【ライヴレポート】KiD one man live「真宵生誕祭 2026」2月17日 東高円寺二万電圧────「俺もやりたいようにやってみたいなって気持ちが芽生えました」

KiDのワンマンライヴが2月17日に東高円寺二万電圧で開催された。
そのタイトル通り、プロジェクトを密接に支えるサポートボーカリスト=真宵の誕生日を祝う宴は早々にソールドアウト。
はにかみながら幸せを噛み締める真宵の姿と、一方でソロ始動へ向けての決意が印象深かった当夜の模様をレポートする。
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KiDは楓(Gt)のソロプロジェクトである。
復活を果たしたR指定、さらには2024年に始動した蛾と蝶と複数のバンドで活動する楓だが、KiDは2020年よりパーマネントな活動でシーンに足跡を残している。
スキルフルなメンバーが流動的にサポートを務めてきたが、この日の主役である真宵(sVo)の存在はとりわけ大きい。
サポートとは言え、KiDに欠かすことのできない真宵の生誕ライヴということもあって満員の会場はその旋律に酔いしれた。
定刻通りに暗転すると爽やかなメロディで突き抜ける「空気を読んだ」からライヴはスタート。
そこから続けざまにアグレッシブな「斜苦楽」、ザクザクとしたリフで切り込む「脳足りん」とアッパーな選曲で会場の熱気を高めていく。

そのベビーフェイスと甘美な歌声が特徴の真宵だが、この日は、魅力はそのままに挑発的に会場を煽り倒す。それは闇雲な攻撃性とはまったく無縁のもので、とにかくこの空間をあますことなく楽しませたいし、楽しみたいという気持ちが全面に溢れ出たものだ。
彼のこれまでのキャリアのなかでは、自身が綴る詩世界に没頭するあまりにナイーヴな心象と対峙する場面も多く見受けられ、それもまたフロントマンとしての幹を太くするものだった。だが、この夜においてはそのような葛藤は介在せず、とにかくハッピーなのだ。
楓(Gt)のカッティングと真宵の甘美な歌声がどこか映像的な「神様」に入る前には、楓が真宵にチャーハンのLINEギフトを送ったエピソードも明かされた。
「まぁまぁ高かった。チャーハンってこんな値段するの?ってぐらい(笑)」とあっけらかんと語る楓のトークも会場を温める。

「神様」から間髪置かずに披露された叙情的な「揺蕩う」も然りだが、百戦錬磨のサポート陣によるプレイも実に見事で、アンサンブルと歌唱が干渉せずに溶け合っていくように響くことで奥行きの深さを感じさせた。
それもそのはず。この日のサポートメンバーは真宵に加え、零(sGt)、藍珠(sBa)、緩菜(sDr)という錚々たる実力者が並んでいる。




KiDの楽曲はポップでキャッチーなものが中心だが、そこに深みがあるのも特徴で、藍珠と緩菜が独特なリズムで彩る「空想ブランコ」でもそれは顕著だ。
真宵の張り叫ぶような歌唱が“天才じゃなかった僕は 君に何かを少しでも残せたかな?”と問いかける1曲は、想起させる物語性からも楓のリリックセンスを感じる。
明るいようでそれだけではない。また、暗いようでいて暗いだけではない。どこかに希望や不安を有するからこそ、キャッチーな楽曲に乗る言葉の意義が生まれる。

中盤、「眠れねえ夜にしようぜ!俺たちの曲だ!」と叫ぶと、彼らのファンの呼称でもある代表曲「不眠症」から「マンホール」と盛り上げた。
この日はドレスコードとして“白服”で臨むことが条件となっていることもあって、純白のフロアがブチあがる光景も壮観。同じく全身を白のコーディネートで誂えたメンバーが並ぶ姿もファンには嬉しい光景だったのではないだろうか。
ブラック系のイメージが強い藍珠は「本当は黒の方がかっこいいんだけどね」と発する場面もあったが、そのレアな出で立ちに歓声が上がったことは言うまでもない。
高まった熱気から一転、「刻々」では真宵の力強い歌唱が迫りくる。スモークをまとった紫がかった照明と絡みつく各パートが緻密に粒立ち、そのサウンドは饒舌に楽曲の解像度を高めていく。
楓をのぞいたメンバーは、クレジット上はサポートということになるが、各々のミュージシャンシップを存分に感じさせる「刻々」は本公演においても重要なセクションだったように思う。
楓と零のそれぞれのフレーズが見事に冴え渡るなかで、真宵もその歌声のニュアンスと声量を巧みに使い分けるマイクさばきで、社会風刺的なメッセージに切なさと湿度を加えてみえた。

この日のKiDは真宵がセレクトしたセットリストとのことだが、終盤は“推しが絶対”と、強烈なアンチテーゼを炸裂させるスタンスが痛快な「ライフハック」、その歌詞のとおり、頭を空っぽにすることを要求するハードな「ガラシャ」で駆け抜ける。


ここで真宵がマイクを取る。
「これからも活動を続けていけばいくほど、思ってもみなかったようなことがでてくるんだと思います。だからこそ、バンドや音楽って楽しいなと思うわけ。KiDのライヴに来なかったら知り得なかった感情もあると思うし、楓さんの書く曲でしか救われない人もいる。」
「俺も4月1日にソロでライヴをすることを決めて、どういう形でやれるのかわからない部分もある。ソロってすごく大変だと思うんだけど、いつも横で見てる楓さんはキラキラしているし、俺もやりたいようにやってみたいなって気持ちが芽生えました。少なからずKiDの影響があると思います。…でも、これだけは伝えておこうと思って。KiDを辞めることはないです。俺、楓さんの曲好きだから。」
先輩にあたるミュージシャンが奏でる濃厚なアンサンブルのなかで、終始はにかみ、笑顔を見せながらパフォームしていた真宵だが、ここでは真剣な目つきで想いを吐露した。
彼がソロ活動を始めることはすでにアナウンスされていたが、それが楓の意欲的に背中から受けた影響であること、そしてソロにいたる心境を丁寧に伝えてくれた。
もちろんKiDのフロントマンの座を空位にしないことも。
決意を告げたラストはドラマティックなバラードナンバー「災難で」。
真宵が言葉を選びながら発言している最中、優しい面持ちで見守っていた楓の姿も印象深かったが、まさにそういった純度の高さが体現された「災難で」は求心力を感じさせる至高の時間となった。
マイクスタンドを握りしめながら目を瞑った歌唱は、この場に居合わせたひとりひとりに手渡しで想いを届けるように切々とした肌触りであったし、それはどこか気高くもある。
クライマックスのサビではついに感情を剥きだしにして、身体を揺らし、頭を振り乱し歌いきった。
“不器用にほらまた 音と言葉で繋いで 僕はただただ伝えたいだけ
君らなら分かるだろ? 歌いたいわけじゃない だから続きは君に託すよ”
そう届けられる「災難で」の結びの一節。
真宵はKiDのフロントマンとして歌い継ぐなかで、もともとの歌詞に新たな言葉とメロディを添えている。
“歌いたいわけじゃない どうせいつかは 眠りにつくよ
それまで紡ごう 僕らの明日を“
KiDを通して積み重ねてきた彼が、ファンに届けるメッセージ。
その余韻たっぷりにステージを去るメンバーには喝采の拍手が贈られた。
そして、ほどなくして拍手がアンコールならぬ、お馴染みの“眠たくない!”コールに変わる。
再登場したメンバーとオーディエンスで、この日の主役にハッピーバースデーの合唱を届けるハートフルな場面もあった。
先に記した本編ラストの真宵のMCにおいて“バンドや音楽って楽しい”といった発言があったが、まさにその通りで、KiDは楓のソロプロジェクトであるものの、実態はどこまでもバンド然としている。それは卓越したスキルだけでなく、こういった親しみのある空間からも感じられるものなのかもしれない。
アンコールは全4曲。
伸びやかに跳ねて想いを交換する「心美人」、相当な熱量のコール&レスポンスにメンバーの笑顔もはじけた「ほぞを噛む」、縦ノリで揺らした「ネオン」、さらには本編以上の気合いで臨んだ「ガラシャ」で一気に畳みかけた。


これにて完全燃焼かに思えたが、「真宵生誕だぞ!これで終わるわけあるか!…こんな楽しい空間がここにあるんだ。まだ眠るんじゃねえぞ!!」と吼え、再度「ガラシャ」を叩きつける。
テンションMAXのプレイに会場は大いに沸いた。
しかし、「眠るんじゃねぞ!!」と言われて黙っていられるはずもなく発生したダブルアンコール。
その声は楽屋のメンバーにも届き、音が鳴り始めると再び幕が開き、そこには定位置に陣取る5人の姿が。
プレイされたのはなんとなんとこの夜4度目となる「ガラシャ」だった。
互いに求め合う空間こそは真宵のみならず、オーディエンスとっても最高の贈り物になったことだろう。

繰り返しになるが、楓のソロプロジェクトでありながらバンド然とした強度を誇るKiD。
これまでの歴史のなかでステージを彩った幾多のミュージシャンも含め、様々なエッセンスが複合的に混じり合うことで説得力を増したことが伺える。
それは安泰とは真逆のスリリングで継続的なトライの賜物だ。
だからこそ、真宵がソロ始動することも、それを楓が見守ることも納得できる。
楓自身の意欲的なスタンスがKiDにとって細胞のように根付いていることも忘れてはならない。
思い出せば、アンコールの際に楓からは新曲についての言及もあった。これからも彼らの新たなチャレンジも期待していてほしい。
Text:山内 秀一
Photo:千佳
SET LIST
1. 空気を読んだ
2. 斜苦楽
3. 脳足りん
4. 神様
5. 揺蕩う
6. 空想ブランコ
7. 不眠症
8. マンホール
9. 刻々
10. ライフハック
11. ガラシャ
12. 災難で
ENCORE
13. 心美人
14. ほぞを噛む
15. ネオン
16. ガラシャ
17. ガラシャ
W ENCORE
18. ガラシャ

真宵 first one man live「賞味期限」
4月1日(水)
新宿clubSCIENCE
OPEN 18:00 / START 18:30
出演:真宵(Vo)
サポートメンバー:KNOTman(Mani.&Key.)/田丸将貴(Ba.)/華乃(Dr.)
Aチケット ¥4,100 ※ドリンク代別
2月27日(金) 10:00〜発売開始
https://livepocket.jp/e/mayoi0401
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KiD one man live「藍珠生誕祭2026」
2月27日(金) 東高円寺二万電圧
OPEN 17:30 / START 18:00
チケット ¥5,500 ※残り僅か! ドリンク代別
https://eplus.jp/sf/detail/4442000001-P0030001
SNACK 041〜第1夜〜【真宵 × 山内秀一(VISUNAVI Japan プロデューサー)】公開中!
関連リンク
◆KiD Official X https://x.com/KiD__official_
◆真宵 Official X https://x.com/myi_howl




