【DuelJewel・隼人(Vo)、Natsuki(B)、ばる(Dr)】New Album『Eclipse』リリースインタビュー第2弾◆DuelJewelのフロントマン&リズム隊が新作を全曲超濃厚解説!

────「待宵月-MATSUYOINOTSUKI-」は2種類ある『ECLIPSE』の<MOON Ver.>の1曲目となっていますが、リリース直前のライヴでも演奏されていましたし、DuelJewelらしい曲の一つだろうとは思うんです。
隼人:これは実は前作の『Aria』の曲出しのときに提出したんですけど、ばるちゃんがこの曲はぜひ次回作に入れたいと言ってくれてて。そこから実際に1年経って……オープニング・トラックになるとは思ってなかったんですけど、元々は何となく自分の中にあったメロディ・ラインをベースに作ったんですね。どっちかというとアニソンっぽい路線で考えていたんだけど、和のテイストに振ってみたらどうかという、ばるちゃんからのアイディアがあって。さっきの「死と死と」はメンバーのアレンジでよりバンドっぽいものになりましたけど、「待宵月-MATSUYOINOTSUKI-」はShunちゃんとばるちゃんが相談しながら作り上げてくれて、それに合わせて歌詞も和テイストなストーリーで書かせてもらったんですね。
────ばるくんは前作ではなく、次のアルバムにと思ったのはなぜでした?
ばる:『Aria』に収録する曲のバランスを考えたうえでのことですね。リード・トラックの「A new beginning」が、壮大なストリングスが入ったアニメの主題歌みたいな曲を狙ってアレジしていったところがあって。その曲もこの曲も入ると、そういう部分がトゥーマッチに聞こえる可能性もある。それはもったいないなと思ったんですね。だから、次回のアルバムのときにどういう曲が出揃うかはわからないけど、いわゆる表題にもなり得る曲である可能性はその時点で僕は感じてたんですよ。
和のテイストは、メロディ・ラインから自然に呼ばれたものでしたね。それこそDuelJewelの代表曲は何かって言われたとき、「華唄」を挙げる方も多いと思うんですけど、和のアレンジの曲もわりとコンスタントに出していたりはするんですよね。その意味で、「待宵月-MATSUYOINOTSUKI-」は、Shunが和風アレンジをしてきた時点で、絶対にこれはありだなと思えたし、あとは録ってみてどのぐらい化けるかなと。実際にとてもよく録れたんですよね。

────Cメロのリズムのアレンジはばるくんが考えたものですか?
ばる:いや、これはShunちゃんですね。彼の面白いところですけど、ドラマーがあまり思いつかないリズムも結構ポンと入れてくるんですよ。ギリギリなところを作っているというか。もしかしたらギタリストならではのドラムの視点なのかなと。
────いや、ギタリストならではというよりも彼ゆえかもしれませんね。
ばる:そうなのかもしれないですね。逆に言うと、Natsukiが作ってくるドラム・フレーズはめちゃくちゃ理にかなってて、ドラマーっぽいなってドラムを打ち込んでくるんですよ。やっぱりメンバーによって出てくるアイディアが違うんですよね。
────こういった隠し技のような細かいアレンジは、DuelJewelのポテンシャルの高さを改めて感じるところですよ。ベースに関しても、和のテイストを意識しつつ、アプローチを考えるわけですよね。
Natsuki:まず、ちょっと伸びやかな感じがいいんじゃないかなと思ったんですけど、和音階を使わずに、和を感じさせる雰囲気のフレーズはないかなと思ったんですよね。ベースもほのかに和っぽい雰囲気がありますよみたいな付け足しで支えられたらいいなって。
────ちょっとした音の抜き差しで、どことなく和を思わせるフレージングになったりしますよね。『Eclipse』の<Sun Ver.>の1曲目は「Rotten Sun」ですが、アルバムが2形態でリリースされるケースはよくあるとはいえ、1曲目が違うというのは前例がないような気もしますよ。
ばる:これは僕が思いついたんですけど、これはありなのかなって、まず(流通会社の)ダイキサウンドに確認したんですよ。そういうのはあるんだろうか、やってる人はいるのかって。そこで「なしではないと思う」ということだったので、面白いから絶対にやりたいなと。まず、とにかくMVは2曲で撮りたいという考えがメンバーの中にあったんですね。ただ、どちらも同じ作品に入れるのは何か違う気がして。しかも、この2曲は振り切った対照的な曲なので、これは2つのヴァージョンで分けて収録したいなと。そのアイディアをメンバーもわりとすんなり「ありだね」と言ってくれたのがよかったですね。
────アルバムは曲順も含めてトータルで作品ですし、1曲目はアルバムを印象づける最も重要な位置にありますよね。それを別々のもので構成する。ある意味、潔い決断とも言えますよね。
ばる:だから2曲目以降の曲順はすごく悩んだんですよ。これがちょっとでも変わっちゃうと、本当にガラッと印象が変わるんで。両方で通用するような曲順はどのようなものなのか。1曲目が極端に違いますからね。
────確かに印象はかなり違いますよね。ただ、「Rotten Sun」はそういった役割を担わせたくなるインパクトのある曲だとばるくんは感じたんでしょうね。
ばる:これに関してはわりとメンバーの中での多数決みたいなところがあって。「待宵月-MATSUYOINOTSUKI-」ともう一つ、振り切ったMVを撮るなら何がいいかといったときに、「Rotten Sun」が挙がったんですよ。これぐらいイカれた曲がいいねと。まぁ、一番大きな意図としては、DuelJewelが何となく歌ものバンドと思われてるところがあるんですよね。でも、いざライヴに来てみたら、「こんなに激しいバンドなんだね!?」とよく言われるんですよ。だからこそ、そういう激しい部分ももっと押していったほうがいいなって。これぐらい振り切った曲でMVを作ったのは初めてかもしれない。
────実際のライヴでも、かなりアグレッシヴさが増している印象ですから、その流れにきちんと沿った曲ではあるんですね。でも、よりアグレッシヴさが押し出されてきている理由は何なんでしょうね? キャリアとともに音楽的におとなしくなるケースは少なくないですが、それとは逆の方向性ですよね。
ばる:何なんだろうね? ライヴで自分たちが燃え尽きられる瞬間というのかな。スポ根じゃないですけど(笑)、体力を残して終わるのは何か違うんじゃないかみたいな感覚が最近はあって(笑)。僕らは本当にいろんな楽曲があるので、対バンの相手が歌ものメインだったら歌もので攻めることもできるし、激しい曲ばっかりだったら激しいもので攻めることもできる。ただ、激しい曲ばかりやって、「今日はやったな!」みたいな感覚が欲しいのかもしれない。
────高校生のバンドみたいですね(笑)。
ばる:かもしれない(笑)。
Natsuki:多分、楽器をやっている人はみんな経験すると思うんですけど、大人になるにつれて「ちゃんと弾きたい」みたいな気持ちが生まれたりしますよね。僕もそこを経たんですけど、ただ正確な演奏を聴かせたいならCDを流せばいい話だし、ライヴはライヴなんですよね。今は自分の中でそういう折り合いがついているんですよ。激しい曲はメンバー全員好きですけど、そこでそっちに振り切ってる感じはあるんじゃないかな。
────これもライヴの数が多いバンドならではの感性かもしれないですね。ハードさでいうと、2曲目の「DISTINATION」は、先ほどの話の通り、曲順的にまず鍵となるものですよね。
ばる:曲そのものは、わりと重たくてロックな感じにしたいなと思って書いたんですね。ライヴも意識して、途中でお客さんと掛け合うようなゾーンがあったり、1曲目にやったらいいんじゃないかなみたいなイメージもあったりして。曲順を考えたときにも、これが2曲目としては一番しっくり耳に入ってくるんじゃないかなって。
Natsuki:最初にデモを聴いたとき、小さい頃に聴いてた、たとえば、相川七瀬さんの空気感とか、90年代の匂いがしてカッコいいなと僕は思ったんですね。
────作曲したばるくんはその辺を意識したわけでもないんでしょう?
ばる:そこはそんなに意識はしてないけど、僕の根底にあるのは、もしかしたらその辺なのかなとは思います。自分で曲を作るとき、あんまり最近の曲っぽいアレンジはできないし、自然と自分が聴いてきた時代に寄っちゃうのかもしれない。それはある意味、僕の持ち味なのかもしれないですね。
────歌詞は現代社会に対して思うところがあって書いたものでしょうね。
隼人:そうですね。世界で起きてることって、現実味がないとはいえ、確実に起きているんですよね。同じ星に住んでいると思えないような現実はある。ここにはまったくないのに、あっちでは日常的にある。ただ、気付けば、今度はこっちが大変なことになっていたりすることもある。とはいえ、入れ替わってあっちがすごくよくなったのかといえば、そうではなく、大変な地域が増えていくだけだったりもする。
すごく覚えてるんだけど、子供の頃、もうすぐ新幹線に変わる乗り物が生まれますよ、リニアモーターカーって言うんですよという話があったんですよね。ただ、30年経っても実用化されてはいないですよね。当時、『AKIRA』という映画を観て、「2020年ぐらいになったら、バイクも地面から浮いて走るぐらいになるんだな」と思ってたら、全然そんなことにはなってない。その頃に抱えていた問題もまったく解決してない。もちろん、いい部分もあるんでしょうけど、目に見えてすごくよくなってる実感はないですよね。この30年は何だったんだろう、そんな思いも正直あるんですよ。
このままいくと、あまりよくない未来もあるかもしれないし、ずっとせき止められていたパワフルな成長、人類の進化みたいなものも、もしかしたら起こるかもしれない。その30年で溜まったものがどちらに出るのか、その分岐にいるような気がしてて。僕らはミュージシャンなので、いわゆる一般的な社会生活を送ってはいないですけども、音楽というものは、社会に対する一つの警笛みたいなものになってるんじゃないのかなと、最近はすごく思うんですね。そういうものを一つの作品や曲の中で表現できたらいいんじゃないかなと、今、自分が感じてることを素直に書きました。

────3曲目の「Last train」などは、DuelJewelの極めて初期のルーツを思わせる曲ですね。
ばる:こういう曲こそ、わりと得意としてるバンドなんだろうと、僕は客観視したときに思いましたね。このシーンで、こういう曲が嫌いな人はいないんじゃないのかなと思ってるし。だから、アルバムにこういう曲は1曲は欲しいなと思うんですよ。実際、「The Greed」という曲はシングルのカップリング(2011年発表の『Vamp Ash』収録)で、アルバムにも入ってないんですけど、結構な頻度でライヴではやってるんですね。お客さんから求められているのを感じますし、「Last train」は自分の中でもそういう曲に昇華させたい思いで書いた曲でもありますね。シンセをかなりふんだんに入れたので、自分的にはそこが唯一今っぽさを入れてみたところかな(笑)。元々シンセから思いついた曲なんですよ。
Natsuki:ばるくんの狙い通りですね。シンセの使い方の上達が凄いなと思ったんですよ。以前はそんなにシンセをガッツリと入れて作ってくることはなかったんですけど、近年はがっつりとシンセも入ったデモを提出してくるんですね。そのクオリティがどんどん上がってきていて。
ばる:ターニング・ポイントになったのは、多分、Shunが(体調不良で)休んでた時期ですね。それまで曲のアレンジに関しては、大体、ワン・コーラスぐらい作った各々のデモをShunがフル・コーラスに仕上げてたんですよ。シンセも含めてね。それをやってくれる人がいなくなって、自然とそれぞれが自分の曲を仕上げるようになったんです。だから、僕もシンセとかの知識はあったほうがいいなと取り入れていって、それが今に繋がってるんですね。
────作詞もばるくんが担当していますが、歌詞はどういうイメージでした?
ばる:世の中を見渡してみたとき、不満に思うことはたくさんあるんです。でも、そういうことに蓋をして生きてたというか、見て見ぬふりしてたこともたくさんあって。だから、もっと自分でやりたいことがあるんじゃないか、自覚して気づかなきゃいけないんじゃないか、行動しなきゃいけないんじゃないかとか、当たり障りのない人生を生きてきたけど、もう少し抗っていかないといけないんじゃないかってことですかね。「DISTINATION」の歌詞とは、中心にあるものが一緒かなと思います。
────サビの<咲いた 咲いた><並んだ 並んだ>のフレーズはよく思いついきましたね。
ばる:ふと思いついたというか、カッコよく言うと降ってきたんですけど、最初はこのフレーズは2番目のサビだったんです。でも、思いついたときに、こっちのほうが強烈だなと思って、これを1サビに持ってこようと思って。面白い言葉は遊びだなと自分でも思ったんですよね。
────唱歌の「チューリップ」と同じ言い回しでありながら、歌っていることはまったくメルヘンチックな話ではなくて。
ばる:そう、どちらかというともっと暗い話ではあるんですよね。
────咲いたのはチューリップではなく、絶望の花ですからね。
ばる:そうそう(笑)。ちょっと『イカゲーム』みたいですよね。子供の頃の遊びをやってるけど、実は殺し合いだったとか。そのギャップですよね。
隼人:僕以外のメンバーが書いてくれる歌詞って、自分からは出てこないものなんですよね。毎回、アルバム出すときに、できれば、1曲ずつぐらいはメンバーそれぞれに書いて欲しいとすごく思ってるんですよ。その人となりが出ますし、今感じてること、考えていることと曲が上手く呼び合って、落とし込まれていく感じがあるんです。たとえば、何か影響を受けている作品とか、本とか、テーマがあったとして、曲だけではなく、その人の言葉で出てくる。それは真似できないし、DuelJewelにとっては、アルバムの中になくちゃならないんじゃないかなと思うんです。
「Last train」もそうですよね。ばるくんが話してましたけど、「DISTINATION」と見ている方向が一緒で、今、置かれてる状況の中で、僕らはどういう選択をしていくのか、そろそろ決めないといけない……そういう時代を感じたんだろうなって。日々、いろんな選択をして生きているので、その結果が今だと思うんですけど、僕らに迫られているのは、100年先の未来をどう決めていくのかという話だと思うんですよ。自分たちが死んだ後の社会に向けて、どんな責任ある選択をするのか。もちろん、それに伴う責任と覚悟みたいなものも要求される。そんな思いをすごく感じましたね。
────「感情六号線」のようなジャズ・テイストの妖しさしさのある曲も、ヴァリエーションの豊かさを体現していますよね。
隼人:歌う立場としては、ジャズ・テイストみたいなところは演奏が出してくれるので、あまり深くは考えなかったんですけど、むしろ祐ちゃんの書いた曲と歌詞ですよね。それを表現しきってあげたいというか、本人が思ってる以上に、もっと面白い曲になるんだぜっていうのを感じてもらえたらいいなと思ったんですよ。この曲に関しても、これまでだったら、もうちょっと自分の中で制限をかけてたんじゃないかと思うんですね。
────どういう制限なのでしょう?
隼人:歌い方だったり、音の作り方だったり、何となくこのぐらいでやめておいたほうがいいのかなとか、このぐらいじゃないと理解されないかなとか、そういうことを考えてるつもりはないんですけど、考えてるんですよね。なので、まずは精一杯、自分が思う限りをやってみようと。そこでもし過剰だったら、引けばいいわけですし。今回はどの曲もそうだったかもしれない。
────こういった曲はリズム隊も特に重要なポイントになりますよね。
Natsuki:はい。めちゃくちゃ苦手なんですよ(笑)。でも、スタンダードなランニングベースではあるんですけれど、グリスだったり、わざとコードを外して降りていったり、そういう遊び心を入れないと本当に普通になっちゃうんですよね。音にしてもそうなんですよ。よくあるフラットな音で録ると面白みがないので、ちょっとファジーというか、プレベがあればプレベで録ってもいいぐらいな感じで考えてましたね。
ばる:ベースと一緒でドラムもこういうリズムは難しいですよね。でも、この「感情六号線」があることで、本当にこのアルバムってまた面白く思えるんですよ。MVをもう1パターン出すのであれば、この曲でも面白いなと思うぐらい、極端に違うタイプなんですよね。「Rotten Sun」をやるバンドの曲とは思えない振り切り方じゃないですか(笑)。それをメンバーが上手く表現してるなと思うんですよ。もちろん、隼人の色っぽさとかも含めてね。ここまで振り幅を持たせられるのが、僕らの強みなんじゃないかなと思いながら叩いてましたね。
────スタンダードなスタイルゆえ、いかに自分たちらしいものにするか。バンドの力量が問われる曲でもありますもんね。
ばる:そうなんですよね。ただ演奏するだけでは、なんちゃってジャズみたいになって終わるじゃないですか。そうじゃなくて、らしさを加えていくことがすごく求められる。長年一緒にやってもらってるエンジニアさんの腕もあるんだろうなと思います。