【D≒SIRE】ライヴレポート◆こんなにも攻撃的な姿は初めてだ。牙を剥いたD≒SIREが見せた、50代の本気!

31年という歳月は、人生の道筋をいくつも変えていくのに十分な時間だ。深い絆で結ばれた仲間が袂を分かち、一度ばらばらにほどいた紐を改めて結ぶうえで、5人には、それくらいの時間が必要だった。それぞれの根底にある思いが変わることはなかった。だから、ふたたび絆を結び直すのは必然だった。ただ、一人ひとりが自分の心の紐を強靱にし、解けた5本の紐を一本ずつきつく結び直していたら、四半世紀以上の時が過ぎていた。
2026年5月2日と3日、シングル三部作のメンバーであり、アルバム『終末の情景』の基盤を成した幸也/聖詩/橘舞已/秀朗/魅威の5人は、31年ぶりに完全体となって、新宿ReNYを埋め尽くした観客たちの前に姿を現した。
たとえ、互いの友情は永遠であろうとも、本当なら、この日の公演をもって、幸也/聖詩/橘舞已/秀朗/魅威によるD≒SIREに終止符を打つはずだった。だが、5人が求めた姿でワンマン公演を完遂するまでには至らず、2日間とも、Kαinとの2MANという形で、なんとか乗り切った。用意した1時間という枠内では、ある程度完成した姿を見せられたとはいえ、5人とも「ワンマン公演を行う」約束を実現できなかった悔しさが、心のわだかまりとして残っていた。
そのうえで下したのが、2027年5月3日に新宿ReNYで単独公演を行い、今のメンバーで納得のいくライブを行うことだった。そのために発表したのが、完全体へ向けてバンドをブラッシュアップするため、8月から10月にかけて行う3本のワンマン公演だった。先に伝えておくと、聖詩は10月のライブのみに参加。他の2公演は、サポートギターを迎えて行う。
8月13日(木)にGT LIVE TOKYOで行った公演には、ゲストで一也(HOLLOWGRAM/Kαin)が参加してくれた。この日の演目は、5月2日と3日に行った公演を改めてなぞる形を取っていた。ライブ・タイトルの『「終末の情景」発売31周年記念公演「真夏の人工楽園 2026』にも出てくる『人工楽園』が、今回のライブでは大きな鍵を握っていた。ライブに勢いをつけるBPMの速い楽曲を主軸に置いていたことも、大きな特色だ。さらに、これまで公に披露することのなかった2つの楽曲を再構築し、ライブで初披露した。他にも、一也がサポートしていた繋がりから、Kαinの楽曲もカバーしてくれた。
GT LIVE TOKYOは、音響の良質さはもちろん、映像演出を施すうえでとても優れた環境を整えている。この日は、背景に設置した大きなスクリーンへ楽曲と関連した映像をつねに投影し、視覚面でも、楽曲が持つメッセージのイマジネーションを膨らませていた。ここからは、チケットがSold Outした当日の模様をお伝えしたい。

SEに乗せて、ゆっくりと幕が上がる。背景の大きなスクリーンに投影していたのが、巨大なD≒SIREの文字。ドクッ、ドクッと鳴る心臓の音。流れ出した『Re_deem2026』に合わせて、スクリーンには空撮した異境の景色が映し出されてゆく。次々と移り変わる景色を俯瞰で見ながら、これからD≒SIREが描き出す夢うつつの世界へと導く旅が始まりを告げようとしていた。語り部となった幸也の声が流れる中、5人が次々とステージに姿を現した。場内中から沸き立つすさまじい声、声、声。やがて…。

重厚かつ麗美なシンセの音が流れる。そこへ魅威が疾走する荒々しいビートを叩きつけ、幸也がタイトルコールを叫ぶのを合図に、『DREAMS BURN DOWN』の演奏が始まった。身体を前のめりに、攻める姿で歌う幸也。彼の呼びかけに、観客たちが「DREAMS BURN DOWN」と声をぶつけるやりとりが胸を熱くする。間奏でギターの旋律を交わす一也と橘舞已。美しくも胸を揺さぶる2人の演奏を、躍動するビートで支える魅威と秀朗のリズム隊。楽曲は、どんどん熱を増していく。そこへ…。


幸也のセリフと魅威のドラムロールをきっかけに、『SHADES』へ。今やライブの定番ともいえる、『DREAMS BURN DOWN』から『SHADES』へと続く展開が気持ちを奮い立てる。今宵は、幸也を筆頭に、メンバーみんな気迫に満ちた姿で音をぶつけていた。その気迫に煽られ、場内からも無数の拳が激しく突き上がる。一也と橘舞已の美しくハモり合うギターのユニゾンも、気持ちを高揚させる嬉しい要素だ。狭い空間の中で気迫と気迫がぶつかり合う。そこで生まれる異常な熱が、意識をどんどん狂わせていく。


「どうですか、思っていたよりD≒SIREじゃないですか」と語る幸也。そこには、往年の…ではなく、理想に向かって進化し続けている、今のD≒SIREの姿があった。この日は、マニピュレーターをKαinのATSUSHIが担当していたことから、「半分、Kαinだね」とも伝えていた。
次のブロックは、D≒SIRE誕生前に生まれていた名曲の『LEAVE ME』から始まった。美しくもシンフォニックな世界を描いて幕を開けた楽曲は、この場に胸躍らせる音景色を見せてきた。背景には、雄大な景観を捉えた映像が映し出されていた。サビでシャッフルした音が軽やかに跳ねるのに合わせて、幸也の歌声も弾めば、フロアでも、突き上げた数多くの拳が揺れていた。サビで、「行かないで」と歌う観客たちの声を受け取る形で幸也が歌っていた姿も印象的だ。

一也のギターのアルペジオに乗せて、幸也が「誰も愛せないなら~」と言葉の一言ひと言に思いを深く込めるようにゆっくりと歌いだす。そこへ、躍動した魅威のドラムのリズムを合図に、メンバーが、重量感のある『CURSE』を奏で始めた。次第に荒っぽさと重みを増す演奏と、雄々しい幸也の歌声に、気持ちが熱く湧き立つ。重厚な楽曲が、さらに迫力を増して響き渡る。そこへ…。

「激しいのいっていいか」と煽る幸也の声を合図に飛び出したのが、『人工楽園』だ。橘舞已と秀朗が身体を前のめりに顔を見合わせて演奏していた姿も印象的だ。一心不乱に高速でビートを叩きつける魅威。一也も激しくギターを掻き鳴らせば、幸也はずっと吠えるように歌いながら観客たちの感情を騒がせていた。荒々しい演奏とは対照的に、胸を高ぶらせる旋律を奏でる一也のギターソロも印象的だ。曲が進むごとに速度が上がっていくような錯覚を覚えるくらい荒れ狂う演奏を突きつければ、フロアからも熱い声がずっと張り上がっていた。でも幸也は叫んでいた、「まだ、ぜんぜん足んねぇんだよ」と。




だから、観客たちをさらに煽るように、D≒SIREはふたたび『人工楽園』を叩きつけた。限界という境界線を乗り越えるのではなく、真正面から叩き壊して突き進むメンバーと、理性の螺子が壊れて猛り狂った観客たち。かつて、これほどまでに熱狂の様をD≒SIREと観客たちがライブに描いたことがあっただろうか。誰もが限界を越えた姿で、剥きだした感情と感情をぶつけあい、この場を破壊し尽くす勢いで思いを高めあっていた。
幸也と観客たちが叫んだ「JESUS CHRIST LOVE FOR YOU」の言葉を合図に、いつも以上に速度を上げた『JESUS』が飛び出した。爆裂し、爆走した演奏の上で、幸也と観客たちが「JESUS」「I Wanna Be Your “Only”」と熱情した声を交わし合う。張り裂けそうなほど胸を高ぶらせるサビの歌に触れ、胸の奮えが止まらない。メンバーも観客たちも、意識を10代に巻き戻し、体力の限界を忘れ、声と感情を全力でぶつけあっていた。叫びすぎて、幸也を筆頭に、大勢の人たちの声が掠れていた。それほどまでに、誰もが限界を超える勢いで声と声を、魂と魂をぶつけあっていた。

そこからの『KISSxxxx』への流れが、さらに胸を熱く掻き毟った。今宵のメンバーと観客たちが交わすKISSは、互いの唇が裂け、血が流れ出すほど激しかった。 幸也も、今にもフロアへ飛び下りんばかりに身体を前のめりにし、剥きだした感情をぶつけながら、観客たちと思いを交わし合っていた。これほどまでに気迫に満ちた激しいD≒SIREの姿は、これまであっただろうか。完全体へ向けて進化を求める50代のメンバーが螺子を壊したときの姿は、あまりにも狂おしい。
今宵の彼らは、麗美な旋律と歌にさえ熱情を注ぎ込み、美しき熱狂を描いていた。だから、最後の曲として『xxxBLUE』に触れたときには、このまま召されていくような感覚を覚えていた。「離れない離さないずっと」と歌う幸也の声をつかもうと、場内から無数の手が伸びる。ときに野太い声を張り上げながら、幸也は、ほとばしる汗の中で互いに求め合う気持ちをきつく結び合っていた。『xxxBLUE』の演奏時に広がる晴れ渡る青空のような景色が、この日は荒れ狂う嵐のようにも感じられた。終盤、橘舞已の演奏に寄り添うように秀朗と一也が、そして幸也も身を寄せ合っていた姿も印象的だった。
フロアから上がり続ける熱狂した声と拍手。流れ出した『Re_quiem』と美しい景観を映し出した映像に乗せ、本編のライブは、場内に熱を溜め込みながら幕を閉じていった。

ここからは、アンコールという名の第二幕へ。
『Re_frain』に乗せ、先とは異なる映像を背景にメンバーがステージに姿を現し、新たな物語を始めたように、この日は二部構成として組み立てられていた。第一部が、復活したD≒SIREのライブの復習(過去への復讐)なら、第二部は、2027年5月3日のワンマン公演へ向けての予習(予襲)にもなっていた。
第二部の幕開けを飾ったのが、クールでダウナーな、でも疾走感を抱いたミドルメロウの『CALL FOR YOU』だ。D≒SIREの持つ刹那で美メロな面を映し出した楽曲に、誰もが釘付けになっていた…のは最初だけで、観客たちはスリリングな演奏に刺激を受け、掲げた手を大きく振り続けていた。間奏のソロで前へ踊り出て、ギターソロを奏でていた橘舞已の姿も印象的だった。
MCでは、2027年5月3日のライブを成功させるために、ライブ特有の肌感を味わいたいことから、今回のシリーズ公演を企画したことを改めて語っていた。そのうえで、一也を迎えたこのメンツならではのことをやろうと、過去に形を成すまでには至らなかった曲たちを、ここから披露した。この日は、10代の頃に幸也と橘舞已で制作した2曲を届けてくれた。
まるでガムラン音楽のような始まりが、嬉しいインパクトだ。『Asleep』は、デジタル化されたオリエンタルな音色とニューロマンティックな香りを抱かせる、耽美でメロウな楽曲だ。10代当時に書いたとはいえ、歌詞には、D≒SIREの世界観に繋がる悲哀に満ちた思いが綴られている。幸也は、あの頃から心がBLUEに染まっていたということか…。ずっと浸り続けていたくなる。でも、楽曲自体は浮遊感を持ちながらも、輪郭のくっきりとした躍動性も持っている。今後ライブを通してブラッシュアップされたとき、淡くメロウな歌と輪郭の際立つ演奏が、どんなコントラストを描いて一つの曲のカンバスの中で重なり合っていくのかが楽しみだ。
もう一つの未発表曲として奏でたのが、スリリングな幕開けのもと、ソリッドかつ攻撃的な、こちらも輪郭の際立った演奏を聴かせる『Water Ballet』だ。曲調自体はタイトなビートナンバーだが、歌詞には、今にも壊れそうな心の脆さが綴られている。それを、幸也は枯れた声で歌い上げていた。クールでスリリングな中にも疾走性があるからか、場内からは拳が突き上がり、荒ぶる声も一部上がっていた。この曲での橘舞已の儚く美しいギターソロにも注目してほしい。とても儚く、夢うつつながらも身体を揺さぶる、橘舞已の手による『Water Ballet』は、彼が活動しているGRASSでも、ヴォーカル・YASUの歌詞で演奏している。この日の歌詞は、曲へのリスペクトを込め、GRASS Verで歌っていたことも補足しておきたい。
止まることなく流れ出したのが、『静夢』だった。ふたたび躍動する演奏に乗せて、誰もが拳を突き上げ、心を踊らせていた。「静寂に包まれて」「刹那の」と声を交わすやりとりに触れるたび、気持ちが熱くなる。胸をキュッと締めつけるこの歌が、先の2曲の流れを受けて耳や肌に触れたことで、心を揺さぶる開放感を持った楽曲として身体に染み込めば、演奏中、湧き立つ高揚感をずっと覚えていた。終盤、幸也を真ん中に挟む形で、橘舞已と一也の奏でたユニゾンの演奏も胸を震わせた。
「びっくりする曲をやるぜ」の言葉を合図に飛び出したのが、Kαinの『NUMBER SIXXX.』だ。KαinがD≒SIREの楽曲を演奏することはあっても、その逆は誰も想像していなかったこと。エッジ鋭いUKロックスタイルの楽曲が放つスリリングな衝撃を受け、場内が沸き立ち続ける。秀朗はダックウォークのスタイルで演奏を繰り広げていたように、メンバーも攻撃的な姿勢で、剥きだした感情を音にして突きつけていた。そのうえで…。
最後の最後にふたたび『人工楽園』を叩きつけ、D≒SIREはこの場を、熱狂と狂喜で包み込んだカオスな楽園に染め上げた。なんて激しすぎる姿だ、これほどまでに感情を剥きだしたすっ裸のライブを、いまだかつてD≒SIREが見せたことがあっただろうか。しかも、ここでも『人工楽園』をふた回ししてきた。互いにぶっ倒れる覚悟で気迫と気迫をぶつけあう、飾りをすべて取り払った剥き出しのライブを、D≒SIREは見せつけた。
今回用意したワンマン公演に向けたブラッシュアップのライブを通して、D≒SIREは驚異的な速度で進化し続ける姿をまざまざと示してきた。過去を呼び戻すのではない。あのときに止まることなく活動を続けていたら、こうなっていた。そんな風に思わせる、進化を止めない50代のD≒SIREの姿がそこには息づいていた。
メンバーの去り際に流れた『Re_quiem』の音色が、この熱狂の続きへと誘う音楽のように胸に染み渡っていた。熱の醒めやらぬ観客たちの声。それが、今宵のライブの答えだ。
TEXT:長澤智典
LIVE
2026年09月22日(火)GT LIVE TOKYO ※幸也、橘舞已、秀朗、MIEでの出演
2026年10月10日(土)高田馬場CLUB PHASE ※幸也、聖詩、橘舞已、秀朗、MIEでの出演
2027年05月03日(月祝)新宿ReNYワンマン ※幸也、聖詩、橘舞已、秀朗、MIEでの出演
【Infomation】
https://tmfr.net/d_sire/
RELEASE
【ファーストアルバム「終末の情景」サブスク解禁】
https://lnk.to/s4xZcy
【D≒SIRE(デザイア)】
1993年10月活動開始。
1994年にシンコーミュージック傘下のインディーズレーベルよりCDデビュー。
当時のメンバーは YUKIYA(Vo)、KIYOSHI(Gt)、MAI(Gt)、HIDEROW(Ba)、MIE(Ds)。
1995年8月5日に発売された1stアルバム「終末の情景」はオリコンインディーズチャート1位を記録。
SET LIST
SE『Re_deem2026』
『DREAMS BURN DOWN』
『SHADES』
MC
『LEAVE ME』
『CURSE』
『人工楽園』
『人工楽園』
『JESUS』
『KISSxxxx』
MC
『xxxBLUE』
SE『Re_quiem』
-ENCORE-
SE『Re_frain』
『CALL FOR YOU』
MC
『Asleep』
MC
『Water Ballet』
『静夢』
『NUMBER SIXXX.』(Kαinカバー)
『人工楽園』
『人工楽園』
SE『Re_quiem』


