【敬也-amazuti-】ライヴレポート<敬也-amazuti-1st LIVE「蒼炎-surface-」>2025年11月25日(火)渋谷REX◆初ライヴで見せた見事なる“浮上”。「ホントに帰ってきてよかった! ありがとう!」

敬也というアーティストを語るうえで欠かせないのが、言わずもがな“音楽”である。現在は、名だたるアイドルグループやアニメ・ゲームコンテンツに楽曲提供しているクリエイターチーム・amazuti(アマヅチ)で活動中であり、ヴィジュアル系シーンに馴染みのあるところで言えば、元PurpleStoneのヴォーカリストとして知られる存在だ。バンド解散後の約7年間で“作家”と“アーティスト”という二つの基盤を自らの力で築き上げ、実に5年ぶりにステージへ立つこととなったのが、11月25日に渋谷REXを舞台に行われた《敬也-amazuti-1st LIVE「蒼炎-surface-」》である。
「『蒼炎-surface-』というタイトルにさせてもらったんですけど、“surface”っていうのは“浮上”という意味を持っています。浮上というに相応しいライヴをしたいと思って、このセットリストとこのメンバーでやっています」と、敬也が語り出したのはライヴのクライマックスでのことだった。その言葉こそ、この日彼がステージへ戻ってきた理由を象徴していた。再び“歌う”ために必要なことを、自分自身が納得のいくかたちで作り上げるためには長い時間を要したが、だからこそ実現した“やりたかったこと”の到達点。何よりも、ステージに姿を見せた瞬間の屈託のない笑顔が、その達成感を雄弁に物語っていた。
「渋谷、ここから始めていきましょう。着いて来れるか!」と、これまでのフラストレーションを爆発させるかのように『Amazing BuG』から幕を開けた。ステージへ立っていない間も歌う機会は数多あったとは思うが、数年ぶりの生歌唱とは思えない圧巻の歌唱力で歌い上げていく。その中で一際強く耳に飛び込んできたのが、まるで敬也自身のことを歌っているようでもあるこのフレーズだった。
“踏み出して 失って手に入れて いつだって何一つ簡単にはいかないけど この世界に 生まれたわけが誰にだってあるさ”
多くの人を照らすことができる光=”音楽”に人生を捧げながら、今もなお“生まれたわけ”を探し続けている彼ならではの強いメッセージを放ちながら、未来への突破口となる扉を自らの手で豪快にこじ開けていくようなオープニング。続いた『怪演』や『No Risk, No Game』でも、ハードなバンドサウンドを受けて水を得た魚のように歌う敬也は、“ライヴ”という感触を爆速で取り戻しているようにも見えた。

「5年間ライヴ自体してなくて、カチッとした冠を打ったワンマンライヴは7年ぶりになります。言わなきゃいけないよね、ただいま!」と、見事なカムバックを会場の温かい拍手が迎える。さらに、敬也にとって記念すべき日を支えるバンドメンバーを紹介した場面では、「今誰よりも一番うまいと思うドラマー」として藤崎誠人、仲がいいだけではなく良き相談相手でもあるHIRO(FEET VAINQUEUR)、そして元PurpleStoneのGAKについては「僕がステージに帰ってくる日のギターをがっくん(GAK)にお願いするのは、めちゃくちゃ意義がある」と、“素晴らしいサポートメンバー”だと話したその表情には、仲間への信頼と誇らしさが滲んでいた。

ここからは、「ホントいい曲ばっかりなんですよ」と語るamazutiの提供曲をセルフカバーしたセクションへ。まずは、バンドセットのアレンジによって激しさを増した『LADY G DONNA』。スポットを浴びたGAKのギターソロに呼応するように、敬也の歌にも力がこもる。途中で口にしていた「いける!いける!」という言葉はオーディエンスを焚き付けるだけでなく、敬也自身をも鼓舞しているようでもあった。“クリエーター”として持ち合わせるジャンルレスな才能はステージでも遺憾なく発揮され、『Resolution』のダイナミックなミクスチャーナンバーも、皆で手をスイングさせるようなポップな『パラレルなハート』もお手の物といったところ。さらに、『星の雨』といったエモーショナルに胸を掻き立てるメロウな楽曲をじっくりと歌い上げるに至るまで、バリエーション豊富な楽曲を生み出してきたことを印象づけながら、それを敬也自身が歌うというファクトがまた、彼にしかできない唯一無二のスタイルを確立していたのだった。

言わばこのライヴは、敬也が次へと進むために、これまで作りあげてきたものを回顧していく内容でもあった。そこに欠かせないのが、PurpleStoneの存在である。ヘッドセットマイクを着用した敬也は、バンド当時のことを「自称、職業・ぶりっこ」とコミカルに振り返ったが、それはダンサブルなパーティーソング『パニックパニック!』で発揮されることに。今思えば、ヴィジュアル系シーンの中で踊りながら歌うという大胆な発想は新鮮だったとも思い起こされる。そして、「PurpleStoneのライヴ定番曲」と紹介された『デサバ』でもオーディエンスはハイテンションに拳を上げ、たちまちボルテージが上がっていく。きっと敬也とGAK、さらにファンにとっても、再び“ライヴ”でPurpleStoneの曲を披露すること(聴くこと)ができたことは深い感慨を呼んだに違いない。「次の曲は、このライヴをしようか悩んでるときにめちゃくちゃかっこいいライヴを見せられて、負けたくないし、やるなら本気でやろうと思った曲です」と披露された『咆哮』。オーディエンスと共にシャウトする一体感はもちろん、楽器隊それぞれのアプローチも冴え、エキサイティングな空間が広がっていた。
「今回のライヴきりで、これまで7年間やってこなかったとか、5年間がどうだとか、そんな思いを全部ここで終わりにしようと思って、次からまた新しく進んでいこうと思っています。ここで、スタートを切るための一つの区切りをつけたい」と話し始めたのは、“これまで”のことだった。バンドが解散してすぐ、自分の夢を叶えたくて上京してからたくさんの壁にぶつかったこと。ガムシャラに歌い続ける道と、仲間を見つけて音楽家として業界に足を踏み入れる道という選択肢の中で後者を選んだこと。それでも、自分自身の選択に自問自答しながら「自分が選んだ道は間違いではなかった」と思えるまでの日々が長く続いたこと。――敬也の中で、“夢を叶えたかった子どもの自分”と“大人になって賢くなった自分”が背合せをしている様子や葛藤をありのままに書いた曲が、ラストに披露された『鯨-kujira-』という曲だ。深海を彷彿とさせる演出の中で歌う敬也の姿に重なったのは、決して沈む影のような切なさではなかった。そこにあったのは、確かな光へ向かって浮上していく前向きな姿勢。さらに、敬也自身のことを綴った『鯨-kujira-』について「この曲が、“あの頃の自分”みたいに悩んでたり苦しんでる人の背中を押せる曲になったらいいな」と言葉を添えていた通り、彼の新たなスタートとなる日に“誰か”の力へと昇華された瞬間でもあったと言える。心なしか素が覗けるヴォーカリゼーションで心を込めて歌われた最後に敬也が放った言葉は、「出会ってくれた全ての人にありがとう」という、“これまで”に対する深い感謝だった。
アンコールの声に応えて再度ステージへ登場した敬也は、この日が“スタート”であることをしっかりと印象づけるように、新たなライヴが決定したことを伝えた。2026年2月17日に、「飾らない、歌そのものの力を試してみたい」という意志の元にアコースティックライヴを決行。さらにバンド形態でのライヴも5月か6月で現在調整中とのこと。「求められないと続けられない」と話していた通り、今回の敬也-amazuti-としての初ライヴに対する反響を一つの結果として受け止めた上での、“次なる一歩”だ。実際、“終わりと始まり”を象徴していた本編ラストの『鯨-kujira-』を歌い終えたその瞬間から、時は一気に加速していたように思う。だからこそ、敬也のファニーな面も覗けた『なんたって冒険中!』では大いに弾け、「最後は、皆さんの世界が素晴らしく耀くものになりますように!」と『すばらしきこのせかいへ』で晴れやかなエンディングを飾ることができたのだ。


「こんな幸せなことあるか!? ホントに帰ってきてよかった! ありがとう!」と感無量な様子で叫んだ敬也は最後、解放感と達成感に満ちた様子で圧巻のロングトーンをかました。敬也も経験したように、人生にはいくつかの選択肢がある。それを選ぶ先見の明もその人の力量であると言えるが、その選択を「良かった」といえる結果に導くのもまた、本人次第である。“無理”へとトライする精神を持ち、それを成功へと自分自身の力で導いてきた敬也は、未知なる可能性を秘めていると言えよう。浮上し、光を見出した人間は、ただただ強いのだ。
文:平井 綾子
写真:小林 弘輔
SET LIST
1.Amazing BuG
2.怪演
3.No Risk, No Game
4.LADY G DONNA(ウマ娘 / ジェンティルドンナ)
5.Resolution(MADKID)
6.パラレルなハート(内田真礼)
7.星の雨(WEST.)
8.パニックパニック!(Purple Stone)
9.デサバ(Purple Stone)
10.咆哮(Aぇ! group)
11.鯨-kujira-
EN-1.なんたって冒険中!(#ババババンビ)
EN-2.すばらしきこのせかいへ
LIVE

敬也-amazuti- piano style live
「うたのみたま」
【日程】2026年2月17日(火)
【会場】渋谷 7thFLOOR
【出演】Vocal:敬也-amazuti- / Piano:田中 和音
【時間】
[1部] OPEN 15:00 / START 15:30
[2部] OPEN 18:30 / START 19:00
【チケット】
椅子あり(自由席)
<通しチケット>
整理番号:先行 S1〜/一般 A1〜
金額:¥9,000-
入場特典付
◾先行(抽選):12/3(水)20:00-12/9(火)23:59
◾一般(先着):12/11(木)21:00-2/16(月)23:59
※通しチケットのお申し込みは<1部>のチケットページからのみ
<通常チケット>
整理番号:先行 B1〜/一般 C1〜
金額:¥4,000-(各部)
◾先行(抽選):12/3(水)20:00-12/9(火)23:59 ◾一般(先着):12/11(木)21:00-2/16(月)23:59
▼チケット購入ページ
1部:https://livepocket.jp/e/keiya0217_1
2部:https://livepocket.jp/e/keiya0217_2
※入場順:S→A→B→C→当日
※入場時に別途ドリンク代(¥600)がかかります
※当日の入場状況によって当日券のご用意ができない場合もございます
関連リンク
敬也 OFFICIAL X
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amazuti OFFICIAL SITE
https://amazuti.com/