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【VISUNAVI Japan presents「KHIMAIRA」-DAY3-】ライブレポート:2024年4月14日(日)池袋EDGE

新生代ヴィジュアル系元年のトリガーとして4月12・13・14の3日間に渡って池袋EDGEで開催されたVISUNAVI Japan presents 「KHIMAIRA」。
XANAVALA、CHAQLA.、ヤミテラ、HOWL、裏切り者には制裁を、の計5バンドがそれぞれの個性を容赦なく激突させ、まさに最終日に相応しい内容となった、イベント最終夜の模様を本レポートではお届けする。

VISUNAVI Japan presents「KHIMAIRA」-DAY3-


SEが鳴り、3夜目の幕が開くと、全身を痙攣させながら現れたのは千颯(Vo)。大阪を拠点にソロアーティストとして活動する裏切り者には制裁をにとって東京初ライヴである。
1曲目はMVとしても公開され、そのヴィヴィッドかつ退廃的な世界観が話題を呼んだ「SAN値の娼女」。 灰色の上下スウェット姿でアングラ感を出しながらマイクスタンドに寄りかかり、気だるそうに歌う姿は目を惹くものがある。

心地良く縦乗りで会場を揺らすと、タイトルからして物騒な「ハラキリ万歳」へ。ベースラインやカッティングがアダルティーなムードを醸し出し、いわゆるラウドロックと差別化されたライヴが展開される。裏切り者には制裁をの楽曲全般に言えることだが、変則的なリズムは予想外で、初見の層と対峙しながらその音色と佇まいを以って、徐々に空気を掌握するその姿はシーンにとって新しい風を感じさせるものだった。楽曲の持つ隙間が各パートを際立たせ、余白に緊張が生まれるからこそ、ライヴ感が脈打つ。「酎毒死」においてもハードに押し切るかと思いきや、分離する音が意外性を生み一筋縄ではいかない。浮遊するような千颯の歌声はあどけなさも感じさせ、楽器の一部のように機能する。
初の東京ライヴということで決してホームといえる環境ではなかったが、オーディエンスと向かい合い続けるアティチュードは闘う気持ちが前面に出ていて、その姿勢自体がメッセージとして浸透していった。

広義における密室系に近しいアングラさが際立つが、その色彩以上にメロディセンスが抜群で耳を惹く。会場を揺らした「人造人間」に続いた、ラストの「産んだら死刑」では、楽器隊はその場で動かないまま演奏することはしない。深紅に照らされ、同期音源と千颯の生歌がツインヴォーカルのように絡みつく様はお経のようでもあり、35分を通してショートムービーを観ているような錯覚に陥らせるものだった。

独自の空気を纏い、裏切り者には制裁をのステージは確かな余韻を残し、拍手に包まれ幕を下ろした。

2番手で登場したのはヤミテラ。
先日のZepp Shinjukuワンマンで解禁された新たなSEと共に楽器隊4人がフロントに横一列に並ぶ様はそれだけで壮観で、最後に登場したヴォーカルのRiNaは足りないとばかりに腕を上げでフロアを鼓舞する。

1曲目は「PARADOX」。心地よい湊叶のベースラインとRiNaの伸びやかな歌唱に加え、ShuKaと蘭樹による力感のない涼しげなプレイはいつも通りの“らしい”強さだ。
フロントメンバーが前方に迫り出してくるだけで、客席への圧力を軽く捻り上げるように強める逞しさはまさにヤミテラの真骨頂。続いたのは疾走する「仇花」。キャッチ―なサビ裏で轟轟しく炸裂するじゅんじゅんのバスドラの連打やソロ回しが刺激的な1曲だ。バンドとしての完成度の高さ見せつけ、試合巧者なままに続いたのは「くだらね世界」。イントロと共に一気に歓声を巻き起こし、レトロかつダンスサブルなロックンロールで血を滾らせるはヤミテラ流の“クールなアツさ”である。

場を加熱させ披露されたのは、ストイックな楽曲であるが、ShuKaの速弾き然りサウンドが整然としている「BLACK OUT」。確かな楽曲とオーディエンスが身につける光バンドと相まってお祭り状態になり、淀むことなく空気を制圧するヤミテラは顔色一つ変えずに、景色だけを変えていった。

“観に来てくれるあなたがライヴハウスに来なかったら意味がない!”と、ステージに立つその理由を叫び始まったのはもちろん「理由」。立ち姿とシルエットで魅せるRiNaの表現力の高さは顕著で、シンプルな楽曲にも関わらず、声色で抜群のメロディにドラマティックな強弱をつけ、すでにイベントをフィナーレかような空気に仕上げてみせた。だが、今日のヤミテラはこれでは終わらなかった。
“これからもライヴハウスで確かめあおうぜ!”となだれ込んだのは「シネキエロカス」。

カラフルに命滅する光の中、“シネシネ”コールで共鳴し合うステージとフロア。一気に大暴れモードになったラストはトドメとばかりに認知度の高さも抜群の「前線敬礼歌」。RiNaの広げた両腕に吸い込まれるようにヘッドバンキングの嵐が巻き起こった。
日頃クールなメンバーからも笑みがこぼれるなど、まさに充実のステージとなったのではないだろうか。頭からラストに渡るまで35分の完全試合を繰り広げ会場を大いに盛り上げてみせた。

3番手として登場したのはHOWL。
渋谷WWWでのワンマン以来およそ1か月半ぶりのライヴとなったこの日、息遣いが緊張感を増すSE「PATHW●RD」で迷宮に誘うような空気を浸透させ4人のメンバーが登場。ヴォーカルの真宵はピンスポットを浴びると同時に“決まった…”と一言。続けざまに、“今日ライヴレポートになると思うから嘘でも手を挙げて!…カメラマンさんお願いします!”と嘘の景色の演出も。

緊張からの緩和で客席からは爆笑と拍手喝采が。意表を突き、空気を掴んでフロアを味方にしたところで、ようやく「VERNALIZE」からスタート。明るく照らされた中で披露される伸びやかで耳なじみの良いポップソングはこの3日間のイベントの中で他になかったもの。大舞台や度重なるツアー経験を経た今の彼らだからこその余裕を感じさせるもので、初見であろう層をも笑顔で巻き込んでいく。“HOWLのライヴは楽しい。超楽しい!”とコール&レスポンスを繰り返し、バンドカラーを伝え、ハピネスに巻き込んだのは、ワンマンライヴなどではラストに披露されることが多い「#prologue」。

代表曲を惜しげもなく序盤からドロップすると、続いてヴォーカルの真宵が再びマイクを取り、“みんなが思ったこと当てます。…また喋るんかい!”と続けざまに爆笑を巻き起こしたMCでは、このイベントのPR企画でコラボした漫画「少年ヴィジュアルロック」について言及。初めてヴィジュアル系を体感ときのことを思い出したと心境を吐露。若かりし頃に、学校などのコミュニティで輪の中に入りきれない自分にとって、救いになったのがヴィジュアル系であるという経緯を話した上でHOWLというバンドについても言及。キラキラ系になったり、コテコテ系になったり、激しい曲をやったり、様々な試行錯誤をしてきた中で“やっと輪の中に入れたと思ったヴィジュアル系の中でも居場所がなかった”と語ると、だが年月を経てそれこそが俺らにしかできないスタイルなのではないかと気づいたとも述べた。ダーク系対バンに混じるには明るい、ポップかと言えば陰を感じる彼らならではの苦悩を導入に披露されたのは「スペオキミュージック」。

鍵盤の音が印象的なHOWL流のテーマパークのような楽曲は、どこか吹っ切れたように見てとれる。今まで纏っていた鎧を脱ぎ捨てたかのようでもあり、このバンドが音楽のもとに集っている4人であることを十分に伝えて見せた。特定のライバルに巡り合えなかったからこそ、暖簾に腕押しでもあったし、あくまで自分たちのやるべきことにフォーカスしたスタイルとなったバンド。独特の造語を駆使した真宵節と歌い続けるギターフレーズがムーディーかつ今後の基軸になりそうなポテンシャルを感じさせる「made in heaven」然り、この3日間に出演したバンドで唯一と言ってもいい特徴は大きなインパクトを残した。
再び挟まれたMCでは“伝えたいことがあるから曲数を減らした。減らした曲は、ワンマンライヴでやるので、ぜひ遊びに来てね。”とバンドの意志を言語化しながら謝辞を贈った。

“うまいやり方とかあるのかも知れないけど、アホでバカなこんな感じなのが僕らだってことを受け入れました。燃費が悪いバンドなんで(笑)”と屈託なく告げた最後は、昨年のヴィジュアルロックシーンの宝とも言える大名曲「アンダーテイカー」だった。

美しいメロディーに絶叫がこだまする様は相変わらず圧巻だった。アルバム『PATHW●RD』も快作だったからこそ、2024年、更にどのような楽曲を生み出すのかが興味深い。吹っ切れたヴォーカリストを見つめるメンバー達の温かい眼差しが印象的だった。

いよいよ3DAYSイベント「KHIMAIRA」も終盤戦に差し掛かりこの日4番目に遂に姿を現したのはCHAQLA.。ギャングスターのような出で立ちのようなメンバーは登場しただけで空気を一気に変える。
シーンに蔓延る“CHAQLA.幻想”はすっかり剥がれ落ち、むしろ幻想ではなく現実としてその圧倒的な存在で君臨しているが、そのジャンルレスかつ旧態依然としないスタイルと鋭利なサウンドは、音楽凶器と呼ぶに相応しい。やんちゃで散らかったステージの破壊力で扇動していたCHAQLA.の姿はもうそこには無く、音楽の説得力と的確な急所の突き方で会場の全てを串刺しにした。進化のスピードは尋常ではなく、メンバー5人ぞれぞれのカリスマ性は一癖も二癖もあり、物理的ではなく精神的に視野を圧迫するよう襲ってくる。声量・エッジの効いた歌唱で絶対的な象徴のANNIE A(Vo)をなぎ倒さんばかりに縦横無尽に暴れ倒す楽器隊。ハードコアチューンやメタルコアな要素は皆無に等しいのにも関わらず、暴発を厭わないエナジーの衝突は観る者を飲み込むことに留まらず、背筋を凍り付かせるものだった。

この日のラインナップが刺激的に作用したかどうかは彼らのみぞ知るところだが、一つ言えるのは、獲物を狩りに来た時のCHAQLA.は心底恐ろしいということだ。共犯性の高さも異様なフロアから集めたパワーを吸収し、一気に放出していくコスモは一度足を踏み入れたら逃れられないブラックホールのよう。

“まだ時間ある?もう1曲やっていい?”と、掟破りで急遽追加したラストは、縦ノリで叩きつけた「poison」。デンジャラスでありながらグラマラスさを増した彼らの歩む道は言うまでもなく、ヴィジュアルロックシーン最新にして最後の希望だ。歴史が変わる音が聴こえる瞬間だった。

最後、この3DAYSイベントの総大将として登場したのはXANVALA。
登場から桁違いの大歓声を巻き起こすその姿からは崇高さが漂ったが、のっけから「デスパレート」で会場に肉弾戦も要求し沸き上がらせた。的確なプレイとメンバーのスケール感は群を抜いていて、お馴染み「MY BLACK」が分泌する鍛え上げられたダークネスによる一体感は、CHAQLA.が焼け野原にした場所を根絶しにするかのような攻撃力を放った。
弛まぬスピード感を急加速させる70.(Ba)のフレージングを筆頭にそれぞれのスタイルで観客と対峙し、華を魅せながらも、終始どの場面においても高クオリティを維持し続ける演奏陣の安定感はバンドの規模を如実に表していたし、そのサウンドに埋もれることなどなく太い歌唱とシャウトで牽引する巽(Vo)は、この日も支配者としてイベントを統治した。

「落ちていく魔法」では闇を遊泳するように振る舞い、その余裕がXANAVALAのキャリアと背負っているものの大きさを理解させる空間となった。巽は圧倒的なヴォ―カリゼイションの中で時に、純真さを感じさせる高音を響かせるなど、巧みに場面展開を扇動し、知哉(Dr)の粒立ったサウンドの上をドライヴする弦楽器隊による音の塊は強制的な暴力性を孕み、まさに独壇場と化した。

MCでは鳴りやまぬ大歓声に巽が思わず“外タレみたいだな…”と囁くと、更なる歓声には“ハロージャパン!”とお茶目に返し、”ヴィジュアル系音頭歌っちゃう…あれ、俺何でこんなこと言ってるんだ?…すいません。XANAVALAは硬派なバンドです。とてつもなく固いいバンドです。ナメんじゃないよ?(笑)“とジョーク交えながら軌道修正する場面も。
ヴィジュアル系愛のぶつけ合いを誓い、“好きなものは好きで良いって証明しようぜ!”でブチ上がった「本能」、凶暴なサウンドが会場を完全に飲み込んだ「Bamby」ではワンマンライヴさながらの状態に。さらにCHAQLA.のANNIE Aを呼び込んでの、地の底から湧き出るようキラーチューン「CREEPER」ではウォール・オブ・デスを敢行、茶目っ気あるステージングで沸かせたYuhma(Gt)も印象的だったが、凶悪極まりない完全燃焼でイベントを纏め上げた。

が、当然全14バンドの大トリを務めたXANVALAに賛辞とばかりに、鳴りやまないアンコールが発生。5分以上に渡った声に応えるべく再びステージに現れた5人は最後に切り札「XANADU」を投下。宗馬(Gt)の黄金のソロやその流麗なメロディと相まって完全燃焼を超える多幸感まで振りまきシーンの未来を指し示した。

3日間を通してヴィジュアル系の未来を感じさせるイベントになったことは間違いないのではないだろうか。出演したバンド、さらには目撃した者が何を選び、何を伝えていくかがこれからシーンの未来に繋がっていくはずだ。形やスタイルは無数にあれど、そこに信念があるかどうかがすべて。それこそがヴィジュアルロック。明るくていい。暗くていい。かっこよくていい。可愛くていい。グロテスクでいい。本来なんでも受け入れられる自由なジャンル。

“これから先も俺たちなりのヴィジュアルロックを貫いていきましょう!”
XANVALAの巽が最後に発した通り、誰が何を選ぶのか、何をやってのけるのか…まだまだこのストーリーは続いていく。
このシリーズイベント「KHIMAIRA」は6月29日(土)、7月26日(金)に次回公演が開催されることが決まっている。更なる苛烈な饗宴を楽しみにしていてほしい。

Text:山内 秀一
Photo:A.Kawasaki

SET LIST

◉裏切り者には制裁を
1.SAN値の娼女
2.ハラキリ万歳
3.酎毒死
4.鬱燦々
5.終点とヒストリー
6.人造人間
7.産んだら死刑

◉ヤミテラ
1. PARADOX
2. 仇花
3. くだらね世界
4. BLACK OUT
5. 理由
6. シネキエロカス
7. 前線敬礼歌

◉HOWL
1. VERNALIZE
2. #prologue
3. スぺオキミュージック
4. シャーデンフロイデ
5. made in heaven
6. デルフィニウム
7. アンダーテイカー

◉CHAQLA.
1.Libration-369-
2. PLAY BACK!!
3. リーインカーネーション
4. SINK SPIDER
5. ミスキャスト
6. BACK TO THE FUTURE
7. poison

◉XANVALA
1. デスパレート
2. MY BLACK
3. 落ちていく魔法
4. joke
5. 本能
6. Bamby
7. CREEPER

EN. XANADU

出演バンドOFFICIAL HP

XANVALACHAQLA.ヤミテラHOWL裏切り者には制裁を

KHIMAIRA LIVE SCHEDULE

■KHIMAIRA vol.2
6月29日(土) 池袋EDGE  
OPEN16:00 / START16:30
 
<出演>
Royz【SPECIAL GUEST】
MAMA.
色々な十字架
HOWL
KAKUMAY
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■KHIMAIRA vol.3
7月26日(金) 池袋EDGE
OPEN17:00 / START17:30
 
<出演>
DaizyStripper【SPECIAL GUEST】
HOLLOWGRAM【GUEST】
CHAQLA.
ヤミテラ
HOWL
 ------------------------
【チケット料金】 <両公演共通>
 前売り ¥4,800(税込) / 当日券:¥5,500(税込)
 ※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要 
 ※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
 ※チケットはスマチケのみ
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<KHIAIRA vol.2>
 一般発売:5/11(土)10:00~
https://eplus.jp/sf/detail/K000000287

<KHIMAIRA vol.3>
2次チケット受付期間: 4/30(火)12:00〜5/7(火)23:59
https://eplus.jp/sf/detail/K000000287

関連リンク

【出演バンドOFFICIAL X】
■KHIMAIRA vol.2
◆RoyzMAMA.色々な十字架HOWLKAKUMAY

■KHIMAIRA vol.3
◆DaizyStripperHOLLOWGRAMCHAQLA.ヤミテラHOWL

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