【NICOLAS・SAKU×CHAQLA.・ANNIE A×VISUNAVI Japan・山内秀一】「KHIMAIRA EDGE 5 DAYS」振り返り鼎談!ヴィジュアル系はまだ終わっていない。「KHIMAIRA」という怪物が証明するもの

交錯する轟音、剥き出しの信念、そして互いが未来を証明し合うような5日間。6月10日から14日にかけて池袋EDGEで行われた「KHIMAIRA-EDGE 5DAYS-」は、単なる対バンイベントの枠を軽々と超え、ヴィジュアル系の“その先”を叩きつけた。
今、最も熱いヴィジュアル系バンドたちが火花を散らし、やがて一つの怪物を形作る瞬間、それこそが「KHIMAIRA」の正体だ。
今回、三者三様の形でこのイベントを担ってきたNICOLASのSAKU(Vo.)、CHAQLA.のANNIE A(Vo.)、そしてオーガナイザーでありVISUNAVI Japanプロデューサーの山内秀一が一堂に会した。なぜ彼らはここまで熱くなれるのか。なぜこのイベントは、オーディエンスを狂わせるほど輝くのか。答えは、この対話の中にある。
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キマイラって俺自身でもあるんです。
────怒涛の「KHIMAIRA-EDGE 5DAYS-」の完走、本当にお疲れ様でした。NICOLAS、CHAQLA.の2バンドは、初日と最終日に華を添えたわけですが、まずはANNIE Aさん、イベントのトップバッターを務めた手応えはいかがでしたか?
ANNIE A ずっと出演してきた「KHIMAIRA」だから贔屓目に見ているとかではなく、この5日間、本当にカッコいいバンドがめちゃくちゃ出ていたじゃないですか? そんなイベントのトップバッターをやらせてもらうことに特別な意味を感じていて、今回CHAQLA.はサプライズ的な意味で一発目に新曲をやらせていただいたんです。プレッシャーもかなりあったけど、この幕開けでそれを乗り越えたらバンドとして確実に成長できるのかなって。そういう気持ちを込めてライヴに挑みましたね。
山内 まさかの新曲からのスタート、あれは本当に嬉しかった。
────確かに対バンイベントの1曲目に新曲を持ってくるって、かなり挑戦的ですよね。オーガナイザーである山内さんから、トップバッターを任された責任のようなものを感じていたのでしょうか。
ANNIE A 実は、俺らがトップバッターを務めたのには裏話があって。山内さん、これ話してもいい?
山内 うん。本当は初日のトップバッターと最終日のトリは、俺がバンドとして全幅の信頼を寄せているNICOLASにお願いしようと思っていたんです。で、それをSAKUさんに話したら、「お前、それは違うだろ」って。
ANNIE A そうなんですよ。
山内 「KHIMAIRA」というイベントはCHAQLA.と一緒に育ってきた、彼らが主役の場所だから、そういう役目はいい加減CHAQLA.に任せてやれよ、と。
────イベントの裏に、そんな心意気があったんですね。SAKUさん自身は、どんな真意があったんですか?
SAKU これはあくまで俺の主観なんですけど。「KHIMAIRA」というイベントを通して、一つ自分の中で感じているものがあって。イベントや、オーガナイザーである山内さんが目指しているもの、それは“ヴィジュアル系を未来に繋げていくこと”だと思ったんです。もちろん、NICOLASにトップバッターやトリを任せてもらえることは光栄だったけど、このシーンを拡張していく役割はもうCHAQLA.が担えるだろうと。
────そんな思いを込めての提案だったんですね。
SAKU 最終日にライヴを見て、ものすごく感動しましたね。CHAQLA.らしいトリで、「KHIMAIRA」に光が差す、そんな瞬間を見られたなって。俺はそんなふうに思ってます。
山内 これはNICOLASやCHAQLA.に限った話ではなく、たかだか一つのイベントに、バンドそれぞれが多くのものを持ち寄ってくれた5日間でした。特に最終日、NICOLASが『遮断』を演奏している最中にCHAQLA.のアニィと鷹乃助が乱入して、合計7人でプレイする瞬間があったんです。その7人がそろった瞬間、俺は「KHIMAIRA」ってものを見せてもらえた気がしました。このイベントで、先輩後輩やバンドの垣根を越えて、目の前にある熱や未来を作っていかないとなって。これからもっともっと他のバンドも加えて、交わる場所を作らなきゃと思いましたね。
────今回の5DAYSを通してまた一つ形を帯びていった「KHIMAIRA」ですが、元々どんな経緯で誕生したイベントなんでしょうか?
山内 俺がVISUNAVI Japanに参加して少し経った頃、ライヴイベントのオーガナイザーを任されることになったんです。で、一からアーティストをブッキングしていかなきゃって時に、自分の中でテーマが何もなかったんですよね。だけど俺自身、長年ヴィジュアル系に通っていた側のライヴキッズとして、テーマがないイベントにお客さんを呼んで、お金を取ってはいけないと悩んでいました。そんな中、当時結成1年に満たないCHAQLA.にMAMA.、色々な十字架、そして今はもう解散してしまったnuriéと孔雀座という若手5バンドを呼んで「Visual Rock is not "DEAD"」というイベントを開催したんです。正直、集客が見込めない不安もあったけど、蓋を開けたらたくさんのお客さんが集まってくれた。そこで、お客さんはヴィジュアル系というシーンに、過去の良さだけでなく、未来ってものを求めているんじゃないかと確信したんです。シーンにもう一度ビッグバンを起こしていく思いも込めて、タイトルを「KHIMAIRA」と一新し、2024年にスタートを切りました。
────なぜ、複数の個体を持つ怪物“キマイラ”をタイトルに?
山内 「KHIMAIRA」というタイトルには、色々な意味があるんですよね。異なる魅力を持ったバンドが集まって、一つの怪物になるというテーマ以外に、裏テーマもあって。これは自分の話で恐縮なんですが、キマイラって俺自身でもあるんです。もともと子役から俳優をやっていて、売れていた時期から一変して10年くらい食えない時期があって。そこで模索して、ラジオパーソナリティーやMCをやったり、ライター業をやったり。そのいずれでも自分がNO.1だと思ったことはない。そういう人って世の中にいっぱいいるんじゃないかな。だけど、いろんな要素をかき集めて、自分だけのオリジナルな存在になれたらいい。そんな思いを出演するバンドに託すイベントにしたいと思って、タイトルを決めました。
────「KHIMAIRA」は、オーガナイザーの強い意思が込められたイベントですが、NICOLASとCHAQLA.は記念すべきvol.1からの常連です。初めて山内さんから声がかかった時のことは覚えていますか?
ANNIE A 覚えてますね。だけど、その時は正直「KHIMAIRA」ってものがあまりよくわかっていなかったし、ここまで大きくなるとも思っていなくて。でも、山内さんがこんなふうに熱い思いを話してくれたから、まだ駆け出しのバンドだった俺たちは、その未来に懸けてみた。「ヴィジュアル系、マジでまだ終わってねぇよな」って。
────ANNIE Aさんはライヴ中のMCや煽りでもしきりに山内さんの名前を呼んでいて、オーガナイザーの話がこんなに出てくるイベントはなかなかないと思います。
ANNIE A あんまり良くないのかなと思いながらも、俺思ったことを言っちゃうタイプなんで、山内さんの名前ばかり出しちゃう(笑)。「誰が、どういう気持ちで組んでいるイベントか?」ってことが、自分自身にとっては大事な基準なんです。だって、俺もイベントを盛り上げたいし、商業的に組まれたイベントより、主催者側の熱い気持ちを受けて歌ったほうが、気持ちが乗るんです。初めて「KHIMAIRA」に出た時、本当に良いイベントだったなと思ったから、誘われたら毎回出るようにしていますね。

山内 ライヴが終わった後、イベントに出てくれたアニィとXANVALAのVo. 巽さんの3人で飲んだんですよ。そしたら、夜中にアニィから「俺たちでヴィジュアル系の新しい時代を作ろうぜ」ってLINEがきたんです。なんて熱いヤツなんだと思ったら、実は酒が気持ち良すぎて、巽さんに送るLINEと間違えて俺に送っただけらしくて。なので、俺はヴィジュアル系の未来はXANVALAと作っていきたいと思ってます!
ANNIE A おい、この野郎!(笑)
────2人の信頼関係がものすごく伝わってきます(笑)。SAKUさんも、初めて「KHIMAIRA」出演のオファーがきた時のことを覚えていますか?
SAKU 2年前だっけ? あの時はオフィシャルでのやり取りだったと思うんですけど、個人的には山内さんのSNSでの発信を見ていて、ヴィジュアル系の業界の中で、バンドマンでも、その関係者でもない、言い方が正しいかはわからないけれど“外”から今このタイミングで入ってきた人が、一生懸命に言葉を紡いで拡散しようとしていたことへの印象が強いですね。そういう人の考えのもと作られるイベントで、NICOLASが歯車になれればいいなっていう感覚でした。
────山内さんがシーンを動かそうと尽力する姿を見て、「KHIMAIRA」への出演を決めた、と。
山内 いやー、本当は大してそう思ってなかったでしょう? 当時の俺には多分NICOLASに「出てください」と言っても説得する力がなかったから。NICOLASは本当に硬派なバンドで、正直ギャラがいくらとか、規模がどうとかで出てくれるようなバンドではないんです。俺自身、当時はSpotifyで一番再生しているくらいNICOLASがカッコよくて大好きで、「KHIMAIRA」の中でも“輸血子さんプロデュースデー”という形で力を借りて出演していただいたので、決まった時は「ラッキー!」という感じでした。
SAKU まあ、当時「大してそう思ってなかったでしょ?」というのはあながち間違いじゃなくて。
山内 ほらね(笑)。
SAKU 実際にどうかは、空気感だったり、話している時の間だったり、その人の人となりを見て判断したいから。

山内 NICOLASにオファーをする時はいつも緊張しますね。NICOLASが出る対バンは良いライヴだし、逆に彼らが断るのは良くないライヴなんじゃないかという勝手な指標を持っているんで。だから、ここで断られたら「KHIMAIRA」はダメだったってことなんだ、と。2回目、3回目と回を追うごとに試されている気持ちになりますね。
SAKU 確かに、出るか出ないかってところに関して言えば、自分たちの感覚を重視して選んでいますね。どれが良いとか、悪いとかって話ではないんですけど。「自分たちがそこで何をしたいのか、何をしなきゃいけないのか」を考えて、その日のイベントを大切なものにしたいというか。山内さんとも、色々な話をしていく中で「なるほど」と納得する部分があって、今の関係性ができあがっていった感じです。
山内 嬉しいですね。でも、SAKUさん、俺がディズニーランド行こうって誘っても断るじゃないですか!
SAKU いや、それはダルいでしょう。バンド絡みのヤツと行ったところで楽しくない(笑)。
────こちらのお2人も仲が良いということで(笑)。ちなみに、「KHIMAIRA」は神話の怪物のように、普通じゃあり得ない多種多様なバンドのかけ合わせで構成されているイベントだと思います。そんな中で、NICOLASとCHAQLA.の役割をどんなふうに捉えていますか?
ANNIE A これは最近の悩みでもあったんですけど、俺自身がCHAQLA.というバンドをちゃんと理解していなかったんです。正直、俺らはミクスチャー・ロックをやったり、ヴィジュアル系の中では優等生じゃない。だから、そんな俺たちは「KHIMAIRA」のトップバッターやトリを務めるに相応しいのかと葛藤していましたね。自分たちは新しいことをやっている自負があるのに、ステージの上に立つとそれを見失いそうになるんです。だから、観客が何を求めているのか考えてしまう時期がすごくしんどかった。
────今回の「KHIMAIRA」で、CHAQLA.の存在意義は見つかりましたか?
ANNIE A EDGE 5DAYS最終日のアンコールで新曲を披露した時、お客さんたちがすごく楽しそうにしてくれて、バンドが正当化された気持ちになりました。あと、初日に喫煙所でひよってる俺に、SAKUさんが「好きなこと派手にやってるお前が一番かっけぇ」ってケツを蹴ってくれたことにも救われましたね。今回のステージで、改めてCHAQLA.が存在する意味に気づかされました。

────バンドにとっても大切なライヴになったんですね。一方のNICOLASは前身バンドから数えるとキャリアも長いですが、どんな役割を見据えていましたか?
SAKU 俺らは対バンする時、先輩後輩含め、全方位に自分たちの音楽や、やり方を徹底的に叩きつけるんです。どのバンドとも全力で対話して、最初からトリまで流れをつなげていく役目というか。多分俺らが勝手にやってしまったら、イベントの中間にいるブリッジがいなくなる。だから、そんなポジションを意識しましたね。

────先ほど、イベントにおいても「自分たちがそこで何をしなきゃいけないのか」を考えるとお話しされていましたが、「KHIMAIRA」ではどんなテーマを持っていましたか?
SAKU 神話に出てくるキマイラは、個体と個体が合体した怪物で、それらは溶け合っているわけじゃないですよね? 色んな側面があるというか。そこにはCHAQLA.みたいなストレートな表現以外にトライしているバンドもいて、「KHIMAIRA」でもその異様さが表現できたらと思っていました。で、そのためには個体同士をつなぐボディの部分も必要なわけで、俺らがブリッジになるというのはそういう意味です。
山内 その個体と個体をつなぐ接着面こそ、彼らのハートの熱さなんじゃないかと思いますね。音楽や、ヴィジュアル系に懸ける思いがないと、一つのキマイラはできあがらないし、ポロっと崩れちゃいますからね。「KHIMAIRA」を始めてからの2年弱でそんなことを感じています。


