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【KAKUMAY・ゆいと。(B)】◆独占インタビュー◆──薬指切断。衝撃の事実と当時の葛藤をゆいと。が振り返った。KAKUMAY4月3日恵比寿リキッドルームワンマン「No.1」に向けて反骨の逆襲開始。「心の準備はもう出来てました。」
うだるような暑い夏の夜だった。
左手薬指第一関節の切断。ヴィジュアル系ロックバンドKAKUMAYのベーシストゆいと。からの衝撃の報告だった。2023年9月14日のO-WESTワンマン開催まで3週間を切ったタイミングだ。
ゆいと。は?KAKUMAYはどうなるのか?
情報が錯綜する中、当の本人は驚くべき場所にいた。
あれから7か月余り、最大の試練に打ち勝ったKAKUMAYは自身最大キャパシティの恵比寿リキッドルームワンマンへと歩を進める。
ONEMAN TOUR GRAND FINAL「No. 1」
挑戦をモットーとするバンドの現状と、あの夜の出来事をゆいと。本人に振り返ってもらった。
バンドできなくなるじゃんって。入院してても悪化していく一方だった。
────ゆいと。さん的には昨年大きなアクシデントがあったじゃないですか。あの時の心境って…思い出したくないことかと思うのですが…というか、覚えてますか?
ゆいと。:心境というより、目まぐるしいスピード感で色々なことが起きて飲み込まれてしまいました。時系列で言うと6月にインストアイベントをした時に“なんか体調悪いなぁ”と思って熱を測ったら39℃あったんですね。病院にも行けないぐらいの辛さで、何とか家には帰ったんですけど、寝てたら夜には42℃まで上がっちゃって。さすがに翌日病院行って…その時はまだ手は大丈夫だったんですけど、点滴とか打って次の日になったら手がもうすごい腫れてて、“大きい病院に移動しなきゃいけないよ。”ってお医者さんに告げられて、でも、その時はまだどれぐらい大事かは解ってなかったです。それで不安もありながら大きい病院に移動して、さらにその次の日には“もしかしたら指を切らなきゃいけないなるかも知れないよ”って。
────そんな早い段階で…。
ゆいと。:そうですね。もう黒くなっちゃってて、指先が。切断の可能性を言われた時はめちゃくちゃ落ち込んだんですよね。“バンドできなくなるじゃん”って。それで、10日間ぐらい入院して。でも入院しててもやっぱり悪化していく一方で、……そのまま8月にはそうなってしまった。でも、もう本当に切るってなるまでお客さんには出さないようにしたんで。
────当時、僕とかにも包帯で包まれた指は見せながらも“なんか最近調子悪いんすよ~”って笑って説明していたのを覚えているからこそ、そんな事実があったことに驚きと悲しみと申し訳なさがあります。ゆいと。さんごめんねっていう。
ゆいと。:もうメンバーぐらいしか知らなかった感じだったんですよ。メイクさんとか付き合いのあるスタッフさんにも隠してました。
────当時メンバーさんにはどのように伝えましたか?
ゆいと。:あー、どう伝えたかな?なんか普通にグループLINEで伝えたと思います。でもメンバーも“もしかしたら切るかもって言ってても、まあ切らないだろう”って思ってたはずです。“なんやかんや、まあ大丈夫なんだろうな。”ぐらいに。僕自身もそうだったんで。
本当に切るってなった時にはもう覚悟が出来ている状態でした。考えるだけの時間があったので…心の準備はもう出来てました。
▲ゆいと。(KAKUMAY)
────その時には、これからどんなことがあってもバンドを続けて行くんだっていう明確な意志があったということですよね。と言うのも、ゆいと。さんは切断手術を行ったその日もKAKUMAYのフライヤー配りを行ってたわけじゃないですか。僕が再会したのは手術翌日でしたけど、その時もいつものニコニコした笑顔で“よろしくお願いしまーす!”って新宿でフライヤー配ってて。正直ムカついたというか。何やってんだよ、休めよコラってもう想いが溢れて言葉にならなかった記憶があります。
ゆいと。:BLAZEの前で会いましたね。その後アルタ前で手売りもあった日だ。
────こんな時ぐらい休めよ!って思いながらも、どこかでゆいと。さんの姿を探している自分もいて。意味もなく差し入れの缶チューハイいっぱい持って。
ゆいと。:うん。フライヤー配りとかもうルーティーンになっていたので、そういう予定だから予定通りやるっていう。ただ、包帯ぐるぐるで指を切った後だったんで出血も止まらないし、その後メンバーに“ツイートで報告しようと思ってる”って相談しました。指を切ってるのを一生隠すなんて無理だと思ったんで、もう言うしかないなって。それでツイートするとき一人だと心細くて仲の良い人に隣にいてもらって。
────元自主盤倶楽部の高橋さんですね。
ゆいと。:はい。号泣しながらツイートしました。
────送信を押すか押さないかっていう葛藤がありますよね。その後どうしてもかなりの反響があったと思うんですけど、ファンの方の反応っていかがでした?
ゆいと。:うん…すっごい温かかったです。すごい。うん。それでバンドやるの?って声もあるんじゃないかって怖かったんですけど、全然そんなことなかった。温かい言葉の数々が励みになりました。ツイート自体も色んな人に見てもらえたこともあるし、多分KAKUMAYを知らない人が、”それでもやるのすごいな”みたいに反応しているのが結構あったんで、だいぶ勇気づけられました。
────いや、勇気づけた側だと思いますよ。
ゆいと。:周りも温かくて、両親も指を切るっていうことは落ち込んでましたけど、バンドを続けることを応援してくれてます。
────さっき言ったフライヤー配りの話もなんですけど、別に休んで良かったじゃないですか。あの時は何がゆいと。さんを駆り立てたんだろうなって。やっぱりバンドっていう活動から離れたくなかった?
ゆいと。:覚悟が出来てたからこそ、特に覚悟もなくスケジュール通り活動するっていう…本当にそれだけです。あの状況でもバンドに関わる行動を当たり前に出来る自分で良かったです。