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【KHIMAIRA vol.4】ライヴレポート◆2024年8月18日(日)池袋EDGE◆KHIMAIRA vol.4終演!革新的意志の超最新若手5バンドによる真夏の“ガチ”消耗戦!

4月12日・13日・14日に渡って総勢14バンドが集結し、池袋EDGEで始動したVISUNAVI Japan主催ライヴ「KHIMAIRA」。
6月公演にはRoyz、7月公演にはDaizyStripperと各回、世代やキャリアを超えたSPECIAL GUESTが登場するのが特色となっていた。リハーサル、ステージを共にすることによって生まれる相互作用とその夜をきっかけに動き出す物語は確かな意義を得たようにも思える。
だが、この8月18日(日)に開催された「KHIMAIRA vol.4」にはそのような象徴的バンドはいない。あくまで横一線で闘うことが義務つけられるものとなった。
それは何故か?
キャリアでもなく、一過性の勢いでもない。この2024年夏において、最も“2025年を期待させる”5バンドが集結したからだ。
思想、音像、スタイルのいずれかに創造性と革新性を持つ者同士の拳の交じり合いに教典はいらない。
今回のテーマは“クイズ「正解は1年後」”だ。完結することなど望まないはじまりの夜の模様をレポートする。


●トリカブト


トップバッターは今年4月に始動したばかりのトリカブト。


和装で登場するなり冒頭からハイテンションでステージを展開。“1曲も捨て曲ねえからな!暴れられるか!?”とアジテート。今年4月に始動したばかりだが、和×Visual Rockの構図はどこか懐かしくもあり、視覚聴覚の双璧で訴求していく。ヴォーカルならぬ【唄】の四月一日御幸は自在で、「性春ストロベリーキャンディ」では不気味な表情を浮かべながらステージを徘徊したかと思えば、鏡に見立てた手の平をかざした「顔面交換して下さい」では糸を引かれたように不規則に身体をくゆらせる。時に操り人形のように、時に人形使いのように仕草を変えていく様は、紙芝居のようでもある。


だが、和のおどろおどろしい空気にのみ留まらない要因は【六弦】の八坂詩音、【五弦】慾骸美弥、【太鼓】神楽いく、からなる楽器隊の振りまくムードによるものだ。楽器隊が終始楽し気な表情を浮かべながら開放的にプレイをするからこそ、不思議とありきたりな陰鬱には陥らない。


まどろむキャッチーさの隙間で突然気だるそうに振る舞う御幸にハッとさせる「羅刹」。幼な声が映える「紋白蝶」では扇子が舞う。トリカブトは限られた時間の中で持てる全てを出さんとばかりに終始一貫攻撃的に全8曲を披露した。言葉巧みな詩世界と猛ブラストする「紅傘」まであっという間に駆け抜けたトリカブト。


どの楽曲においてもワビサビのあるメロディと再現性の高い御幸の歌唱力は初見であろう層にもしっかりと届けきることとなったのではないか。
始動から僅か4ヶ月ではあるものの和を全面に押し出した個性の強いアクトと、意志を感じさせるメニューでこのイベントの意味付けとバンドアティチュードを明確にして4人は堂々とステージを去った。


●KIRA


2番手は福岡を拠点にするKIRA。
昨年11月に始動主催を行った会場という慣れ親しみもあるだろうか。1曲目はそんな始動時に看板となるナンバーとして提示された「サテライト」。疾走しながらも刹那を感じさせるのは力業ではなくしなやかに躍動する未来(Vo)のヴォーカリゼイション故。かと思えば、独特の節回しで揺さぶりながら苦悩を複数の言語を用いて攻めたてる「BLACK BOX」は激情に委ねるように歌い叫んでみせる。


さらに続いたのは「ENIGMA」。ヴァーチャル感のある音像が現実と非現実の同調を想起させるようでいながら、キャッチーなサビと抜けるような凌雅(Gt)のソロで場面の起伏を巧みに生み出していく。どこか無機的に感じさせるほど淡々と刻む汰朗(Dr)のスタイルは、常に楽曲に寄り添うことに比重を置いていて、今後も彼のストロングポイントと成り得るのではないか。新世代の独創的なセンスを存分に発揮すると、愛機を膝に抱えたYori(Ba)が奏でるラインが深海に誘うにようなミドルバラード「nighatmare」へ。


未来の綴る手紙のような体温を感じる歌声は会場を温かく包み込んだ。この日彼らが披露したステージ全般に言えることだが、切迫するような終末感をフィクションの狭間から語りかけてくるような繊細さは、すでにオリジナリティあふれるもので、今後の躍進にさらに期待が寄せられる。


ポジティヴィティで引っ張りながら4人の集中力が際立つ「illusion」、超攻撃的な「MYSTYLE」でオーディエンスを沸かせた。“この時間が君たちの生きる糧になりますように”と告げたラストは芯のあるメッセージとメロディの美しさが際立つ「DELPHINIUM」。終始、キャリア以上の貫禄とエレガンスを振りまき、けれど繊細さだけではない芯の逞しさを十分に見せつけKIRAのステージは幕を閉じた。


●裏切り者には制裁を



イベントも中盤、不穏なSEに導かれて小説を読みながらゆっくりとステージに登場したのは大阪から上京を果たしたのは千颯。


今年4月に開催された本イベント3DAYS公演の最終日に東京初ライヴを行った裏切り者には制裁をは、ヴォーカリスト千颯のソロ活動を差すものでその形態はバンドではない。4月公演との差異としてステージ上に佇む3人のサポートメンバーはマスクのような物を装着していて、その素顔を知ることはできない。フェイスマスクの表面には“ぶち殺す”など物騒な文字が電光掲示板のテロップのように流れている。千颯曰く、よりアーティストとしてのソロ性を研磨するためにスタイルチェンジを施したとのこと。以前よりギミックの多い彼のステージだが、それはこの日も健在だった。だが、それ以上に鋭利だったのは飢えた獣のような野生の殺気だった。


“いつもと一緒のライヴする気ねえからな!殴り合え”で始まった「酎毒死」からして、テルミンのソロなど独自性はあれど、呪文染みた音源の質感とは異なり、鋭利な攻撃性で襲い掛かる。デカダンを増幅させるお馴染み「SAN値の娼女」、さらには執拗なまでに煽り散らして雪崩れ込んだ、ライヴにおける起爆剤的役割を果たす「人造人間」とどこまでもギアを上げていく。


彼の放つ楽曲の特徴である、声を楽器に見立てる手法が一層引き立つ「人造人間」にも言えるが、メロディメイクは天才肌で、その中で耳に残るリリックを落としていくのもただならぬセンスを感じさせる。だが、どこかセンスが先行していたことへの苛立ちなのだろうか?この日の千颯は一味も二味も違った。ハッキリ言ってどこを切り取っても目が完全にキマっている。フェイクではないキマり方のまま焦燥感を掻き立てる「鬱燦々」では自らを生贄するようなアグレッションで会場に燃料を投下。その気迫に飲み込まれるように会場全体の熱が上昇していく。どことなくグラムっぽさも持ち合わせるデジタル歌謡的な「ハラキリ万歳」では楽器隊がまさかのロボットダンスを披露。一瞬会場が爆笑に包まれたが、このとりとめのないシュールな演出が実に彼らしくもある。「終点とヒステリー」まで全6曲で千颯は彼にしか作れない世界を存分に見せつけた。


まだライヴの総本数が少ない彼だけにここからどう舵を切るか次第で、予想もつかない躍進への期待を問答無用に感じさせる圧巻の35分だった。彼にとってのベストアクトの一つと言えるのではないか。


●RAN



4番手はRAN。
今回のラインナップの中で最も活動年数、キャリアを誇るが、開催前から人一倍闘争本能をむき出しにしていたことが印象的だ。
数あるカードの中からチョイスされたのは「FIVEFOLD ENVY」。アグレッシブな楽器隊の中心に位置するTAICHI(Vo)からは、ほくそ笑むような余裕すら感じた。冒頭1曲で完全にフロアを掌握し、革新に変えると、その音圧で底から揺らすラウドナンバーにオーディエンスも激しく応える。


「騙シ愛」でもラウドにRANの空間をビルドしていく。太く粘りのあるTAICHIは歌唱・シャウト共にその安定感で牽引するが、全メンバーが謳歌しながらこの日一番の熱を生んだ。とりわけこの日のセットリストはラウドを基調にしつつも、サビの広がりで明確に扇動していくものだったが、そんなスキルからも圧倒的なライヴ本数に裏打ちされた経験を感じさせる。


オープニングに最新曲を2曲並べたところころからもこの日へのギラつきが伝わるが、全5組の中では比較的王道のヴィジュアル系イズムを継承するRANらしく「What…?」、「アノニマス」と獰猛な楽曲を、手を緩めることなく連打。個性のぶつかり合いを意図するイベントの中で、真っ向から殴り合い上等のスタイルを選んだことは明らかだ。


敵のオーディエンスを魅了して獲得することも対バンライヴならではの目的でもあるが、続いたのはダンサブルかつラウドに襲い来る「MARY」。彼らのファンの総称“MARY”を冠する楽曲からも、信じるオーディエンスと共にこの場を支配しようとする気概を感じる。まさに縦横無尽。様々なレパートリーを有するRANは、ラストに優しい旋律と温かいメッセージを育む「三日月」を披露。


突き放すだけで終わらない、明確な意志を持つステージ展開を見せステージを終えた…かに思えたが、持ち時間を確認し、再度「アノニマス」を追加。共犯性の高いRANのステージは延長ラウンドまで完全燃焼で大きな爪痕を残した。


●201号室



イベントのトリを務めたのは201号室。
昨年5月にキズの主催ライヴ「友喰イ」Spotify O-EAST公演でデビューした彼らだが、ここまでの活動は華々しさとは対極で地道なものであった。闇雲に生き急ぐのではなく、堅実に良質な楽曲をリリースする姿勢が大物っぷりを感じさせている201号室がいよいよ実りの時を迎えるか。
初手は攻撃的ながらも伴う縦ノリのドライヴ感が心地よい「Fake」。


彼らにとって初ワンマンの5日前ということもあり、その気合いは十分。髪を編み込んだKEN(Gt&Vo)はポケットに手を突っ込み客席を鋭く睨みつける。続いたダンサブルなビートが効果的に炸裂する「デスコ」と、トリカブトから紡いできたイベントのエッジさを集約するように巻き込んでいく。“パラレルワールドに住んでる僕が一人死にました”と告げた「アクター」ではダウナームードに高く鋭いKENの歌唱の押し引きと没入する楽器隊が冴えわたり、ショートムービーのような手触りを残した。
その感触から間髪おかずに続いた、微熱を伴いかき乱す「天上の果実」でもタイトなプレイと、張り裂けるKENの歌声は見事につかず解れず201号室固有の音楽的レベルの高さを体現してみせた。


続いて披露されたのは「Lovelet」。現時点で彼らの活動実績において唯一MV化されていることからも、201号室の“今を”体現する1曲と言える。シティポップやほのかにソウルも香る楽曲は従来のヴィジュアル系のおける暴力性ともファンシーともかけ離れたもので、この日のイベント、ひいては201号室を象徴しているシーンとして刻まれた。KENがフライングVを手にした「最悪」、さらにこの日初披露となった新曲も披露。拡声器越しに突き刺してくる刺々しい歌とサウンドは、これまでのレパートリーの中でもハードで直情的な部類に属する。


ラストは彼らが世に初めて放った1曲「破滅のポエム」で艶やかな熱気を生んだ。だが、物足りなさげに“俺の弱さ…ヴォーカルとしての弱さ…挽回させてくれ!”と最後にもう一度「Fake」をプレイ。自身初となるワンマンライヴを控える前にもっと求め合おうとばかりに全てを絞り出す気迫で4人はステージから降りた。単純な激しさに悦を感じない彼らだからこそ起こせた素晴らしいエンディングだった。


若手対バンとはしばしば耳にするものの、その壮絶な打ち合いが安い消耗戦であってはならない。この日は全てのバンドが他を出し抜くために周到なプランを立ててきたが、その結果、全バンドに共通して生まれた答えは“個性を貫く”だったのではないだろうか。
分かりやすい仲間意識の芽生えなどではなく、己を突き詰めることによってさらに座標が離れる現象が起きた。だからこそ勝負のようで勝負ではない、それぞれが如何なく魅力を放つ日でもあった。
残念ながら会場キャパシティには十分な余裕が生じたが、集ったバンドの音楽の前には議論の意味をなさないだろう。
また、延長ラウンドで再会できるその日まで。

そして、対バンシリーズ「KHIMAIRA」は年内のスケジュールが全て解禁となった。
9月28日、10月26日に池袋EDGE。さらに12月1日には総決算となる「KHIMAIRA-SCUM PALACE-」がSpotify O-WESTで開催される。
新世代ヴィジュアル系元年、見届けてほしい。

文:山内 秀一
撮影:A.Kawasaki

SET LIST

<トリカブト>
1.呪い呪われ恋焦がれ
2.性春ストロベリーキャンディー
3.顔面交換して下さい
4.アイキルミ
5.羅刹
6.解体チョコレート
7.紋白蝶
8.紅傘

…………………………………………

<KIRA>
1.サテライト
2.BLACK BOX
3.ENIGMA
4.nightmare
5.illusion
6.MY STYLE
7.DELPHINIUM

…………………………………………

<裏切り者には制裁を>
1.酎毒死
2.SAN値の娼女
3.人造人間
4.鬱燦々
5.ハラキリ万歳
6.終点とヒステリー

…………………………………………

<RAN>
1.FIVEFOLD ENVY
2.騙シ愛
3.What...?
4.アノニマス
5.MARY
6.三日月
7.アノニマス

…………………………………………

<201号室>
1.Fake
2.デスコ
3.アクター
4.天上の果実
5.Lovelet
6.最悪
7.新曲
8破滅のポエム.

KHIMAIRA -SCUM PALACE-
日程:12月1日(日)
時間:OPEN15:15/ START16:00
会場:Spotify O-WEST

<出演>

MAMA.
CHAQLA.
nurié
色々な十字架
「#没」
and Secret

-----------------

【チケット料金】

 前売り:\5,400(税込)
 ※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要 
 ※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
 ※チケットはスマチケのみ

<イープラス>
先行抽選
https://eplus.jp/khimaira/
受付期間:8/18(日)22:00~9/1(日)23:59

KHIMAIRA vol.6
日程:10月26日(土)
時間:OPEN16:00 / START16:30
会場:池袋EDGE

<出演>

MAMA.
CHAQLA.
NAZARE
「#没」
and more

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【チケット料金】
 前売り:\5,600(税込)
 ※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要 
 ※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
 ※チケットはスマチケのみ

<イープラス>
先行抽選
https://eplus.jp/sf/detail/4161180001-P0030001
受付期間:8/18(日)22:00~9/1(日)23:59

KHIMAIRA vol.5
日程:9月28日(土)
時間:OPEN16:00 / START16:30
会場:池袋EDGE

<出演>

deadman【SPECIAL GUEST】
MAMA.
CHAQLA.
umbrella
sugar

-----------------

【チケット料金】
 前売り:\4,800(税込)/当日券:\5,500(税込)
 ※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要 
 ※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
 ※チケットはスマチケのみ

<イープラス>
一般発売中 
https://eplus.jp/sf/detail/4146740001-P0030001

関連リンク

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