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【逹瑯】<フリーマガジン「Visunavi Magazine」>巻頭特集・アルバムインタビュー =Web版=

今回は自分だけで作り上げた2枚目のアルバムだから。


 

────アルバムタイトル曲でもある「COLORS」は、どんな経緯で出来た曲だったんですか?

逹瑯:「COLORS」は攻撃力の高い曲が作りたいなって作り始めた曲の1曲目だったんですけど。「勢いがあって激しくて、メロディも綺麗なんだけど。よく歌詞を読んでたら暗いな」って曲を書きたいと思って。絶望感が漂ってるのがいいなってところに、あえて「COLORS」ってタイトルを付けて。鮮やかなんじゃなくて、逆に全く色のない世界で色を求めてるみたいな。鮮やかなところに行きたいけど行けないという、もどかしい世界観。いまの世の中がそういう感じがするので、そこから書いていきました。

────<何色に塗りつぶそうか>と歌ってますけど、まだ何色にも塗れていないんですよね。

逹瑯:これがポジティブな曲だったら、<染め上げよう>という言葉のチョイスになるんだけど。いまの俺の感覚でいうと、染め上げるじゃなくて塗りつぶす。選択肢がこれしかない、これしか出来ないという窮屈さや息苦しさが出たらいいなと思って書きました。

────情報過多の時代を器用に生きてる、いまの子たちに思うことってあります?

逹瑯:思うことというか、俺があと10年遅く生まれてたら、バンドやってないんじゃないかな? 表現がしたかったら、ネットで活動してたかも知れないし。俺たちは効率の悪いところのカッコ良さみたいなものをギリギリ感じてやれてた世代だから、良かったかも知れないし。両方知ってるから、本当はハイブリッドでなきゃいけなんでしょうけど。最近の刺激的な音楽もたくさんあるし、すごいなと思うんだけど。結局、音楽の作り方とか歌詞の書き方とか、自分の好きなことや得意なことを突き詰めていくのが一番早いって、どんだけ考えても落ち着くんですよ。慣れないことやっても上手くやれる、商業作家じゃないんで。だったら自分の得意なことや好きなことを突き詰めた方が説得力もあるし、結局そっちだと思うんです。小難しいことを考えて、狙って出来る人はやればいいけど。俺はそっちじゃないかな?って。

────時代がどうあれ、自分の好きなもの、得意なことを突き詰めていくしかないですよね。そういう意味でも逹瑯さんの好きなものやルーツが見えるカバーアルバム『Pandora Juke Vox』もすごく面白い作品になりましたが。このタイミングでひとつ作品として、カバー曲をまとめようと思ったのはどんなキッカケだったんですか?

逹瑯:去年7月にアコースティックでカバーライブをやって、その時に演った曲が半分以上なんですけど。しっかり時間をかけてアレンジしたから、「一回だけで演らなくなるのはもったいないから、作品にすっか」ってなって。20曲くらいあった中からピックアップして、新ネタを足して。「この辺の音楽が好きな人だったら、芋づる式に引っかかってくるよね」みたいな選曲になってると思います。みんなが知ってる曲とかじゃなくて、「俺、好きなんです、このアーティストのこの曲」ってところで。「え、このアーティストのカバーするのに、この曲なの!?」っていう。THE BLUE HEARTSのカバーをするのに「歩く花」をなかなか選ばないですからね(笑)。

────ここからツアーに向けて、アルバム、カバーアルバムと両軸を同時進行していかなきゃいけなくて大変ですね。

逹瑯:『COLORS』の曲を中心としたセットリストに既存曲を入れてくと、浮いちゃう曲が多くて。やっと「良い感じになりそうだな」ってセットリストが組めたんだけど。「アンコールでやる曲が無いな、どうしよう?」と思って、まだ発表されてない曲が1曲といま作ってるネタっぽい曲が1曲、それに既存曲を加えて3曲あればいいかな? と思って。さらに新曲をやることになりそうです。

────苦労して、アルバムを作り上げたばかりなのに!(笑)でも、アルバムリリース前から、ツアーのビジョンが見えてるんですね。

逹瑯:いまちょうどソロの制作終わって、そのまま続きでMUCCの曲の歌詞を書いて歌録りしてっていうのをやってて。ずっと制作の脳みそのスイッチが入ってる状態なので、このゾーンに入ってる間に全部済ませちゃいたいんです。一回スイッチがオフになると、次に入るまですげぇ時間かかるから(笑)。このクリエイティブ脳のスイッチが入ってる時はいいですね。ライブになって、あるものを一回記憶してパフォーマンスするってなると、ゼロからイチを作る脳みそと全然、違う部屋の脳みそを使うから。使わなくなった部屋の鍵を開けるのが、すっごい大変なんです。2個の部屋を同時に使えないから、こっちの部屋に寝泊まりしてる間に作業を進めて。3月はしっかり脳みそを休めて、4月のツアーに備えます。

────アルバム2枚完成させたからこそ見えた、ここからソロでやりたいことはありますか?

逹瑯:今回やりたくても出来なかったこと、物理的にやれなくて妥協したところも結構あって。それがなぜかというと、俺はMUCCしかやってきてないし。MUCCには強力なコンポーザーが一人いるので、そこにずっと乗っかってる状態だったんですよ。そこで自分がやるべき仕事、歌詞を書いて歌を歌ってということをやってたら、いつの間にかアルバムが出来てるので。自分でイチから作ったことはほとんどないし、やり方が分からないんです。そういう状態の中でアルバムを作って、今回は自分だけで作り上げた2枚目のアルバムだから。まだインディーズで始めたバンドの2枚目のアルバムくらいの感覚で、「このやり方ってこれじゃダメだったんだ」とか、「本当はこうすれば良かったんだ」ってことが、あとから分かったりしていて。トライ・アンド・エラーを繰り返して、自分たちで物を作ってることを実感してるし。「出来ないものは出来ないから、ちょっとずつ出来るようになればいいや」って気持ちで、楽しみながらやれてるし。次はもっと良いのが出来るという気持ちでやってます。

────25周年のベテランが、そんな新鮮な気持ちで制作に挑めてるのがスゴいですし、最高です! では、最後に『VISUNAVI Japan』を読んでいる若手バンドにひと言頂きたいのですが?

逹瑯:「近道しようとするな。すぐに結果が出ないからって諦めるな」ってことじゃないですかね。最近の子たちってある意味、効率いいのかも知んないですけど。ちょっとやって、手応え無かったら次ってバンドが多いでしょ? そういうの見てると、「その程度のこだわり方でモノ作ってたんだ」って思っちゃうんですよね。「思ってた手応えや反響はないけど、俺たちは最高にカッコいいと思ってるから、次はもうちょっと頑張っていくんだ」ってならないんだって思うし、その程度だったらやらない方がいいんじゃないかな?って思っちゃいますね。結局、自分の好きなことや得意なことを突き詰めていくしかないんで。頑張って下さい。

取材・文:フジジュン

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