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【黒蜜】◆スペシャルインタビュー◆夢を見られるバンドが誕生したワケ。黒蜜が掲げる“純愛”とは?

「MASKED 2026」から始動した黒蜜。晴れの舞台に立った4人が示していたのは、バンドに対する並々ならぬ熱意と、ここに至るまでの確かな軌跡だった。
2月の情報解禁から始動までの約3か月間、「MASKED 2026」出演全バンドの楽曲を題材にした“歌ってみた・演奏してみた”動画をはじめ、リリックビデオの公開やライヴハウスへの挨拶回りなど、精力的な活動を展開。同時に、始動とともにリリースされたフルアルバム『純愛フルコース』の制作にも取り組んでいた。
6月9日からは、47都道府県ツアー『純愛』がスタートする。ツアーファイナルとなる12月19日の渋谷REX“完全ソールドアウト”を目標に掲げ、始動直後とは思えない大きな挑戦へと踏み出していく。
さっそく、彼らが掲げる“純愛”とは何なのか……? 結成の経緯から始動までの日々を振り返りながら、4人それぞれが抱く覚悟の想いに迫った。


◆   ◆   ◆

黒蜜を最後のバンドにしよう



────さっそく、黒蜜がいかにして生まれたのかというところからお話を始めていきたいと思います。

乃亜 まず、自分は前のバンドが解散して以降、期間限定でソロ活動をやっていたんです。そもそも前のバンドが解散したときに痛感したのが、メンバーが欠けてしまうとバンドが存続していくことは難しいということで。だから、もう一度新たにバンドを組むならば、その経験を活かして組みたかったんです。

────それが、先日の「MASKED」でのトークイベントで“人間性やチームワークが大事”や“人との繋がりを大事にしたい”とお話されていた真意であって、黒蜜が“純愛”を掲げていることにもリンクしてくるわけですね。

乃亜 はい。“人との繋がり”で言うならば、SAMとの出会いは大きかったです。結果、「もう一度新しいバンドを組みたい」と思うきっかけにもなったので。お互いが前のバンドで対バンしたときに、なぜかSAMがホールまで出てきて自分たちのライヴを観てくれていたんです。

SAM 単純に「上手いな」と思って。ビバラッシュ主催の、高田馬場CLUB PHASEでやったイベントでしょ?(2023年5月31日・ビバラッシュ主催 「ICHIGO☆ICHIE」Vol.1)

乃亜 そう。ちなみに、SAMとの出会いがビバラッシュ主催だったということが、6月9日の黒蜜主催(3MAN LIVE「蜜会」)にビバラッシュを呼んだ理由でもあるんです。ただ、当時気まずかったのが、初めてのSAMとの会話が「機材ってどこに置いたらいいですか?」だったんですよ。俺、SAMのことスタッフだと思ってて……。

一同 (笑)

乃亜 しかも楽屋が一緒だったから、そのあと隣でメイクしてたっていう(笑)。

────今ではよき思い出ですね(笑)。そんなSAMさんが後に乃亜のソロ活動のサポートをされたり、こうして一緒にバンドを組むことになるとは。

乃亜 龍一郎と伊織も、ソロ活動のサポートからの流れなんです。伊織は1年半の間ずっと僕のソロ活動のサポートで叩いてくれていて、この中では一番一緒にいた時間が長いんですよ。そのサポート期間に一度だけスケジュールの都合で伊織が出られなかったときに叩いてくれたドラマーに紹介してもらったのが、龍一郎だったんですよね。SAMは出会いこそ一番早かったんですけど、前のバンドの活動もあって迷惑をかけるわけにもいかなかったので、黒蜜に合流したのは最後だったという経緯です。

▲乃亜(Vo)

────わかりました。新しいバンドを結成するからには、皆さんの中にあるバンドとしての在り方やモットーも大切だったと思うんです。それぞれどんな思いを抱いているのか、伺ってもいいでしょうか?

SAM このバンドに関しては、乃亜くんの「黒蜜を最後のバンドにしたい」という強い気持ちを受け取ってというところがありますけど、やっぱり楽しくバンドをやっている先で言いたいことを我慢せずに言えることとか、メンバーの悪い部分よりもいい部分を見つけようとする気持ちが大事だと思ってるんですよね。それに、黒蜜のメンバーはみんな“音楽が好き”なんですよ。そういうメンバーとなら、一緒に、楽しくバンドができるんじゃないかと思って。

────今、ハッとしました。人に対する“愛”だけではなくて、音楽に対する“愛”でもあるわけですね。

SAM そこも大事じゃないですか。ヴィジュアル系ってどうしても見た目に重きを置きがちだけど、僕はもともとメタラーなんで音楽面もシビアに行きたいんです。演奏が上手いこともメンバーに対するリスペクトにもなるし、そこを大事にできるメンバーと一緒にやりたいっていうのはありますね。

────では、伊織さんはいかがですか?

伊織 やっぱり、お客さんに寄り添いたいという気持ちが大きいですね。これも“愛”というか。そこで乃亜と出会って、「この人はすごくお客さんを大事にする人だ」って思ったんです。なにせ僕、一緒にステージに立つまで乃亜は怖い人だと思ってたんで……。

乃亜 (笑)

伊織 でも、イメージが変わって。「この人とならみんなを幸せにできる」と思って、僕はバンドをやる決意をしたんです。これ、ちゃんと話したことなかったですけど。

乃亜 うん、初めて聞いた。

────すると、伊織さんの根幹にあるのはファンに対する“愛”ですね。

伊織 はい。もちろんファンもですけど、メンバーやスタッフ、もっと言えば自分に関わってくれるすべての人を愛したいと思っていて。そういう僕が大切にしたいところと、黒蜜の“純愛”というコンセプトが繋がったんですよね。

龍一郎 僕は、それこそ前にやっていたバンドが去年の6月に解散して、そのタイミングでお世話になった方たちに挨拶を済ませたレベルでミュージシャンを辞めようと思っていたんです。というか、辞めてる状態だったんですよね。そんなときに、先ほどの乃亜の話にもあったように元メンバーから「ギターを弾いてほしいみたいだよ」っていう連絡をもらって、「なるほど」と思って。

▲龍一郎(Gt)


乃亜 「なるほど」と思った(笑)、その心は?

龍一郎 一番は、もう自分は音楽を辞めている状態だったというところと、その反面「もしもここでギターを弾いたら、また自分の音楽人生が続いていくかもしれない」と思ったんです。

────ということは、龍一郎さんの中には若干の音楽に対する心残りのようなものもあったんでしょうか?

龍一郎 そうですね。「ギターは弾きたいけど弾けない」みたいな気持ちを持ったまま辞めたので。で、実際にこうしてまたバンドを組むことになりましたけど、もともと乃亜の歌やどういう曲を作るかは知っていたし、個人的に乃亜はメロディーメーカーだと思っているくらい、乃亜が作るメロディーが好きなんです。これも、初めて話しますけど。

乃亜 ありがとうございます!

龍一郎 僕はフュージョンというジャンルの音楽が好きなので、独特な音階に惹かれるんですよね。それでいうと、乃亜の作るメロディーの“クセ”が好きだったので、「なるほど、じゃあやってみよう」となったんです。僕が好きな音楽ができると思いましたし、単純に黒蜜の音楽が好きなんですよ。SAMも“音楽が好きな人が集まってる”って言ってましたけど、だからこそいい音楽ができるバンドなんじゃないかと思いますね。

────乃亜さんとしては、今初めて聞いたお話もあったかと思いますけれど?

乃亜 純粋に、嬉しいです。「そう思ってくれてたんだ」って。きっと俺、めっちゃ厳しいんですよ。もともと僕には子役時代があって、自分の代わりはいくらでもいる世界にいたんですね。どうしてもその環境とバンド活動を比べてしまって、“ぬるいな、これじゃ売れるわけないじゃん”って思うことが多々あったんです。だから、バンドメンバーにいろいろと提案をするけど、全然合わなくて。

────周りとの熱量に差が生まれてしまっていた、と。

乃亜 そう。メンバー間でも「アイツ、1人で熱くなってる」みたいな状態になってしまって、自分だけがずっと空回りしてる状態。でも、みんなの言う“売れたい”“モテたい”を叶えるためには、自分たちが大きくなればそのチャンスは増えると思うんです。そこで「黒蜜を最後のバンドにしよう」と思ったのは、俺の思いをちゃんと受け入れてくれたメンバーだったからなんですよ。俺が提案したことを端から否定するんじゃなくて「とりあえずやってみよう」ってなれるメンバーで、やってみてダメだったら改善していくっていうやり方で一緒に作っていけるんです。

────実際に始動前から、ライヴハウスへの挨拶回り、「MASKED」全出演バンドの歌ってみた・演奏してみた、そしてリリックビデオの公開と、新バンドの動きとしてはかなりアグレッシヴでしたよね。改めて、始動までの日々を振り返ってみるといかがですか?

龍一郎 実は、僕も乃亜と同じく子役時代があったんです。そのときにいくつか映画や舞台に出演したことがあったんですけど、だいたい稽古期間って3か月なんですよね。黒蜜も解禁されてから始動日までが3か月で、僕にとっては結構リアルに体感できる期間だったんです。解禁されてから毎日“弾いてみた”をアップしていって、それこそ子役時代の3か月間っていう厳しかった時代の気持ちを思い出しながら、毎日が修行の日々だったなと。

────“弾いてみた”でいろんなバンドさんの曲に触れて、感じることもありましたか?

龍一郎 ギタリストとして足りないものを感じる部分もあって、すごく勉強になりました。すごく成長できた3か月だったと思います。

伊織 乃亜って、できないことをやれとは言わないんですよ。どちらかというと、できるところを伸ばしてくれるんですよね。僕、実はドラムに対して苦手意識がずっとあったんですけど、この3か月どころか、その前から難しい曲に向き合ってきた中で苦手意識がだんだん薄れていったんです。僕も黒蜜が最後のバンドのつもりで活動していきたいという気持ちがあったので、自分ができることを全力でやろうと思いましたし、これからも苦手を克服していきたいという気持ちでいますね。

SAM 俺は普段あんまり物事を考えるようなタイプではないんですけど、この3か月の間に47都道府県ツアーを発表したり、いろんなことを考えすぎて、実はあんまり覚えてないんです。

────47都道府県ツアーは、SAMさんが“黒蜜でやりたいこと”の一番初めに書かれていたことだったんだとか?

SAM 書いちゃったんですよ(笑)。なんなら、「本当にやるのかな?」ぐらいの感覚なんですけど……。

────まもなく始まりますけれどね(笑)。(※取材は5月末)

SAM (笑)。始動までの3か月間でいろんなライヴハウスへ挨拶回りをしてきたんですけど、実際に行ってみてよかったなと思いましたね。普段、ライヴハウスを借りるときのやり取りだけでは温度感って全然わからないじゃないですか。

▲SAM(Ba)



────事務的なやりとりになってしまいますよね。

SAM そう。でも、足を運んで言ってもらえたのが「最近、こういうバンドが少ないから嬉しい」と。逆にそう言ってもらえると、「頑張ろうかな」って気持ちは上がりましたね。

伊織 ライヴハウスのスタッフさん総出で出迎えてくれたりして、僕らのほうが励まされたというか。

────こういうところにも、人と人との繋がりを大切にしているからこそ生まれるものがあると思います。

乃亜 バンドって、忙しいときに何もしない人間に対してムカつくっていうのがバンド崩壊あるあるだと思うんですよ。

────まあ、バンドに限らずとも団体行動全般に言えますよね。

乃亜 人に対する愛情があれば自ら手を貸すだろうし、身近なメンバーすら助けられない人がファンに愛を語れないと思うんです。そこで黒蜜のメンバーは、それぞれがバンド内において自分ができることをやってくれるところがいいんですよね。特にSAMは“お酒が好きな自由人”みたいなイメージがあると思うんですけど、実はすごく信頼できるところがあって、メンバーの精神的支柱になってくれてると思うんです。

────隠れたリーダー的存在ですね。

乃亜 たとえば、龍一郎や伊織に「乃亜くんが言っているのはこういうことだから、俺らはこう動こう」って言ってくれてるのを、俺は知っていて。やっぱりSAMは一つのバンドを長くやってきたこともあって、“バンドを続けていく術”を知っているというか、俺の温度感に近いところでメンバーを導いてくれるんですよね。だから、メンバーの中で一番バンドマンっぽい心を持ってると思う。

────そして、始動と同時にフルアルバム『純愛フルコース』をリリースするという大胆さも印象的でしたけれど、これも乃亜さん発信だったんですか?

乃亜 はい。俺の自宅にあるブースでレコーディングして、そのままミックスとマスタリングまでやって、制作中は“寝たらアウト!”みたいな状況でしたけどね(笑)。そんなCDを千円っていう、ちょっとあり得ない価格設定にしたのにも理由があるんです。サブスクで音楽が消費できる今の時代、もはや音楽はBGMでしかないと思ってるんです。それでもCDを売る意味を考えたときに、手に取らないとわからないアートワークやパッケージに価値があると思って。ヴィジュアル系は、特にそうですよね。そういう感覚を味わってほしかったし、まずは手に取ってもらわないことには良さにも気づいてもらえないと思うので。あと、ファン心理としては自分の好きなものを人と共有したいじゃないですか。そういうことも考えて、手に取りやすくしたというのはありますね。

────内容としてもSE含む全9曲、楽曲も幅広いですよね。すべて乃亜さんが作詞・作曲されていますけれど。

乃亜 ふり幅の広さを意識したというよりかは、実はデモが60曲くらいあった中からベストなものを選曲したんです。

────60曲はすごい!

SAM 黒蜜は、チューニングが通常よりも1音低いんです。個人的には初めてのことだったので、まずはそれに対するドキドキがありましたね。そして、曲が速いし難しい! 乃亜くんからの無茶ぶりで自分があまりやらないスラップをやったりしてますけど、ある程度は自由に弾いてます。ヴォーカルの抜けがいいから、比較的何をしても大丈夫というか。自分も幅広くいろんなジャンルの音楽が好きなので、そういうエッセンスを自分なりにいい具合に散りばめられたかなと思います。

────歌の存在感があると、ベースとの混ざりも気持ちがいいところもありますからね。

SAM うん。しっかりと両方聞こえるというか。いいアルバムです。

伊織 ヴィジュアル系の楽曲って、どうしてもシャウトがフィーチャーされがちだし、バンド側も多用するところもあると思うんですけど、“歌で勝負できる”というのが黒蜜の強みだと思うんです。だから歌をどう活かすかを考えながら、自分はドラムを叩いてますね。それはレコーディングでもそうだし、ライヴでも常にそうです。

▲伊織(Dr)



龍一郎 実際、アルバムの制作過程はすごく大変でした。「メンバーそれぞれに工夫したところもあったんだな」と思いながら話を聞いていたんですけど、ギターは乃亜と2人でブースにこもってレコーディングする時間が長かったんです。でも2人揃って好みの音階が似ているので、ギターソロが目立つ曲が多いんですけど、フレーズを作りながら「これだ!」っていうのができると2人で盛り上がって(笑)。結構楽しみながら作れたアルバムでもありましたね。

────バンドキッズな感覚で楽しそうですね。ギターソロもふんだんに入っていたところに、プレイヤーとしてのポリシーも感じました。

龍一郎 「こんなに弾かせてもらっていいんですか!?」って思いながら弾いてたんですけどね(笑)。個人的にギターソロって、キャッチーなものとテクニカルなギタリストの自我が出ているものと2パターンあると思っていて。その僕が思う2パターンを弾いて乃亜に選んでもらう形にしていたんですけど、全部ギタリストの自我が出ている方を選んでくれたので、そこにも俺は愛を感じましたね!

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