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KEN(ex.201号室)×VISUNAVI Japan 新エッセイ「とにかく健やかである」連載開始!

昨年12月1日に惜しまれながら解散した201号室。
その中心に立っていたKEN(Gt&Vo)から連絡が来たのは年が明けて間もない頃だ。
自分の想いを赤裸々に語る彼が下した決断とはいかに。


生き甲斐だと思い込んでいた音楽活動が終わった。
まるで映画や小説のような人生だ、と息巻いて、早歩きを続けた毎日にも随分慣れ、多少の息切れなど気にも留めない生活を送っていたように思う。
ようやく追い風にも恵まれはじめた頃には、業界の天井について話すことにも慣れ、シラフで未来を語ることさえも無くなっていたんだな、と気がついた。

唐突に打たれたピリオドは、今、僕に沢山のことを教えてくれる。

例えば、“眠れない夜”は突然いなくなってしまうということ。
12月1日の解散ワンマン以降、僕は布団に入るとすんなり眠れるようになった。
「うざってぇやつだな」吐き捨てるように言ってやるぞ、と決め込んでいた相棒の不眠は、別れ際の挨拶もなしに去っていった。

「顔色良くなったな」
「思ったよりも元気そうですね」
「なんだか明るくなったね」
「ちょっと太った?」

絶対に変わってない自負しかないが、会う人会う人に言われるようになった。
むしろ讃えられてもおかしくないほど、今頃ロックンローラー(笑)な生活を送っている。

体調のことなど考慮せず、どれだけ二日酔いであっても「忘年会シーズンだからね」という免罪符をぶん回しながら呼ばれた飲み会には全て出席した。
遊び呆けたとて、さして誰にも迷惑をかける訳ではない環境はなんと健康的なのだろうか。

スケジュールの隙間を見つけて鬱憤を晴らせていたつもり、そんな日々に愛おしさは、案外ないのである。

そう、バンドを辞めた今、とにかく健やかである。

ステージに立つために制限した酒もタバコも、遊びも不摂生も、浴びるほどやっても元気なのである。
こんな皮肉があるのだろうか。

あまりに生きるのが楽だ。

もちろん生活は大変である。
けれどバンドさえやっていなければ、いくら物価高とはいえ、働けばなんとか生きていける。
コンビニで好きなだけ飯を買い、たいして行かなくなったシャワー付きのジムを契約し続けても、そんなにヒヤヒヤしない。

所得もほとんどないくせに、10万円近いレコーディング代を毎月立て替える必要はないし、徹夜を繰り返し、迫り来る締め切りにヒリつきながら、バイト明けの眠たい目を擦ってリハーサルスタジオに行く事もない。

どこかのバンドの動員数を聞いて、歯を食いしばることもなければ、衣装のスタイリングで鼻に埃がつまるほど服屋を練り歩くこともない。

深夜にPCを開いて呆然とする事もないし、誰かの曲を聴いて嫉妬する必要もなくなり、演出がどうとかで頭を抱える事もないし、MCで何を話そうかと本を漁る事もなくなる。

どこどこに挨拶に行かなきゃとか、打ち合わせの電話をしなきゃとか、発注とか納品とかデザインとかを同時進行して頭がこんがらがる事もない。
不安な未来に期待しなくてよければ、惰性で生きることの素晴らしさも見えてきた。

音楽は僕にとってなによりも身体に悪いものだったらしい。

素晴らしいと思えるミュージシャンが掃いているような世界で、歌い続けることがどれだけの重圧だったかを思い知った。


たった1ヶ月。
短過ぎる休憩でさえこんなにも感じ、変わることがある。

そのくせ、1月19日にライブに出ることを決めた自分が何よりも恐ろしい。
本音を言うと、辞めてしまいたいと思ったりもした。

だけど僕はどうやら才能があるしセンスもある、いや本当は誰よりも時間をかけられる情熱があっただけで大した事ない、でも天才と言ってもらえるし作詞も作曲も出来る、だけどYOASOBIとか米津玄師とかすごい曲を僕より何倍も早いペースで出し続けるから、やっぱり僕は凡人だけど、面白いことも奇抜なことも考えられる、実行する行動力もあるのに話題になる事もなければ炎上することもない半端者でしかない、それでも救われたとか言ってくれたり泣いてくれるファンがたくさんいる。

バンドをやっていた時も解散した今も頭の中はぐちゃぐちゃだ。
なんでも出来るつもりでいる自分に残ったのは結局音楽なのは分かってる。
その上そう言い聞かせる他ないのだ。
この期に及んで、「この愛さえ遺伝子のせい」自分の詞が掴んで離さない。

復帰するのはとても億劫だが、こんなにも早くステージに復帰するのには訳もある。
まだやってないことがある。

僕は本来ギタリストだ。
今更である。

天井の話ではなく、唯一空の話が出来る友人がいる。

この先の未来何をするか、どうなっていくかなんてわからないけど、のあかという友人と話すと全部とっぱらってまだワクワクする。
それってつまり、億劫なんて言ってられないってこと。

一度全力で遊んでみようと思う。
V系というシーンで、ギタリストとして。


バンドごっこ
Guitar KEN


2026年1月19日 高田馬場CLUB PHASE
2026年2月28日 池袋Black Hole

関連リンク

◆Official X https://x.com/room201_ken

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