【惡抱味(わるだくみ)】真宵 "last" one man live「賞味期限」@新宿club SCIENCE 「惡抱味(わるだくみ)」として本格ソロ始動することを発表した誓いの夜────「あなたを否定するすべてを否定する」

2026年4月1日。
世間がエイプリルフールに浮かれるなか、当日朝に突如発表されたラストワンマンの報せ。
もともとこの日はヴォーカリスト真宵がソロとして始動するべく、ファーストワンマンを行うことがアナウンスされていた。
ここで何が起こるのか、期待も大きかっただけにこの唐突な情報には目を疑ったのが正直なところだ。
ただ、真宵が悪ノリでこういったことを楽しむほど軽薄でないことも理解しているつもりである。
結果として、当夜に発表されたのは、本気でソロ始動すべく「惡抱味(わるだくみ)」という名義で活動していく決意だった。
彼自身からのオーダーで、セットリスト以外のすべての情報を遮断して観ることになった、記念すべき“最後の夜”の模様を本レポートでお届けする。
◆ ◆ ◆
会場に入ってまず驚かされたのは円形のモニュメントのようなステージセットと、その周囲に配されたテーブルの類いだ。
さらにはメインステージとセンターステージの間にはレッドカーペットも敷かれている。
クリエイティブのひとつひとつに重きを置く、真宵らしいアプローチだ。
こんな演出だけで、この日が特別なものだと感じることができる。


期待が高まったところでほどなくして暗転すると、この日のサポートメンバーが順に登場し、最後に真宵が現れた。
絶妙な緊張感が会場に漂うなか、白い冷蔵庫を手にした真宵がセンターステージへと歩を進める。その冷蔵庫をそっと開けると、中からマイクを取り出しライヴがスタート。

「サイエンス飛ぶよ!声ちょうだい!」と軽快に始まったのはこの夜の表題でもある「賞味期限」。跳ねるリズムと煌びやかなメロディが一気に会場を包みこむ。
先ほどまでの緊張感とは打って変わって、盛り上がりを見せるフロアからは、これが初陣であることも、“ラストワンマン”であることも感じさせない。
結論から言えば、この夜、6曲がまっさらな新曲として提示されることとなった。
ほとんどの楽曲が真宵が取り組んでいる”piece art”企画を起点に制作されたもので、その作曲者は真宵自身がゆかりのある仲間を指名している経緯がある。
だからこそだろう。「賞味期限」の際立ったポップさは、彼の甘美な歌声をいいとこ取りしたような贅沢さと耳馴染みの良さを感じさせた。

続いたのは「現在進行形」。
歌からはじまる温かみのあるナンバーだ。ホーンや鍵盤などバンドサウンドに捉われない音像は、ソロの自由さと同時に彼がこれまで歩んできたバンドマン人生も想起させる。とにかく印象的だったのは、真宵自身が楽しそうに自然体で歌っていたことだ。
現在進行形の歌詞にも“幸福とは 何故かいつも 戻れない記憶の中に咲く”とあるが、記憶には戻れなくても、幸福は再び作りだすことができる。そんなシンプルなことを謳歌していることがよく表れている場面だったように思う。
冒頭からポップサイドの楽曲で会場を温めたのちのMCでは、オーディエンスからの“真宵コール”が巻き起こる一幕もあった。
その声に応えるように、「いろいろな意味で気持ちがいっぱいいっぱいです。みんなが来てくれることも嬉しい。今日は来てくれてありがとう!」とシンプルに謝辞を述べてからサポートメンバー紹介へ。
マニュピレーターとキーボードとギターの“三刀流”を体現する KNOTmanは真宵にとっても歴戦の相棒的存在である。要塞のようなセットを司る彼の存在は今後の活動にも欠かせないものとなっていくだろう。さらには昨年9月に始動し、大きな話題を呼んでいるメタルバンド=zilqyの華乃がドラムを務めていることも驚きだったが、ベースの田丸将貴に至っては真宵と広島時代からの同級生とのことだ。真宵にヴィジュアル系を教えた存在としても知られているだけに、この布陣で臨むことへの感慨もひとしおだったに違いない。

続いたのはそんな田丸が作曲した「One Last Night」。
機関車の汽笛のような音を導入に、“サヨナラシヨヲ”とワードもインパクトが強く、聴きとれた歌詞や鉄道の汽笛のような音からも郷愁性を感じられる。
高校生ぶりに田丸が作った曲を歌うということも影響したのだろうか。この時を噛み締めるような真宵の姿然り、「One Last Night」という示唆的なタイトルにも関わらず、希望を見出すような世界観も印象深い場面だった。
カラフルで温かな照明に包まれた「メゾピアノ」は早くも名曲のムードを漂わせた。
真宵の張り上げるハイトーンも持ち味たっぷりであったし、かつて在籍していたHOWLの活動が止まって以降の葛藤も、抱いた感情をも丁寧に吐露してくれる言葉たちが、鋭くもやけに優しい手触りで寄り添う。
HOWLは2018年に結成以降、不動のメンバーで2024年の10月まで活動したバンドである。ポップで可愛らしい初期から、繊細でナイーヴに抉った中期、そのすべてを包括したドラマティカルな終盤と、真宵のバンド人生のほぼ全てを色づけてきた存在だ。彼らが出してきた楽曲には、ポップさのなかに隠せない葛藤が見え隠れすることもあり、その人間臭さが一段とバンドをステップアップさせた。
そのときそのときの感情を吐露する姿は、彼の愛らしい見た目とは裏腹にリアリティを持つものだ。
こんなことを思い出させるのも、「メゾピアノ」が表現する、ようやくポジティブに振り切れた決意表明的なマインドによるものなのかもしれない。
だからと言って、もちろんバンド活動がネガティブだったわけではない。
実際、この日の会場である新宿club SCIENCEは、HOWL始動の地であり、2024年10月2日に幕を降ろした大切な場所でもある。
再始動の場所としてこの会場を選んでいることからも、これまでの一切を否定せず受け止めていくという強い意志は明白だ。

「メゾピアノ」は明るいミドルチューンのロックでありながら、ポップスとしても十分に成り立っている。これから歌い続けることで、一層大切な曲に育っていくことだろう。それは真宵にとってだけでなく、オーディエンスにとっても、だ。
続いたMCではバンドが活動休止してから1年半が経ったことに触れ、再び音楽を作ってライヴをしたくなった経緯を語った。そして、その状態でワンマンをしたらどのような光景になるのかにも興味があったことを、笑顔を交えながら教えてくれた。
曲を世に公開せずに開催するワンマンは、彼らしい意欲でもあり、たしかにそれ以上に予測不可能なものでもあったことは間違いない。

「次の曲は…ライヴをするならこの曲をやりたいなと思ってて。バンドを終了してからもHOWLの楽曲を歌うお誘いとかはあったんだけど、あのメンバーだったからあの曲はあったわけで、だからずっとやってこなかった。もしまた、HOWLの曲をやるとしたら、期待させるわけじゃないけど、また活動するとき……それか、俺がまた一歩踏み出すときに歌いたいなって思ってました。今日は1曲だけ、HOWLの曲を歌わせてもらいます。」
そう告げて披露されたのは「アンダーテイカー」。
HOWLの鼓動を鳴らし続けたその曲は、珠玉のメロディーと強靭な意志が共鳴する、バンドにとって宝物のような1曲だ。
埋葬者の意味を持つこの楽曲、その詩世界は夢へ賭す想いを儚くも力強く体現するものだからこそ、この決意の日にプレイして然るべきものだといえる。
涙を浮かべている観客も多く見受けられたが、そういったエモーショナルさは真宵自身にもきっとあっただろう。その表情を覆い隠すような逆光のなか、何を想っていたのかは、想像の域をでない。
余談だが、筆者に事前に配布されたセットリスト資料には「█▇█▅█▇█▅」と表記され、その正体が秘匿されていたことも記しておく。
しかし、特筆すべきは、この日仕様施されたアレンジだ。歌声を抽出することに特化したともいえるが、筆者の印象ではアンプラグドではなくとも、極端なほどにバンドサウンドを排除したものという印象が強い。
それは彼の言葉を借りるなら、バンドサウンドである以上は“あのメンバー”である必要があるからだ。“あのメンバー”とは、言うまでもなく、よっぴ、ゆうと、yukiのことだ。
絶唱すると、静かにステージから姿を消した真宵に喝采が贈られた。
ここからは終盤戦。
「アンダーテイカー」の余韻から空気を一転させるべく、深い緑のジャケットと黒のハーフパンツに着替えて届けたのは「あまりもの」。
ここではラップのようでもあり、ポエトリーリーディングのような独白から始まるクールな構成が耳を惹く。
「まだまだ一緒に上がっていけるよな!これがあるからもうちょっとだけ生きてみようとか、そういう気持ちに1ミリでもなれたらいいなって思ってます。ここにいるあなたがたひとりひとりに届けたいと思います!受け取ってくれますか!俺はあなたの言い訳になりたい!」

感情を込めた咆哮が誘ったのは、ベーシックなバンドサウンドがアッパーに押していく楽曲だ。
「言い訳」と題されたタイトルと先述のMCのとおり、力強く引っ張っていくのではなく、生きていくための動機でありたいと願う。
自分がどうありたいかという強いマインドと共に、あなたのためにどうありたいかという境地にたどり着いたのは、HOWLの活動休止だけでなく、その間もサポートで歌い続けたKiDでの出会いや経験もおおいに影響したのではないか。
言ってしまえば、前情報も極端にクローズされたなか集まってくれたオーディエンスに対する募る想いもあったのかもしれない。
最後のサビで会場中の拳があがると、再度「賞味期限」をプレイ。
オープニングで披露したときよりもグッと距離感が縮まったリラックスした姿が眩しかった。

ここでついに"last" one man liveと題した理由を語る。
「“last”っていうのは“最後”だけじゃなくて、“続く”って意味もあるから(笑)」と笑わせ、「この度、腹を括りまして、“惡抱味”という名前でソロ活動を始めます!」と高らかに宣言してみせた。
ある意味、真宵という名義ではラストであるものの、惡抱味の真宵としてはここからが始まりというわけだ。
そんなラストは「生命線」。
繊細な歌唱と気高いサビがハイライトとなる、力強いバラードは普遍的なラヴソングのようにも響いた。
“あなたを否定する 全てを否定する”
強弱を駆使した歌声は琴線をなぞるように、KNOTmanのギターソロは滾らせるように交錯し溶けるように舞う。

「“あまりもの”の心も一緒に抱いて味わっていこう!惡抱味の真宵でした。ありがとう!」
今持てる全てを放ち、こう叫んで、およそ80分近くに渡った惡抱味の第一歩を締めくくった。
予定していなかったという、アンコールでは「もう曲ねえって!」とはにかみながらも、とどめとばかりに「言い訳」を再演。
彼のストイックな一面とこだわり抜いた表現は目と耳を奪い、最後まで駆け抜けた。
最後の最後で6月に音源をリリースする企みがあることも発表した惡抱味。
ソロでありながら、不思議と孤独を感じさせなかったのは、彼がこれまで培ってきた音楽と活動が大きく後押ししたところもあるはずだ。

終始笑顔を見せてくれた真宵の次なるステージがどうような景色にたどり着くのか。
その生命線が途切れるその日まで、歩み続ける姿を追っていきたい。そう思った。
Text:山内 秀一
Photo:千佳
SET LIST
-OPSE- 意味不
1. 賞味期限
2. 現在進行形
3. One Last Night
4. メゾピアノ
5. アンダーテイカー (HOWL cover)
-SE- BLACK MIRROR
6. あまりもの
7. 言い訳
8. 賞味期限
9. 生命線
EN1.言い訳

惡抱味
0 th Single「生命線」
https://linkco.re/dfHxFb23

惡抱味
1st Album「惡友 vol.1」
2026年6月 Release!!
LIVE
2026年7月6日(月) ???
2026年10月2日(金) ???
関連リンク
真宵 OFFICIAL X https://x.com/myi_howl
惡抱味 / 真宵 staff OFFICIAL X https://x.com/MAYOI_staff



