【Verde/】◆スペシャルインタビュー◆「求められる自分」を手放して見えた、可も不可も超えた境地

逹瑯さんが一言、「音楽やんなよ」って。
────────Shouさんは、1st ONE-MAN SHOW「可不可」で、Verde/としてのShouは可なのか、不可なのか、自身のあり方を一度ファンの皆さんに問いかけていますよね。サポートメンバーの支えもあり、やりたいことを表現できるようになった今、その答えをどう受け取っていますか?
Shou 「可不可」の段階では、実は裏方の仕事もやっていて、まだ迷いがありました。はたして自分が歌い続けていいのか。それまでソロもやらないように貫いてきたし、Alice Nine.の将としてのパーソナリティーだけで人生を全うしていくつもりだったので。だけど今は、自分の主張を思いきり表現してもついてきてくださるファンの方と、それを一緒に形にしてくれるメンバーがいる。なんかもう可だろうが、不可だろうが関係ない。ただただ歌わせてくれ、歌いたいっていう気持ちになっています。
────────双方向で素敵な関係性を築かれているんですね。そんなVerde/が描く今後についてもお聞きしたいのですが、まずは6月3日リリースの新曲「Static Eden/」について、どんな楽曲になっているのか教えてください。
Shou 「Static Eden/」は、Djent寄りのハードコアな楽曲なんですけど、そこにハイパーポップの要素も取り入れています。去年、武瑠とヨーロッパでカップリングツアーを回った時に、彼がハイパーポップの要素を取り入れた音楽性で、すごくキラキラしていていいなぁと感銘を受けたんです。あとは「世界から見た東京って面白いな」というヒントももらったので、ハイパーポップで東京感を表現しながら作った楽曲です。
────────ハイパーポップだけど、そこにヴィジュアル系要素も溶け合っていて、思わず聴き入ってしまう一曲でした。Shouさんの斬新でユニークなアイデアは、いつもどこから生まれているのでしょうか?
Shou 僕はヴィジュアル系が好きだから、あえてヴィジュアル系を参考にしないっていうテーマがあるくらいですかね。Alice Nine.を立ち上げた時の裏テーマ自体も「どうやったらヴィジュアル系が好きじゃない人に、カッコいいと思ってもらえるか」ということでした。全く違うジャンルでも、「実はヴィジュアル系でやっていたらカッコいいでしょ?」みたいな。例えば、ビリー・アイリッシュが出てきた時も、ヴィジュアル系でこういうことをやれたらいいなと思っていましたね。ヒントは世の中にゴロゴロ転がっているので、普段から世界中のヒットチャートを聴いています。僕は歌い方が特徴的なので、僕が歌っちゃえばどんな曲も自然とヴィジュアル系っぽくなるんですよ。
────────歌詞にはどんな世界観が込められていますか?
Shou これまでの僕はずっと「こういう歌詞も書けるんです。だから、今回はこんな歌詞を書いてみました」っていう多面的な見せ方をしてきたんですけど、今はもう逆に「なんかコイツ、どの曲も同じこと言ってんじゃん」って感じになろうかなと思い始めたんです。くどいけど、こういう世界観だったらShouしかいないよねと思ってもらいたい。自分なりの歌詞だったり、個性だったりを出してもいいんじゃないかと。それが何なのかっていうと、僕が好きな宮沢賢治さんや谷川俊太郎さんのような世界観です。
────────よく名前を挙げていらっしゃる2人ですよね。具体的には、それをどんなフレーズで表現されているのでしょうか?
Shou 例えば、歌詞の冒頭に「味のしないエスプレッソ」という表現があるんですが、これは悲しい気持ちで今日はなんだか味がしないなって感じている目の前の視点の世界。その後、「太陽系の片隅で」という歌詞で宇宙規模の思念体の視点に跳躍させているんです。「Static Eden/」は、“僕たちが生きている壮大な世界”と“普段生活している身近な世界”の対比を軸にして歌詞を書きました。
────────それが宮沢賢治さんや谷川俊太郎さんにインスパイアされる要素なんですね。
Shou 僕もそんなに解像度高く理解できていないかもしれないですが、彼らは自分の生きている世界、つまり心の中の世界がすごく広いんだと思います。僕らの日々の生活ルーティンって、スマホにたくさんの情報が流れ込んできて、完璧に思考がハックされていますよね。気づいたら仕事して、スマホ見て、寝て、起きて、またスマホ見て。そんな繰り返しに自分自身もなりがちだし。だけど、そんな日常を、もっと世界とか、銀河とか、宇宙みたいな視点から客観的に見ることができたら面白いんじゃないかなっていう発想です。そう感じさせてくれるのが、この2人の世界観なんですよね。
────────なるほど。彼らの壮大なスケールの視点が、Shouさんの言葉選びにつながっている、と。
Shou あと特徴的なのは、工学的なフレーズ。例えば歌詞に出てくる「クオリア」とか、普通は使わないフレーズを入れようと思いました。「Drop-cut-rise! 0-1-0-1 the signal explosion」と歌う部分もあるのですが、これはプログラミング用語っぽいなと思って。今までの歌詞は、ここまでバキバキに自分の趣味を出してなかったけど、今は「これがShouの歌詞だね」って感じてもらえるペルソナを磨いているところです。
────────そんなふうに聞くと、確かに「Pulse/」から地続きのような歌詞に感じられます。ちなみに「Pulse/」では、その物語をイメージした小説「Pulse――ゼロに還る」を発表されていました。「Static Eden/」でも、同じように物語を考えていますか?
Shou そうですね。冒頭の物語だけは書いています。
────────Shouさんが曲を作られる時って、いつもこうしてストーリーから描かれるんですか?
Shou それは結論、MUCCの逹瑯さんの影響が大きいです。Alice Nine.が凍結した直後くらいに、逹瑯さんと「Shouはコロナ禍何やってたの?」という話になったんです。そこで、ずっとやりたかった小説を書いていたと話したら、逹瑯さんが一言、「音楽やんなよ」って。それに対して僕が「今のところやる予定はないですね」と返すと、口では「やめちまえ、やめちまえ」って言うんですけど、そこからが素敵でした。「音楽と小説の世界を交差させて、唯一無二のことをやっていけばいいんじゃね?」と、さりげなくおっしゃったんです。ああ、この人はあまのじゃくだけど、本当に優しいな、すごいなぁって。その時の言葉が、今も頭の中に残っているんですよね。もともと、僕はそういう手法をやってこなかったんですが、本当に自分がやりたかったことをつなぎ合わせるヒントを逹瑯さんにいただきました。
────────素敵なエピソードをありがとうございます。さて、今後のライヴについてもお話を聞かせてください。まずは6月5日に下北沢シャングリラで「Static Eden/」の発売を記念したワンマンライヴ「Verde/ One Man Live 2026 [ DECODING EDEN ] ~Static Eden Release Party~」が予定されています。特別な2部制で、なんと第1部は入場無料(ドリンク代別)ということに衝撃を受けました。なぜ今、フリーライヴなんでしょう?
Shou Verde/に全く興味のない人が見ても、面白いじゃんって思ってもらえるところまでクオリティーをブラッシュアップできたというのが一番大きな理由です。ようやくVerde/で、このメンバーで、やっている音楽に自信と覚悟が持てたんです。「今Verde/を観たら超面白いよ。こちらはリスクを取るから、一度観てみてよ」っていうのが今の気持ちです。
────────それはめちゃくちゃ楽しみです。第2部の本編は、今回の全国ツアーのアナザーver.のようなライヴになりそうだと聞きました。
Shou 本編は、明るく激しくしたいと思っています。激しめに楽しんで、暴れられる。そんなライヴになるんじゃないでしょうか。
────────そして、その次に予定されているのが、7月5日にShou名義で [kei]さんと共に開催されるJoint Show「堕天國‐Lost Paradise‐」です。こちらは、どんなコンセプトになっていますか?
Shou [kei]ちゃんから「俺はサポートはやらないんだ」とこだわりを教えてもらっていたので、Shouと[kei]の名前でやろうよと頼んだら、彼も腹を括ってくれました。僕がヴィジュアル系を始めた頃、 [kei]ちゃんにはたくさんのチャンスをもらったので、今度は僕なりに彼を世の中に売り込みたいという思いを持って開催するイベントです。[kei]ちゃんは本当にすごいアーティストだし、普通に活動していてももちろん結果は出ると思うのですが、まだまだ過小評価されているんじゃないかって。


