【CHAQLA.】ライヴレポート<CHAQLA.1stONEMAN TOUR 全六箇所八公演【第六感呪物回収TOUR2024】>◆CHAQLA. 8月17日、東京キネマ倶楽部で提示した超圧倒的アートと「もやい」の真相。

CHAQLA.が東京キネマ倶楽部でワンマンライヴ「もやい」を開催した。
彼らにとって史上最大キャパシティであることはもちろん、5月から7月かけて初めて全国を廻った<CHAQLA.1stONEMAN TOUR 全六箇所八公演【第六感呪物回収TOUR2024】>とは切り分けされていることからも、何が起こるのか事前に予測し難い公演であった。
「予測し難い」というのもCHAQLA.は始動した2023年2月以降、楽曲、アートワーク、活動方法いずれにおいてもこれまでの常識を超越した活動を継続しているが故に、当然この日に彼らが提示するものが“普通のライヴ”でないことが想起されたからだ。2月の池袋BlackHoleワンマンではライヴ中に観客を巻き込んで“瞑想”を行うなど、彼らのアイデンティティである第六感を開眼させることを成しえた。
裏を返せば“ただごとでは済まない”ことだけが予測できたワンマンの模様を本レポートでは紐解いていきたい。
毎度のことながら会場に入って度肝を抜かれた。
ステージ上にはいくつもの電飾に、ソファー、観葉植物、本棚、トルソー、だるま、テレビなどと枚挙にいとまがないアイテムが配されている。さながら演劇の舞台セットとも言える物量で、かつてはキャバレーであったこの会場でCHAQLA.が何を仕出かすのかこれ以上ない高揚感に飲み込まれる。
定刻を5分ほど過ぎ、ステージ下手の中2階にあるサブステージに牛のようなマスクを被った謎の男が現れると、ステージ中心のモニターで映写機カウントが回りこの日の主題である“もやい”とは繋ぎとめておくことであり、分かち合うことという語源についてナレーションが始まる。このライヴがストーリー仕立てになっていることには思わず、そうきたか!と唸らされた。世界から繋がりを解かれてしまった5人の敗北者のストーリーであることが告げられると、気が付けばステージ上に現れていたCHAQLA. の5人が鳴らしたのは「極上なLOSER」。春先にドイツのフェス出演をかけたコンペライヴで惜しくも敗北した際に名付けられたこの曲、そのタイトルからしてこのストーリー上の5人は、現実のCHAQLA.とリンクしているのだろうか。だが、ここで異変に気が付く。メンバーもそれぞれに特殊マスクを被っていて、その表情はわからない。加えて、エネルギッシュな衝動が武器であるはずのバンドだが、ステージ上のメンバーには覇気が全くないのだ。
曲毎に短いナレーションを挟んでいく構成だったが、“彼らの共有できるものはたった一つ 世界を睨み、呪い、祈る事”と告げられると「この世の終わり」へ。
しかし、ここでもメンバーはその場に立ち尽くすようにしたまま演奏を続ける。音に呼応し、盛り上がるオーディエンスとステージの間には断絶された空気が流れ、ANNIE A(Vo)はしまいにはソファに寝そべってしまった。活動初期から演奏され続けている「ここはユートピア」も独特な鳴りで、小気味良いBikky(Dr)のドラミングは現実への苛立ちを感じさせるものだったし、フライングVに持ち替えたkai(Gt)も体温を感じさせず、微動だにしない鷹乃助(Ba)、カウンターチェアに腰かけたのあか(Gt)と閉塞的で堕落な空気はさらに充満し続けた。対極的に好意的なフロアは加熱の一途を辿り、世界はさらに切り離されていく。

CHAQLA. が生み出したい世界とはこの狭間だったのだろうか?だが、“もやい”は繋ぎとめ共有することでもある。
“彼らは自分自身の目が、この世界を歪めていることに気づきました。しかし、そんな事実を受け止められずに、新しい世界を作ろうとしていました。自分がまっすぐに捉えられる、愛するものだけが存在する楽園を”のナレーションを導入に「月の天使」へ。
「太陽の悪魔」へのアンサーソングであることが推測される80年代J-POPを嗅ぐわす異色なナンバー、思えば全国ツアー中から静観し演奏する姿が見受けられた。ノイジーなカッティングにシンセベースとサンプラーが絡むCHAQLA.らしい要素からなる新たなカラーだが、この東京キネマ倶楽部との相性は抜群だ。
しかし、“世界から解かれた敗北者がこの世界を楽しむことは許されない”と導入された「太陽の悪魔」まで結局5人は虚無なままに淡々とプレイを続けた。ステージに佇む彼ら=敗北者と解釈して、一体この縛りから解放されるには何が必要なのだろうか。現実のCHAQLA.とのリンクも感じさせる題材だけにその答えが気になるところだが、メンバーはついにステージを去ってしまった。この章の最後をこう締めくくった。
“楽園を壊されても、彼らは世界を呪う事はありませんでした。
彼らは各々が歪な形をしながら、表現を通してもやうことができていたので、醜い正義によって解こうとしても、簡単に解けないのが「もやい結び」なのです。”
“彼らの魂は今どこにあるのでしょうか。
作られた物語の登場人物にも勿論、魂はございます。
只今よりライブを行うCHAQLA.でしょうか。
それともご来場いただいているお客様の中でしょうか。
それとも今キネマ倶楽部に存在しているすべての人の中で少しずつ共有できているのかもしれませんね。
本日は皆様の個性とCHAQLA.の表現が…「もやえる」ことを楽しみにしております“
今しがたまでステージにいた虚無の人間達にも魂が抜け落ちていないことを明かし、ここから取り戻す=ライヴを始めようと意思表示をしてみせたわけだ。
ここでさらに2周年ワンマンライヴの告知映像を挟んでようやく本編突入となる。
SEと共にお馴染み“開眼ポーズ”で迎えられたメンバーは“お待たせしました!”と「リーインカーネーション」でリスタート。焦らしに焦らされた聴衆はここまで以上のハイテンションで応える。メンバーもまた己の中に溜め込んだエナジーを噴出させるかと思いきや、落ち着いた運びで確かめるようにプレイ。全国ツアー以前から兆候はあったが、闇雲に散らかし倒して圧倒するスタイルはすっかり影を潜め、その演奏と楽曲の味をしっかりと高い純度で浸透させていく力が今の彼らにはある。

コール&レスポンスからしてフロアの気合いが伝わる「首魁の音」では、のあかが“そんなもん?”と問いかけ火に油を注ぐ場面も。1st FULL ALBUM『CHAQLA.』収録の「FEELING NOW!!」は初披露から1ヶ月にも満たないが、ラップとキメが交差するこのバンドが持つフロウとドライヴする演奏がいかんなく発揮され、ANNIE Aの独特の張りのある歌唱も終始好調に冴え渡る。ANNIE A、のあか、kai、鷹乃助、Bikky。5人全員がロックスターとしての資質を持つそのシルエット然り、何よりこの1年半の活動期間の中で彼らが生み出してきた曲たちが、この会場で鳴ることで昇華される感覚を覚える。

各メンバーのフレーズが点在しながら、リフで一気に塊に変わる全編フック満載の「Liberation-369」の直情とコスモティック、“一生分の想い出にしよう”と予定になかったフリースタイルラップをサラッとキメてしまった「異」、リリース時以上にバンドによく似合っている「SINK SPIDER」と、どれも“らしさ”満載かつこれまでと少しづつ色味を変えている。俗に言う“曲が成長する”事象なのだろうが、バンドの逞しさと同時に、彼らの音楽によって“開眼”させられたオーディエンスの感度と咀嚼によるところも大きいのではないか。hideリスペクト&オマージュと明言されている「SINK SPIDER」からこの日感じたのはむしろ独創性であったし、明白なオマージュ元を媒介にしてリスペクト以上のスピリットを感じさせる様は正直なところ“縦ノリが、横ノリが~”や“ミクスチャーを基調とした~”では言い尽くせぬものがあった。

ハードロックイズムで観客の声を要求する「イエス」、“ここからは未来の話をしよう”と畳みかけたダイナミックな「BACK TO THE FUTURE」も独創性と共存する非トレンド感が実に痛快だった。何せこの場所にはCHAQLA.の音楽に触手の動く者しかいないのだから。問答無用に一体感を生む「ミスキャスト」ではようやくこの日初めて鷹乃助がフロントに飛び出しマイクを取り、一気にクライマックスを予期させる。
しかし、ANNIE Aが“ちょっと今日は気を張り過ぎてた。ちょっと気を抜こうよ”と語りかけ、リラックスしたMCタイムへ。再びメンバー自身の口から“もやい”について語ることとなった。Bikkyの父親が福島の原発事故からの復興を目指すアート活動をしていること、その地を実際に訪れた5人は“もやい”は荒縄の結びであり、人の結びつきや繋がりを表すことだと言う。そんな折、現実の彼らにも力を貸してくれる仲間が増えてきた。kaiのギターは彼らの事務所の近くで出会った青年が作り、その紹介で衣装も、マスクもバックドロップも出会った仲間たちが作ってくれたものだと明かした。彼らの活動を注意深く追っている者には周知かも知れないが、これらの出会いはとても大きなもので、人間の手でしか生み出せない想いの連鎖は彼らの芸術に体温を吹き込み続けている。“もやい”という言葉はキネマ倶楽部ワンマンに挑むCHAQLA.が迎え込んだ現象そのものであり、全国ツアー先での数々の出会いやエピソードも交えながら、その人の温かさや繋がりを波及させるためにこのテーマに至った経緯を伝えた。

しかし、世界は愛や温もりだけではないのも事実だ。再び雪崩れ込んだのはコロナへのヘイトを凝縮させた「POISON」、続けざまに対極に位置する真髄「愛」とこの世界が合わせ鏡であることを体現してみせた。ALBUM『CHAQLA.』のクロージングソングである「愛」はロックの根源と言える温かみと力強さ、日常、生活が宿った1曲で、きっとこれから彼らが変えていく世界の目印になっていくのだろう。
トドメはこの曲が何度、救ってきただろうか。キラーチューン「PLAY BACK!!」。
“俺たちもっと先に行こう!俺たちの信じた音楽で!”と、この日一番の狂乱を生んだ。遂にリミッターが外れたCHAQLA.はステージを縦横無尽に駆け巡り、暴れ倒すに留まらず全てを謳歌してみせた。

彼らがしばしば見せる一つ一つのアイコンタクトも絆であり、愛であり、つまるところ“もやい”なのだと分かる。アグレッシブで、ハードで、前衛的でもあるCHAQLA.のアートは一度触れたらそれとわかる強烈な個性を持っていて、それはもはやヴィジュアル系論ともどこか異なる次元にも感じられる。これまで天賦の才としてフォーカスされていたその個性が、このライヴにおいてテーマと目的を背負ったことで響き方が変わったのが最も印象的だ。同じ曲、同じフレーズでもその日その時の想いで形を変える、だからこそその才能に甘んじることなく彼らは精神を研ぎ澄ませる。

圧巻の「PLAY BACK!!」の残響のなかメンバーは充実の表情でステージを去った。
たった一人、ステージに残ったANNIE Aはラストに名曲「Lv.600」をライヴ初披露。
“愛して貰えるだけでもう死んでもいいよ。”と優しく歌われるラップナンバー。このライヴの冒頭に仮面を被っていた理由、“もやい”にたどり着いた道筋、この公演が全国ツアーと切り離されている意味の答えが最後に提示された。時計の針の音が止むとステージは無人になった。
本来はこれにて公演終了だったのだが、鳴りやまない声に応え再登場。
予定外にも関わらず合計3曲も披露することとなった。

再登場することは本意ではなかったようにも思うが、ANNIE Aの“もう1回キネマ再チャレンジしたい!何回もやり直す!もう1回やるぞ!”からも、しかるべくしてこの言葉を叫ぶためのアンコールだったのだと思う。多くの観客が集結したものの完売には及んでいないこと、この景色の中でさらに挑戦したいスタイルの芽生えなど様々な感情が生まれたのだろう。

サブステージに飛び出してソロを弾くkaiを見て、咄嗟にワウを踏む名ファインプレーで魅せた鷹乃助と笑顔で応えるkaiいうまさに“もやえる”名シーンのおまけまで垣間見えた2度目の「PLAY BACK!!」。
5人は自ずの内部から全て吐き出すように焼き尽くし、完全終演となった。

2024年ヴィジュアル系シーンで最もアクションが注目されているであろう怪物たち。
ギミックが多いほど、本質がぼやけるリスクも生じるが、この日彼ら5人が発したものは、終始明確でありショーアップされながらどこまでもリアルだった。
「愛」の前にANNIE Aは確かにこう叫んだ。
“単純なんだけど…奥がかなり深くて、すげえ難しくて…一言では表せなくて、だから知ってるフリしてるけど、知らないものがある。俺たちもそうだと思う。俺はずっと探したい!”
探したものが“愛”だとするならば、この日見つけたものは“もやい”である。
けれど、冒頭を思い出してほしい。“もやい”は断絶し体温を失った世界に必要なものだったはずだ。ではいつか再び綻びが結ばれた時、我々は何処へ行けば、何をすれば良いのだろうか。
しかし、そんな日が来るのは遠い未来かも知れない。
未来へ戻りCHAQLA.が生み出す芸術を第六感で確かめずにはいられない。
TEXT:山内 秀一
PHOTO:Megumi Iritani
SET LIST
~OPENING STORY~
0-1.極上なLOSER
0-2.この世の終わり
0-3.ここはユートピア
0-4.月の天使
0-5.太陽の悪魔
1.リーインカーネーション
2.首魁の音
3.FEELING NOW!!
SE.Lucky Strike
4.Liberation-369
SE.異
5.SINK SPIDER
6.イエス
7.BACK TO THE FUTURE
8.ミスキャスト
9.POISON
10.愛
11.PLAY BACK!!
12.Lv.600
EN1. Liberation-369
EN2.蛍の光
EN3. PLAY BACK!!
LIVE
CHAQLA. ONEMAN SHOW
次元上昇そすゝめ~予言の書~「極」 上巻 / 下巻
日程:2025年2月22日(土) / 2月23日(土)
会場:池袋Black Hole
詳細後日解禁!!
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KHIMAIRA -SCUM PALACE-
日程:12月1日(日)
時間:OPEN15:15/ START16:00
会場:Spotify O-WEST
<出演>
CHAQLA.
MAMA.
nurié
色々な十字架
「#没」
and Secret
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【チケット料金】
前売り:\5,400(税込)
※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
※チケットはスマチケのみ
<イープラス>
先行抽選
https://eplus.jp/khimaira/
受付期間:8/18(日)22:00~9/1(日)23:59
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KHIMAIRA vol.6
日程:10月26日(土)
時間:OPEN16:00 / START16:30
会場:池袋EDGE
<出演>
CHAQLA.
MAMA.
NAZARE
「#没」
and more
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【チケット料金】
前売り:\5,600(税込)
※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
※チケットはスマチケのみ
<イープラス>
先行抽選
https://eplus.jp/sf/detail/4161180001-P0030001
受付期間:8/18(日)22:00~9/1(日)23:59
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KHIMAIRA vol.5
日程:9月28日(土)
時間:OPEN16:00 / START16:30
会場:池袋EDGE
<出演>
deadman【SPECIAL GUEST】
CHAQLA.
MAMA.
umbrella
and more
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【チケット料金】
前売り:\4,800(税込)/当日券:\5,500(税込)
※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可・営利目的の転売禁止
※チケットはスマチケのみ
<イープラス>
一般発売中
https://eplus.jp/sf/detail/4146740001-P0030001
関連リンク
【CHAQLA. OFFICIAL】
◆Official Site
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