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【Chanty × 夜光蟲 × 私は浮かびながら沈む】ライヴレポート!共同主催公演<2Y7M28D>2025.11.16 初台DOORS◆繋がっていく大切な想いと記憶を胸に未来へと向かうための1日

今があるのは、歩んできた過去があるから。
未来を描けるのは、今を生きているから。
『2Y7M28D』――それは、過去を振り返るためではなく、繋がっていく大切な想いと記憶を胸に未来へと向かうための1日だった。

2025年11月16日から遡ること2年7ヶ月28日前の、2023年3月19日。
ベル・Chanty・Develop One’s Facultiesの3バンドで全国をまわったツアー『二進化十進法』(通称BCDツアー)のファイナル公演が、Spotify O-WESTで開催された日。
同じ時代に誕生し切磋琢磨しながらシーンを切り拓いてきた彼らは、“仲間”や“ライバル”なんてありきたりな言葉では表せない強い絆で結ばれていた。そんな3バンドが誇りを持って各地に自身の音楽を届けたこのツアーは、メンバーにとってもファンにとっても生涯忘れられない想い出となっていることだろう。
しかし、2023年10月にベルが、2023年12月にDevelop One’s Facultiesが、立て続けに活動を終了。『二進化十進法』の物語も、そこで終わりを迎えることとなった。

それぞれの道へと進んだ彼ら。
八雲とTaizoは、夜光蟲を結成。
yuyaは、私は浮かびながら沈む名義でソロの音楽活動を開始。
仲間達が新たな形を模索する中、Chantyは力強く活動を継続して今年9月に12周年を迎えた。

3本の道はつかず離れず、それぞれの歩幅で歩みを進めていく。
そして、遂に訪れた再び交差する瞬間。
2025年11月16日・初台DOORS。3MANでは異例とも言える、1バンド60分の演奏時間での真っ向勝負。
再会の喜びと、お互いを認め合いリスペクトしているからこそ沸々と滾る胸の内。それぞれが今の自身の“最高”を魅せるステージの幕が開いた。



◆   ◆   ◆

夜光蟲



トップバッターは、夜光蟲。
“路地裏電脳秘密倶楽部”をコンセプトに、EDMを多用したバンドサウンド×アコースティックギター×歌謡を主体としたメロディーという他に類を見ない音楽性で活動する彼らは、ビジュアル・音楽・映像・文学(※八雲が執筆する小説)などあらゆる手法を用いて作品を生み出す。それらを自由に選択し組み合わせることで多角的に楽しむことができる総合芸術、それが夜光蟲だ。
今年2月にライヴ活動を開始してこの日で8本目と本数こそ多くはないが、ライヴごとに強烈なインパクトを残す表現の奥深さと斬新さ、そして楽曲のクオリティーの高さは各方面で大きな話題を呼んでいる。

反響するデジタルサウンドが始まりを告げ、まずは路地裏同盟(※公演後にあった発表については後程改めて)のJohannes、続いてTaizo、最後に長いベールの向こうに鋭い眼光を秘めた八雲が姿を現すと、期待に満ちた様子のオーディエンスが手拍子で迎え入れる。ライヴハウスの空間は、瞬く間に彼らの支配する路地裏へと姿を変えた。

オープニングは、夜光蟲がこの世界に初めて産み落とした楽曲『蛾々』。
“禍々しいかい 私の姿が 極彩色の羽音 鳴らす”
現世から隔絶させるかのごとく響き渡る重厚感のあるサウンドと、妖しげに囁くように心の隙間に入り込んでくる八雲のロートーンボイス。じわりじわりと滲み出てきた彼らの闇が、ゆっくりと、しかし着実に浸食していく。

イントロから手拍子が沸き起こった『生まれ落ちたが運の尽き』。八雲の「いきなさい。」との声に操られるように、先ほどまでじっと聴き入っていたフロアが左右にモッシュを始めた。気だるげな歌声、ギターパーカッションを交えたTaizoのプレイとJohannesのドラマティックなシンバルワークが映える。
郷愁感のあるメロディーとキャッチーなサビにEDMが融合されたキラーチューン『psyche』で一体感を生み出し、あっという間に3曲を終えたところで八雲が静かに話し始めた。

「お久しぶり、というのも変な話になるのですが。『2Y7M28D』=2年と7ヶ月、そして28日。このタイトルに込められた想いを知っている方、知らない方、両方いらっしゃると思います。今日は『同窓会をしよう。』と集まったわけではございません。あの日と今日を繋いで、3バンドそれぞれがまた未来に向かって走っていく。そんな日になればいいな、と思っております。最後までよろしくお願いします。」決意を込めた声色で言葉を続ける。
「2年7ヶ月28日前、3バンドでの最後の二進化十進法を終えた1ヶ月後には、皆さんを悲しませるような発表ばかりになってしまったので・・・せめて、その間もあなた達を思い続けていたということを、今日ここに歌と音楽で届けていきたいと思います。」

「だから、世界でただ1人、僕だけが君を幸せにできると勘違いさせてくれないか?」
哀愁漂うアルペジオと妖艶で悲哀な歌声に惹きこまれる『漆黒横丁』は、夜光蟲結成以前の彼らの音楽に触れていた人達も没入しやすい楽曲。先ほどのMCの後にこの曲を配したことで“あの日”からの繋がりを表現したようにも思えて胸が熱くなった。


「きっと生きたかった。あの子も、あの人も。」と始まった『無自覚を刻め』でフロアを手拍子で揺らしたかと思えば、正気と狂気の狭間を行き来するような『NOCTURNUS』のサビではHIP-HOP的な縦ノリと手バンが起こり、夜光蟲の音楽性の幅広さと柔軟さに改めて感嘆させられる。
実は曲中、無線トラブルでギターの音色が途切れてしまうアクシデントが発生していたのだが、全く動揺を見せずに最後まで演奏した(本人曰く「魂で弾いていた」)Taizoの対応力に大きな拍手が送られた。


復旧までの間は、八雲が夜光蟲のコンセプトについて改めて説明。
夜光蟲というバンドは、八雲が執筆した小説を基に楽曲・歌詞・世界観全てを生み出していること。文学のみならず視覚面の映像にもこだわりを持ち、総合芸術として活動しているプロジェクトであること。そのため、通常のバンドのように曲ができたからすぐライヴができるわけではなく、小説を書き進め、歌詞を書き上げて、ようやくライヴができること。
「普通よりもゆっくりと進んでいくバンドではありますけど、ただ、その1曲ごとにかけた時間はどこのバンドにも負けないと思っているので。」と、自信に満ちた表情で語る姿が頼もしかった。
聴かせられなかったギターソロあたりから演奏を再開すると、続く『愛に狂って』でステージとフロアを狂愛灯の青い光で染め上げてみせる。

そして、再びマイクを取り「我々が足を止めた時も、ずっと足を動かし続けて・・・正直、別れを告げる側よりも見送る側のほうがきつかったと思います。それでもずっと走り続けているあのバンドを、僕は心から尊敬しています。今日は一緒にやってくれてありがとう。」とChantyに、「1人でステージに立つこと、みんなからの期待を一身に受けて音楽を続けるということ、本当に凄まじい精神力とプレッシャーと色々な重圧が彼の細い背中に乗っていると思います。そんな彼のことを心からリスペクトしています、ありがとう。」と私は浮かびながら沈むに、心からの感謝を告げる。

「ただ、今日同じステージに上がった以上は、しっかりと夜光蟲を刻み付けに来たので。声、出せるかい?もっと本気で来い、東京!」コール&レスポンスで一斉に拳と声が返された『剥製アリー』の狂気的な愛で導火線に火をつけ、真っ赤に染まった空間に「たべたーい!」とオーディエンスの大合唱が響く『混蟲 LESSTRANCE』でその熱をさらに上昇させていく。「突っ込んで来いよ!」の言葉を合図に激しい逆ダイが繰り広げられると、ステージ際まで身を乗り出し煽り倒していくTaizo。先ほどまでお立ち台に居たはずの八雲がいつの間にかフロアに下りて最前列で飛び込んでくるファンを受け止めていたことには驚愕したが、自分達の信じるヴィジュアル系を体現しながら独自の世界を生み出していく夜光蟲ならではの楽曲だ。


なだれ込むように突入した『セイディーメイニー』でフロアのヘドバンと折りたたみの波はさらに激しさを増し、メンバーもオーディエンスも怒涛の勢いで昇り詰めていく。その轟音の僅かな隙間で八雲が静かに口にした「ただいま。」のひとことは、この日のステージに至るまでの想いを伝えるのに十分すぎる言葉だった。

激しい雨音はやがて視界一面を青く染め、『遺恨』が物語の終わりを告げる。水底へと沈み込んでいくような感覚の中で、ぽつり、ぽつり、と独白のように紡がれる想い。美しいメロディーに乗せたロングトーンを切なく響かせた八雲は、フロアをじっと見つめ静かに手を差し出すと、首を垂れてステージから姿を消した。TaizoとJohannesの奏でる音色が空間を覆い尽くし暗幕がゆっくりと閉じられ、強烈な余韻を残して夜光蟲のライヴは終焉を迎えた。


イベント終了後、これまで何度も路地裏同盟としてサポートしてきたドラマー・Johannesが夜光蟲に正式加入することが発表された。幅広い音楽性に対応する技術力は勿論、映像やアートへの造詣が深く、ヴィジュアルもキャラクターも唯一無二。これ以上ない適任をメンバーに迎えた彼らは、次はどんな路地裏へと誘ってくれるのだろう。新体制後初のMVとなる『剥製アリー』を鑑賞しつつ、まずは12月21日に池袋EDGEで開催されるワンマンライヴ『Le Paradis-episode 0-』を楽しみにしたい。

私は浮かびながら沈む



続いて登場したのは、私は浮かびながら沈む。
ソロに転向後もその類稀な才能はとどまるところを知らず、プレイヤーとしてもコンポーザーとしても圧倒的な存在感を放つ唯一無二の表現者・yuya。
彼の前では、ジャンルなんて言葉も、既存のスタイルの枠組みにあてはめて考えることも、全くもって無意味だ。
このレポートでも“1人でステージに立っている”ことを表すためにソロという言葉を使用してはいるものの、弾き語りでもなければ、打ち込みのオケに頼って歌うわけでもない。たった1人で複数の楽器を駆使し、その場で作った音をメインにあくまでも“ライヴ”であることにこだわって展開していく独自のスタイルは、観る者に強烈なインパクトを与える。

幕が開き拍手に迎えられると、「あぁ、嬉しいな。」と小さく呟きギターを抱えてステージのセンターに立つ。
『budda.』というタイトルがピッタリな異国情緒を感じさせるオリエンタルなフレーズ、ギターをかき鳴らしながら時に優しく時に力強い歌声を響かせ、聴く者の心をふわりと包み込んでいく。この曲には、明確な歌詞が存在しない。リリース当時、「音楽は国境を越えるけれど言葉はそうでないのであれば、言葉がなければ世界中の人が音楽を平等に聴ける。」と語っていたが、ギターと歌のみならず、上手・下手にセッティングされた電子パーカッション、更に背後にあるドラムまでを1人で演奏して表現された楽曲には、音楽家としてのそんな想いが込められていることも書き添えておきたい。

「待ちに待った3MAN、まずは大きな大きな声を聞かせて欲しいよ!ラストのChantyまで、しっかりカッコいいロックンロールを繋げようぜ!」
煽るように始まった『気狂い』、フロアからの大きなレスポンスと揃ったクラップに「カッコいいね!」と笑顔を見せ、水を得た魚のように音の波の中を泳ぎ始める。「これがギターソロだ!」と自在にギターを弾き倒し、突き上がる拳には「愛してるよ!」と返して、テンポ良くライヴを展開させていく。


『logic』のデジタルサウンドで「そんなんじゃChantyに繋げないって!ここまで!」と叫び、全ての声を受け止めるように両手を広げ「1人でも結構カッコいいでしょう?」と畳みかけて盛り上げる。
続く『ステータス』では音の洪水の中を切り裂くようにしてyuyaという人間の価値観の一端が垣間見える言葉をしっかりと届け、初期からの楽曲『私は浮かびながら沈む』の揃ったクラップとコール&レスポンスには「リズム感が素晴らしい!」と嬉しげな声を上げた。
笑顔でライヴを観ているオーディエンスを見つけて喜んだり、その瞬間の感情を素直に表現するyuyaは非凡な才能と子供のような無邪気さを持ち合わせていて、どんな時でも驚くほど人間らしい。

「しっかり俺の声と俺のギターを持って帰れよ。夢に出てきたら、また会いに来い。」
『呼吸』を初めて聴いた時、イントロの印象的なリフからがっちりと心を掴まれ、歌詞にも楽曲にも強い衝撃を受けた。そして、この曲はジャンルなんて枠組みを取っ払った広い世界で聴かれるべきだと確信したことを覚えている。
彼が奏でる楽器は命を吹き込まれ感情を持った生命体のように音色を描き出していく、まるで魔法のようだ。

流れるようなギターフレーズが印象的な『大丈夫』からは、9月に4週に渡って“春夏秋冬を音で表す”をテーマに開催されたワンマン公演で発表されたばかりの新曲が続く。
春という新しい季節にどこか取り残されたような切ない歌声とメロディーにぎゅっと胸を掴まれる『大丈夫』で難易度の高いクラップについてきたオーディエンスを称え、弾む鍵盤が夏の夜空を連想させた『暈されていく』ではフロアでタオルを回す1人1人と視線を合わせるように歌う。
そして、カスタネットがいかに難易度の高いカッコいい楽器であるかを思い知らされた『病んでる』で、真っ赤に染まったステージの上“大切な感性はなんだ?”“人は皆病んでる”と両手で頭を抱えて視界を遮り、感情のままに言葉を吐き出す。

「“病んでる病んでる病んでる”言って、こんな楽しいライヴの日に病んでる場合じゃないんだから!ちょっとでもポジティブにハッピーになって、Chantyも楽しんで帰るんだよ!健康第一!まずは高く飛び跳ねてスクワットしましょう!」
空気を一変させた『Mr.stoic』では、1曲通してドラムを叩きながら歌い煽る。そのリズムに合わせてフロアは声を上げたりスクワットをしたり、エクササイズとも言える運動量で応えてみせた。

「12月13日に池袋EDGEでワンマンライヴがある。今日観ていいなと思ったら、その日を俺にください!」
ライヴチューンの『入=出』でも“Sing a song!”のフレーズに合わせてオーディエンスはジャンプを繰り返し一体感は増すばかり、長尺のギターソロで盛り上がりは最高潮へと向かっていく。
「今日はたくさん笑え!日々嫌なことたくさんあるだろう、今日は全部忘れて!今日くらいは、お前ら1人1人を幸せにしたいよ!」と、初期の楽曲をリバイバルした『過去と未来』で説得力のある歌声を響かせた。

ライヴは、いよいよ終盤へ。
ここまで“1人で何役をこなすのだろう?”と思うほどあらゆる楽器を操り、私は浮かびながら沈むの音楽を伝えると同時にイベントを盛り上げることにも重きを置いたセットリストで魅せてきたが、『downer』では心の内側にある陰の部分を前面に押し出していく。
何かに突き動かされるようにステージを動きまわりながら矢継ぎ早に思考を羅列したり、演説のごとく訴えかけたり、さながら一人芝居を連想させるその迫力は圧巻だった。

『∞』に乗せて「ありがとう。さっきも軽く言ったんだけど、12月13日に池袋EDGEでワンマンライヴがあって、その前には無料のファンミーティングもあるから、もしよかったら遊びに来いよ。」と告知し、そのまま『有名税』へ。咄嗟の判断で持ち替えたハンドマイクでエモーショナルに歌い上げ、「今日この日を選択してくれてどうもありがとう。夜光蟲もChantyも俺も、これからも頑張っていくよ。」そう言って魂を削るような叫びを聴かせた。


「最後1曲やって出番を終わりたいと思います。夢に出てきたら、また会いに来てください。私は浮かびながら沈むでした、どうもありがとう。」
鍵盤と歌声のみのシンプルな構成が、真っ直ぐ心に突き刺さる『light』。
“主人公とか脇役とかの 肩書きはどうでもよくて 欲しいのは生きてる事を受け止めて 愛してくれる一人で良いんだ”
モニターに腰かけステージ袖に身体を向けて何度も腕を差し出し歌う姿は、まるでその腕の先にもう1人のyuya自身を見て対峙しているかのように映った。

「今日が本当に本当に楽しみでさ。この3MANが次に繋がるかなんてわかんねえけど、また一緒になった時もそうじゃない時も、俺達のことよろしく頼むわ。」
そう言って深く一礼すると、地声で「ありがとう!」と叫び温かな拍手に包まれながらステージを後にした。

Chanty



トリを飾るのは、もちろんChantyだ。
盟友2組が立て続けにシーンを去った時、その決断を見届けながら、喪失感や託された想いの大きさと戦った時期もあったと感じる。
それでも、バンドが歩みを止めることはなかった。着実に確実に成長を続け、名曲と呼ぶにふさわしい楽曲を生み出し続けて、9月には12周年を迎えた。
誰にも負けない想いの強さと絆を胸に、4人はステージへ。

白がギターをつま弾き、芥が静かに語り掛ける。
「2年と7ヶ月28日。あの日のことを、知っていても知らなくても。まず、最初に言わせてください。今日という日に辿り着いてくれてどうもありがとうございます。私は浮かびながら沈む、夜光蟲。そして、本日トリを務めさせていただきます。Chantyです、よろしくお願いします。」

オープニングは、『愛哀想奏』。
“またとない今日という日を 逃したくはないんだよ”
夜光蟲と私は浮かびながら沈む、そしてオーディエンス、この場所に居る全員に向けたメッセージとも言える楽曲を、フロアを見渡しながら丁寧に届けていく。
「2年7ヶ月28日という日は、懐かしむだけじゃない。これから未来へ向かう1日にしたいと思います。」
shotaのカウントから、『レインドット』の力強いサウンドと歌声が場内のボルテージを一気に上昇させていく。前バンド活動終了後の八雲とyuyaをシンガロング部分のコーラスに迎えて制作されたこの曲は、あの時期のChantyを奮い立たせる武器でありお守りでもあったように思う。こうしてまた新しい形で3組が再会できた日に聴けたことがとても嬉しかった。

「あなたがどこに居ようとも必ず見つけるから、居場所を教えてくれ!さぁ、鳴らしてくれるか?」一斉に打ち鳴らされる手拍子と、ステージへと返される割れんばかりの声が圧巻の『アイシー』。掲げられた手のひとつひとつを確認する芥、モニターに足を掛けて勇猛に煽る白、「もっとこいよ!」と叫んだ野中はshotaの振り下ろした一打に合わせてジャンプを決める。ライヴの端々に、Chantyとして戦い磨き続けてきたバンドの強さが滲み出ていてゾクゾクしてしまう。
「11月16日、今日という日に『想巡』。」そう言ってなだれ込んだ『想巡』でフロア一面にヘドバンの波を起こし“誰かで満たされる隙間なんてあるわけないでしょう”と歌うと、「聞こえてるか?見えてるか?Chantyの世界へようこそ!」とMCへ。


「この3MANは、自分にとっても特別なもので。ただ、“振り返るための日ではない”ということは伝えておきたい。2年半くらい前に、どういうことが起きていて、どういう想いで何をしていたか。それも大切なことだけど、“今日という日に何を作るか”そんなことだけを考えてここまで辿り着きました。」と、このイベントの意味を改めて強調する。
「夜光蟲と、私は浮かびながら沈む。ステージを観ていて“この後(自分が)出るんだ”ってドキドキ・ヒヤヒヤする感じ、胸が高鳴る感じ、そんな時間を一緒に作れて嬉しく思います。24時間のうちの1時間、あっという間に終わってしまう瞬間的なことかもしれないけれど、何かを残して、またこの3MAN一発だけではなく、いろんなところへ旅立っていけるきっかけの1日にしたいと思います。最後までお付き合い頂けますか?」

大歓声のフロアに、再会を喜ぶかのように『散花』の鮮やかなメロディーが降り注ぐ。
Chantyとベルの最後の2MANで、八雲と共にこの曲を演奏した時の光景を思い出した。
“過去形にさせる気はないよ 傷だらけでもいいから生きて”大切な人達、そして自分自身にも向けられたそのフレーズが、あの時とはまた違った色彩で映し出された。
僅かなインターバル、暗転と静寂。ピンスポットに照らされた白のアルペジオが美しく響いた『迷語』が、切なくもドラマティックな余韻を残す。

「僕はいつだって迷子だった。あのバンドが終わるって決まったあの日。あのライヴで悔しかったあの日。あの言葉が切なかったあの日。迷って迷って迷って、走り逃げ回って。寒い闇夜の中で、その先に見つけたのはあなただった。そう、そんなあの日の『交差点』。」
それぞれの道を歩き続けているから、再び交差する瞬間がやってくる。これまでに聴いた中でも一番と言っていいほど、エモーショナルに響いた『交差点』だった。

「さぁ、初台!おまえたちとぶつけ合えるのを楽しみにしています!」イントロから声と拳が振り上がった『犬小屋より愛を込めて』では、「on drums shota、on bass 野中 拓、on guitar 白、on vocal 芥、そして“あなた”で作ります、Chantyです!よろしくお願いします!」と“あなた”も含めたメンバーコール。
手拍子が綺麗に揃った『最低』で一体感を増し、「まだいけるよな?」と『空々』へと繋げると、フロアは一斉にジャンプしながら左右にモッシュ!

それでもまだ足りないとばかりに「このままじゃ終われねえだろう?」と叫び、容赦なく『衝動的少女』を畳みかける。パワフルなshotaのドラミング、しゃがみ込みフロアに視線を近づけて歌う芥、ジャケットを脱ぎ捨てた野中が重低音で煽り倒し、オーディエンスの声と白のギターが勝負するかのようなアウトロまで、怒涛の勢いで駆け抜けた。


「何かが続いていけばいくほど、理由ってものに雁字搦めになってしまう、そんな瞬間があります。後ろを見ても変えられないことばかり、未来を見てもどうなるかわからない不安なことばかり。そんな中で、今この瞬間だけ。たった1秒先に何が起こるかわからないこの瞬間に、僕らバンドマン、命を懸けて何かを届けに来ていて。あなたも、何が起こるかわからない未来の中でもがき、苦しみ、喜びもあるでしょう。そんな日々を越えて、今日この2025年11月16日に辿り着いてくれたと思います。未来も過去も一旦置いておいて、この瞬間を描き書きなぐり、また一緒に歩いていけたらいいなと思っています。私は浮かびながら沈む、夜光蟲。切っても切れないこの関係の中で・・・名前を出させてもらうと、ベル、Develop One’s Faculties、その時に居た俺達Chanty。そこから数珠つなぎで繋いでいったものを、また未来に繋ぎたいと思うことの何が悪い。」
終始穏やかな口調で話していた芥が最後の最後に唯一、感情を抑えきれない様子でそう口にした瞬間。この日に至るまでの長い時間の中で彼らが味わった葛藤や悔しさ、喜びや笑顔の記憶がこちらにまで伝わってくるようで、思わず目頭が熱くなってしまう。

「『たくさんのことがありすぎたから』とか、そんな簡単な言葉にできる関係ではなくて。奇跡的に出会えた関係性だからこそ、奇跡的に出会えたあなたたちだからこそ、今日という瞬間が成り立ちました。これからも、どうぞ一緒に旅を続けていけますように。改めて、この3バンド、そしてあの時一緒に歩いていた、今日は一緒にステージに立てなかった5人も含めて。どうもありがとう、そしてこれからもよろしくお願いします。最愛の気持ちを込めて、あなたに贈ります。」と届けられた『今日という日のこと』。
“今もこの指に繋いだ糸は ずっと繋がってる”Chantyが10周年に生み出した楽曲は今日という日にもあまりにもピッタリで、記念すべき再会に素敵な彩を与えてくれた。


「次の曲でラストになります。今日は3バンド平等にやりたいから、アンコールはありません!あなたの居場所を教えてくれますか?かかってこいよ!」
渾身の力を込めて奏でられた『透明人間』、バンドの爆音とフロアの声が一体となって初台DOORSの高い天井を突き破りそうなパワーが満ち溢れていた。
「11月16日、今日から始まる物語を俺達で作ろうぜ!ありがとうございました!」
全て出し尽くした4人を、拍手と大歓声が包み込む。今日という日を共に作り上げたオーディエンスに拍手を返し、メンバーはステージを降りた。公演は、本当にここで終了する予定だった。

しかし、アンコールの声は鳴り止まないどころか、そのボリュームを増していく。3バンド平等がいいからアンコールはしないと決めていたChanty。その背中を押したのはオーディエンスの声と、他でもない盟友達。
予定外のアンコールに立った芥は、「ありがとうございます。本当にやるつもりじゃなかったんですけど、yuyaくんと八雲くんが『やっちゃえ、やっちゃえ!』って(笑)。」と少し困ったような、でも嬉しそうな表情で言葉を続ける。

「僕ら9月に12周年を迎えまして、過去と未来について考えさせられることがたくさんありました。全ての人の気持ちをひとつにすることはなかなか難しくて、悩むこともたくさんあったんだけど。でも、Chantyも、私は浮かびながら沈むも、夜光蟲も、過去があって今があってそれを持って未来に向かうということを凄い一生懸命考えていると思う。傍から見て“なんか繋がっていないな”と感じることもあるかもしれないけれど、あなたたちを悲しませたりするつもりなんてなくてさ。何が喜んでくれるかなとか、そんなことを繰り返しながらバンドは続いていきます。考え違いもあるかもしれない。だけど、色々な考えの中で何かひとつ一緒になった、共感できた、その瞬間って“いつも共感していたら生まれないもの”だからさ。これは音楽だけでなく日常でも同じだけど、何か共感できたり、何かひとつ形になったものを、本当に大事に考えて生きていってください。僕らもそうしようと思っています。今日は最後までありがとうございました。」

しっかりとその想いを受け止めたオーディエンスからの大きな拍手に感謝し、「今日は別れの歌はひとつも歌わないつもりで来た。あなたと未来に向かいたいので、一緒に作ってもらえたらと思います。」と、この日までの全ての感情を込めて『よまいごと』をプレゼントし、3時間以上に及ぶ3MAN『2Y7M28D』を締め括った。

Chanty・私は浮かびながら沈む・夜光蟲。
ここからまた、それぞれの道へ進んでいく。
音楽を、想いを、たくさんの人のもとへと届けるために。

夜光蟲は、12月21日に池袋EDGEで約7ヶ月ぶりのワンマンライヴ『Le Paradis-episode 0-』を開催する。Johannes正式加入後の新体制初ワンマン、そして新章突入への第一歩でもある重要な公演となるだろう。
私は浮かびながら沈むは、12月13日に池袋EDGEで『The challenge never ends』と題したワンマンを開催。その前の12月5日には『春夏秋冬』をテーマにしたワンマンを北とぴあドームホールで、12月6日には世田谷#chord_で入場無料のファンミーティング(ミニライヴに加え、椅子取りゲームや歌詞百人一首などの斬新な企画もある模様)も予定されている。
Chantyは現在、ワンマンツアー『朱、爛々』の真っ最中。12月~1月にかけて神戸・広島・大阪・名古屋をまわり、ファイナルは2026年2月19日・代官山UNIT。12周年を経て、バンドの本分をより深く突き詰める13年目をひた走っていく。

この先の未来、彼らはどんな夢の続きを描いていくのだろう。
3本の道が再び交差する時を楽しみに、日々を大切に紡いでいきたい。

文:富岡 美都(Squeeze Spirits)

関連リンク

◆Chanty Official Web Site https://chanty.jp/
◆Chanty Official X https://x.com/chanty_news
◆夜光蟲 Official X https://x.com/yakou_koushiki
◆私は浮かびながら沈む Official Web Site https://epiphany-official.com/
◆私は浮かびながら沈む Official X https://x.com/official10321

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