り出すあたりからも並々ならぬ気合いを感じさせた。
昴も咲も、バンドとは生き方が反映されるものだと語るが、下剋上を誓うRoyzにとって「GIANT KILLER」は心臓のような存在だ。武道館を発表したことでバンドとして背負うもの、言うなれば責任が生じているようでもあり、この選曲には「GIANT KILLER」に依存しない自分たちの姿を見出そうともがいているようにも見えた。
そうは言っても、それはネガティブなものではない。よりハイトーンが伸びやかになった昴は歌い上げながら笑顔を見せていたし、些細なアイコンタクトに呼応する楽器隊は視線ひとつでグルーヴを芳醇なものにする。
昴の歌唱力を擁するRoyzは互いを尊重するように安定した演奏で楽曲に寄り添う。

杙凪のタッピングからリズムインとともに公大と智也のボトムが疾走感を牽引する「アルカロイド」、野性的な「PANDEMIC」に続いて、間髪おかず演奏されたのは智也のドラミングがフックとなるハードな「VENOM」。
昴はしゃがみこんだかと思えば、フロアを舐めまわすように見つめアダルティックなセクシーさも感じさせ、ファルセットの押し引きで、楽曲内で人格を入れ替えてみせる。

ハードなナンバーの応酬のあとは繊細な楽曲たちが続けざまに披露された。
甘い暴力のカヴァーを受けて「これが本家だ」と届けた「丸の内ミゼラブル」。
東京を舞台にした物語と爽やかなメロディが胸を締め付ける「東京プラトニック」と連なるような女性目線の歌詞は、失恋のかさぶたをなぞるようなストーリーラインがセンチメンタルに誘う。自身の葛藤を燃料に変えて下剋上を吼えるストレートな生き様も今のRoyzを象徴する要素だが、一方で物語性の高い楽曲ではナイーヴな痛みを描写する。
Royzと甘い暴力、両者の共通項は多く、関西出身であることに加え、直属の先輩がそれぞれに大きなインパクトを残していることも挙げられる。
言ってしまえばRoyzの先輩にあたる己龍は3度の日本武道館ワンマンを行っているし、甘い暴力にとって先輩である-真天地開闢集団-ジグザグも日本武道館や横浜アリーナに立っている。
すぐそばにいる先輩は彼らにとって敬意の対象であり、刺激を受ける存在だろう。そして、同時に悔しさを教えてくれたバンドだ。しかし、Royzも甘い暴力もすでにシーンの未来を牽引する存在としての立ち位置を確立している。
それでもこの両者のステージから発せられるのは、心根の奥深くから噴出されるマグマのような執念深い情熱なのだ。規模感を拡大してもなお、挑戦者としてのメンタリティを持ち続けるところこそが、両バンドの最たる共通項なのかも知れない。そして、このマインドはきっと今後も揺らぐことはないだろう。それは、彼らが何かの勢いでトントン拍子に現在の立ち位置に辿り着いたわけではなく、着実にそのストイックな姿勢で牙城を築きあげたからだ。言うなればRoyzも甘い暴力もどこまでも泥臭いのだ。


ラストスパートはダイナミックな「Emotions」、オーディエンスの合唱が響いた「ANTITHESIS」、ウォール・オブ・デスを生んだ「開眼」と再びハードナンバーの応酬。この夜のRoyzはとにかく攻撃的だった。
「今の4人の甘い暴力と2マンツアーできて心から幸せでした。ありがとうございました。彼らとはこれから先、長い長い付き合いになると思います。」
「甘い暴力はいつでも一番早くレスポンスをくれて僕らのやろうとしていることに力を貸してくれます。次は僕らが力を貸す番だと思ってるので、なんか困ったらいつでも連絡ください!」
対戦相手の気持ちも慮って、敬意と思いやりのこもった言葉を届けたラストは「AFTER LIFE」。
“どうせ百年後にはこの物語を誰一人も知りやしないのさ だからもう少し気づかないふりしたまま 嗚呼 踊っていたい 時代は巡り 変わり続ける 君も僕も居なくなって 終末のベル 再会を願えたらそれは素敵さ”
普遍的なテーマがライバルへの愛情の歌にも聴こえた。

ツアー中、セットリストに甘い暴力のカヴァーを組み込んでいたRoyzだが、この日カヴァーはなかった。その代わりに用意されていたのはとっておきのコラボだ。
Royzに呼び込まれる形で甘い暴力の面々が登場し、ステージにはツアーを共に走り抜いた8人が並んだ。僅か4本とは思えないほどに濃密な時間を共有した彼らからは充実感が伝わる。
咲が昴に「滋賀の男前、腹立つわ!」と言えば、昴が「大阪の男前腹立つわ!」と重ね、咲が「俺は和歌山や!」と返す場面もあったし、コラボレーションすることになったラストナンバー「キュートアグレッション」では公大が茶番をやり返し爆笑を掻っ攫うシーンも生まれた。

共によく似た境遇で、昴と咲は近しいマインドとスピリットを抱いているが、この2マンツアーを経て浮き彫りになったのはRoyzと甘い暴力は最も近くて最も遠い存在だということだ。
それぞれに得意とするアプローチがまるで異なる。想いを届けるために変化球を厭わない姿がむしろストレートな甘い暴力。一方で、ド直球な己の信念をぶつけ、それを受け取った者に委ねることで共鳴を巻き起こすRoyz。
互いにストイックで自身の信念に忠実だからこそ、敬意と理解をもって共存できるが、その実態は全く異なるものだった。
ありがちな化学反応は起きず、だからこそ、それぞれが揺るがぬ軸のもとに成り立っていることが確かめ合えた。それでいい。
よく似ているようで、全く別物。
だから闘いがいがある。深く認め合った両者はきっとまたいつの日か巡り合うだろう。
来たるべき、セカンドシーズンを心待ちにしたい。
Photo:Kyoka Uemizo
Text:山内 秀一
SET LIST
⚫︎甘い暴力
1.嘘キス
2.ハジメマシテ。
3.ちゅーしたい
4.性欲うさぎ
5.丸の内ミゼラブル(Royzカヴァー)
6.ファッションメンヘラ
7.ハッピィアフターピル
8.噛み痕
9.乱痴気卍娘
10.暴動
11.どうせ死ぬ
12.勝て
-----------------------------------
⚫︎Royz
1.DERRINGER -41口径が叶える復讐-
2.witch in the HELL
3.GIANT KILLER
4.アルカロイド
5. PANDEMIC
6.VENOM
7.丸の内ミゼラブル
8.東京プラトニック
9. Emotions
10.ANTITHESIS
11.開眼
12.AFTER LIFE
13.キュートアグレッション <with 甘い暴力>

Royz Presents 2025-2026 COUNT DOWN LIVE 「GOD FES」
2025年12月31日(水)【神奈川】川崎CLUB CITTA'
【開場/開演】 14:00 14:50
【チケット料金】
前売り¥¥8,000/当日¥8,500
【出演アーティスト】
Royz / Azavana / 甘い暴力 / ΛrlequiΩ / えんそく / グラビティ / コドモドラゴン
酒井参輝 / sugar / ダウト / 電脳ヒメカ / RAZOR(50音順・敬称略)
【チケット料金】
前売り¥8,000/当日 ¥8,500(税込・ドリンク代別)
https://l-tike.com/godfes/

2026年9月16日(水)日本武道館
「GIANT KILLER」-下剋上、その先へ- 開催決定!!
詳細後日解禁

甘い暴力 周年記念のプレゼンツ 九年目の招待
12月12日(金) KT Zepp Yokohama
OPEN 16:45 / START 17:30
1Fスタンディング 6,800円(税込)
2F指定席 6,800円(税込)
チケット一般発売中!
https://eplus.jp/sf/detail/2686760034?P6=001&P1=0402&P59=1
関連リンク
◆Royz Official Web Site https://royz-web.net/
◆Royz Official X https://x.com/Royz_official
◆甘い暴力 Official Web Site https://sweet-violence.jp/
◆甘い暴力 Official X https://x.com/sweetviolencejp



