【0.1gの誤算】ライヴレポート◆0.1gの誤算、Zeppツアーを完遂。ファイナルLINE CUBE SHIBUYAで緑川裕宇の生誕祭と一足早い「もうひとつの10周年」

0.1gの誤算が、LINE CUBE SHIBUYAにて<緑川裕宇&河村友雪生誕記念!4大2000キャパツアー「最強AB型組に続け!灼熱の大旋風!」FINAL-緑川裕宇生誕公演「挑戦の果てに成功あり。弱さを経さぬ強さは無い。我こそ緑川裕宇、いざ参らん!」->を開催した。
河村友雪の生誕祭、Zepp DiverCity(TOKYO)を皮切りに、名阪のZeppを回る大規模ツアーを敢行した0.1gの誤算。
Zeppツアーの開催は彼らが夢に見た舞台であり、そのファイナルは緑川裕宇の生誕祭であり、会場は昨年の同時期にワンマンをおこない今回が2度目の挑戦となるLINE CUBE SHIBUYAであり。そして、「もうひとつの10周年」。
10年前の9月5日、メンバーが集い0.1gの誤算は誕生した。
「前回のLINE CUBE SHIBUYAでのワンマンよりも更にパワーアップしたライヴを届けたいです。10周年記念ライヴは来年の3月ですが、メンバーが集まったのが10年前の9月なので、自分としては今日も10周年という気持ちで臨もうと思ってます」。
10周年を迎えるバンドのフロントマンとして、メンバーとファン、さらにヴィジュアル系のシーンを牽引してきた緑川裕宇。
本番前、穏やかな中にも強い信念を感じさせる真っ直ぐな眼差しで、そう語った。
ステージ上には階段で繋がれたスペースに演台が設置され、緑川裕宇がそこで指揮を執るなか「毒彩バタフライ」から幕を開けると、新衣装で登場したメンバーたちに会場からは大きな歓声が沸く。

衣装は黒を基調とした古のヴィジュアル系バンドを想起させるデザインで、河村友雪だけ全身を深紅の装いで包み、水田魔梨の赤いギターとともに良いアクセントを加えている。


鬼気迫る音で演る「JUDGEMENT [THE] DAY」でファンの頭が振り乱れると、座席があることを忘れてしまうほどにライヴハウス化していく会場。
「アルテミスの憂鬱~銃口とマリア~」で歌いながらゆっくりと階段を下りてきた緑川裕宇がモデルガンを構えながらパフォーマンスを繰り広げ、「救済バタフライ」ではメンバーが広いステージを縦横無尽に動き回る。
「ぶち上がってるか、渋谷!」の掛け声で、場内は再び大歓声に包まれた。
ライヴ前夜、新衣装とともに解禁された新曲「時間切れシンデレラ-Time Limit Cinderella-」。
ムーディーなイントロが流れると、フロアでは左右の手に持たれた小さな旗がリズム良く交互に上げられ、会場はより華やかに。
毛色の異なる「ショートケーキエゴイズム」を間に挟みつつ、その後は新曲と同趣の空気を吐き出していく。
緑川裕宇のピアノソロ、そこへ静かに声を乗せた「利己的メルヘン症候群」。
力宿る切なさが込められたピアノの演奏と歌声、そこから一気に楽器隊の音が合わさり爆音を轟かせると、赤いスポットライトがステージを刺すなか絶え間なくエモーショナルな音を放出していく。
続く「虹彩の遺書」でも同様に、ノリの良い曲や激しい曲だけに頼らないライヴ展開が光り、10年かけて膨らませてきたバンドの厚みを感じさせられた。

客電が全灯し「オオカミ男と月兎」でメンバー全員がステージから飛び出すと、1階席の後方から2階席からと、会場の至る場所で音を奏でる。
その様子をお伝えする際、筆者はよく「散歩に出掛ける」と表現するのだが、それはいつも、こうした行動がパフォーマンスのためではなく、純粋にファンのみんなと同じ景色を眺めたくて、会話がしたくて、ふらっと散歩に出掛けているように思えるからだ。
この日は特に客席が明るく照らされていたので、楽しそうな表情がよく見えた。
バンドの規模は大きくなるのにファンとの距離は縮まっていく、そんな0.1gの誤算らしいスタイルは変わらない。
水田魔梨がファンと一緒にステージを見つめ、河村友雪が笑顔で目を合わせ、眞崎大輔が共に暴れ、久保田まさしが声を掛け、緑川裕宇が一人ひとりに歌を届けるように会場中を駆け巡る。
Zeppツアーから帰って来て交わされる「ただいま」「お帰り」といったメンバーとファンとの会話が聞こえてくるようだった。
アンコールのMCでもアットホームな時間は続き、トークが一段落すると「なに演る?」というラフなやりとりに、「まだ夏の気分でいたいから『誤算節』かな」と、眞崎大輔が提案。楽器隊が再び会場の熱を上げていくなか、緑川裕宇が登場した。
ベース音で軽快なリズムが刻まれると「VITAL」だと分かったファンが嬉々として身体を揺らし、ステージから吹き上がるスモークの先でメンバーも快活に演奏を繰り広げる。
その後も楽しい空間は続き、「絶望メンブレガール」で銀テープが舞うまでが、本当にあっという間だった。


ダブルアンコールが掛かり、ラストの「鬼悦天」では再度メンバーの散歩が行われた。
そして、「ツアー終わっちゃうの、ちょっと寂しいな」というメンバーの言葉を体現するように、長い時間をかけて曲のループが続くのだった。
「厳しい日程だったけど、たくさんの方に来てもらえて嬉しかったです。これからも走っていきます────水田魔梨」

「Zeppツアー全公演、0.1gの誤算らしく演奏できました。まるでライヴハウスでの盛り上がりみたいでした────眞崎大輔」

「自分のバースデーライヴからスタートしたツアーでした。10年前、バンドのプロフィールで夢を書く欄があったんですけど、そこにZeppツアーって書いてたんですよ。叶えられる夢を書いちゃった10年前の俺、ミスってるんですよね。まだまだいけますよね────河村友雪」

「俺がみなさんの希望の光でいられるように、ずっと若くあざとくいくのでよろしく────緑川裕宇」

「ZeppとかLINE CUBEって、誰でも立てる場所じゃない。皆さん本当に感謝しています。愛してるよ。……おい、なんで笑うんだよ!────久保田まさし」

各々の気持ちをしっかりと伝えたメンバーたちは、大歓声に見送られながらステージを後にした。
ライヴ自体はそこで終了したが、トリプルアンコールもかかり、最後は緑川裕宇が影アナで「ありがとう。明日も後夜祭があるから、暴れ足りない人は是非来てください。本当にありがとうございました。じゃあね、バイバイ」と、明るい声で締め括った。
2026年3月19日、10周年記念ライヴの会場、パシフィコ横浜 国立大ホール。
終演後にスクリーンで発表されると、会場は再び大歓声と拍手に包まれ、「すごい……!」と声を漏らすファンの声が飛び交った。
「誰も諦めなかったから、ここまで来られた」というライヴ中の緑川裕宇の言葉が思い出される。
今日はきっと、メンバーが集った日からの10年間を振り返り、楽しかったこと、悔しかったことを噛み締めながら挑んだライヴであったことだろう。
0.1gの誤算が本格始動してから10年目となる、来年3月。
そこではきっと、今日とはまた違うアプローチで、未来に続く景色を見せてくれるはずだ。
「挑戦の果てに成功あり」。0.1gの誤算の挑戦と成功が、どうかこの先もずっと続きますように。

写真◎上野宏幸 LINKSOLU.Inc
文◎藤代冬馬 LINKSOLU.Inc
SET LIST
01. 毒彩バタフライ
02. JUDGEMENT [THE] DAY
03. アルテミスの憂鬱~銃口とマリア~
04. 救済バタフライ
05. 時間切れシンデレラ-Time Limit Cinderella-
06. ショートケーキエゴイズム
07. 利己的メルヘン症候群
08. 虹彩の遺書
09. オオカミ男と月兎
10. 有害メンヘラドール
11. 【L】1126【悲劇】
12. NEVER ENDING
EN1
13. VITAL
14. ジュリエットの指輪
15. 被告人Aの告白
16. 絶望メンブレガール
EN2
17. 2008年高田馬場AREA
18. 21gの感傷
19. 獣猛者戦争~轟け!超誤算狩猟!~
20. 鬼悦天
関連リンク
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