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【灰音アサナ × 山内秀一】◆対談◆「少年ヴィジュアルロック」(秋田書店・マンガクロス)連載中の漫画家・灰音アサナとVISUNAVI Japanプロデューサー・山内秀一がヴィジュアルロックの初期衝動とこれからを語る。

 

タイトルが「少年ヴィジュアルロック」なのはキズの来夢さんがきっかけです。



山内
:「少年ヴィジュアルロック」には“BLACK GLAZE(通称:ブラグレ)”というハードなヴィジュアルのバンドが憧れの対象として君臨していて、その存在が少年たちをヴィジュアルロックの道へ誘うわけですけど、今の時代ってヴィジュアル系バンドを始めるきっかけもたくさん増やしていかなければならないのも課題で。

灰音:そもそもバンド人口が減っているのではないかと思いますよね。取材をしていても肌で感じます。だからこそ作品を通して、バンドの楽しさを伝えてきっかけ増やす要因になりたいなっていうのはめちゃくちゃありますね。PCがあれば一人で何でも出来てしまう時代に、人とやる意味っていうのは大切だと思うんですよ。

山内VISUNAVI Japanとしては、まずライヴハウスにたくさんの人が来てほしいなってシンプルに思うんです。そういうこともあって412日・13日・14日に「KHIMAIRA」という3DAYSイベントを仕掛けるんですけど、そもそもライヴ会場にいる人間なんて99%他人なのに、一つの愛を共有することで友達じゃないけど、仲間意識があると思うんですよ。同じTシャツ着て、同じ電車に乗って、どんどんTシャツの数が減っていく侘しさみたいなものはヴィジュアル系に限った話ではないけれど、啓蒙していきたいんです。SNSでのアプローチとかも、結局そのゴールはライヴ会場だと思うので。

灰音:ライヴハウスはアウトサイダーでいられる場所ですよね。きっと今も。

────ヴィジュアル系の魅力って何だと思います?

灰音:ヴィジュアル系は感情の肯定。3話でも描いたんですけど、世界が憎くてしょうがない気持ちになるときもあるじゃないですか。とことん沈みたいとき、怒りたいときとかに、それでいいんだって言ってくれるのがヴィジュアル系の音楽。むしろヴィジュアル系を聴かない人は何で救われてるの?って思います()

山内:時に暴力的だけど、癒されたりとか孤独から解放されるみたいな。

灰音:とことん孤独に向き合うと逆に孤独じゃなくなるみたいな。

山内:マイノリティゆえの結束力みたいなものがすごくかっこいいんですよね、ヴィジュアル系好きなお姉さんとか、お兄さんたちって。なんか宗教じみてるじゃないですか時々。あの湧き出るパワーって凄いなって。若いバンドさんのライヴとか観に行くとお客さんにも感動するんです。その場所で生きてることを証明していて。ただこの敷居の高さを理解しつつもを広げていかないともう先細りなんですよ。矛盾ですよね。

灰音;難しいんですよね。マイノリティで高尚な自分だけのロックとして大切にしたいけど、それだけじゃ生きていけないところもある。「少年ヴィジュアルロック」は敢えてその世界観の中間ぐらいになりたいと思ってるんですよ。なので、実際にヴィジュアル系を愛して止まない方からしたら少しポップに感じるニュアンスで描いています。不特定多数の方もヴィジュアル系に興味を持つ架け橋は目指しているところでもあるので。

────最近のヴィジュアル系ってどう思います?

灰音:新しいなと思ってます。偉大な先人がすでに色々なことをやっているのに、まだ新しいことが出来るんだなと。キズやCHAQLA.などを聴いていると思いますね。XANVALAは真っ直ぐなヴィジュアルロックでありながらそれを今の時代にやることで新鮮さがあったり、先日のThe Brow Beatのライヴでは客降り演出があったり。そんなヴィジュアル系の自由さはもっともっと広がっていくと思います

山内:キズはロックフェスに出るし、CHAQLA.は他ジャンルとのライヴも増えてますよね。全くヴィジュアル系に所縁のないイベンターさんからCHAQLA.の話を聞くことがつい最近もあって。HOWLもそういう印象。広がる要素というか他ジャンルから見て気になる存在になってきてるんだなと感じます。

灰音:「少年ヴィジュアルロック」の中でも他ジャンルっていうのはここから要素として出てくるんですよ。と言うのも、ロックバンドじゃなくてヴィジュアルロックの意味って何?っていうのを描きたくて。キズの来夢さんが仰っていたヴィジュアル系ではなく、ヴィジュアルロックという考えへのシンパシーもあります。タイトルが「少年ヴィジュアルロック」なのはキズの来夢さんがきっかけです。

山内:他ジャンルからの対比で浮き彫りになる魅力。気が付けていなかった部分はあるかも知れない。でも、他ジャンルのイベントに賑やかし的に出ていくのもちょっと違うかなと思うから難しい。ライヴにおける他のジャンルとの掛け算はもうすでに一周したのかも知れないですけど、いつかVISUNAVI Japan主催で他ジャンルメインのイベントがあってもいいなとは思うんです。

灰音:面白そうです!

山内:他ジャンルのバンド4組の後に最後1組だけヴィジュアル系が出てくるみたいな。フォークイベントにMAMA.が出てきたり、それこそシティポップ系に201号室が出る、ロックバンドと一緒にNAZAREや孔雀座が出てくるとかは意味がありそう。お客さんに優しいイベントだとは思わないけど、掛け算をする時には相手方への最大限の敬意がないと伝わらない気がしてるんですよね。

────ところでどうしてVISUNAVI Japanに改名されたんですか?

山内:ヴィジュアル系って日本発のものですけど、古くは歌舞伎であったりヴィジュアルって幅広い解釈が可能じゃないですか?なので、ヴィジュアルという文脈の中で愛せるものをどんどん取り扱っていきたいなという考えの下です。それを広げていくのは日本に限ったことではないので、だからこそあえてJapanとつけました。

灰音:なるほど。エンタメに特化したビバラッシュがメジャーに行ったり、色々な十字架は自分達で同人誌即売会をやったりと面白いことがたくさん起きてるから、どんどん広めてほしいです。VISUNAVI Japanのバラエティ番組とかあっても面白そう。

山内:昔のように紙媒体がたくさんあるわけではないし、バンドの方の人間性を垣間見る場所がSNSに集約されてるんですよね。だからこそSNSで完結していないキャラクターや魅力を発信する場は作りたいですね。インタビューとかもヴォーカリスト以外の方の話とかもっと聞きたいですし、発信した方がいいですよね。この前KAKUMAYのベーシストゆいと。さんのインタビューやったんですけど、彼の人間力が凝縮されていて、ああいうことは当たり前にやりたいです。

灰音:音楽が好きなのは前提としてバンド内の関係性とか人間性にもドキッとさせられることあるじゃないですか。漫画でもそういう描写は大切にしてるんですけど。

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