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【201号室】ライヴレポート<1stワンマン「灰色の夢」>2024年8月23日(金)池袋EDGE◆“俺の地獄にお前はずっといろ!”────証明した実力と、剥がれて化けた“2つ”の本性。
201号室が8月23日(金)池袋EDGEで自身初となるワンマンライヴ「灰色の夢」を開催した。
2023年5月21日にキズの主催「友喰イ 2023」のSpotify O-EAST公演で華々しいデビューを飾った201号室。…というのはあくまで“側”の見え方でしかなく、その意味を理解し、舞台に向かう彼らには並々ならぬプレッシャーがあったという。
結果的にO-EASTで堂々たる自信を得ると、コンスタントに楽曲をリリースし、そのクオリティの高さから評価は上昇していった。“201号室ってバンドが良いらしい”、“今、才能を感じるのは201号室”、そんな幻想と新しいもの見たさの好奇から解き放たれた先で待ち受けていたのは、正当なプレッシャーだった。
このワンマンライヴに向けて急加速するようにライヴ力をつけてきた、ヴィジュアル系シーン最先端かつ最注目の初陣の模様をお届けする。
SEの音量が上がりゆっくりと幕が開く。
青白く照らされたステージには4つのブラウン管テレビが配されていて、その画面には201号室のバンドロゴが映し出されている。ステージ後方には公演バックドロップも見える。持ちうる時間とアイデアを全て投影できる、それこそが純度溢れるワンマンライヴだ。クールに登場する楽器隊からいくばくか遅れて最後にフロントマンがゆったりとした歩調で定位置についた。
オープニングは鍵盤の音が細い歌唱が溶けていく「灰色の夢」。
その楽曲のクオリティに自信とアイデンティティを持つ、彼ららしいバラードからスタートする構成は挑戦的というよりはむしろ核心を突いた一手で、会場の温度に触れるように、触れぬようになぞってゆく。“僕は壊れたからさ”というリリックからも物悲しさを感じさせるが、このバンドを支持する聴衆が求めているであろう琴線を震わせた短いバラードはまるで物語の結末のようでもある。
曲の終わりにピンスポットに刺されたKEN(Gt&Vo)がそのままアカペラで歌いだし、“行くぞEDGE!!”と共にリズムインから高揚感を煽った「イエローハート」。ドライヴするコードと好意的な“隙”の押し引きが実に心地よく、静と情念の狭間で要求したシンガロングと、応えるオーデイションの姿も旧態依然のフォーマット化されたものとは一線を画すものだ。90年代音楽シーンを牽引したhideへのリスペクト曲でそう感じることも意外だが、常に自由なスピリットの下にロックしてきた血脈と考えれば実に自然とも言える。切なげに時折オフマイクで歌うKENは今日も真紅のスーツでキメている。
残響を巧みに活かし、カラフルなライトに迎えられたのは「デスコ」。
この楽曲が世に放たれ際から革新的なナンバーだと感じていたが、ダンサブルに揺らすだけでなく、ここに至るまでに直情的なダイナミズムも生まれ一層のパワーで牽引した。
卓越したスキルを誇るRyuta(Dr)は粒立ったサウンドでダンスロックのビートを支え、シンナ(Ba)とのキメもこのバンドのフックとなっている。
他のヴィジュアル系バンドと比較してベースソロの頻度が多いのも4ピースである彼らならではだが、お立ち台に上がるもクールに魅せるシンナと、定位置を中心に全身で訴求するHiroto(Gt)は好対照で、強く目を惹く。Hirotoのレトロなギターソロも含め、情報量が多いなかで熱を波及させていく様はハイブリッドで改めて特異な発明といえる1曲と言えよう。
楽器隊がジャムるように音を重ねてグルーヴを生み出していく「Fake」では“今日は同期流れません!お前らの声聴かせてくれるか?”と焚きつけると曲間のコール&レスポンスは凄まじい声量に。
ワンマンライヴならではの光景といえばそれまでだが、この日へのただならぬ期待の高さが垣間見えるシーンではなかっただろうか。Hirotoは加速するようにアジテートを繰り返す。問いかけるように息づくような歌唱が時に堕落で時に甘美なKENが、フライングVをかき鳴らしながらイントロから空気を変えたのは「天上の果実」。
いつも以上の荘厳さも感じさせ、張り裂けるような絶叫には、頭を振りしきり応える者、飲み込まれるように立ち尽くす者にフロアが分断された。
まさに冷静と情熱のあいだではないが、思い思いの方法で彼らの音楽が咀嚼されていることは顕著だ。引きずり込むような「アクター」では、陰鬱とした現実とフィクションを引き合いにした歌詞の世界に、ステージ上のテレビ画面にはホワイトノイズが嘲笑うように虚しく映る。
共にダウナーに落ち、没入した会場からは音が鳴りやむと拍手が巻き起こった。
ここでガラッと空気を変えたのは「ブロイラー」。
メロコアも香らせるストレートなロックチューンはその開けたメロディが意外性を孕み、自然と拳が突き上げられた。枯渇も感じさせるが光も射す、彼らのセンスを投影する角度次第で可能性がまだまだ広がることを感じさせる今後が楽しみなパッション溢れる1曲だ。
この日KENはMCで多くを語ることはなく、その想いをこの1年と3ヶ月の道のりで生みだしてきた楽曲に託すことを選択した。
良い曲を提示し、地道に活動してきた旨を簡潔に述べると“ここから3曲歌モノです”、“しんみり聴いて下さい”と「愛の行方」、「Lovelet」、「勇気ある事象」を届けた。
「後悔のない人生がいいじゃないですか?後悔しないようにみんな生きてると思うんです。俺もそう。後悔しないために音楽をやってる…けど、気が付いたら1年どれだけ頑張っても振り返ったら後悔ばっかりで。段々山積みになった後悔の上に立ってて、もう飛び降りるのも怖いし…辞めらんないし、俺にはこれしかないから。これからもこの活動で俺は真っ直ぐ進むから。」
2月1日に次なるワンマンライヴを開催することも発表し、KENがシンナ、Hiroto、Ryutaに“行こうな?”と語りかけたところで、「小鳥ノヤウニ幸セデス」へ。
鍵盤と低音で囁く歌声が切迫する。“愛より重いのをくれよ”と歌う、悔いと現実と憧れへの道のりを見定める泥臭い情愛の歌だ。
汗ばんだ髪をかき上げながら“愛してくれ”と繰り返しドロドロに絡みつくメッセージを、KENは“俺がワケわからなくった時に書いたメンバーへのラヴソング”と告げた通りに果てまで共に行く意志を伝える。
ライヴも終盤戦に突入したところで、これまでの世界のグラデーションを繋ぎながらヘッドバンギングの海へ誘った「刃渡り30mm」。言葉ではなくその音像で荒地へとエスコートするが、ラストスパートとばかりにリミットが外れ、一挙一動から溢れ出る気迫が伝わる。
“ラスト3曲!拳あげようぜ!”
ステージを真っ赤に染め上げた大炎上の「最悪」。立ち上がりフロアを鼓舞するRyuta、迫り出してアピールするシンナ、アグレッシヴな身のこなしで主張するHiroto、ここまで来たらどうでもいいと言わんばかりに熱量で爪だてていくKENとぐちゃぐちゃの状態に。
この時点ではライヴでまだ1度しか披露されていなかった新曲「Black Magic」ではKENが拡声器を手に歌うと言うよりは、感情に委ね叫び続けた。
このバンド特有のスタイリッシュな振舞いや楽曲は、ことヴィジュアル系ロックシーンにおいて異質である。着想に留まらず体現する説得力も今の201号室は確実に手にしていて、そこに新たな魅力を見出しているからこそ次代を担うバンドとして、シーンの先陣や耳の肥えた層から早くも大きな注目を集めている。
だが、当然史上最も長尺のこの公演においてはそのムーディーな一面だけでなく、烈々しいパフォーマンスが同居していることに気が付く。
この「Black Magic」もスタイリッシュかつダンサブルだが、「デスコ」とは異なる獰猛さで襲い掛かってくる。血管をブチ破るように急沸騰したKENのテンションによるところは大いにあっただろうが、呼応し半狂乱になるオーディエンスの一体感はさっきまでとはまるで別の会場のような有様だ。
ラストはもちろん変拍子でぶっ飛ぶ「破滅のポエム」。
数ヶ月前よりも風格を増し、ここまで破壊力がある楽曲だっただろうか?と思わずにはいられないほど強靭に鳴り響いた。彼ら自身も、初ワンマンを経た後の自分たちに期待を寄せていたはずだが、まさにワンマンライヴのフィナーレに配されたことで楽曲が持つポテンシャルを完全に解放することとなった。“俺の地獄にお前はずっといろ!”、“そばにいてくれ!”に、ただでさえ白熱していた観客の声はこの日1番のものとなり、納得の選曲に最後は手がつけられない状態でフィニッシュ。
“これだけ集まってくれてめちゃくちゃ嬉しい!これだけ集まってくれてめちゃくちゃ悔しい!また夢を見てくれ!”と正直な言葉を吐いてこの灰色の夢に終止符を打った。
ここまで1年3ヶ月の活動を総括する内容となったが、そこに散りばめられた楽曲達は気が付けば彩りが豊かで灰色とはかけ離れたものだったように思う。
ただ、白とも黒ともつかぬその中間色は解釈やバイオリズムにおいて、変動していくものでもある。それが彼らの意図したものとは決して思わないが、結果としてこのライヴを通して感じたのは愛と悲哀のある生活だった。彼の歌はどこまでも現実的なヘイトが詰め込まれているが、その根底には自己への枯渇と堕落、そして手を伸ばし続けるひたむきな愛がある。
求め続けるから、終わりがない。
ラウドなブロックと聴かせるブロックに違和がなかったことも実に見事だったが、白とも黒とも言えぬこの2つの点に、統一性を感じさせたのは生活感のある素直なメッセージ達だったのではないだろうか。
実際、「愛の行方」、「Lovelet」、「勇気ある事象」と続いたブロックは嫌な朝焼けを思わせるようなほろ苦さと、音源以上に汗ばんだ熱気と色香があり、こちらの呼吸までも吸い込まれるような名ハイライトだった。まどろみ沈んでいく世界にも、歌うようなドラミングに、弦楽器隊の抜群の距離設定、退廃がグラマラスなロックヴォーカリストと、201号室でしか得られない微熱がある。
結成以来プレッシャーの中進んできたバンドだが、これから更に大きな期待を抱かずにはいられないライヴになった。
まだまだここから楽曲も増えていくだろうし、この夜プレイされていないものもある。ワンマンライヴを終えた後の201号室がどのように化けていのか、目を離すことなどできない。
SET LIST
1.灰色の夢
2.イエローハート
3.デスコ
4.Fake
5.天上の果実
6.アクター
7.ブロイラー
8.愛の行方
9.Lovelet
10.勇気ある事象
11.小鳥ノヤウニ幸セデス
12.刃渡り30mm
13.最悪
14.Black Magic
15.破滅のポエム
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10/11(金) 201号室主催 『デスコVol.4』 渋谷Star Lounge OPEN / START 17:00 /17:30 《出演》 201号室 / 我楽多 / DAMNED / 鮮血A子ちゃん 【チケット料金】 前売 ¥4,000 (税込 / D別) 当日 ¥4,500 (税込 / D別) 【チケット発売】 一般販売中 https://eplus.jp/sf/detail/4145170001-P0030001
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