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【FUR】ライヴレポート<FUR FIRST INDEPENDENT EVENT【MULTIPLE ROOMS】>2026年6月22日(月)恵比寿LIQUIDROOM、FURのデビューを祝し繰り広げられた全7バンドが持つ個性の饗宴

ヴィジュアル系シーンに新風を吹き込む存在として注目を集めているFUR。5月28日にデビューライヴを終えたばかりの彼ら主催による『FUR FIRST INDEPENDENT EVENT【MULTIPLE ROOMS】』が、6月22日、恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。
この日集結したのは主催のFURをはじめ、ギャロ、MAMA.、ORSEAS、KAKUMAY、蜈蚣、おいでよ!幽霊ズといった、FURと縁の深い全7バンド。それぞれが持ち味を存分に発揮したステージは、FURの門出を華やかに彩ると同時に、イベントタイトル【MULTIPLE ROOMS】が示すとおり、多彩な個性と世界観が交錯していた。



◆   ◆   ◆

おいでよ!幽霊ズ



トップバッターを務めたのは、おいでよ!幽霊ズ。前身バンド“赤い幽霊”の解体と転生を経て5月31日に誕生した彼らは、図らずもFURと同時期に産声を上げたという共通点を持つ。
親しみやすいバンド名と、ステージに姿を現したメンバーの強烈なキャラクターとが相まって、一瞬にして好奇心をそそられた。しかも、ひとたび演奏が始まると一層妙なアンバランスさを覚える。「シュガードリルの遺書」で響いた守護霊(Vo)の繊細な歌声と、カービー the DEAD(Gt)が紡ぐどこかノスタルジックなクリーントーン。少しでも加減を間違えれば崩れてしまいそうな危うさが、かえって美しさを引き立てていた。


「福耳に水」で一転して躍動感を帯びると、「お陀仏-極楽編-」では重低音と念仏が織り交ざってオカルトな空気で包み込む。「学問のすゝめ」でフロア一面に合掌が広がり、“信じる者を救いはしない”という一節が容赦なく現実を突き付けると、流れるように続いた「はっぴいえんど。」では、生々しい言葉で感情をむき出しにしていった。そして、ラストを飾った「Lifestage Teenage.」で生み出したのは恐怖や白熱ぶりではなく、心温まる人間味あふれた温度。始終心を奪われてしまった彼らが作り出す限りなくピュアな空間は、華々しいイベントの幕開けを飾ってくれた。




ギャロ



板付きで登場した“ギャロ”は、幕が開いた瞬間から淫靡で濃密な世界へと塗り替えた。1曲目の「嬲魔-BELIAL-」から、ジョジョ(Vo)が浴びせるシャウトや観客が起こすヘッドバンギングが、まさしく“天獄”という名の快楽へと堕ちていく様を描き出す。
すかさず、「極上の悪夢へご招待いたしましょう。腹減ったなぁ!」とジョジョが煽り立てると、「淫魔-BELPHEGOR-」では観客が手にした白い皿と銀の匙がガチャガチャと不気味な音を鳴らし始める。それは、ギャロが悪夢や憎悪、絶望さえも喰らう“儀式”の音。その狂気を全力で貫く姿は、 “友だち”と呼ぶFURへ贈る、彼らなりの祝福にも映った。


「BOOGEYMAN」では細かなギターリフが焦燥をかき立て、ウェーブがフロアを大きく揺らす。その熱量は「聖黒薔薇學院-青春-」へと受け継がれ、さらに不協和音のようなラララの合唱が異様な一体感を生みだした「夢魔-INCUBUS-」で、苦しみも幸福もすべてを豪快に飲み込むかのごとく締めくくっていった。
最後にジョジョは、ステージで歌い、演奏できる今日という日を振り返りながら「今日も生きててよかったなと思います」と口にした。まさしく5人の音をまっすぐにぶつけたライヴがあってこそ腹に落ちた言葉であり、生きることへの実感を飾らずに吐き出した人間臭さが、やけに余韻を残していた。




蜈蚣



続いて姿を現したのは、5月29日に始動ワンマンを終えたばかりの蜈蚣。こちらもFURとほぼ同時期に産声を上げた存在だ。メンバーが纏っている衣装は赤と青という対比色で、そのコントラストが興奮と鎮静入り混じる、不穏な均衡を感じさせた。
彼らの原点とも言える「毒」から幕を開けると、腹の底を揺さぶる重低音が容赦なく闇へと引きずり込む。お立ち台に置かれた学生椅子へ腰掛けた八咫 烏(Vo)は、ほとんど身じろぎひとつせずに歌い続ける。その静けさと轟音の対比にもまた、目を奪われた。
続く「釘打ち」では、恨みを放つかのように烏が打ち鳴らす木槌に合わせ、観客は腕を打ち鳴らして応える。「サイコな僕と壊れた玩具」では静と動を巧みに行き来しながら、鋭い牙をむくような演奏で瞬く間にフロアを掌握していった。


やがてノイズが鳴り響き、スポットライトを浴びた烏が「どうしたら君は僕をみてくれるの? 本当の僕をみてよ」と問いかける。その言葉を引き金に、各パートが存在感を放つ圧倒的な音圧でデカダンスを築き上げた「ましら」を経て、ラストの「害虫」へ。「僕らはどこにいても駆除される“害虫”だ!」と蜈蚣というバンドの根底にある、排除される者の反発心や葛藤を一気に噴出していった。その姿は自らの生き様を叩きつけるようで、非常に鮮烈な幕締めだった。




ORSEAS



ここまでの熱気を洗い流すように、“ORSEAS”が深海の景色を広げていく。無論、それは彼らにとってのオリジナリティでもある。最新曲「冥水ラカンス」が放たれると、疾走感あふれるバンドサウンドが一気にフロアをさらい、LUM.(Vo)の確かな歌唱力と、どこか往年のヴィジュアル系を彷彿とさせる切ないメロディーが、光と闇が共存するORSEASならではの世界観へと観客を誘っていく。


通常はファイティングポーズで盛り上がる「静世界〜新解釈ザ・ワールド〜」も、この日はFURのロゴにちなんで、フロア一面にキツネのポーズが広がった。ジャズテイストを織り交ぜた「Room No.」では大人びた表情をのぞかせ、「さぁ東京。圧倒的にいこうか!」というLUM.の呼びかけからなだれ込んだ「月影ラヴドール」ではモッシュが揺れる熱気とロマンチックなムードが共存し、観客を魅了。
「楽しかったです。ありがとうございました!」と、演奏中の硬派な佇まいとは対照的にMCではどこか気さくな人柄ものぞかせ、「FURに花を持たせにきたから。FURの“永遠”を願って最後に1曲贈りたいと思います」と、届けられたのは「ECLIPSE」。これは、“先輩”からFURへ向けたエールだった。5人が寄り添うように音を重ねていく均整の取れたアンサンブルこそ、ORSEASの誠実さを雄弁に物語っていた。




MAMA.



このイベントにおいて、あらゆる“縁”の象徴となっていたのがMAMA.だった。FURがデビュー前に開催した2マン「ODDLY」で共演した間柄である。
「CRY MORRY」が鳴り響いた瞬間、フロアの熱は一気に跳ね上がる。オリジナルの聖典を説くように、MAMA.が見据えるのは闇でもがくのではなく、闇そのものを暴こうとする意志の強さだ。生きることへ真正面から語りかける迫力で観客を飲み込むと、「ALiCE iNSOMNiA」ではじわりと迫りくるダークファンタジーを描き出す。


続く「毒入りミルクはママ.の味」はポップな導入から妙な不穏さをかき立て、“酷い”という言葉を壊れたおもちゃのように繰り返しながら感情を吐き出す命依(Vo)の姿は、狂気というよりも信仰にも似た熱を帯びていた。
「オオミズアオ」では、ギターボーカルという剥き出しの形だからこそ命依の言葉はより赤裸々になり、そこへ寄り添うJiMMY(Gt)のギターが静かに胸を抉る。こうして最後に用意されていたのは、「僕らの病名は「人間」でした。」でさらけ出す破壊的な衝動。去り際に命依が残した「俺が死んでも生きていけ!」の一言に胸を射抜ぬかれたのは、燃え盛る激情の奥に命を冷静に見つめる眼差しがあってこそ。その恐ろしいまでの温度差が、極度にリアルだからだ。




KAKUMAY



幕が開くなりKAKUMAYが叩きつけたのは、最新曲「最低傑作」。この曲が示す通り、このバンドの原動力が“這い上がろうとする意志”であることを想起させるオープニングだった。
「WELCOME TO THE DARKNESS」で一層アグレッシヴとなった場内へ、「噛み跡」では圧倒的な轟音で観客へ強烈なインパクトを刻み、「共依存」へと独占欲を爆発させる流れもまた秀逸。攻撃性の奥に潜む執着や愛情が絶妙なバランスで折り重なり、ステージとフロアは互いの熱をぶつけ合いながら熱量を高めていった。


「ノンストップで行くよ!」という真虎(Vo)の言葉どおり、その勢いは最後まで止まらない。「五月蝿い」では、感情をむき出しにした歌に対し、一歩も引かないバンドサウンドが真正面から応える。そして「哀なんて青春。」では、真虎のロングトーンが激情の果てに一筋の光を差し込ませ、KAKUMAYが決して絶望だけを歌う存在ではないことを鮮やかに示してみせた。
最後に、「今日は、数少ない真虎の友だちのFURの主催ということで、KAKUMAYらしく盛り上げられたと思います。今日、俺たちのライヴがアナタたちの中にぶっ刺さったなら、7月からワンマンツアーがあるので遊びに来てください」と語った真虎。音楽を武器に果敢に上を目指して這い上がり続ける、そんな揺るがない覚悟を見せつけていた。




FUR



いよいよ、主催者であるFURのターンがやってきた。この日彼らは、LIE(Gt)が緊急入院により出演できないというアクシデントによって、急遽4人で臨むことに。それでもCion(Vo)がMCで「出たかったけど出られなかったアイツ(LIE)に“悔しい”と言わせられたら俺らの勝ち。今日来たことを後悔させないので、よろしくお願いします」と宣言した。その言葉通り、不安など感じさせない堂々たるライヴを繰り広げていたことは最初にしっかりと伝えておきたい。


幕開けを飾ったのは、この夏のリリースが発表されている新曲「GLOSS」。艶やかで品格ある空気をまとった歌ものナンバーの中で、RYU(Gt)のギターソロをはじめ、メンバーそれぞれの演奏が際立っていく。FLAN(Dr)の力強いビート、そしてLIEの不在を埋めるようにステージを大きく駆け回るViViの姿が、この日の覚悟を物語っていた。


「ここを選んでこの時間を選んだなら、欲しかったもの取りにこいよ! どんな奴らか知りたかったんだろ? 教えてやるよ!」という、Cionの人を惹きつける視線も普遍の魅力を放つ。さらに、「日々溜め込んでるもの、俺たちFURに全部出しちゃってちょうだい」と導かれた「唇」では、一転してシャッフルビートが生み出すアダルトな空気で観客を包み込み、その振り幅の大きさもFURならではの武器だと証明してみせた。


ダンサブルな「DANCE」、華やかな「グリッチガール」と畳み掛けるにつれ、フロアは自然と身体を揺らし始める。その光景は、この日初めてFURに触れた人々さえも、彼らの世界へ引き込まれていた何よりの証だった。
「普段抱え込んでいるものを吐き出す場所でもあり、自分の趣味でもあり、自分の愛すべき場所でもあると思っています」とCionの言葉がFURのライヴ空間を特別なものに位置づけ、「愛する君たちへ」と最後に贈られたのは「Für you」。この日思わぬアクシデントに見舞われるも、彼らの結束や色気の混沌へ巻き込んでいくバンドのアイデンティティの輪郭は、少しも揺らぐことはなかった。むしろ、多くの仲間たちの思いも受け止め、未来へ突き進んでいく期待をより感じさせてくれたのだった。

このヴィジュアル系シーンでは、“個性”を問われることが多いだろう。けれど、それは誰かから与えられるものでも、無理につくり出すものでもない。すべては自分の中にある趣味趣向やポリシーの延長線上にあるものだ。FURのデビューを仲間たちが祝福したこの一日が表していたのは、それぞれが抱く真の個性がぶつかり合うことの美しさだった。

撮影:折田琢矢、SHOW
文:平井綾子

SET LIST

■おいでよ!幽霊ズ
1.シュガードリルの遺書
2.福耳に水
3.お陀仏-極楽編-
4.学問のすゝめ
5.はっぴいえんど。
6.Lifestage Teenage.

■ギャロ
1.嬲魔-BELIAL-
2.淫魔-BELPHEGOR-
3.BOOGEYMAN
4.聖黒薔薇學院-青春-
5.夢魔-INCUBUS

■蜈蚣
1.毒
2.釘打ち
3.サイコな僕と壊れた玩具
4.ましら
5.害虫

■ORSEAS
1.冥水ラカンス
2.静世界〜新解釈ザ・ワールド〜
3.Room No.
4.月影ラヴドール
5.ECLIPSE

■MAMA.
1.CRY MORRY
2.ALiCE iNSOMNiA
3.毒入りミルクはママ.の味
4.オオミズアオ
5.僕らの病名は「人間」でした。

■KAKUMAY
1.最低傑作
2.WELCOME TO THE DARKNESS
3.噛み跡
4.共依存
5.五月蝿い
6.哀なんて青春。

■FUR
1.GLOSS
2.RU-TU-TU
3.唇
4.DANCE
5.グリッチガール
6.Für you

関連リンク

■おいでよ!幽霊ズ
Official X:https://x.com/Oideyo_Yureiz

■ギャロ
Official HP:http://9allo.jp/
Official X:https://x.com/9allox9allo

■蜈蚣
Official X:https://x.com/Status_Unknown4

■ORSEAS
Official HP:https://orseas-official.com/
Official X:https://x.com/ORSEAS_official

■MAMA.
Official HP:https://mama.fanpla.jp/
Official X:https://x.com/_MAMA_OFFICIAL

■KAKUMAY
Official HP:https://www.kakumay.com/
Official X:https://x.com/kakumay_jp

■FUR
Official HP:https://fur-official.com/
Official X:https://x.com/FUR_OFFICIAL_X

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