【泥眼】◆インタビュー◆7月30日開催の“泥眼無料ワンマンツアー『密葬』”ファイナル公演に向け、勢い盛んに邁進する新進気鋭バンドを徹底追求

2024年2月に始動したバンド“泥眼”の噂は、またたくまにヴィジュアル系シーンを駆け巡った。VISUNAVI Japan初登場となる今回は、泥眼というバンドの軌跡を辿りつつ、6月28日リリースの「marry」を含む新曲群について、全国6箇所で開催中の“泥眼無料ワンマンツアー『密葬』”についてなど、様々な角度から紐解いていく。“嫉妬心”をあらわに突き進む彼らが表現したい世界とは。
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────VISUNAVI Japan初登場ということで、まずは泥眼がどういうバンドなのかを教えてください。
天:泥眼は、“嫉妬”をテーマにしたバンドです。人を羨む気持ちや妬む気持ちって、人の感情においてどうしても消せないものだと思っていて。そういう感情をテーマにした歌詞を、ヴォーカルの累が書いています。泥眼のファンのことを“ヒトガタ”って呼ぶんですけど、漢字で書くと“人形”になると思うんです。本来の自分も素晴らしいはずなのに、他人を見てああだこうだって思って模倣してしまう……そういう気持ちが湧いてしまうのは、自分が誰かの人形(ヒトガタ)になってしまっているからじゃないかなって。嫉妬心をさらけ出して認めつつ、いつか自分が本当の自分になれたらいいな、みたいなものを伝えていくバンドでありたいと思っています。
累:自分が表現したい音楽性の根底にあるのが“嫉妬”なんです。愛想・執着・破滅みたいな人間の汚い部分を表現したいなと。自分自身がそういう感情を抱いてきた部分が多いので、綺麗な感情よりも表現できるなぁと思って。内面をえぐり出すように汚い感情を出していって、それに共感してくれる人もいるんじゃないかな、みたいな思いでやってます。
────そもそも嫉妬って、皆さんにとってはどういう感情ですか? 卑屈になってしまうネガティヴなものなのか、それをバネに意欲が湧くポジティヴなものなのか。
累:ネガティヴなものでしかないですね。ネガティヴなものを包括したもの=嫉妬のような感じかもしれないです。嫉妬を入口にもっとドロドロしたところを見せられたらいいなぁとも思ってます。
RYON:僕も嫉妬っていうとネガティヴなイメージですね。他人と比べちゃってどうしても卑屈になってしまう部分はあると思います。対バンでほかのバンドのライヴを観てるときとか……。
Ayuto:自分が嫉妬されるのは嬉しいかもって思ったりもしますけど、嫉妬してるのを知られるのは恥ずかしい。自分はそういう感情を隠して生きてる人間です。ただ、心の中ではすごく嫉妬しているので、このバンドを利用してライヴで爆発させてますね。お客さんも含めて、ぶつけ合えるライヴがしたいなって思ってます。
天:これまでいろいろな経験をしてきた中で、嫉妬から生まれるものも多かったなっていう体感は実際のところあります。嫉妬っていうのは自分にないものを見たときに湧くと思っているんですが、その持ってないものを得ようとして行動するっていうことも往々にしてあったので、一見ネガティヴだけど自分次第では好転できる要素なのかなと思ってます。つまり嫉妬って伸びしろなのかなって。“入口”って累が言いましたけど、堕落する可能性もあるし、成長できる可能性もある分岐点かなって自分は捉えてます。
────こんなにもハッキリした世界観を持つバンドのライヴや楽曲、気になって仕方ありません。早速ですが、6月28日に配信リリースされる最新曲「marry」について聞かせてください。狂気を感じるほどのラブソングだなとお見受けしたんですが、どんな想いで歌詞を書かれたのでしょう?
累:受け取り手によって見解が変わるように含みを持たせようと思ったんですけど、わりと直接的な表現になってしまいました。例えば、結婚して老後一緒に過ごすとか、愛の終わり方っていろいろあると思うんです。自分の中で一番綺麗だなって思うのが“両方死ぬ”っていうことで。愛している人を殺して、その死体を食べることによって自分に取り込んで一つになる。それで自分も腐っていったら、最終的に溶け合うじゃないですか。自分の理想の結婚像みたいな。なのでタイトルを「marry」にしました。

────そういうことだったのですね……。ではこれは、お互いの愛が最高潮に達したがゆえの行き着く先?
累:あ、そうですね。執着しすぎて殺しちゃったけど、その死体を貪ることで罪を浄化するみたいな(笑)。そういう歌詞を書きたいっていう想いより、自分の妄想というか強迫観念みたいなものを歌詞にしてます。たまにそういう妄想に取り憑かれるんですけど、それをそのまま書いてるので変な歌詞が多いかもしれません。
────同じワードでも漢字とひらがなの使い分けとか、字面にもこだわってらっしゃいますよね?
累:歌っているときの感情の込め方や字で見たときのイメージでひらがなとかカタカナとか、句読点の位置とかにも結構こだわっています。物語性みたいなのを出せたらなって思ってますね。
────歌詞が上がってきて、メンバーの皆さんはどんな感情を抱かれました?
Ayuto:その場で全部は理解できないんですけど、“これはどういう意図なんだろう?”みたいに考えるのがすごい好きです。シンプルに言葉選びがカッコいいなとも思います。
RYON:累くんの負の感情が、僕的には結構ストレートに伝わってくるんですよね。ドロドロした部分を表現するのすげぇなって毎回思わせてくれます。そういう部分、尊敬してますね(笑)。
天:歌詞を見ても、なんのことかわからないんですよね。聞いたことないような言葉出てくるので、泥眼が始まる頃に歌詞を書いてもらったとき、“なんて博識な人だ”って思いました(笑)。こんな言葉遣いなんか見たことないぞ、みたいな。本人に意図を聞かないとわからない抽象的な歌詞が多いので、「これってどういう意味?」って聞きます。そうすると教えてくれるんですけど、なんか濁すんですよね。ちょっとふざけるんですよ(笑)。
累:それは、恥ずかしいからです(笑)。自分の内面をさらけ出すような感じなんで。聴く人によって捉え方が変わるようには書きたいなとは思ってるんですけど、自分の中のストーリーは決まっているので、そこを掘られると恥ずかしいです。なので、皆さんはそれぞれで消化して取り込んでほしいなぁと思ってます。
────曲調はリフレインするギターフレーズが印象的で、歌詞世界も相まって猟奇的な世界に引き込まれるような感覚がしました。作曲に関してのこだわりがあれば教えてください。
天:この楽曲に限らずなんですが、作曲をする上で自分は“道”というか“世界の雰囲気”を作っているだけだと思ってるんです。そこにヴォーカルの累が色を塗ってるような感覚なんですよね。例えば、下が土で上は青い空っていうイメージを自分が作ったとしたら、そこに登場する人物やストーリーは全て累が展開しているみたいな。なので、“楽曲に対してこういうイメージで作ったんだ”みたいなものは一曲もないです。
────なるほど。では、完成した上での聴きどころはどんな部分だと思いますか?
天:繰り返すと耳に残りやすいっていうのは人の性質としてあると思っているので、なるべく分かりやすいメロディーとかフレーズとか、リフレインできるようなものはしつこくない程度にするようにしています。ヴィジュアル系っていうシーンにおいてのライヴって、自分たちがカッコいいと思ったものを表現するっていうのが大前提にありつつ、お客さんと一緒に作り上げるものっていう前提も自分の中にありまして。なので、お客さんがノリやすいフレーズっていうのも意識してはいます。
Ayuto:実は、今までの泥眼にはなかった曲だと思います。サビに疾走感があってメロディアスでありながら激しいので、お客さんもノリやすいし、暴れやすいと思うし。泥眼の新しい一面が出せたのかなって思いました。まだライヴではやってないので楽しみです。
RYON:天さんから曲が上がってきたときの印象と、レコーディングが終わって累くんの声と歌詞が入った完成形とでは、曲の印象がだいぶ変わるんですよね。今回の曲は本当すごい。泥眼の中で新しいなと思いますし、ギターのリフもほかの曲にはない感じで、僕はすごくいいじゃん!ってなってます。お客さんにも刺さるんじゃないかな。
累:勢いのある曲なので、サビではお客さんもグチャグチャになると思うんです。僕らもグチャグチャになって溶け合うみたいな。っていうところで、サビの歌詞はすぐに浮かんできました。曲と自分の表現したい世界観がマッチしたなっていう印象です。自分の中で腑に落ちたというか。歌詞は自分の妄想なんですけど、曲のフレーズから情景も浮かんできたのでうまく表現できるなと。

────続いて、カップリング曲「硝子の雨」についてお聞きします。こちらはどんな楽曲に仕上がりそうですか?
天:これは、泥眼の初期の頃に作っていた曲で。ヴィジュアル系の“密室”って呼ばれるジャンルの曲をあまり作ってこなかったので、ちょっと日本風のドロドロした感じのテイストを表現しようかなと思って作った楽曲です。ただ、現時点ではまだレコーディングが終わってないので、その具合によってはどんな曲になるのか想像がつかない。楽しみですね。
────もしかして、作ってあるけど世の中に出てない泥眼の曲って、まだたくさんあるんですか?
天:まだありますね。このバンド、全員O型でして……ちょっとのんびりしてるんですよね(笑)。適切な時期に適切な頻度で曲を出していきたいって全員思っているはずなんですけど、なんかバタバタしちゃったねって言って曲を出せてないみたいな状況です。なんか流れに身を任せていたら、ストックが結構溜まってしまったみたいな(笑)。期待していてほしいです(笑)。
累:ちなみに、「marry」と「硝子の雨」の歌詞が出来たのも、レコーディング当日の9:45とかでした。11:00からレコーディングだったので、すごいギリギリでした!
────そこで間に合わせられるって、逆にすごいのでは!?(笑)「硝子の雨」は「marry」に対して健気な印象受けましたが、歌詞の世界について教えてください。
累:「硝子の雨」は妄想というより、自分の思想が色濃く反映されたなぁと。これまで出した楽曲で言うと「トロイメライ」に近いですね。「marry」とは違うベクトルのラブソングを書きたくて。
RYON:まだデモ段階なので、累くんの声とか歌詞が入るとどういう感じになるんだろうっていう期待がありますね。