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【「煮干乱舞」店主・ゆち × RAZOR・猟牙】埼玉を代表するラーメン店主が、RAZOR・猟牙と対談────「僕にとって、ラーメンはロックを表現できるもの」(ゆち)、「煮干乱舞はライヴハウスだと思う」(猟牙)

埼玉県は春日部市の一角に位置する「煮干乱舞」。
「食べログ 百名店ラーメン EAST」にも9年連続で名を連ねる超名店である傍ら、“事件”や“炎上”として今年に入ってからメディアで取り上げられる機会も増えている。
果たしてその実態とは?

ラーメンへのこだわり、接客への想いは、ある意味ではこれからのラーメン店の在り方にも繋がるのかもしれない。
今回、店主である川田雄一(通称:ゆち)の真意を訊くべく、片道2時間かけて春日部へと向かった。

だが、そこはVISUNAVI Japan。ご安心あれ。
「煮干乱舞」への造詣が深く、超個性的なSNS運用でも知られる、あのカリスマフロントマンにも帯同してもらった。
破天荒であることが誠意。

男の信念がぶつかる8500字、とくとご賞味あれ!


◆   ◆   ◆

有象無象の人がまったく的外れな意見を言ってる



────埼玉を代表する名店として君臨する「煮干乱舞」ですが、今年に入ってからいろいろと話題に事欠かないようで。

ゆち お店のルールを徹底してるだけなんですけどね。ネットでいろいろ炎上したり、テレビの取材が来たりと大変です(笑)。年明けには店内で暴れたお客さんがいて、そのときも警察沙汰になりました。というかさっきも警察に行ったところなんですけど、大変な年になってます。

────「煮干乱舞」自体は食べログの百名店にも9年連続で入っているし、熱烈な人気を誇っています。ゆちさんの作るラーメンは特にミュージシャンからの支持も厚い…と言うわけで、この方にも来ていただいています。

猟牙 どうも、RAZORの猟牙です。

ゆち はるばる来てくれて感謝ですよ。

────猟牙さんも「煮干乱舞」のファンなんですよね?

猟牙 いや、旨いよね。こんな旨いラーメン滅多にないと思うよ。だってさ、ぶっちゃけ東京からだと、この店(最寄りは東武伊勢崎線の武里駅)めちゃくちゃ遠いじゃん?それでも食べたくてわざわざ来ちゃうもんね。

────筆者は片道2時間近くかかりました。このセメントかっていうぐらいドロドロのスープとポキポキの麺の相性もいいし、濃厚なのに口当たりはいいっていうバランス感覚は中毒性があって、何度も通いたくなる気持ちもわかります。

ゆち 年明けに食べにきてくれましたもんね。

猟牙 あのさ、ちょっといい?

────はい。

猟牙 これ、VISUNAVIに載るんだよね?

────そうですね。ちょっと「煮干乱舞」の現状を伝えていこうってことで。

猟牙 手広いね~。VISUNAVIはこれからラーメンも扱っていくんだ。

ゆち 炎上してから、SNSだけだと切り取られて好き勝手モノを言われるなって感覚が強くて。それでどこかでちゃんと発信したかったんですけど、VISUNAVIならやってくれそうだなと(笑)。

────2月に店内でお客さんが暴れた事件はニュースでも報じられましたけど、実際は何があったんですか?

ゆち:酔っ払って来店したお客さんたちが店内で暴れたので警察を呼んだっていうだけですね。その日は営業を止めなきゃいけなかったので大変でしたよ。春日部警察署に行ったり、フジテレビの取材に応じたり。

猟牙 そういうことはよくあるの?

ゆち いや、めったにないよ(笑)。

────先日の炎上話についても伺いたいんですが、そもそも猟牙さんとゆちさんの出会いはいつなんですか?

猟牙 ノクブラ(NOCTURNAL BLOODLUST)のNatsuがきっかけだよね?

ゆち 僕がもともとノクブラのローディーなんですよ。それで、NatsuさんがRAZORのサポートに入ったときに出会ったんだと思います。挨拶をしたのは2019年12月の新宿LOFTかな。

猟牙 そのあとにNatsuとゆちが飲んでるところに呼ばれて、ちゃんと喋った感じだよね。

ゆち 僕自身はもともとヴィジュアル系が大好きなんで、猟牙のことはBORN時代からお客さんとして観てはいたんです。BORNの3rdワンマンを渋谷BOXXに行ったのが最初。

猟牙 あははは!懐かしいね、渋谷BOXX。

────ゆちさんはローディーもしていたということは、もともとバンドマン志望だったんですか?

ゆち そうです。でも、早い段階で自分がやりたいことはラーメンだなと気がついて、修行を始めるんですよ。一番最初は「めんや焔」っていう春日部のお店でした。うちの店の近くにある「げんこつ 武里店」も元々その系列なんですけど。

▲煮干乱舞・川田雄一(店主)


猟牙 もっと若い頃はなにしてたの?

ゆち ハタチぐらいの頃は居酒屋で働いていたけど、そこからいくつかのラーメン屋で働いて。もともとラーメンが好きだったから。ただ、そのなかのひとつでパワハラみたいなことにあって辞めちゃいましたね。

────好きだから始めたのに。

ゆち それで、他に好きなものはなんだったかなって考えたときに、音楽の道に進みたいなって思ったんです。マキシマム ザ ホルモンのコピーとかをやっていた経験はあるんですけど、僕はもともとヴィジュアル系が大好きなんですよ。VISUNAVIの読者の人にはお馴染みだと思うんですけど、赤羽ReNY alphaが入ってるビルの1階の本屋で『FOOL‘S MATE』を毎月買うのが生き甲斐でした(笑)。

────すごくわかります(笑)。

ゆち あるとき買った号にノクブラが載っていて、“7つの声を持つ”みたいな触れ込みに目を惹かれ、それで聴くようになったんです。もともとDIR EN GREYが大好きだったから、ノクブラのラウドなサウンドにもハマって。なんで、あんな声出せるんだよって衝撃もすごくて、とにかくこのバンドを手伝ってみたいって思わされましたね。

────面識はまったくなかったんですよね?

ゆち もちろん。でも、僕がやりたいなって思ってる音楽だったし、いてもたってもいられなかったんです。それで池袋CYBERにライヴを観に行ってから、オフィシャルホームページにメールを送ったのを覚えてます。それがきっかけで2012年から3年ぐらいローディーをやりました。それから自分も30歳になるタイミングで将来のことを考えたときに、もう一度ラーメンの道を志すことになるんです。その後もいろいろ変遷があるんですけど、MUCCのミヤさんのFC旅行に出張してラーメンを作ることもあったり、自分はこっちの道でヴィジュアル系に関われているので、間違いじゃなかったと思います。

────なんでも、ミヤさんからのご指名なんですよね。ところで、「煮干乱舞」自体はゆちさんも今年に入ってからいろいろあったとおっしゃっていますが、何より話題になったのは3月末にSNSで発信された“お食事中のスマホ禁止”です。

ゆち これもお食事前のスマホの使用やラーメンの撮影を禁止するものではないんですけどねぇ…。

────ただ、SNSに投稿された案内画像上はその表記がなかったことに加え、“守れない方は迷惑なのでお帰りください”という一文にパンチがあったように思います。

ゆち それで炎上してしまいましたね。あとから、“食事中のスマホ使用は禁止”って補足することになったんですけど。


猟牙 いい意味で強気だなと思ったね。俺も演者だからさ、なるべくお客さんには自由に楽しんでほしい…とはいえ、ときにはこういう対応をしなきゃいけないのもわかるの。もちろんどういう言葉で伝えるかっていうのも重要だからすごく考えるんだけど。

────今回の炎上騒動は、該当するお客さんが、今、我々の目の前にある卓上調味料の上にスマホを置いたことがきっかけなんですよね。

ゆち そうです。ブラックペッパーの缶のうえにスマホを置かれて。やっぱり飲食業をやってる側すると、衛生面ってマジでシビアなところなんですよ。それこそ、スマホって、付着している雑菌はかなりのものなんです。それをみんなが共用で使う調味料のうえに置かれるっていうのはどうしても看過できないですよ。それこそ、大手の回転寿司チェーンさんで、お客さんが調味料を舐めて社会問題になりましたけど、それとなんら変わりがない。

────「じゃあ調味料を置くなよ!」みたいな意見も噴出するんでしょうけど、そもそも民度と理解でこれまで成り立ってきたわけですからね。そうでない以上、次のステップとして、店主が指摘するのはまっとうだと思います。

ゆち それでも「店でスマホ使っちゃいけないのかよ!?」みたいな声がネットで上がってるんですよ。こっちの伝え方ももっと考えるべきでしたけど、ニュースなどで実際に衛生面で被害を被ったことが伝わってからは、一気に好意的な意見が広まっていきました。

猟牙 記事の一部しか見てない人もいるだろうからね。

ゆち お食事中の使用はNGともちゃんと書いてる。席数も限られた店舗ですし、外で並んで待ってくださってる方もいるので、そこは守っていただかないとって感じです。

────ラーメン屋さんに限らず、飲食店では回転率も重要になってきます。

ゆち もちろん人によって食べるのにかかる時間も違うのはわかってます。5分で食べ終わる方もいらっしゃれば、それこそ20分とか30分かける方もいる。それに関しては致し方ないことだと思ってるんです。ただ、お店としてお願いしているルールを守っていただけないのは言語道断っていうのが僕の考え。

────至極正論ではあるんですけど、あれだけ賛否を巻き起こす炎上になったのにはそれなりの理由もあって。それはやっぱり言葉の強さだと思うんです。どこかでラーメン店に対して抱く像っていうものが、昔と今では異なってきている部分もあるのかなと。ちなみに筆者がみたコメントでは、賛の声が多い印象でしたが。

ゆち それこそ山内さんもお好きでしょうけど、二郎系とかだともっと厳しいところいっぱいあるじゃないですか?あれもときどき炎上してるけど、お店の決まり事を理解されている方からはそういうトラブルはきっと起きないんです。たまたま起きたトラブルがSNSで拡散されて、事情を知らない有象無象の人がまったく的外れな意見を言ってると思う。

猟牙 どっちかの肩を持つわけじゃないけど、そういう人って多分お店に実際に足を運ぶことはないんだよね。野次馬根性みたいなさ。

────Xマスターが言うと、説得力が違いますね。

猟牙 ほんとそういうこと多いから。

RAZOR・猟牙(Vo)


ゆち それで言うと、今回の騒動があってから、うちのお客さんは倍近くまで増えて大盛況なんです。

猟牙 俺の場合は、いろいろ言ってくる人にもその人なりの想いや考えがあるんだなって思うんだよね。だけど、それに返すのってSNSっていう公衆の場でしかないからこそ、ちょっとしたユーモアじゃないけど、多くの人に上手に伝わるのかを考えなきゃいけない。ただ、ゆちの場合は飲食業で、お客さんは目の前にいるわけじゃん?そうするとより1対1の関係だと思うし、ゆるく伝えるだけじゃ埒が明かないと思ったんだろうね。というか、俺もゆちのことをよく知ってるけど、間違っても感情的になっていきなりキレるタイプに人じゃないのね。

────見た目こそ、イカついから誤解されやすいけど。

猟牙 うん、すごく実直だと思う。じゃなきゃこんな旨いラーメンを作り続けられるわけないもんね。だから、ゆちがもう辛抱できない領域まできてたんだろうなってことはわかってあげたい。

ゆち ラーメン屋の感覚だと、お客さんの座ってる席がライヴの最前列みたいなものなんですよ。そこにいる方が1日の間で目まぐるしく変わっていくわけで。これをずっとやってると、店の扉開けて入ってきた瞬間から、その人がどんな人かだいたいわかってくるんです。

猟牙 ほう!

ゆち その方が好意的な方なのか、悪意を持っているのかも。決めつけとかじゃなくて、この厨房と座席っていう距離感でこれまで数えきれないほどの人間と接してきた人間の特殊能力というか、1ヶ月で3000人として、1年間で20000人くらいに対応してくると、マジでわかるんです。

────筆者もコンビニのレジを打っていたことがあるので、その感覚はわかります。本能的なんですけど、大体当たってるんですよね、不思議と。

猟牙 バンドもバンドで大変だけどさ、そうやって接客の人は俺たちにはわからない領域で闘ってるんだなって感じるね。マナーとかのレベルじゃなくて死活問題だろうし。

ゆち 「券売機でお買い求めください」であるとか、「こちらのお席におかけください」みたいな当たり前のことをアナウンスしているけど、それが守れない人も正直います。でも、それをよしとしちゃうと、その他のルールを守って食べに来てくれてるお客さんに対して無礼。ちゃんと店からのお願いを理解して愛してくれてる人を大事にしたいだけなんですよ。あと、うちのルールが特段厳しいとも思わないというか。この件があったときに、たまたまラーメンフリークのvistlip・海さんとも連絡取ってたんですけど、「もっと厳しいラーメン屋いっぱいあるけどね」って言われて。うちってルールが“暗黙”じゃないし、ちゃんと明記もしてあるんです。でも、ラーメン店主の立場からすると、これって店主の力不足だとも思う。

────どういうことでしょう?

ゆち それこそ「ラーメン二郎」とかの場合、お客さんもそれを理解したうえで並ぶじゃないですか?でも、「煮干乱舞」の場合はこうやって、店外とかテーブルにたくさん注意書きをしている状況で…それはひとえに店主と店にそれを理解していただくだけの力がないのかなって思います。

猟牙 でも、こうやって書いてくれてた方が、こっちからするとわかりやすいけどね。俺もゆちと友達じゃなければ、むしろちょっと緊張感のあるお店だと思うし。

ゆち 全然、新しく来てくれるお客さんを拒んだりなんてしてないんですけどね。

猟牙 まぁでも音楽とかライヴでも一緒かも。なんでも親切にするのが正しいわけじゃないし、全部を説明するのも野暮かもしれないから。ちょっと無骨でありたいっていうかね、そっちの方がかっこいいもんね。

▲店内には猟牙のサインも

ゆち それにこれだけ注意喚起しているのに、今日も無視してる人いたしね。だけど、猟牙が「ライヴ中にスマホ触らないでね」ってお客さんにわざわざ言わないじゃないですか。そういう難しさはあります。

猟牙 バンドの公式から注意喚起するのだって悩むからすごいわかるけど、これに関しては、ゆちが運営とプレイヤーの両方をやってるから特に色濃いんじゃない?

ゆち あー、そういうことか。

────最近は以前にも増して、店舗に立つ機会を増やしてるんですよね?

ゆち そうですね。僕が立つ機会を減らしてた時期に、従業員の接客とかで不快な想いをさせてたことがあって、そこに関しては完全にこちらの不手際なので、もう一度自分が一からちゃんとお店に立とうって意識しているところです。

猟牙 でも、自分でそれを選んでるなら良いと思うよ。さっき言った緊張感って言うのもさ、まず武里駅から裏に入ったところに1軒立ってて、名前が「煮干乱舞」っていうのも…なんかトガってない?って思うの。ゆちも見た目は強面なほうだし。でも、その選ばれし者しか入れない感って、ガキの頃に初めて行ったライヴハウスに似てるのよ。そういう意味では「煮干乱舞」はライヴハウスだと思う。ロック感が強いんだよ。

────実際、常連のミュージシャンのサインも多いですし。

猟牙 だから、家族連れでのんびり行くラーメン屋さんを想像している人とはちょっと乖離があるかも。カルト的なインディーズバンドに熱狂しているのに近い感覚というか。

ゆち わかりやすい!でも、ライヴハウスだってルールを守っていれば家族連れでも入っていいのと同じで、うちだってルールを守ってもらえるかだけ。基本的に誰でもウェルカムなんですよ。

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