【夜光蟲】ライヴレポート<夜光蟲 3rd ONEMAN LIVE『Le Paradis -episode 0-』>2025.12.21 池袋EDGE

“Le Paradis(楽園)”と聞いて想い描くのは、一体どんな場所だろうか?
夜光蟲がステージで展開したその片鱗は、あなたの想像どおりの楽園だったのか、それとも悪夢だったのか―――。
2025年2月の始動以来、“路地裏電脳秘密倶楽部”をコンセプトに、八雲(Vo.)が執筆する小説のプロットを基にした歌詞世界とTaizo(Gt.)が生み出すEDM×アコースティックギターを主体とするバンドサウンドの楽曲、さらには斬新なヴィジュアルとこだわりを持って制作される映像作品で、聴覚面・視覚面共に“総合芸術”と謳うにふさわしい強烈なインパクトを与えてきた夜光蟲。
2025年5月24日のワンマンで最初の物語である『路地裏より愛を込めて』を完結させ、それまでは控えていたイベントライヴへの出演を解禁すると、既存の枠には当てはまらない夜光蟲のバンドとしての在り方や表現方法をストイックに模索・追求しながら進んできた。
2025年11月16日、長年の盟友であり路地裏同盟(※サポート)として何度もステージを共にしてきたドラマー・Johannes(ex.Develop One’s Faculties)が正式加入することを発表。
同時に新たなアーティストヴィジュアルと『剥製アリー』のMVが公開されると、その鮮烈な世界観が話題を呼び瞬く間に1万再生を記録した。
そして2025年12月21日、バンドの注目度と充実度が一層高まる中で新体制初・新章突入の第一歩となるワンマンライヴ『Le Paradis -episode 0-』を開催。
新たな物語の始まりを体感するべく池袋EDGEへと集まった多くの同盟員(ファン)のざわめきと重なるように流れていた昭和歌謡の場内BGMは、いつしか激しく降り注ぐ雨音に変わっていく―――。
暗転と同時にスクリーンに映し出された、『剥製アリー』のMVの舞台でもある“Le Paradis”の名を冠した洋館。サイケデリックな色彩に埋め尽くされたその空間では、胸像の瞳がぎろりと睨むように視線を向け、花々が時間の流れの狂ったスピードで咲き誇る。注射針の先端から零れ落ちる防腐液、ひとりでに動き出す椅子、そして、羽ばたき飛び立つ剥製の蝶。
電子音が交錯するSEが流れ、極彩色が照らし出すステージに華やかさと毒々しさを感じさせる新衣装を纏ったJohannes、Taizo、八雲が登場すると、オーディエンスは手拍子とメンバーコールで迎え入れる。
「池袋EDGE、頭からデカい声を聞かせてください。始めよう。」
気迫のこもった言葉にすぐさま大きなレスポンスが返された『剥製アリー』で、ライヴは幕を開けた。
拳・手扇子・折り畳みと緩急のある展開を見せる楽曲は、一度聴いたら忘れられない印象的なメロディーラインと繊細なギターソロが夜光蟲の武器全開と感じられる、新章のメインテーマとなったことにも納得のキラーチューン。



集まったオーディエンスを路地裏の洋館へと一気に引きずり込むと、ピンスポットに照らされた八雲がストーリーテーラーのように歌い出した『無自覚を刻め』でフロアが揺れ始める。
「さぁ、ここらでひとつになってみようか。」迫りくる怪しげなイントロから左右にモッシュが起こった『生まれ落ちたが運の尽き』、Taizoのギターパーカッションを交えた鮮やかな演奏と、Johannesが間奏で聴かせた感情を揺さぶるドラミングに魅せられる。
「可愛いおててを・・・」八雲が妖艶に促せば、一斉に高く手を掲げて打ち鳴らされる手拍子。いつの間にか、夜光蟲の奏でる音楽に、発せられる言葉に、一挙一動を操られていく。
「はじめましてのあなたも、いつものあなたも。こんばんは、3人になりました夜光蟲です。」あたたかな拍手に包まれながら、「実にめでたい・・・めでたい・・・めでたい・・・」と壊れたようにひたすら言葉を繰り返す八雲は(指を折ってカウントしていたTaizoは10回を越えた時点で数えることをそっと諦めていた)、「めでたい・・・メデタイ・・・『愛に狂って』。」と、そのままタイトルコール。
淡々と一途な狂気の愛を歌う姿、その手に握りしめた狂愛灯が段々と鋭利な凶器のように感じられてくる。繰り返し口にした「めでたい」は、いつしか「愛でたい」へと変化していたのか・・・揺れる狂愛灯の青い光を見つめながら、そんなことが頭を過ぎった。

アウトロでTaizoがお立ち台へと駆け上がりライヴバージョンに進化した長尺ソロをたっぷりと聴かせた後、途切れることのないJohannesのビートに乗せて八雲が独り言のように葛藤を口にし、最後には「どうでもいいんだよ。」と吐き捨てて歌い出した『NOCTURNUS』。転調部分の迫力あるシンバルチョークと劇的なボーカリゼイションの相乗効果も素晴らしく、じわりじわりと距離を縮めていく様が浮かぶギターリフと獲物を追い詰め捕らえた悲鳴のごときソロも含め、ひとつひとつの情景がより鮮明に見えるようになったと感じる。
「飛ぶ準備はよろしいか?3.2.1、Jump!」と『sweetie』を畳みかければ、まるでスイッチを押されたかのようにフロアの頭上でくるくるとタオルが回った。


「『Le Paradis -episode 0-』』に御来場いただきありがとうございます。ライヴがあることが、幸せで嬉しいわけではなく。こうしてここに集まってくれるあなたたちが居て、そんなあなたたちも今日まで下唇を嚙みながら過ごした時間があったと思います。僕にとって、この夜光蟲というライヴは、あなたたちと心を通わせる場だと思っています。あなたたちは、凄い人です。ここに居てくれるだけで僕らは嬉しいと思うし、あなたは幸せになるべき人です。僕たち3人を、こんなに幸せにしてくれるんだから。だから、せめて・・・。どうか、世界でただ1人、僕だけが君を幸せにできると、勘違いさせてくれないか?」
心からの言葉をいつもの台詞へと繋げて、1番を丸々アカペラで披露した『漆黒横丁』。静まり返った空間に響く艶と憂いのある歌声、僅かな感情の揺れ動きや温度感までストレートに伝わってきて、いつも以上に胸に刺さる。行き場の無い想いに寄り添うようなTaizoとJohannesの音色、静かに熱を帯びていく圧巻の歌声と演奏だった。
そして「またここから始めよう。」の言葉からの『蛾々』、極彩色の蟲達は何度でもその産声を上げる。楽曲を印象付けるスリリングなシンバルワークとスパニッシュなギターソロ、ロートーンボイスが心を浸食していった。

拍手の音と重なるように、雨音が全てを包み込む。
「今夜、あなたが眠りにつけるように。」一抹の寂しさを感じさせる祈りとともに水底へと深く沈む『遺恨』では、その人生を反芻しながら諦めと安堵の入り混じった歌声を聴かせる。魂のこもったアウトロのギターソロ、八雲がそっとステージを後にすると、ドラマティックなエンディングを弾き終えたTaizoもそれに続いた。
ステージには、ピンスポットに照らされたJohannes。自ら制作した鮮やかな蝶と夜光蟲のロゴが入ったオリジナルのバスドラヘッドが映えるドラムセットで、魅せて聴かせるドラムソロを披露していく。
時にパワフルに軽快にリズムを奏で、スティックを掲げて手拍子を促す。あらゆるフレーズを織り交ぜたリズミカルな演奏を聴かせ、立ち上がってシンバルを打ち鳴らせば、フロアから沸き起こったJohannesコール。奇しくも、この日はフリードラマーになってちょうど2年の記念日。Johannes自身は2年の時を経ても変わらず応援してくれるファンが居ることを、そしてオーディエンスはJohannesが変わらずステージに立ち続けてくれることを、お互いに嬉しく感じられた日になったことと思う。繰り返すごとにさらに大きくなっていくJohannesコールに満足げな表情を見せると『混蟲LESSTRANCE』の同期に合わせてソロを締め、八雲とTaizoもステージに戻ってそのまま曲へと突入した。
「狂って来いよ、飛んで来い!お前たちと命の取り合いやってんだよ!」
ステージとフロアの煽り合いが始まり、「もっとだよ、苦しそうな顔させてあげるから。」とサディスティックな表情を覗かせる八雲。お立ち台に上がったTaizoも身を乗り出し、“来い”と言わんばかりに手招きしてみせる。
そんな彼をめがけて飛び込んでいくオーディエンスをよそに、気付けばなんとステージ上でどんぶりを手にしてリアルにラーメンを食べ始めている八雲に気付いて驚愕する。同時に、この“想像を超えてくる自由な発想”は彼がこよなく愛するヴィジュアル系が持つ本来の魅力のひとつであり、それを体現してみせたかったのだろうとも感じた。
演奏中のJohannesにもラーメンを食べさせたり、飛び込んできた男性ファンたちにもお裾分けしたり、どこまでも自由で全く先が読めない。
遂には「最前列が華奢な女の子たちだと、飛ぶほうも気を遣うでしょう?」と一時的に屈強な男性ファンを最前列のセンターに集め、八雲直伝の“逆ダイ布団講座”を開催してから本気の逆ダイタイムへ。フロアに広がる絶景に、メンバーも笑顔を見せる。
「2025年の夜光蟲のライヴは今日がラスト、僕は今日喉を潰すつもりでここに立っているので。まだまだいけますか?」と問いかければ、大歓声が沸き起こる。体感温度が急上昇した本気の煽り合いをやり切ったオーディエンスとメンバーに、心からの拍手を送りたい。


「楽しんでるかい?『Le Paradis -episode 0-』、ご来場いただきありがとうございます。今日は僕らにとっても特別な日になります。今日初めて夜光蟲を観た方も、ワンマンには初めて来た方も、改めてこれからよろしくお願い致します。」そう言って「ちょっとだけ砕けた話をさせてください。」とこの日から販売開始された新グッズ(※《祭壇用》連結台座教祖セットという独特なネーミングのアクリルスタンドセット)について暫しトーク。
なぜ昨今はアクスタが人気なのか?の問いに、「ライヴ後に居酒屋でドリンクとチェキとアクスタを並べて写メを撮るところまでがライヴだから、その一連の流れのためにアクスタが必要。」とバンギャの行動に対して解像度が高い回答をするTaizoと、「自分がバンギャだったら絶対にやっている。」と生粋のヴィジュアル愛を炸裂させた発言をする八雲。つくづく、トークになるとユニークなキャラクターを発揮する人たちである。
古のシーンの話を経て、ヴィジュアル系バンドを応援することも推し活なのか?という少し深いテーマへ。
「自分の中では、ヴィジュアル系バンドと推し活はなかなか結び付かない。」と言う八雲は、「僕の中での夜光蟲は、推し活というより“支え”とかそういったものに近くて。“心”って言うと当たり前に伝わるけれど、体のどこにそんなものがあるのかは誰も知らない。ここに集まった人たちは“心の存在”を信じている人たちだと思っているから、夜光蟲は“心の置き場”。祭壇みたいな、心を預けられる場所。絶対にあなたたちを傷つけない、そういったものになるべきじゃないかなって思った。」と想いを語った。
そして、再度Johannesを紹介し、「もう1人のメンバーが僕らと運命を共にしてくれる今日という記念すべき日、夜光蟲をもっともっとたくさんの人に知ってもらえるような活動をしていきたいと改めて思いました。」と決意を新たにする。
「夜光蟲は大人しい曲をやっていると思われることが多いのが凄く悔しくて。みんなと盛り上がれる新曲を持ってきました!」とプレゼントされたのは、『天国注射の夜』。
タイトルからしてセンセーショナルな新曲は、深堀りするほど様々な意味や背景が見えてくるようでとても興味深い。
イントロからテンポの速いジャンプを求められたオーディエンスの飲み込みの早さに感嘆しつつ、“楽園たる奈落”が今後どのようなストーリーへと繋がっていくのか期待が募る。
アウトロのギターの余韻に重ねたカウントで『psyche』へ繋ぐと、今度は郷愁感のあるメロディーが世界を染める。この曲の語り部分で“救ってあげたかった”“祈りなさい”という言葉が出てくるが、先ほどのMCで話していた“祭壇”や“教祖”といったニュアンスは思えばこのあたりから感じ始めていた気がする。宗教的と言うと語弊が生じるが、それに匹敵するほどのカリスマ性やアジテーター的な要素は元来ヴィジュアル系バンドを構成する大きな魅力のひとつであることは確かで、それが八雲の言う“支え”にも繋がっていくのではないかと思う。


疾走感溢れるイントロから真っ赤な照明の中で手拍子が綺麗に揃った『セイディーメイニー』、楽曲にとって必要不可欠な存在となったオーディエンスのコーラスが美しい。エンディングに向けて空間を切り裂くようなシャウトを聴かせる八雲、天を仰いでギターをかき鳴らすTaizoと重厚感のあるドラムを聴かせるJohannes。ライヴがクライマックスへと近づいていることを感じる。
ゾクゾクする電子音が2回目の『剥製アリー』の始まりを告げ「頭とは違う声で迎えてくれる?」と問い掛ければ、すぐさま割れんばかりの声が返される。ライヴ終盤、全てを出し尽くし表現し続けた八雲の歌声が珍しくハスキーになっていて、バンドを後押しするように響くオーディエンスの歌声がいつも以上に頼もしく心強かった。


Taizoが爪弾くアルペジオに乗せて「今日、こうしてあなたたちと会えて幸せでした。来年も、この3人と君たちで作った夜光蟲を、もっともっと深く深く愛していきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。少し空いてしまうけど、またどこかの路地裏でお会いしましょう。夜光蟲でした。」と八雲がお礼を伝えると、大きな大きな拍手が3人を包み込む。
ラストを飾ったのは、先日サブスクが解禁されたばかりの新曲『イキヲトメテ』。儚さと切なさを孕みながらも、音源ではあえて目に見える熱感を高めすぎずに表現した印象を受けた楽曲だ。
しかし、ハスキーに変化した声で最後の一滴まで力を絞り出すようにして歌い上げた八雲の凄まじい気迫と、それを彩り支えたTaizoとJohannesの繊細なサウンドは、“エモーショナル”なんて言葉では表現しきれないものだった。この日この瞬間にしか体感できない、まさに“Live=生”と呼ぶにふさわしいエンディングに心が震える。
じっとフロアを見据えた八雲の姿がシルエットに変化し、静かに幕が閉じていく。アルペジオの音色が外界を遮断するように断ち切れて、夜光蟲の路地裏は闇の中へと姿を消した。
夜光蟲のライヴの醍醐味とも言える余韻に浸りつつ振り返ると、全体を通して“生”を強く感じさせるワンマンだったように思う。
八雲も話していたとおり、夜光蟲が大人しいバンドだと思われることが多いのは事実だろう。それはきっと様々な要素が重なって生まれた先入観によるところだが、Johannesの加入により楽曲の繋ぎや表現を含めてアレンジ面や演奏面の可能性が広がったと随所で感じることができたし、サウンドもステージングも一層バンド感が増していた。
そして、それはメンバーのステージングやフロアのアクションといった目に見える部分だけではなく、彼らの内側にも大きな進化を生じさせていくに違いない。
終演後に発表されたニュースはふたつ。
まずは、新曲『天国注射の夜』のサブスクが解禁されたこと。
そして、2026年2月28日(土)・渋谷WOMBにて、一周年儀式集会『-素敵な非日常-』が開催されること。
こちらの公演のチケットには様々な券種があり、声出し・ヘドバン・モッシュなどが苦手な方でも安全に楽しめる“沈黙参戦チケット”や、学生限定の学割料金のチケットなども用意されているので、それぞれの楽しみ方に合ったものを選択して身構え過ぎずにご参加頂きたい。
新章への扉は開かれた。夜光蟲の『Le Paradis(楽園)』は、どんな景色を描いていくのだろう。
彼らの楽曲には“死”の匂いがついてまわるものが多いが、この日のステージから感じたのは強烈な“生”。その対比がとても面白く、魅力的だった。
“生と死”“静と動”、対比するものは常に表裏一体。誰かにとって楽園だと感じられる世界は、他の誰かにとっては悪夢のような世界なのかもしれない。
そんなことを考えながら、路地裏に現れる非日常に再び足を踏み入れられる日を楽しみに待ちたいと思う。
文:富岡 美都(Squeeze Spirits)
LIVE

夜光蟲 一周年儀式集会
「 - 素敵な非日常 - 」
2026.02.28(sat)
会場:渋谷WOMB
op 15:30 / st 16:00
公演終了 18:00(予定)
出演:夜光蟲
【チケット】
https://livepocket.jp/e/1qyc8
①優先チケット:完売
②一般チケット:¥3,500(B1〜)
③沈黙参戦チケット:¥3,500※(C1〜C30)
※声出しやモッシュ、ヘドバンなどをしたくない方向けのエリアになります。
④学生チケット:¥1,000(D1〜)
②③④販売開始: 1/11 12:00〜
関連リンク
◆夜光蟲 Official X https://x.com/yakou_koushiki



