【DEZERT】ライヴレポート◆DEZERT主催リキッドルーム2DAYS、12/27日本武道館を前に全8組の盟友たちと交わした愛の宴「攻撃するだけの音楽じゃ死ぬとき俺は後悔する」★写真多数!びじゅなび独占で出演メンバーのソロカットを掲載★
DEZERTが主催イベント<DEZERT PARTY Vol.15、Vol.16>を恵比寿リキッドルームで11月1日、2日の2日間に渡って開催した。
初日に出演したのはΛrlequiΩ / deadman / メリー / RAZOR、2日目にはLM.C / Royz / Verde/ / vistlipと合計8バンドがDEZERTと対バン形式でぶつかることとなった。
これまでも不定期で開催されてきている同イベントだが、この2DAYSは12月27日に自身初となる日本武道館ワンマンを控えるDEZERTにとって武道館前における重要なライヴでもある。
しかし、大団円の壮行会とはいかないのが、この強い個性を持つバンドたちである。
武道館を前に、かつて対バンしてきた同世代の盟友や先輩と交じり合いたかったとDEZERTは語る。
想いとプライドが交錯したこの2日間の出来事を本レポートでお届けしたい。
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●メリー
2DAYSの初日、トップバッターとして登場したのはメリー。
艶めかしい真っピンクに照らされステージに4人が現れると大歓声が。
ガラ(Vo)の「リキッド、パーティーを始めようか!」を号令に「絶望」からスタート。テツ(Ba)のスラップとスティックを回しながら疾走するネロ(Dr)のドラミングはそれだけで見応え抜群だが、歌い崩す余裕も見せるガラの歌唱の表現力は見事でのっけから会場に火を点けた。
続いたのは、結生(Gt)のつま弾くフレーズがレトロを香らせるキラーチューン「愛国行進曲」。
昨今のメリーらしさを体現する好戦的な選曲からはパーティーとは名ばかりのガチンコ勝負を感じさせる。
万歳と敬礼の振りでアツく応えた観衆をさらにメロウに誘った「Zombie Paradise ~地獄の舞踏曲~」では、ガラが腰に手を当て闊歩するフェミニンな所作でも目を奪う。
こんなところに、ベテランとしての力量とクセの強いこのバンド特有の魅力が凝縮されていた。
名物ともいえるMC代わりの習字パフォーマンスで「もっと声を」と煽ると、半紙を口に含み墨汁まで吐き出すというまさにメリーの独壇場。
その後ろでスタッフが習字セットを片付けるところまでが様式美…と思ったら、片付けているのはまさかの千秋(DEZERT)だった。
お片付けを終え一礼し、そのままメリーのステージに乱入して雪崩れ込んだのは「ジャパニーズモダニスト」。
およそ5年前の2マンライヴの際に実現したコラボレーションの再来にフロアがさらに沸き立ったことは言うまでもない。
のちに千秋がMCで語っていたが、学生時代から愛聴していたバンドと同じステージにあがる緊張感は並のものではなかったようで、彼にしては珍しい恐縮っぷりも微笑ましいシーンだった。
ステージ中央に配された学習机の上に立つ、墨汁まみれのガラはそんなことはおかまいなしに完全に目がキマっている。
その歌詞が後輩へのエールにも聴こえた「梟」。そしてラストは名盤『モダンギャルド』のクロージングソングでもある「黒い虹」。
これまでの熱を冷気で切り裂くように静寂を呼び寄せた。メリーを代表する一曲にして哀愁あるガラの歌唱が情感たっぷりに絡みつき溶けていく様は、メリーが何たるかを十二分に知らしめるものだった。
●RAZOR
2番手はRAZOR。
真紅に染まった舞台に揃いの赤を基調にした5人が登場するや否や、挨拶代わりにいきなり叩きつけたのは「埋葬」。
1曲目にしてフロアを真っ二つに割り、ウォール・オブ・デスを要求する猟牙(Vo)の傍若無人っぷりにニヤリとさせられるが、ここで早くもDEZERT千秋が再乱入。
事前に「埋葬」での乱入をSNSで匂わせていたことを踏まえ「なんで1曲目なんすか!(笑)」と突っ込む場面も。
RAZORを結成する以前から、猟牙と千秋は要所要所で相まみえてきた愛すべき先輩後輩の間柄である。
そんな2人によるステージはお互いのパートごとにマイクを譲りあう茶目っ気も見せたが、そのサウンドは極悪でフロアにはヘッドバンギングの波が広がった。
千秋を送り出し、続けざまに壮大なスケール感を持つ「GRAVITY EMOTION」、ダンサブルな要素を有する「SAMURAIソードMAN」を披露。
激しい楽曲の中にも様々な引き出しを見せ、RAZORらしく清々しいほどに荒れ狂った空間をビルドアップしていく。
クリーンとシャウトの使い分けが巧みな猟牙だが、「ヘドバンする曲しかなかった!」と笑顔で吐き捨て、「千年ノ色彩」へ。
黄金のメロディとコーラスワーク、パワフルなドラミングへと繋ぐスリリングな展開がさらに会場の風速を増していく。
対バンキラーの如く、ヘヴィに加速しながらワイルドに引っ掻き回すのがRAZORの流儀だが、クランチのカッティングがフックになる新機軸「DAMIAN FLY」ではついに猟牙はフロアに降臨。
かと思えばサーフしながらステージに戻るわ、衍龍(Gt)にいたってはツーステを踏んだままステージ袖深くまで消えたりとまさに何でもありの状態。
そんなカオスな状態のままラストの「LIQUID VAIN」へ。
制御不能になった猟牙はマイクを咥え赤子のように啼いたかと思えば、マリオネットのようなパフォーマンスを披露。
「楽しかったかい?気持ち悪かったかい?このあと最後まで楽しんでいってください!」
この日の出演者の中で最もハードに特化したメニューで容赦なく会場の熱気を高め、最後まで自分たちのやりたいことを貫きながら駆け抜けた。
●ΛrlequiΩ
とにかくドラマティックだった。その一言に尽きる。
「アイツはもう自分を守ってるんじゃなくて、他に何か守ってるものがあるんだなと。それが今、DEZERTという居場所なんだと思います。
武道館……悔しくないと言えば嘘になるし、悔しくなくなったら僕たちはきっともう君たちとは一緒にいられないから…でも、本当の気持ちです……DEZERT、日本武道館応援してます。」
ラスト「世界の終わりと夜明け前」に入る前に暁(Vo)が絞り出した言葉だ。
ΛrlequiΩにとってDEZERT は盟友と呼ぶべき存在であり、これまで切磋琢磨してきた歴史はもはや説明不要だ。
だが、DEZERTにはDEZERTの道があったように、ΛrlequiΩにはΛrlequiΩの道がある。
不退転の決意すら感じさせる「消えていくオレンジの空へ」から始まったステージは「墓穴」や「omit」といったΛrlequiΩのファンだけでなく、DEZERTのファンにも馴染み深い往年の楽曲が並べられた。
それらの楽曲が常軌を逸した盛り上がりを見せたこと以上に、「STIGMAS」や最新形のバンドが纏う説得力は実に見事だった。
輪郭の整然としたサウンド然り、ふとした時に見せる些細なアイコンタクトまでポジティヴィティを感じさせるそのムードはやはり盟友にしてライバルと表現するに相応しい。
途中、イベントの主催として、なんとこの日3度目の登場を果たした千秋が、フロアに向けて「そんなもんかよ!恥ずかしいぞ!」と愛に溢れたアジテーションを浴びせたのは「ダメ人間」。
些細なことだが、歌割りから歌詞まで呼吸がバッチリなのはまさに友情が成せるもので、これまでの両バンドの歩みと相まってエモーショナルなハイライトとなった。
冒頭に記した暁の発言は、その千秋がステージから姿を消してから語ったものだ。
ラスト「世界の終わりと夜明け前」。本来孤独な歌であったはずだが、この日の暁の歌は決して孤独ではなかった。
DEZERTがあの頃のDEZERTでないように、ΛrlequiΩにもΛrlequiΩの守る場所、守ってきた場所がある。わずか30分の演奏時間のなかに果てのない歴史とドラマがあった。そしてこのドラマはまだ続いていく。
残響のなか揺らぐ彼らの強靭なシルエットには大きな拍手が巻き起こった。
●deadman
立ちはだかるという表現が正しいのかも知れない。
4番手はdeadman。
来年結成25周年を迎えるが、今年は19年ぶりのアルバムをドロップした。唯一無二の世界を誇示し続けるバンドは、生ける伝説でもあり不死身のゾンビでもある。
DEZERTとの縁は今から遡ること2年、deadman主催の2マンライヴで共演し、
さらには日本武道館で開催された「V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP」に際しては、SORA(DEZERT)のリクエストに応え「lunch box」を演奏した。
ただ、この両バンド間に甘い友情はない。あるとするならば畏敬の念だ。
事実、2マンライヴの際に眞呼(Vo)がアドリブでDEZERTの「TODAY」を披露すると、そのディープな表現力にはどよめきが起こり、会場中が飲み込まれた。
軋む扉の音と鼻歌が不穏に苛ませるSE「dlof facs:2.0」と共に登場した4人は最新作から「rabid dog」を披露。
ハードナンバーに全身で応える者、闇に浮かびあがる眞呼の姿に飲まれる者と反応は様々だ。
バスドラの音から間髪置かずに続いた「ミツバチ」。懺悔を正義と悪の天秤にかけ、眞呼は崇めるように天を仰いだかと思えば、跪き客席に背を向ける場面もあった。
世に蔓延る様々な人間模様を描写して提示する表現力は無二で、aie(Gt)のアルペジオは糸のようにそんな眞呼が描く人物像を操っていく。
「lunch box」、「re:make」と体温を上昇させていくと、「愛する人へ…」と呟き「静かなくちづけ」へ。
とつとつとした歌い出しから悲嘆に溢れる絶唱にストロボが薄く焚かれる、類を見ない光景の前には固唾を飲んで立ち尽くすことしかできない。
畏敬の念は言い換えるなら、侵食できない聖域でもある。だからこそ、千秋は当然deadmanのステージに登場することはなかった。
底を這いずる「宿主」、呪いのようなインスト「dawn of the dead」まで後味の悪さを残してdeadmanは悪夢のようにステージを去った。
●DEZERT
イベントのトリを務めるのはもちろんDEZERTだ。
無音で幕が開くと会場の緊張感が一気に増していくのが伝わる。楽器隊がポジションに着くとSORA(Dr)の咆哮に招かれるように千秋が登場。
「音楽は好きか?ロックは好きか?ヴィジュアル系は好きか?…奇遇だね。俺もです!」と高らかに宣言すると、彼らにとって最新ナンバーの一つである「心臓に吠える」からスタート。
その浸透度はすさまじく、一気にフロアをDEZERTの色に塗り替えてみせた。
不穏なイントロ、陰鬱とした世界観、ダウナーなリフはどれを取ってもインディーズ初期の彼らによく似たザラついた手触りがあるが、頭を振りしきり応えるオーディエンスの反応も圧巻だ。
フロアの爆発力でいえば今年のツアーで存分に鍛え上げられた「匿名の神様」では会場が大揺れに。Sacchan(Ba)のスラップ、Miyako(Gt)のオリエンタルなフレーズと、ヘヴィネスに固執しないサウンドメイクでダイナミズムを生み出すところにバンドの強さを感じさせる。
その一方で武道館ワンマンが迫ってきたメンバーに特別な気負いはない。背負わずして背負っているといったところか。
4人のメンバーがそれぞれに理解が深く、バンドとして1点を見つめられているが故に無駄な力感のない佇まいに説得力が生じる。
まさしく武道館へ向かうバンドとしての風格を漂わせるものであり、幾多のライバルや先輩の背中が彼らを成長させたことも真理だろう。
初期からバンドの名刺代わりとして活躍してきた「「殺意」」の威力、澱んだ世界と不穏な音像の「「宗教」」の圧迫感は、かつての自分たちが間違っていなかったことを証明する。
もちろんDEZERTが未来へ向かい続けているからこそ起きる事象だ。
「もうひと暴れしたいでござる」とユニークに扇動した「君の脊髄が踊る頃に」。
さらに急遽追加した全く演奏予定にない「包丁の正しい使い方~終息編~」ではΛrlequiΩの暁、すでにメイクを落とし客席後方で観覧していたRAZOR猟牙も強引にステージに巻き込んで完全燃焼となった。
「あなた“たち”じゃなくて、あなたに感謝してます。」
「今日出た5バンド最高!俺ら含めて最高!」
ラストナンバーは「TODAY」。思えば分岐点になるこの楽曲が初披露されたのも恵比寿リキッドルーム。意図せぬところで彼らのこれまでの歴史に触れるように、DEZERTは4時間に渡るイベントを締めくくった…かに思えたが、「今日しかできない曲やっていい?」と問いかけ前日にレコーディングしたばかりの「オーディナリー」を披露。
日本武道館で配布される特別な1曲をもって宴の第一夜は幕を降ろした。
「また頑張っていきましょう!」
最後に千秋が投げかけた言葉は、バックステージの盟友たちにも届いているような気がした。