【「20s~Twenties~」イベントレポート(前編)】癖の強い連中が、己の個性を剥き出して襲いかかる。Jin-Machine、TЯicKY、NoGoDのライブの模様をレポート

ADAPTER。/えんそく/Jin-Machine/Dacco/TЯicKY/NoGoD。彼らに共通しているのが、今年デビュー20周年を迎えたこと。20年間、共に寄り添い、苦楽を共にしてきた仲間たちが一同に集結。「20s~Twenties~」と題した周年イベントを9月15日にSUPERNOVA KAWASAKIで行った。ここには、「20s~Twenties~」セッション/Jin-Machine/ TЯicKY/NoGoDのライブの模様をお届けしたい。
遊び心を持った始まりに、観客たちも声を上げてはしゃいでいた。
「20s~Twenties~」公演は、事前に番組内で「この16人の中で一緒にバンドをやるなら?」というアンケートの結果、人気が高かった5人がオープニングアクトとして登場。L'Arc-en-Cielの『HONEY』をカバーしてスタート。まさかの遊び心を持った始まりに、観客たちも嬉しい声を上げてはしゃいでいた。なぜか、メンバーたちの手にはマグロのぬいくるみが。 耳に馴染んだ楽曲という理由もあり、場内中の人たちも、お祭りらしい幕開けを大いに楽しんでいた。
Jin-Machine
コミカルにみせてじつはシニカルな曲の数々を通して楽しさを与えつつ、最後に、「何度倒れても立ち上がってやる」と気持ちを熱くする楽曲を持ってくるところがJin-Machineらしい。
featuring16(MC)、ルーベラ・木村・カエレ(Dr) がサポートメンバーを迎え活動中のJin-Machineが、イベントの先陣を切って登場。SEが鳴り出すのにあわせてメンバーらがステージに姿を現した。MCから幕を開けて、笑いで観客たちを惹き付けるところがJin-Machineらしい。
ライブの冒頭を飾ったのが、『NEVER SAY NEVER』。Jin-Machineは轟音を響かせた演奏に乗せ、荒々しい心の牙を剥き出し、最初から気合十分の姿で観客たちに襲いかかる。featuring16の煽りに応えるように、場内中から数多くの拳が突き上がる。メンバーらは感情のアクセルを全開にして気持ちを奮い立て、この場の空気をどんどん熱くしていく。観客たちも、最初から頭を振り乱して全力で暴れたことで、場内中の空気がいい感じで上がっていた。
MCでは、featuring16がトークの中にたびたび『HONEY』を歌う場面を組み込んでゆく。その遊び心がJin-Machineらしい。

ここからは、Jin-Machineらしいコミカルさの活きた曲たちを軸に攻めだした。「みんなで一緒にタイヤを転がせ」や「折り畳み」のデス声を合図に、場内の人たちが『タイヤマルゼン』にあわせて身体を折り畳み、クラップを始める。「タイヤマルゼン」と歌うサビでは、featuring16のタイヤを転がす仕草に合わせて、観客たちもタイヤを転がす動きをしながら左へ右へと動き出す。観客たちのその姿が、お相撲さんが突っ張りをする姿に見えていたのも、ご愛嬌。featuring16の「問題ない」の声に合わせて観客たちが手の花を咲かせれば、タイヤを転がす振りをしながら横モッシュしてゆく様を、Jin-Machineはこの曲の中に何度も作り出していった。
スケールの大きなヘヴィメタルサウンドを演奏‥と思わせながら、みずからの人生を皮肉ったラップをぶつける緩い音楽スタイルに変わるところが、極端な転調を好む彼ららしい。荒々しさからコミカルさ、楽曲のオマージュまで、いろんな要素を混ぜ込んだ『じんましーんのテーマ2』に“らしさを”実感。途中には、観客たちを巻き込んで一緒にタオルを振り回す場面も誕生。ときに暴れ騒ぐ景色も作りながら、終始Jin-Machineは、心をニヤッとさせる楽しいライブを作りあげていった。

ドラムカウントを合図に、『マグロに賭けた男たち』を演奏。featuring16の駆け声を合図に、観客たちが飛び跳ねながら左へ右へと横移動を始めた。演奏の速度が緩くなるのに合わせて手を大きく揺らすなど、転調をするごとに、観客たちもいろんな動きをしながら楽しんでいる。途中には、お馴染みのマグロのぬいぐるみを客席に投げるパフォーマンスも登場。「ラッセラ ラッセラ」のかけ声に合わせて横モッシュをしながら、観客たちが童心に戻って祭り騒ぐ様が印象深く見えていた。
最後にJin-Machineは、20年活動を続けてきた自信と揺るがぬ思いを込めて『さよならアキラメロン』を熱唱。荒々しい演奏に乗せてfeaturing16が張り上げた声で観客たちを煽れば、フロアからも多くの拳が突き上がる。featuring16が声を荒らげて熱く煽るたびに、フロアのあちこちで観客たちの飛び跳ねる景色が誕生。Jin-Machineは、あきらめないみずからの強い意志をぶつけた『さよならアキラメロン』を通して、この空間を、拳を上げて飛び跳ねる人たちが熱狂する景色に染めあげていった。コミカルにみせてじつはシニカルな曲の数々を通して楽しさを与えつつ、最後に、「何度倒れても立ち上がってやる」と気持ちを熱くする楽曲を持ってくるところもJin-Machineらしい。
TЯicKY
フロアでも、「シャンプープロカリテ」とサビを歌いながら咲き続ける人たちが大勢誕生。TЯicKYの歌を通して、いつしか心がかわいく磨かれていた?!
「究極の一人エンターテイメント☆」をキャッチコピーに活動中のTЯicKY。躍動するエレクトロなSE『新開地から』に乗せてTЯicKYがステージへ登場。ライブは、バーストしたエレクトロなロックナンバー『詐欺ってごめん』を歌い、スタート。派手で華やかな楽曲以上に、彼自身の歌声のパワーがとにかく大きい(声がデカい)。だから、サウンド以上に表情豊かなTЯicKYの歌声が強烈なインパクトを持って耳や心に突き刺さる。歌詞にあわせた愛らしい振りや仕草を見せるたびに、フロアでも同じ動きを真似る人たちがあちこちに生まれていた。TЯicKYは、誰もが心の中に仕舞い込んだ本音や本心をシニカルな歌にして届けるエンターテイナー。だから歌詞にクスッとしながらも、自分事として受け止め、チクッとした痛みを心に覚えていた。
歌を通して観客たちにカルシウムの補給をしようと、TЯicKYは「毎日牛乳飲もうよ」と『牛乳飲もうよ』を歌唱。何気ない日々の生活の一風景をクローズアップし、メッセージしてゆく。派手な音を振りまいて駆ける楽曲に乗せ、生活を豊かに彩る思いを、TЯicKYは牛乳瓶を片手に持ったエアな姿でメッセージしていた。フロアでも、彼の動きを真似る人たちがあちらこちらに誕生。途中、ミルクキャンディーをフロアにばらまきながら、TЯicKYは「毎日牛乳飲もうよ」と歌っていた。
愛らしくファンタジックな音色と切ない音の香りを一緒に振りまくミドルでメロウな演奏に乗せて、ジェネリック薬品の胸の内を告白するように、TЯicKYは『ジェネリックかわいい』を、少し哀愁を帯びた姿で歌っていた。途中から演奏は躍動感を増しつつも、楽曲全体に漂う哀愁を生かしながら、一番手ではない自身の存在価値を、片思いで心を悩める人の気持ちに置き換えて歌っていた。たとえ二番でも、その人が愛してくれるならそれでいい。その思いは、かなわぬ恋をしている人が心に抱える本音のようだった。
「20年続けてきて良かったな」と、20年続けての思いを、永遠に15歳(設定)のTЯicKYがMCで語っていた。ワーッ!!


TЯicKYが物販で販売しているチェキの値段が500円。「チェキは1枚500円」と歌う『チェキは1枚500円』では、フロア中の人たちと拳を振り上げて騒ぐ場面も生み出しながら、チェキと同じように、ライブでもその日だけの記念を胸のフィルムに映そうとみんなではしゃいでいた。後半には、観客たちが「チェキを撮ろうよ!」と声を上げる場面も登場。ぜひライブ後は、物販へ足を運んで500円でチェキを購入していただきたい。
TЯicKYは、立て続けに『かわいくないとだめですか?』を歌唱。「かわいくないとだめですか?」と歌いながら、みずからかわいい仕草やポーズを見せて、観客たちへアピール。日常の何気ない、でも、誰もが胸の内に隠し持つ願望や欲望を、TЯicKYは親しみを覚える楽曲に乗せて。そこへシニカルな視点も混ぜて、愛らしく届け続ける。TЯicKYは歌いかけてきた、「かわいくないとだめですか?」と。やはりかわいくなるためにも、髪の毛はツヤツヤでないと。となると、シャンプーは‥。
最後にTЯicKYは、フロア中の人たちの頭を轟音という洗髪液で洗おうと、頭を振りながら‥ではなく、頭を洗う姿で『シャンプー☆プロカリテ』を熱唱。フロアでも、「シャンプープロカリテ」とサビを歌いながら咲き続ける人たちがあちらこちらに誕生。TЯicKYの歌を通して、いつしか心がかわいく磨かれていた?!
NoGoD
NoGoDがこの場に描き上げたヘヴィメタル劇場に、肉体も精神もすっかり蹂躙されていた。
20周年を記念して制作した2枚組ベスト盤『Le: VOYAGE』の発売を直前に控えたNoGoDが登場。唸りを上げたギターの音が、喉を掻き切る勢いで高らかにハウりだす。NoGoDのライブは、雄大かつスケールの大きい、激烈でメロディアスなヘヴィメタルサウンドを高速で叩きつける『神風』で幕を開けた。団長の雄々しい叫び声を感情のアクセルを力強く踏み出す合図にして、NoGoDはこの場へ熱狂や興奮という嵐を巻き起こす。彼らが全力で叩きつける一つ一つの音が全身を奮い立てる尖った刺激の刃(やいば)となり、声を高らかに煽る団長の歌声が魂を鼓舞する刀(かたな)になる。いつしか大勢の観客たちがメンバーらと一緒に気持ちを雄々しく奮い立て、頭を振り乱し、高く拳を突き上げて、野獣のように猛々しい声を張り上げていた。

「初老のバンドが集うこの場所に来てくれたみなさま、桃源郷へようこそ」の言葉を合図に、切れ味鋭いビートがリズミカルに駆けだした。団長が高速で繰り出す言葉を合図に、楽曲は一気に爆音を上げて騒ぎだす。『桃源郷へようこそ』でNoGoDは、この場を、興奮した気持ちが生み出す熱風の吹きすさぶ桃源郷に。いや、高ぶる感情と感情をぶつけあう戦いの地へと染めあげた。団長の煽りや攻撃的な演奏に乗せて、大勢の観客たちが左へ右へとモッシュを始めれば、団長のさりげない手の動きにあわせて、フロアでも手を揺らす景色が生まれていた。

「元気さで蹂躙するからな。手ぇ上げて叫べ。見せつけようか、俺たちの元気をよ。20年間溜めた元気玉見せてやろうぜ!」。団長の言葉を合図に、野太い攻撃的なギターのリフが牙を剥いて襲いかかる。NoGoDは、攻撃力と雄大さを最大限にまで引き出した演奏にして『最高の世界』を全力で叩きつけ、観客たちの身体や気持ちを熱く奮い立てる。彼らはその勢いを持って、フロア中の人たちを高く、より高く飛び跳ねさせ、全力で拳を突き上げさせた。途中で見せた2本のギターの卓越した技の冴え渡る美麗なハモリも含め、NoGoDは『最高の世界』を通して、これぞヘヴィメタルの神髄という姿を、雄々しき歌声と演奏、そして団長のふてぶてしい様を通して眼前に示していった。
「まだいけるよな、蹂躙しようぜ」。『If possible』が始まったとたん、場内にいる人たちが右へ左へと一斉に横モッシュを始めた。気持ちが熱く高ぶるのは当たり前、もっともっと感情を壊してしまいなよとけしかけながらも、歌心をしっかりと持ってNoGoDは攻めてきた。間奏では2本のギターが高速でソロをかけあい、さらに音をハモらせる場面も登場。ヘヴィなグルーヴを抱いて爆走する演奏と、熱狂へと先導する団長の歌にあわせて、場内中の人たちが左へ右へと飛び跳ね、駆け続けていた姿が、瞼に強烈に焼きついた。
「俺らの20年が間違いじゃなかったことを一緒に証明してくれるか!!」。最後にNoGoDは、エクストリームでプログレッシブでメロディアスなヘヴィメタルナンバーの『ジョン・ドウに捧ぐ』を荒ぶる気持ちのままに叩きつけた。抜けの良い高速なビートの上で団長が高らかに歌えば、彼の燃え立つ感情の背中を楽器陣が攻撃的な演奏で蹴り上げる。なんて雄大な楽曲だ。凄まじい音の嵐の中へ飲み込まれそうだ。彼らは、20年間という経験の重みを背負った音に魂が燃えたぎった観客たちの姿を、拳を突き上げる野獣に変えていった。短い時間の中、NoGoDがこの場に描き上げたヘヴィメタル劇場に、肉体も精神もすっかり蹂躙されていた。
PHOTO:髙橋かおり
TEXT:長澤智典
20s配信アーカイブはこちら(¥4,000)
https://premier.twitcasting.tv/yurasamatakeshi/shopcart/395127
SET LIST
「20s~Twenties~」セッション
『HONEY』(L'Arc-en-Ciel)
Jin-Machine
『NEVER SAY NEVER』
『タイヤのマルゼン』
『じんましーんのテーマ』
『マグロに賭けた男たち』
『さよならアキラメロン』
TЯicKY
SE~新開地から
『詐欺ってごめん』
『牛乳飲もうよ』
『ジェネリックかわいい』
『チェキは1枚500円』
『かわいくないとだめですか?』
『シャンプー☆プロカリテ』
NoGoD
『神風』
『桃源郷へようこそ£
『最高の世界』
『If possible』
『ジョン・ドウに捧ぐ』
関連リンク
Jin-Machine
https://www.jin-machine.net/
TЯicKY
https://www.kizokunotori.com/
https://x.com/tri_sama
NoGoD
https://www.nogod.jp/
https://x.com/NoGoD_Official