【the superlative degree】ライヴレポート<the superlative degree presents -yokohama 7th AVENUE 40th ANNIVERSARY->2025年11月1日(土)横浜7th AVENUE

時が流れても変わらないもの。時の流れにより変わったこと。時が流れていく先にあるかもしれないなにか。去る11月1日に開催された[the superlative degree presents -yokohama 7th AVENUE 40th ANNIVERSARY-]を観ていて感じたのは、そうした時にまつわるあれこれであった。
横浜の老舗ライヴハウス・7th AVENUEが40周年を迎えたことを記念し、このたびthe superlative degreeが主宰したのは彼らと親交の深い同世代バンドを集めたイベントで、
まずトッパーとして場を沸かせてくれたのは1994年結成のNEARMISS。


ヴォーカリスト・YU-KIが率いるこのバンドは、当時インディーズシーンで活躍していたヴィジュアル系バンドたちに混じってオムニバス盤『CYNICAL SYNDROME』(1997年発売)に参加した経歴こそ持ってはいるものの、本来的にはグラムロックをルーツとしたサウンドを身上としていると言っていいのではなかろうか。ちなみに、彼らは1999年にメジャーデビューを果たすも2001年に活動を停止し、その後は長い休眠期間に入っていたが…なんと2024年に奇跡の復活を遂げ今に至っている。



「7th AVENUE、40周年おめでとうございます!過去のスケジュールを調べたみたところ、NEARMISSは30年前の1995年4月18日に初めてここでのライヴをやらせてもらってました。それ以来ずっとNEARMISSにとって7th AVENUEはホームだったので、ほんとにここで切磋琢磨してたんですよね。しかも、当時ここで出会った人たちの中でも凄いオーラを発してたのが今the superlative degreeをやってる章人さんだったんです(笑)。その章人さんに今回こうして呼んでもらって、同じステージで7th AVENUEの40周年を一緒に祝えるのは本当にありがたいです!!」(YU-KI)





オリジナルメンバーのMASAAKI、Soe、MIWA 。そして、メジャー時代後期に加入したKENと、復活後に加入したキーボーディスト・Kou。6人体制の最新型NEARMISSは、
メジャーデビュー曲「RED HOT LOVE」などをはじめとして、生粋のロックバンドぶりをこの場で発揮してくれた次第だ。
なお、奇跡の復活といえば。今宵のゲストバンド・FLOATは1995年から1996年にかけての僅かな期間に活動していたのみで、このライヴでの限定復活を果たした希少種。ヴォーカリストはあの石井 秀仁(現cali≠gari/GOATBED/XA-VAT)であり、まさかこの令和の時代にFLOATを生で観ることが叶うとは思ってもみなかった。どうやら、この復活には秀仁と普段からプライベートでもよく遊んでいるthe superlative degreeの章人も一枚噛んでいたらしく、7th AVENUEのアニバーサリーにいにしえの“横浜3大バンド”を揃えたイベントを開催したかったということのよう。

「30年前って、みんなはまだほとんど生まれてなかったんじゃない(笑)」(石井秀仁)
かくいう秀仁自身もFLOATで活動していた頃はまだ10代だったそうであるが、それにも関わらずFLOATの曲はどれも洒落ていて洗練されているから驚いてしまう。今も楽曲自体はGOATBEDで演奏しているものもあるようなのだが、オリジナルメンバーであるhiroとYoukiの演奏によって描かれる音像はまさにFLOATらしい浮遊感にあふれていて、30年前に出来た曲であるというのに古さが感じられないとは何事か。


この夜のライヴで歌われた「バタフライ」にしても、原曲はオムニバスアルバム『EMERGENCY EXPRESS 1996 ~Do You Feel The Next Vibe!~』に収録されていたもので、これには当時まだメジャーデビュー前だったPlastic Tree、MASCHERA、FANATIC◇CRISISらも参加していたのだが、良い意味でFLOATはそれこそ本当に“浮いていた”。音だけを聴くならばV系というよりはむしろ渋谷系あたりに近い印象であったし、30年の時を経てもその感覚は基本変わらず。そのうえ秀仁のヴォーカリゼイションは断然あの頃よりも進化しているわけで、正直これが一夜限りの限定復活だというのはモッタイナイと感じてしまったほど。ここはダメモトだとしても強く再演を求めたい。
一方、今回のタイバンライヴにおいて“継続は力なり”の言葉をそのまま体現していたのは、90年代どころか1989年から日本のヘヴィメタル界で異彩を放ち続けて来たSEX MACHINEGUNS御一行。
2003年に一旦解散し、そこから数年にわたって再始動~活休~第5期スタート~またもの活休と紆余曲折があったとはいえ、2014年以降は体制変化をしながらも邁進し続け、2022年からはANCHANGがTHOMAS、SHINGO☆、SUSSY(サポート) を従えるかたちでSEX MACHINEGUNSは逞しくサバイブしてきたのである。


そんな彼らが、いきなり冒頭でブチあげてくれたのはメタルファン以外にも認知度の高い「みかんのうた」。このとき客席フロアではマシンガーと呼ばれるファンが激しいヘドバンをかましていただけでなく、サビでオーディエンスの多くが〈みかん!みかん!みかん!〉とおおいにフィストアップして盛り上がることになったのは言うまでもなかろう。
「7th AVENUE 40周年オメデトウ!いやいや、今日は古いバンドばかりが出るイベントにお集まりいただきありがとうございます(笑)。最近7th AVENUEにはあまり出てませんでしたが、今日は章人が「来い」というのでやって参りました!!」(ANCHANG)
メタラーであるANCHANGと、メタラーというわけではない章人が90年代からの大親友であるというのは一部界隈で知られている事実であるのだが、この日の観客の中にはその関係性を意外と感じる人もいた模様。ふと「えー。なんかあんまりつながりなさそうな感じするのに」という観客の声が漏れ聞こえてきたのはここだけの話(笑)。



それはそうと、SEX MACHINEGUNSは12月17日に2年ぶりのアルバム『HEAVY METAL COMMANDER』をリリースするそうだ。けれども、今回のライヴでは敢えて“古い”曲たちをセレクトしてくれていて「ファミレスボンバー」「JAPAN」「桜島」「BURN」など、ベスト盤のごとき往年の名曲たちをANCHANGの相変わらずなハイトーンヴォーカルと圧倒的ギタープレイによって堪能することが出来た。時を経ても色あせないどころか、今だ強烈にメタメタし過ぎるSEX MACHINEGUNS。流石!!!
和をもって尊しとなす、とはこれいかに。オーガナイザーとしてこのイベントの最後に登壇したのはthe superlative degreeで、彼らは9月12日にGOATBEDとthe superlative degreeによって敢行された新宿ロフトでの2マンライヴ[TSDGB]で無料配布された、スプリット音源の中からGOATBEDの曲をカバーした「コミュニカシオン」をまず我々に提示し、ここでも友情の証を感じさせてくれることになったのだ。(※しかも、ヴォーカリスト・章人が着ていた衣装は石井秀仁からプレゼントされたものだったのだとか)

「7th AVENUE、40周年おめでとうございます。今日ここに出てくれてるのは俺が7th AVENUEで出会ったバンドばっかりなんですよ。そいつらと満員になったこの場所でライヴを出来るのがものすごく楽しいです!ありがとう!!」(橋都章人)
現状での最新音源となるEP『火樹銀花』からの楽曲たちを軸としながらも、当夜のセトリは9月に行われたGOATBEDとの2マンライヴで初披露された「螺旋」、このライヴで初お披露目となったまっさらの新曲「新色」がひときわ眩しい存在感を放つ構成となっていた印象で、響いてくる音像からは始動から約2年が経ってますます各プレイヤーの練度が高まってきていることもありありとうかがえた。


バンドとしての歴こそまだ浅い反面、the superlative degreeはALL I NEEDやHUSHで歌っていた章人、その章人とはHUSHで一緒だった高瀬宏之、JURASSICのドラマーであったSHINGO、CLOSEのギタリストでもあるKENJI、Gallaでギターを弾いていたYUJIによって構成されているだけあり、90年代からたたき上げてきた各人のスキルと経験値は言わば猛者レベル。(※これは余談だが、前述のFLOATが参加していた『EMERGENCY EXPRESS 1996 ~Do You Feel The Next Vibe!~』、NEARMISSが参加していた『CYNICAL SYNDROME』とこれら2枚のオムニバス盤には、YUJIの在籍していたGALA(※1998年にGallaに改名)が名を連ねていたのも面白いつながりと言えよう)



「来年、3月7日に7th AVENUEでの初ワンマンをやろうかなと思ってます。それまでには曲もまた増やして臨みたいと思ってますので、よろしくお願いします!」(橋都章人)
ロックバンドとしてのソリッドで攻撃的な音が炸裂する「玉響」、何度聴いても〈いつか死ぬ前に いつか死ぬ前に 終わる為に生きているんじゃ無い〉という歌詞が胸に刺さって来て仕方ない「アイデンティティコード」、今やライヴでの鉄板曲に育った「リアリティ」。これらの曲はきっと、来たる初ワンマンライヴでも大活躍してくれるに違いない。
かくして、この竹馬の友とも呼んでもいいくらいに古くからの仲間たちが集ったイベントでは、アンコールにおいてレア感満載なセッションも実現することに。


the superlative degree+石井秀仁でcali≠gariの「ハイカラ殺伐ハイソ絶賛」、the superlative degree+ANCHANG+THOMASが「みかんのうた」を演奏し、これは紛うことなく[the superlative degree presents -yokohama 7th AVENUE 40th ANNIVERSARY-]でしか絶対に実現しない場面たちだったと言えるはず。(※特に、ANCHANGがギターを持たずに歌う姿は相当珍しかったのでは??)
時が流れても変わらないもの。時の流れにより変わったこと。時が流れていく先にあるかもしれないなにか。いつかそれらを感じられる夜がまたやってくることを願いたい。
写真:マツモトユウ
文:杉江由紀
SET LIST
NEARMISS
1.Touch Me
2.LOVE TO ME
3.Jumgle Freaks
4.Darlin'
5.RED HOT LOVE
6.beautiful alone
FLOAT
1.輝ける樹木鮮やかな色彩
2.ステレオモンスター
3.バタフライ
4.METAL MELANCHOLY NETWORK
5.Handclap Question
SEX MACHINEGUNS
1.みかんのうた
2.ファミレスボンバー
3.燃えろ!!ジャパメタ
4.JAPAN
5.犬の生活
6.震え
7.ONIGUNSOW
8.桜島
9.BURN
the superlative degree
1.コミュニカシオン(GOATBEDカバー)
2.雑踏
3.花火
4.秘密
5.螺旋
6.新色
7.玉響
8.アイデンティティコード
9.リアリティ
EN
1.ハイカラ殺伐ハイソ絶賛(cali≠gariカバー)
2.みかんのうた(SEX MACHINEGUNSカバー)

