【唯(umbrella)】ソロワークス4th MiNi ALBUM【唯言】リリース。ソロだからこそ込めた赤裸々で等身大の自分。「引っ張っていくカリスマじゃなくて、一人の人間としてリスナーに寄り添うアーティストがいてもいいんじゃないかな」

結成16年目を迎えたumbrellaのヴォーカリストでもある唯。
毎年4月にリリースされることが恒例となっているソロ作を今年も世に放った。
そのタイトルは『【唯言】』。
死んだ後も後世に継がれる音楽を、そう願う作品には極めて等身大で赤裸々な言葉たちが並んだ。
バンドが好調な今だからこそ、根源的な唯の思考に触れることができる一作はアートワークを含め全パートを唯が手掛けるまさに究極のソロ作となっている。
小説家とコラボレーションしたストーリーブックも必読で、この時代にCDを届ける使命を感じさせるものだ。
一過性でない音楽の原点はどこにあるのか?彼の心の内を探った。
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umbrellaを好きな人は僕のソロの音楽も好きだと思います。
────今回はumbrellaのヴォーカリストとしてではなく、ソロアーティスト唯としてVISUNAVIにご登場いただくわけですが、4月24日にリリースされた4枚目となるミニアルバム『【唯言】』について伺っていきたいと思います。しかし、中年に差し掛かってくる自分にはかなり胸がキュッとなる作品でした。
唯:でしょ?(笑)。その辺は意図的に狙いましたね。人間の内側を描いてます。
────umbrellaだけではなくソロワークスも並行し始めた動機ってあるんですか?
唯:あ、それで言うと一番はコロナですね。あの時期にバンドとして動けなくなって、できるのはレコーディングとかアコースティックライヴぐらいだろうなって見通しもあって始めました。
────なるほど。コロナの副産物でもあったんですね。
唯:もともとソロでアコースティックライヴもしてたんですけど、それまではumbrellaとか歌謡曲カヴァーをやってたんですよ。ソロを通じてumbrellaのライヴにも来てくれるようになったらいいなって。でも、コロナのタイミングでそういうわけでもなくなっていったので音源を作ろうとなって出したのが『【独創】』です。umbrellaの前に僕がやってたLOKIっていうバンドがあるんですけど、10年近く活動してたのに楽曲が16曲ぐらいしかなかったんですよ。
────ずいぶん少ないですね。
唯:そうでしょ?あの当時ってね、レコーディングするのも今より環境が難しくてLOKIはライヴばっかりしてたんですよ。やる気はあったんですけどね(笑)。その中でちゃんと音源になっていないものも多かったんで、じゃあ一人で全部作り終わらせようかなって思い立って、配信で公開レコーディングっていうスタイルで形にしていきました。
────公開レコーディング?
唯:僕が作詞作曲したり、ベース弾いたりドラム叩いたりしてる様を全部ツイキャスで配信するんですよ。作業工程をお客さんにも全部見せる手法で。それが結構反響をいただけたんです。初めて自分のソロ名義で出した作品ですね。2021年かな、『【独創】』は。
────そこから毎年コンスタントに作品を出されてますよね?
唯:そうですね。毎年4月24日にリリースしてます。暗い話にしたくないんですけど、父の命日なんですよ。僕は人の誕生日とか覚えるのがとにかく苦手で、おかんの誕生日とかも忘れちゃうんですけど、命日くらいちゃんと覚えたいなと思って毎年この日に親孝行の意味も込めて自分の音を世に出すようにしてます。父はね、僕を音楽の専門学校にも入れてくれたし、不自由なく音楽に打ち込めるようにしてくれたわりに僕のライヴとかもあんまり観てないし、そこに負い目もあるんです。これからは毎年音楽で恩返しをしていきたいですね。
────しかしumbrellaの周年が3月14日って考えると毎年春先は多忙になりますね。
唯:そうなんですよ!(笑)。コロナの時はumbrellaが動けなかったから平気だったけど、今は大変。今年は味園ユニバースでのワンマンとソロの制作が重なって人生で一番忙しかったです。
────来年以降も楽しみですね…と外野は気兼ねなく言えちゃいますが(笑)。しかし、母体であるumbrellaがここに来て地元大阪を中心に絶好調じゃないですか?
唯:ありがたいことにお客さんはだいぶ増えてますね。
────そんな中でバンドとソロの違いってどんなところにあります?楽曲のベクトル的には大きな差はないじゃないですか?メロウかつオルタナで切なさを感じさせる世界観も。
唯:うん。何かを変えようと思ってソロをやってるわけじゃないのでumbrellaを好きな人は僕のソロの音楽も好きだと思います。ただ、当然ですけどレコーディングは純度100%なので一層やりたいようにやれてます。方向性はumbrellaと変わらないけど、そこに至るアプローチが全然違う感じですね。あとはバンドだとライヴ感も重視するけど、ソロはそこを意識しなくていいかなって思って作ってるところはあるかも。
────歌詞はどうですか?より具体性があって生々しいエグみも感じます。油断すると苦しくて涙腺にきてしまいそうな心象描写もありますし。
唯:自分のことを歌ってるからより日常的ですよね。そこはバンドとの大きな違いかも。どこか前向きで力強いものはumbrellaの選曲に持っていく分、ソロはもっとパーソナル。
────あとはアートワークも。今回もですけど花をモチーフにした作風も唯さんの特徴になっています。花は共通するテーマ?
唯:よく見てますね(笑)。これは部屋に飾りたくなる美しいものにしたいってところなんですけど、おかんがめっちゃ花好きなんですよ。家中が花だらけなくらい。ソロ作は親孝行の気持ちもあるので、ジャケットのモチーフを花にしたらおかんも喜んでくれるかなって(笑)。