【鮮血A子ちゃん】★スペシャルインタビュー★物騒すぎるヴィジュアル系バンドが発する「死ね」は誰に向けられたものなのか。誤解まみれのその本質に迫る

バンドが掲げる“人類屠殺”というキャッチコピーや、枝切りバサミを用いたライヴパフォーマンスと、そのインパクトのある立ち居振る舞いでヴィジュアル系シーンの中でも異彩を放っている鮮血A子ちゃん。しかしながら、我々が抱いている印象は、彼らにとってほんの表面的な一部なのではないか。そんな疑問を紐解くためにメンバー全員へのインタビューを敢行。鮮血A子ちゃんの核に触れるべく、バンド結成に至るまでの背景や、バンドの象徴である滅多刺しひろくんの芯にある思想、さらにはヴィジュアル系シーンへの想いなど、あらゆる角度から彼らの本質を曝け出してもらった。
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このバンドが売れるためにやっているので、気持ちとしては普通のバンドですよ
────シーンで異彩を放っている鮮血A子ちゃんですが、そのインパクトゆえにバンドの本質が間違って伝わってしまったり、僕自身もバンドの表面しかわかっていないんだろうなとも思っているので、今日のインタビューを機にバンドについて深く理解できればと思っています。ということで、メンバーの皆さんは鮮血A子ちゃんというバンドをどのようなバンドだと思っていますか?
墓荒らしあさひ(以下、あさひ):ヴィジュアル系にあまりいない変なバンドですね。
────それはあらゆる意味で物騒とかそういったベクトルでということでしょうか?
千吊まるこ(以下、まるこ):周りからは「物騒だからそんなバンド辞めなよ」って言われるんですけど、僕自身、感覚が麻痺っているのもあるし、自然体でやっていることなんですけどね。
滅多刺しひろくん(以下、ひろくん):あたしから言わせれば普通ですよ。あたしたちは全員フリーターや社員をしながら、普通に税金を納めているバンドです。よく「過激ですね」とか、人づてに「怖い」とか言われるんですけど、全くもって意味がわからないです。逆にそういうことを言ってくる人間たちに、どんな生活を送って、何を聴いていたらそんな思考回路が生まれるのかを問いたいです。これは比喩でも揶揄でもないですよ? 誇張ナシでちょっと思想が異なるヨルシカくらいな感じだと思っているので、全人類が聴くべきです。
────やはり、自認と世間の評価に乖離がありそうですが、活動をしていく中でバンドの本質がうまく伝わっていなかったり、印象が一人歩きしてしまっていたりする実感はありますか?
あさひ:正直、何も考えていないんですよね(笑)。
ひろくん:あたしは思いますね。前述したとおり、税金を納めて真面目にバンドをやっている中でも、生演奏、技術、ツテ、あたしらもチェキなんて売って色々負け要素やブーメランな部分が多いのはわかっています。ただ、他人なんてどうでもいいですけど、そっちの尺度で測るなら、本当に人間としてやっちゃいけない事してるバンドが持て囃されてるのはマジで意味わからないです。本当に気持ちが悪い。
────色々思うことがありそうですね。では、鮮血A子ちゃんがこのようなバンドに生まれた理由を探るために、バンド結成以前の過去を振り返りながらお話をお聞きします。このバンド自体がかなり特殊なバンドなのは大前提で、過去はそれぞれ毛色の違うバンドをやっていましたよね。
ひろくん:あたしのルーツの一つがデスメタルやゴアグラインドといったジャンルで、10代の時は趣味でそっち系のバンドをやっていて、ヴィジュアル系をやりだしたのは2つ前のバンドからですね。でも、それもノリで始めたし、イニシアチブを握っているメンバーの命令に従ってやっていたので、わりと無感情というか、そこにあたしの意志はなく。

────一つ前のバンドはあさひさんと一緒になったんですよね。
ひろくん:そうです。あ! 一つ当時の感情を思い出しました! バンドに対する感情はなかったんですけど、ギターをやりたいあさひが無理やりドラムやらされてるのを可哀想だなと思って歌っていました。
あさひ:絶対思ってないでしょ!(笑)
────そもそも、あさひさんはギタリスト志望だったんですか?
あさひ:もともとドラマーだったんですが、ずっとギターをやりたくて。
ひろくん:あさひは器用でなんでもできちゃうし、頼むと引き受けてくれちゃうんです。
────あさひさんもまた鮮血A子ちゃんとは毛色の違うバンドをやっていましたよね。
あさひ:そもそも僕は地元でバンドはやり尽くして、遊ぶためにノリで上京してきたのでバンドをやるつもりはなかったんですけど、誘われたのでヴィジュアル系をやることになり……。
────頼むと引き受けてくれてますね(笑)。
あさひ:はい(笑)。なので、僕もあまり主体性を持ってバンドをやっていたという感じではなかったですね。
────まるこさんは表立ってバンドはやられていなかったですよね?
まるこ:そうですね。僕はサポート業がメインでした。昔から音楽的にもポップスじゃない激しいヴィジュアル系をやりたかったんですけど、周りにそういう人もいなかったので、モヤモヤを抱えながらパンクやレゲエのサポートをやっていたところであさひとひろくんに出会って。
────皆さんが主体的にバンドをできていない中で、ひろくんとあさひさんを中心に結成されたのが鮮血A子ちゃんというわけですが、当初バンドのコンセプトみたいなものは決めていたんですか?
ひろくん:ないです。
────となると、音楽性云々よりあさひさんとバンドをやりたかった……?
ひろくん:いや、違います。いや、そう言われればそうかもしれないですけど。
────どっちですか(笑)。
ひろくん:一緒にやりたかったです、普通に。なんでも言える関係なので。
────素直に認めましたね。
ひろくん:それにこの短時間でもうわかると思うんですけど、あたしってこんな人間じゃないですか。さっきの話じゃないですけど、バンドに対して過激って言われるのはハテナなんですけど、「ひろくんって人間として終わってるよね」って言われるのは理解できるんですよ。
────なるほど。
ひろくん:なので……。あれ、何を言おうとしたんだっけ、あさひ?
あさひ:あははは(笑)。わかるか!
ひろくん:あ、そうだ! 音楽性より人間性のほうが重要ってことです!
────結局、人間と人間がやるものですから、ある種真理ですよね。
ひろくん:そうです。趣味が合っても意味ないですもん!
────ちなみに、せっかくの全員インタビューなので各メンバーのパーソナリティに関してもお聞きできればと思うのですが、「人間として終わってる」と評されることがあるひろくんはどんな人間ですか?
あさひ:まず、人間として見てない!
一同:(笑)
ひろくん:あたしを何として見てんだよ!
あさひ:このバンドをやっているからからこそのイメージかもしれないですけど、“遅れてきた思春期”みたいな感じで、その感情や表現がステージに出てると思うし、“鮮血A子ちゃんの滅多刺しひろくん”としての存在感はこいつ以外出せないと思います。こいつならではだし、こいつが死んだらもうバンドは終わりだっていう存在というか。
ひろくん:(リモートの画面越しであさひにハイタッチを求める)
一同:(笑)
(硫酸風呂天命、遅れて参加)
────天命さん、準備できましたでしょうか?
硫酸風呂天命(以下、天命):天命、行けまーす!!

────では、あさひさんのパーソナリティに関してお聞きしてもいいですか?
天命:一言で言うと苦労人ですかね。責任感が強くて真面目なので、人に頼らないで自分で全てやっちゃうタイプというか。まぁ、鮮血A子ちゃんでほかのメンバーが頼りないというのもあるとは思うんですけど(笑)。
ひろくん:このバンドはみんな変だから必然的にあさひがバンドの事務作業をやることになるんですけど、業務量が多すぎてお客さんから「頼むからあさひの賃金を上げてあげてくれ」ってDMが来るくらいです。
────あさひさんがいないとバンドが回らないわけですね。
まるこ:回らないですね。
ひろくん:でも、仕事ができるからそうは見えないかもしれないですけど、あさひの本性は実は頭のネジが外れたやべぇヤツですからね! 無許可で皇居のあのデカい門を通ろうとして、止めにきた警備員に対して本気で「おかしいんじゃないか」ってブツクサ文句言ってるんですよ? 不敬罪で捕まってもおかしくないですよ!

────あさひさんも根は狂ってる、と……。では、まるこさんはどうでしょう?
ひろくん:楽器はできるけど、話は通じない地球人じゃない人です!
────地球人じゃないとなると宇宙人ってことですか……?
まるこ:俺は普通だよ!
ひろくん:おかしいヤツは自分のことおかしいって言わないから!
────では、まるこさんが宇宙人かどうかほかのメンバーさんに確かめましょうか。
あさひ:宇宙人かどうか……。いや、人じゃないですね! ひろくんが「あたしとバンドやるヤツは大体おかしいヤツなんだ」って言っていたことがあって、百歩譲って俺がおかしいっていうのは自分でも認めますけど、ほか2人も変わらないですよ。
まるこ:(すごい勢いで首を横に振る)
あさひ:でも、まるこのいいところは、俺はひろくんとよく言い合いになって厳しいことを言ったりするんですけど、まるこは逆にそれを言わないからバンドの中でひろくんに対する飴と鞭を成立させることができるところですね。
ひろくん:でもこの前、「御託並べる前に手動かせよ!」って言われて怖かった。
天命:まるこっちゃんは丸くなったヤンキーみたいな印象があるから、根っこの部分はヤンキー気質があるんだと思います。
────今のところ人じゃない人しかいないバンドですが、天命さんは……?
あさひ:天命さんは……人ではないですね。
一同:(笑)
ひろくん:でも、この前天ちゃんに「俺がひろくんを後ろか支えるから」って言われて泣きそうになりました。あさひもまるこも支えるとは言ってくれますけど、ドラマーに言われたのが初めてで。
あさひ:良くも悪くも淡白なんです。さっきも言ったように、ひろくんに対して厳しく言う俺と、優しいまるこがいて、そこに天命さんは深く関わらないんですけど、こういう感じでひろくんのことはしっかり見ているというか。だから、バンド内でバランスが保たれているんです。
いつ背後から刺されてもおかしくないし、拉致して攫われても仕方ないと思ってます
────では、人がいないバンドこと鮮血A子ちゃんが掲げている“人類屠殺”というワードに関してもお聞きしていいですか?
ひろくん:あたし自身、人間に生まれたことに葛藤があるんです。というのも、大前提としてあたしにも大切な人────家族やメンバーやここにいる人たちに傷ついてほしくないと思っている上で、人間が傷ついたら慰めたり同情したり悲しんだりするじゃないですか。
────そうですね。
ひろくん:でも、その行動を人間という種族にのみ行うことに矛盾を感じるんですよね。
────動物が屠殺することには哀れみの感情を抱かない、と。
ひろくん:そうです。あたしたち人間は食物連鎖の頂点にいて、あたしたちより下という言い方は自分でしたくないですけど、日々ありがたくいただくために奪われている命の数って、今まで戦争で亡くなった人の数を一日ではるかに超えてしまうらしいんですよ。でも、そこに焦点を当てないじゃないですか。
────そうですね。生きるために命をいただいているわけで、その命に対して可哀想という感情を持つ人は少ないかもしれません。
ひろくん:でも、あたしは不器用だから考えてしまうんです。なんでなんだろうって。あたしは実際に屠殺場を見に行ったこともあるんですけど、とてもじゃないけどここでは話せないような場所でした。そうなった時に「全て終わらせたい」って思ってしまう。
────それが“人類屠殺”。
ひろくん:はい。だから、鮮血A子ちゃんの“A”というのはA to ZのAで始まりという意味で、全てを終わらせた時にZになる。つまり鮮血A子ちゃんの役割が終わる時だと思っているんです。そして、全てを終わらせて最後に立っているのはあたしで、自分も手にかけてしまっているわけだから責任をとって自害するという気概を込めてこのバンド名をつけたんです。
────そんな意味が込められていたんですね。
ひろくん:人生でこの考えに賛同してくれた人は一人だけです。理解されないこともわかっています。だからこそ、生半可な気持ちでこのバンド名をつけてこのバンドやってないですよ。いつ背後から刺されてもおかしくないし、拉致して攫われても仕方ないと思ってます。
「死ね」って誰かに言ってるんじゃないんです
────では、鮮血A子ちゃんの音楽性について、個人的には一言で形容できないものだと思っていて、激しいものはもちろん、狂気じみたポップさを孕んでいる楽曲などもある中で、この独自の音楽性はどのように確立していったのかをお聞きできますか?
まるこ:ひたすら曲を作りましたね。それこそ音楽性もバラバラだし、1分だけの曲とかもありましたし、とりあえずデモを作って、その中からひろくんが歌いたいもの/やりたいものを形にして、それがバンドとしての音楽性であり正解になっていったような感覚ですね。なので、世界観を作るために構想を練ったというよりは、突発的なことが多いんです。
────なるほど。
まるこ:僕自身、これまでサポート業をやっていたこともあって、好き嫌いに関わらず弾かなきゃいけない立場だったわけで、主体性を持ってバンドをやれている今では好きなことや、やりたいことしかやりたくないですし。

────それは逆説的に、どんな音楽性でもこのバンドでやれば鮮血A子ちゃんになるということでもあるのでしょうか。
ひろくん:それはかなり最近になってのことですけど、あたしが歌詞を書いて、あたしが歌えば鮮血A子ちゃんになるという自信は、少しずつついてきている実感はありますね。
────また、鮮血A子ちゃんの楽曲にはボイスチェンジャーが多用されていて、それが独自のカラーになっていますよね。
ひろくん:これはあたしのルーツになっている神聖かまってちゃんの影響ですね。
────そこははっきりと公言するんですね。
ひろくん:はい。昔から「神聖かまってちゃん好きなんですか?」って聞かれることは多くて、それに対して「知らない」って答えたら逆に怒られますよ! それと、ボイスチェンジャーに関しては、あたし自身が女性になりたいという願望の現れもあるかもです。あの、なんて言うんですか。近年よく聞く“多様性”とか、体が女性になりたいとかそういう話じゃなくて、精神的な意味での女性への憧れがあるんですよ。
────女性という存在そのものに憧れがあるということですね。
ひろくん:あ、そうです! キュートでありたいんです。
────ちなみに鮮血A子ちゃんの楽曲にはピッチ(音程)が直っていなかったり、アレンジが未完成だったり、音質がチープだったり、一言で表すと“不完全”な楽曲も一定数あるじゃないですか。それって、一般的に言う完成品としてパッケージングすること以上に大事なものあったりするのでしょうか?
ひろくん:それはあたしがB級好きっていうのと、完成品の音にしないほうがいいと思った楽曲に関してはデモ音源のまま出したりしていますね。逆にあさひが作曲した楽曲とかは作り込んで完成品としてカチッと仕上げないとダメだと思うんですけど、逆にあたしやまるこっちゃんの曲はデモ状態のまま出さないとダメだなって思っています。
────デモ状態のまま出さないとダメというのはどういったことに起因するのでしょう?
ひろくん:単純にデモの音質が好きなんです。もちろん、メタルにみたいにドカンとした音圧も好きなんですけど、自分のルーツを遡ると「あれ、これデモのほうが良くね?」みたいなバンドが多かったりして、それがあたしの原初の階層に刻み込まれてるというか(笑)。
────このスタンスにほかのメンバーさんは反論というか、「ちゃんとした形で録りたい」みたいな気持ちはないんですか?
まるこ:もちろん、もっと時間をかけてアレンジして、エンジニアさんを入れて完成形まで持っていこうよとか、自分のベースも直したいなとか思うこともあるので、そこは話し合います。けど、最終的にはひろくんの耳とセンスを信じて任せていますね。
────先ほどお話しを伺った“人類屠殺”を掲げる鮮血A子ちゃんは、もちろん歌う内容も「殺す」や「死ね」をはじめとする物騒なワードが並ぶわけですが、“人類屠殺”の意味を鑑みると具体的に殺したい明確な対象があるというよりは、人類は総じて死ぬべきだと思っているということですか?
ひろくん:誰しも親族や友達を亡くした経験があると思うし、あたし自身も経験があって、その度に誰よりも泣くし、後追いしちゃおうかなって考えない日はないんです。だからこそ絶滅してほしいですよ。だから、「死ね」って誰かに言ってるんじゃないんです。あたしにも「死ね」だし、みんなにも「死ね」。もうみんなで手繋いで人間やめようよってことなんですよ。
────なるほど。
ひろくん:だって、こんなに知能が発達しちゃって、こんなに残酷なことを考えられる種族って今まで出会ったことあります? 恐竜だって滅んでるのに、あたしらは生きちゃってんですよ。
────そうですね。でも、ひろくんにとって味方である人類もその中にはいるわけで、その人たちも死ぬべきですか?
ひろくん:そうです。だって、あさひもまるこっちゃんも天ちゃんも、あたしより先に逝っちゃったらあたしはこの先どう生きていけばいいか想像つかないですもん。それに、ここで自分の周りの人だけを特別に扱うと、それはそれで矛盾するじゃないですか。だから、みんなで死ぬのがいい。なので、あたしは泥臭く生きているようで、泥臭く生きれていないんですよ。ただ単に意味のないことをずっと考えているだけで。
────たしかに現実的ではないかもしれないですけど、ひろくんが周りの人だけのことを考えて発生する矛盾を回避するために生まれたこの思想は、もしかすると大切な人に先立たれる悲しみから誰かを救うことになるかもしれないですよね。どこかで線を引いてしまうと、その線の内側にいる人は外側にいる大切な人を失う悲しみに直面するわけで、誰しもがそうならないために全員を線の内側にする究極の優しさなのかもしれないですね。
ひろくん:言ってる事、理解できます。ただ、そういう発想がなかったので少し複雑というか動揺というか不思議な感覚に見舞われています。
────ちなみにほかのメンバーさんはこの思想に関してはどう思ってますか?
あさひ:俺は嫌ですよ。死にたくないです(笑)。
まるこ:僕も人生結構楽しいし、毎日幸せだなと思っている人間なので。
天命:まぁ、そういう人もいるだろうって感じで。
一同:(笑)
ひろくん:でも、逆にメンバーに共感されてしまったら終わりだと思っているし、あたしの書く詞に口を出されたり、ズレた思想が生まれてしまうので、理解されないほうがいいんですよ。



