【D'ESPAIRSRAY】ライヴレポート<D'ESPAIRSRAY FC LIVE[un]Beautiful>2026年9月9日(水)恵比寿リキッドルーム

9という数字は実に神秘的だ。たとえば、キリスト教圏では三位一体の神を意味する3の二乗=9は奇蹟を意味するという。そして、ダンテの『神曲』では天国も地獄も9つの界層に分けられている。もっと遡れば、古代エジプト神話で根幹をなす神々の集団は9柱。また、魔女の使い魔と認識されていた猫は9つの魂を持つという伝承もある。かと思えば、ギリシャ・ローマ神話を原典とした叙事詩『変身物語』には、魔術をかけるならば呪文を9回唱えよとの記載がみられる。
一方、アジア圏でも中国での9は「久」と同発音であるため永遠を意味し、インドでは9が1桁の最大数字として究極を極めた神聖なものとされ、日本でも古くから最大奇数が重なる旧暦9月9日が重陽の節句として祝われていた。さらには、数学的見地からみると0をのぞく整数は9を掛けた解を1桁になるまで足すと、必ず9に収束する法則性を持つ。
1999年9月9日。この日に始動したD'ESPAIRSRAYが、奇しくも9の倍数たる27周年の節目を迎えた2026年9月9日に恵比寿 LIQUIDROOMにて開催したのは[FC限定LIVE[un]Beautiful]と題されたワンマンだ。紆余曲折を経て奇蹟の復活を遂げた彼らが、マニアの別称を持つコアファンに向けて感謝の意を表する一夜がそこに在った。
事前にSNSでKaryuが予告していたとおり、この記念すべきライヴの冒頭を飾ったのは荘厳な響きにアレンジされた日本国歌「君が代」で、これは今年7月にパリで開催された[B7KLAN J-ROCK FEST]でも使われたレアなSEと同じものだった。筆者はその現場にも接しているが、日本発のVisual-Keiバンドとして欧州のオーディエンスに対しアイデンティティを明示したあの特別な場面を、日本のマニアたちにもぜひ追体験してほしいという彼らからの心遣いがこのくだりには強く滲んでいたように思う。
かくして、SEの最中から大歓声が湧きあがっていた場内へまず放たれることになったのは、TSUKASAがフロアタムを効果的に使った躍動するリズムで楽曲を牽引してみせた「Garnet」だ。ZEROが発する地を這うように低くうねるベースフレーズや、Karyuのノイジーかつエッジーなギターワークが折り重なっていくと、結果として相当な音圧になるせいなのだろうか。気付くと、身体全体どころか自分の歯までがズズズズ…と微かではあるが異様な共振音を発していることに気付き思わず驚愕してしまった。昨今ヘヴィなサウンドをうたうバンドは数あれど、なかなかここまでのハイレベルな音を出してくれる存在は日本にそうそういないはず。いやはや、これは素晴らしく痛快ではないか。
当然それだけの高い音圧を誇るバンドサウンドを背負って歌うということは、言うなればHIZUMIがバケモノ級のヴォーカリゼイション能力を有していることの証左でもある。振り返れば、D'ESPAIRSRAYはHIZUMIの声帯故障という不幸なアクシデントを受けて1度は2011年6月15日付で解散してしまったバンドだが…そこからの長く険しい道程を経て、再びこうして結成日を祝うライヴで彼の歌に宿る偉大な力が発揮されることになったという事実はあまりに尊い。ある意味それは、冒頭で触れた“9にまつわる数々の奇蹟”をHIZUMIが体現しているかのようにも見えたほど。
それにくわえ、「Garnet」の歌詞には〈ここは無秩序な傷だらけの garden〉という1節があるのだが、マニアたちがフロアでこのとき繰り広げていた光景はどこかそれと通ずるもので、それぞれにD'ESPAIRSRAYの生み出す音に身を委ねながら誰もが自由に楽しんでいる様子は、俗世から隔絶されたひとつの楽園として映った。

以降、このライヴはFC会員限定ならではのガチにマニアックなセトリで進行していったところが特徴的で、なんと本編中盤には以下のような一幕も挟まれることに。
「…いらっしゃいませ。本日はFC限定LIVE[un]Beautiful・恵比寿 LIQUIDROOMへようこそ。ここまでのメニューはいかがでしたでしょうか。さて。この雰囲気で勘のいい皆さまはおわかりだと思いますが、次のメニューは皆さまからいただいたリクエストからのナンバーになります。次はいつお届けできるかわからない貴重なものとなりますが、現代のライヴマナーにあわせ「過度に押さない」「蹴らない」「殴らない」。以上3点をお守りいただきつつ、どうぞ心ゆくまでお楽しみください」(ZERO)
そう。思えば古のD'ESPAIRSRAYとはゴシックホラーな雰囲気を濃厚に漂わせるバンドであり、インディーズ時代のライヴではたびたびZEROが闇世界に棲む者としてマニアたちを誘ってきた歴史がある。これはその当時を彷彿とさせた場面で、演奏されたのはほかでもない初期人気曲「murder freaks」。あの頃を知っている方々にとっては「待ってました!」と狂喜乱舞が必至となる状況であったのはもちろん、あの頃を知らない方々にとっても「令和の今にこれを体験できるのか!」という胸アツな展開であったと言えよう。
「今日は昔の曲を中心にセットリストを組んでみたんですけど、やっぱ時間もけっこう経ってさ。当時歌ってた気持ちともちょっと違ってたりするから、今になって歌うと新しい発見があったりします。「今の自分はこう感じるな」と思いながら歌ったりもしてるんですけど、それはそれでいいと思うんだ。音楽って自分と一緒に変わっていくものだと思うから。そんな風に、今ここにいる人たちに何かいい影響を与えられるような1曲になればいいなと思ってます。「Closer to ideal」」(HIZUMI)
2007年に発売されたアルバム『MIRROR』に収録されていたこの曲には、歌詞に〈燃え上がる傷負う魂〉〈失うものはないさ〉といった言葉がちりばめられている。約20年の歳月を経て、それらの言葉はきっとHIZUMIだけでなく受け手側にとっても今さまざまな意味を持つものになっていることは想像に難くない。生きていればさまざまなことがあり、傷も負えばなにかを失いもするのが人生ゆえ。理想を追い求め続けることの大切さ、あるいは残酷さ。それらを知ったうえで聴く「Closer to ideal」に、ことさらの感慨を抱いた人も少なくなかったかもしれない。
もっとも、そうしたセンチメンタルな気分にひたっていられたのは束の間のことで、本編をしめくくった突破力満載な「Forbidden」、〈未だ見えぬ領域を超え〉という詞が印象的に響いた「MIЯROR」の2曲では昨年11月にD'ESPAIRSRAYがステージ復帰して以来、おそらく過去最高なのでは?と思えるほどのブチあがりぶりをマニアたちがみせ、それこそライヴにおけるあらたな領域へと到達した手応えを感じた次第だ。
しかし、まだこの夜は終わるわけもない。興奮冷めやらぬマニアたちが発する、熱烈なD'ESPAIRSRAYコールに応えてのアンコールではヘドバンと逆ダイにシンガロングが大発生した「「タトエバ」キミ...ガ...シンダ...ラ 」や、ここぞのアグレッシヴチューン「浮遊した理想」に次いで始まったのは、いきなりの長尺のトークタイム。かつて2004年に行われた[マニアONLYギグ 地下室でマニア達 密会]をオマージュしたとおぼしきタイトルが冠された、この“地下室密会”という名のひとときはTSUKASAが司会進行をつとめ、先ほどまでの獰猛な表情とは打って変わった各メンバーのくだけた表情をたっぷりと堪能することが叶う場となっていた。ただ、なんといっても密会であるだけにその全内容をつまびらかにすることは避けたいので、30分近くにわたったトークの最後に4人から語られた言葉たちのみここにピックアップしておこう。
「本日は9月9日ということで、みなさん平日にもかかわらずお忙しい中をお集まりいただきありがとうございました。ファンクラブのみなさんとは、より一層濃い関係でいたいなと思っておりますので。これからもお互いに愛情を確かめあいながら過ごしていきましょう!」(TSUKASA)

「D'ESPAIRSRAYは、4人誰も欠けたことがありません。誰かが脱退とかでもなく、全員で解散を選んだバンドで、全員で復活を選んだバンドです。たぶん17年とか18年ぶりになるんだと思いますが、この9月9日という日にみんなと会えたことをとても嬉しく思ってます。また来年も、今よりさらに大きな野望を持ったバンドとして9月9日にみんなと会いたいです」(ZERO)

「やっぱりね。いろいろが重なってこうやって集まれてたりすると思うんですけど、僕としても夢途中で諦めたことがあるので。ここからまた、夢の続きを見ていこうと思ってます。よろしくお願いします」(Karyu)

「9月9日に集まっていただいて本当にありがとうございました。…みんな、動物好きですか?犬派の人!猫派の人!ライオン好きなやつ!暴れてくれるか!!」(HIZUMI)

てっきり感動系の話でシメるのかと思いきや(笑)、ここでHIZUMIが叫んだのは「アニマルマニア」に向けてのあおり文句。2002年の結成記念日前日である9月8日にリリースされたレア音源『檻の中の夢』に収録されていた曲にして、サブスク非公開となるマニア垂涎のタイトルどおりにプリミティヴなバイブスが封じ込められた逸品だ。それでいて、アンコールのラストを飾ったのはD'ESPAIRSRAYとしては珍しい、メジャーコードで紡がれたポジティヴな「夜空」で、ここでは〈幾億の歴史にハジけた一瞬(ひととき)の奇跡〉〈また偶然が重なり合い、巡り遭いたい〉という歌詞がきらめいたのである。
来たる12月30日にはKT Zepp YOKOHAMAでの次なるワンマン[LIVE 2026「CLIMAX」]が控えているほか、来年に入ると[WORLD TOUR 2027 “REVENANT” ]も控えている中での[FC限定LIVE[un]Beautiful]とはつまり。傷だらけになりながらも這い上がり、美しさと歪みに彩られた轟音を響かせ続けているD'ESPAIRSRAYと、そんな彼らを愛するマニアたちにとっての神聖なる祝祭だったのではなかろうか。9月9日という奇蹟よ永遠なれ。
Text by Yuki Sugie
Photo by Ayami Kawashima
SET LIST
D'ESPAIRSRAY FC LIVE
[un]Beautiful
2026年9月9日リキッドルーム
1. Garnet
2. BORN
3. Subliminal
4. TRICKSTeR
5. アベルとカイン
6. in Vain
7. Angeldust
8. SCREEN
9. Marry of the blood
10. PIG
11. murder freaks
12. Closer to ideal
13. Forbidden
14. MIRROR
ENCORE
E1. 「タトエバ」キミ…ガ…シンダ…ラ
E2. 浮遊した理想
地下室密会コーナー
E3. アニマルマニア
E4. 夜空
LIVE
D’ESPAIRSRAY LIVE 2026「CLIMAX」
2026年12月30日KT ZEPP YOKOHAMA
17:00 / 18:00
■ 1F VVIP SOLD OUT!!
■ 1F VIP SOLD OUT!!
■ 一般チケット SOLD OUT!!
■ ビギナー SOLD OUT!!
■ 2F VVIP(着席指定):¥33,000
■ 2F VIP(着席指定):¥25,300
■ 2F指定席:¥13,200
D’ESPAIRSRAY LIVE 2026 RAPTURE in Hong Kong
2026年11月21日 Portal
■ S TICKET:SOLD OUT!!
■ A TICKET:HKD 880
■ B TICKET:HKD 680/当日 780
■ 学生割引チケット:HKD 580/当日 680
FM NACK5 38th Anniversary & BEAT SHUFFLE 28th Anniversary Live
~ビッフル・ア・ゴーゴー!2026~
2026年10月24日(土) 大宮ソニックシティ 大ホール
15:00 / 16:00
グッズ付きS席 12,800円(税込)
2階前方着席指定席 11,000円(税込)
A席 8,800円(税込)
出演:DEZERT / D’ESPAIRSRAY / LM.C / MUCC
DJ:浅井博章(NACK5「BEAT SHUFFLE」)
D’ESPAIRSRAY WORLD TOUR 2027 “REVENANT”
February 4, 2027 (Thu) Santiago, Chile – Coliseo
February 7, 2027 (Sun) Mexico City, Mexico – La Maraka
March 8, 2027 (Mon) HELSINKI – SOLD OUT!!
March 10, 2027 (Wed) WARSAW – PROXIMA
March 11, 2027 (Thu) BERLIN – SOLD OUT!!
March 13, 2027 (Sat) COLOGNE – SOLD OUT!!
March 15, 2027 (Mon) PARIS – Backstage by the Mill SOLD OUT!!
2026年5月4日、Zepp DiverCity(TOKYO)
D’ESPAIRSRAY LIVE 2026「RAPTURE」のLIVE DVD発売決定!
詳細後日!!
関連リンク
D’ESPAIRSRAY OFFICIAL SITE
https://despairsray.com



