【DuelJewel・隼人(Vo)、Natsuki(B)、ばる(Dr)】New Album『Eclipse』リリースインタビュー第2弾◆DuelJewelのフロントマン&リズム隊が新作を全曲超濃厚解説!

メンバー全員が作曲し、それぞれの個性を散りばめた自信作でもある最新アルバム『Eclipse』がついにリリースされた。
「やっぱりライヴバンドだなと自分たちでも思う」というばる(Dr)の言葉からも伺える通り、ライヴ会場で生の音に心を躍らせたいと思わせる楽曲がずらりと並んだこの作品について、隼人(Vo)、Natsuki(Ba)、ばるの3人に深く話を聞いた。
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────DuelJewelは2019年に活動を再開して以降、精力的なライヴ活動のみならず、コンスタントに作品を発表してきていますよね。再始動したバンドが、ここまで積極的にリリースを続けているケースはさほど多くないと思うんです。
ばる:それは僕らも思います。何ならここ4年の間は、毎年、フル・アルバムを出してますからね。去年は(リレコーディング作品の)『Revive』と新曲だけの『Aria』の2枚を出してますし。
────そこは特に意識することもなく、あくまでもDuelJewelはDuelJewelなのだという臨み方なのだとは思うのですが……。
ばる:でも、一番大きいのは、一度解散する理由になった隼人の喉の調子が悪かったことですよね。その頃の数年間は、隼人の本領がまったく発揮できてない時期が続いていましたし。今の隼人の喉は不調になる以前よりもいい状態なんですよ。言い換えれば、今が一番いい作品を作れる状況だし、むしろ、これで何のリリースもしないのはやっぱりもったいないと思うんですよ。実際に隼人の音域や歌い方なども驚くほど広がっているので、もっとできることはたくさんあるんですね。さらに言えば、解散していた3年間、メンバーが各々の活動を経たことも大きいですよね。たとえば、元々、ちょこちょこ僕も曲を書いたりしてましたけど、今ではメンバー全員が作曲できるようになってますし。そういうこともあって、毎年出せているのはあるかもしれない。

────隼人くんの喉の状態に何の制限もなく、とにかく自分たちがやりたいことができる状況は確かなモチベーションにはなりますよね。
ばる:それが一番大きいかもしれません。
Natsuki:毎回、曲を書こうとするときは「辛いかも」って思うんですけど(笑)、できたらできたで、カッコいいのを出せたなと更新していけているので、楽しいですし、ばるくんが言った隼人の表現の幅の凄さは、実際にレコーディングのたびに感じるんですよ。たとえば、歌録りのときに、ふと、「ここをこういうふうにしてみたら面白いんじゃないかな」って提案してみても、パッとできたりするんです。凄いなって、毎回、思いますよ。
隼人:ばるちゃんが言ってくれたみたいに、なかなか難しい中で作品を作ってた時代が長かったんですよね。当時のものもそのときのベストではあるんですけど、今はそういう不自由さがない中で、表現できる喜びを……長年、歌わせてもらってますけど、今が一番それを感じる時期なんですよね。復活してからもしばらくは、完治しているという感覚はあれど、いつ再発するかという誰にもわからない不安もあったんです。だから、どうすればきちんと安定感を出せるのか、まずは地固めだなと、わりと自分の中では、なるべく正しい音、そのときのベストのバランスを出せれば、ひとまずはいいだろうというところから、復活してアルバムとかを作り始めたんですね。そういう中で少しずつ余裕も出てきて、今は楽曲が持ってる世界観だったり、求めている音など、より表現に重きを置いた作業に変わってきた感覚があるんです。そういう意味ではポジティヴに作品作りができていますし、毎年、レコーディングができるのは、すごく嬉しいですね。
────発声方法が以前とは違うという自覚はあるんですか?
隼人:そうですね。以前は発声というものを結構感覚的に捉えていて、それなりにトレーニングみたいなこともずっとやってはいたんですけども、それが一体何のためのものなのかとか、そもそも人間の声は、どういう器官がどのように働いて出ているのかという仕組みもまったく知らない中でやってたんです。今はもっと物理的にというか、科学的に分析しながらやるというか。できないこともあるんですけど、なぜできないのかがわからないと、できるようにならないんですよね。復活してからは、そういうものを一つずつクリアしていくことも続けてきましたし、だんだんそれが形になってきたかなとは思います。
────活動を休止している間も、そういった鍛錬や研究を続けていましたもんね。
隼人:そうですね。一旦、バンドをやめてしまってから1年ぐらいは、まったくそういうつもりもなくて、全然違うことをやってたんですけど、あるとき、パッと声が戻ってきたんですよね。あれだけいろんなことを試して何もよくならなかったのに。そこで、この1年、何をやっていたのかを振り返ってみたときに、たまたまやっていたことが声帯にいい運動になっていたことがわかったんです。そこで初めて、発声や歌というものだけではなく、音声的なものに興味が湧いたんですね。だから、実際に自分の声帯に何が起きたのかを解明するところから始めたんです。どういったメカニズムで快方に向かったのか、専門家の方にもご協力をいただきながら、ずっと向き合ってきて。

────実際にそういった発声障害に対する取り組みを、後進のためにも著書(『自分でも気づかなかった美しい声になる歌がうまくなる奇跡の3ステップmethod』光文社刊)にまとめていますよね。元々、音楽的にも様々なことをやってきたバンドではありますが、復活以降のアルバムを聴いてみると、さらに際限なく取り組んでいるようにも思えるんですよ。狙ってそうしているわけでもないのだと思うのですが。
ばる:あえて狙ってはないですね。ただ、作曲者が多くなった分、それぞれの個性が色濃く出ているというのが一番の理由なんじゃないかな。アルバムに関して言えば、全体のバランスを見て、「こういう曲が足りないね」みたいなところで、激しい曲を新たに持っていこうとか、ちょっとバラードを加えようかといった話になることもありますけど……たとえば、コロナ明けぐらいの2022年に出した『Trigger』に隼人が作曲した「STAR OCEAN」という曲が入ってるんですけど、ともすれば、これをDuelJewelのアルバムに入れていいのかと思うほどすごくポップだったんですよ。でも、僕らがアレンジすれば、DuelJewelになるでしょうと思ってやってみたら、やっぱりDuelJewelらしい曲になったんですね。結局、うちらに音楽的なNGってほとんどないのかもしれないところを、そこで再確認した感じはあったんです。だから、コロナで何もできなかった直後の『Trigger』で、可能性を自分たちで広げることができたんですよね。そこからは「あんまりこの曲は……」みたいなことはなくなったし。
────まさに引き金を引くことになったわけですね。
ばる:そうかもしれないです(笑)。ある意味、本当に自由にやってますね。それから誰かが介入することもなく、自分たちの判断で好きな音源を出せているというのもあるかもしれません。もしプロデューサーとか、事務所とか、第三者が絡んできたら、「これはちょっと違うよね」といった意見が出てくるかもしれない。でも、自分たちですべてやっている以上、僕らがOKすれば、OKですからね。
────では、OKになるかどうかの基準は何なのでしょう?
ばる:やっぱりボツ曲というのもあるんですよ。それは曲の方向性とかジャンルではなくて、シンプルに曲としてパンチがないと感じたり、メロディが印象に残らないとか、単調すぎてつまらないとか、そういった理由なんですけど、光るポイントが何かしらあれば通るところはありますね。
────ここまでやったら駄目だろうな、通らないだろうなみたいなものは、各々の中に不文律として何かあるんでしょうね。
ばる:あると思います。自分でも作っていて思いますもんね、これは通らないだろうなとかっていうのが。だけど、何もしてないと思われたくないから、一応持っていこうみたいなときもあって(笑)。もしかしたらメンバーから他のアイディアが提案されるかもしれないですしね。実際にそうやって生まれた曲もありますし。わりとそういうところで柔軟なのかなと思います。
────その柔軟さは以前からあったのだとは思いますが、今回の『Eclipse』を耳にして、DuelJewelの真ん中とはどこなのかと思わされるぐらい、いろいろなタイプの曲が入っている印象なんですよね。
ばる:確かに真ん中ってどこなんですかね。逆にそう言われると難しいですね。
────ファンの人にしても、メンバー自身にしても、DuelJewelらしさのイメージはそれぞれあると思いますが、そのヴァリエーションはパーソナリティの一つですよね。アルバム自体はどんな作品にしようと考えていたんですか?
ばる:みんなの楽曲を集めるときに、特にコンセプトは決めずに作っていってたんですけど、自ずとライヴを意識した楽曲が中心になってきたんですよね。昨年も年間で70数本のライヴをやっていて、今年も同じぐらいのペースだし、やっぱライヴバンドだなと自分たちでも思うんですよ。ただ、ワンマンでも20曲ぐらいしか演奏できないので、曲が増えれば増えるほど、やれなくなる曲も出てくるものですよね。その中でもちゃんと生き残っていく曲を意識して、みんな作ってきてるんじゃないかな。
Natsuki:確かにライヴに向けてというのは考えてたんですけど、最初はちょっと悩みはしましたね。過去に自分が書いたジャンルというか、このときはちょっとデジタルっぽいのをやったよねとか、ちょっとキメキメのリズムのやつをやったよねとか、いろいろ考えてて、どんなものがいいんだろうと。そんなときに新しいプラグインを手に入れたんですよ。ずっと欲しかったものなんですけど、そこに入っていた音がやりたいことの一つだったんですね。そこに繋がって、そこから意識も変わって、広げていった感じですね。

────新たに入手した機材やソフトウェアに触発されることがあるとはよく言いますよね。
Natsuki:めちゃくちゃありましたね、今回は。
隼人:僕の場合、いい曲とかカッコいいなって思うものは、メンバーから勝手に出てくると思ってて。だから、自分はちょっと変な曲というか、メンバーが書いてこないだろうなっていうものを書きたい思いがあって。今回の「死と死と」とかはそうなんです。変であるとかカッコ悪いとかいうのと、いいねと思うものは、実はすごく近いところにある気がしてるんですね。微妙な味わいのある、立体感のある曲がないかなと思って作ったんですけど、最初は結構崩したところから入りたいなというのがありましたね。
────崩したところ?
隼人:そう。元々のメロディ・ラインとかもあまりキャッチーでなくてもいいし、歌詞もよくなくていい。そういうところから作ったんですよ。「死と死と」はまず歌詞があったんですよ。なので、いい加減なメロディ・ラインでいいんじゃないかなとか、そういうところからスタートしたんですね。それは初めての試みでしたけど、そういう意味では、自分の中では何となくアルバムの幅を広げるとか、みんなが出してくれたものの間を埋めるみたいな、そういう役割を担えたらいいなと思って向き合いましたね。
────その「死と死と」は歌詞が先にあったということですが、書きたいことがあったからですよね。
隼人:そうですね。僕らが音楽をやり始めたときは、よく「キレる10代」みたいなことを言われたんですよ。人を刺しちゃったり、急におかしなことを始めるとか。現代だと、たとえば、トー横キッズと呼ばれる子たちがいますけど、逆に大人になった目線で彼らを見ても、別にそんなに変わってないなと思うんですよ。いつも社会は、今の子供たちはどうだとか言うものだけど、確かにジェネレーションが違うと、お互いに恐ろしい存在に見えてくる。こういう仕事やってるからか何なのか、同じような世代の頃から30年も経ったとはあまり感じてないし、彼らを見てても、普通に話せるんじゃないかなと思えるんですよ。僕らが若い頃に感じてたことを、現代の子も同じように感じているんじゃないのかなって。今生きてる子たちの気持ちを書いたわけでもないんだけど、何となくそういうことを考えている中で生まれた曲ではあります。
────視点は現代にありますが、環境の違いはあるとはいえ、本質的なことはさほど変わっていないのではないかと。
隼人:そう思いますね。そういう中から生まれてくるファッションとかカルチャーとかもあって、きっとこれから残っていくと思いますし。それは繰り返されていくんじゃないですかね。
────ただ、歌詞に出てくる言い回しも結構衝撃的ですよね。
隼人:本当ですか(笑)。
────だって、<吐き散らかしてゲロまみれ>って、こんなことを歌っている曲は初めて聴きましたよ(笑)。
隼人:ははは(笑)。最初はなんかピー音を入れようかとかも考えたんですけど、最終的には歌詞も音声もそのままになりましたね。
────その歌詞にこういった曲調を合わせたのは、ちょっとふざけたニュアンスも感じさせようと?
隼人:そうですね。あとは今までにない言葉だったり、なるべく自分の中でやめといたほうがいいかなとか思ってたところを、どのぐらいまでやっていいのかなという実験ですかね。もしあまりよくないなと思えば、今後は抑えていけばいいですし。最初から枠を決めちゃうと、小さくまとまってしまう気もするんですよ。だから、「こんなのどうかな?」っていう一つの挑戦ですかね。
曲自体はメロ先行で考えたんですけど、最初はハードロックというよりは、メタルっぽくても面白いかなと思ってたんですね。ただ、Natsukiがアレンジしてくれることになって、その中で全然違うアイディアが生まれたんですよ。僕にはまったくそういうイメージがなかったから、「凄ぇ! そんなヴィジョンが見えるんだ!?」と思ったんですよね。祐ちゃん(祐弥)もギターのアプローチがすごく多彩で。サウンド周りは彼らが相談して組み上げていってくれた感じですね。
────イントロにクリーン・ギターの速めのストロークがあるので、ギターを持ちながら書いたのかと思いましたよ。
隼人:確かにあれはギターをやってる人からしか出てこないんじゃないかな。僕の中にはなかったんですよ。
Natsuki:あのイントロって最初からあったんじゃなかったっけ?
隼人:あったけど、もっとメタリックなアレンジだったんだよね。
ばる:当初はもっとテンポが遅かったんですよ。それが結構僕にはぬるくて、BPM=20ぐらい上げたのかな。それもライヴを意識してのものですね。それでギターが活きてくるようになったんじゃないかな。